No.2015-015 2015年2月5日 ≪藤井英彦の 藤井英彦の視点≫ 視点≫ http://www.jri.co.jp 原油価格上昇 ~ リグ数減 ~ (1)1月末から原油価格が上昇(図表1)。終値ベースで1バレル当たり北海ブレントは1月26日の 48.2ドルを底に上がり始め、30日から大幅上昇。2月3日は57.9ドル。昨年12月30日以来の水準。 WTIは1月28~29日の44.5ドルを底に30日から大幅上昇。2月3日53.1ドル。1月1日以来の水準。 原油価格に連動してガソリンや灯油も大幅上昇。 (2)引き金はリグ数の減少(図表2)。原油と天然ガスに分けてリグ数をみると、天然ガスでは 原油と異なり、昨年12月末以降、価格が総じて一進一退で推移するなか、リグ数が1月第3週の 310基を底に若干増加し第5週は319基。しかし原油のリグ数は昨年12月初から、ほぼ週を追って 減勢加速。最新値の1月第5週は前週比94基減。 (3)昨年来の世界的な原油需給の緩和はシェールオイルを中心に米国の産油量増が主因。米国の リグ減少は産油量の減少を通じて原油需給の引き締まりに作用する筋合い。そこで米国の産油 量とリグ数の推移をみると、90年代から2000年代半ばまでほぼ連動(図表3)。しかし2009年 半ばからリグ数が急速に増加したものの、産油量は11年央まで横這いで、増産は11年末以降。 さらに12年半ばからリグ数が頭打ちに転じたものの、産油量は引き続き増産傾向。伝統的油田 と異なり、シェール油田ではリグが立ち上がった後も原油分布層までの掘削や破砕など採掘に 向けた作業が必要で、リグ数増から産油量増までラグが発生。減産局面は増産局面と非対称と なる余地も。しかし、米エネルギー省の最新1月予測によれば、本年半ばまで増産傾向が展望。 加えて在庫増(図表4)。例年ほぼ同様の推移を辿り、11月初から翌年1~2月まで減少するの に対して、昨年12月初から、原油、石油製品とも在庫が大幅増。新年入り後も産油量の増加が 続いている可能性。一方、OPECが減産姿勢に転じる兆しは依然見られず。これらを総じて みれば、原油価格上昇圧力は限定的なものにとどまり、軟調な推移に戻る展開が視野。 (図表1)原油価格(2015年) (図表2)米国リグ数と天然ガス価格 60 リグ減少数(原油(前週差、10基)、右目盛) リグ数(天然ガス、基、左目盛) 天然ガス価格(ドル/億BTU、〃) リグ数(原油(百基)、右目盛) (ドルバレル) 58 430 WTI 北海ブレント 56 54 52 50 48 46 44 01 02 18 415 16 400 14 385 12 370 10 355 8 340 6 325 4 310 2 295 0 280 2014/10 ▲2 11 12 15/1 (年/月/週) (出所) CME (月/日) (図表3)米国の産油量とリグ数 25 (図表4)米国の原油・石油製品在庫(除く戦略備蓄) (千万バレル/月) (百基) 産油量(左目盛) リグ数(右目盛) 23 21 19 17 15 7 6 5 4 3 2 1 0 -1 90 91 92 93 94 95 96 97 98 99 00 01 02 03 04 29 26 23 20 17 14 11 07 2010年4月~11年3月 2011年4月~12年3月 2012年4月~13年3月 2013年4月~14年3月 2014年4月~15年2月 (千万バレル) 116 114 112 110 15 12 9 106 6 3 104 0 -3 102 産油量(左目盛) リグ数(右目盛) 06 118 (年/月、年/月/週) (百基) 18 108 (千万バレル/月) 05 (出所) US EIA など 08 (出所) US EIA 09 10 11 12 13 14 15 (年/月、年/月/週) 04 05 06 07 (出所) US EIA 08 09 10 11 12 01 02 03 (月/週) 【ご照会先】日本総研理事 藤井英彦([email protected] , 03-6833-6373) ≪藤井英彦の視点≫は、理事・藤井英彦が独自の視点から、新興国や一次産品動向を中心とするホットなトピックスに鋭く切り込むレポートです。
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