タイ・バンコク視察 - ぶぎん地域経済研究所

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タイ・バンコク視察 ―「ぶぎん若手経営塾」海外視察実施に向けて―
ぶぎん地域経済研究所経営情報事業部長 鈴木 三知男
1.今回の視察目的
ル到着までの短い距離を走るのに30分以上
私の所属する経営情報事業部は、「ぶぎん
時間がかかりました。しかし、現地の案内を
経営者クラブ」の会員に対するセミナー・講
してくれた福井行員によれば、
「1時間で1
演会等の企画・運営を主業務としております。
㎞も進まない時もある」とのことです。
その中で、若手の事業後継者育成を主眼とし
自動車関連産業が盛んなタイでは、車の増
た「ぶぎん若手経営塾」という年度間10講
加に交通のインフラ整備が追い付いていない
座実施している当社の看板講座があります。
感があります。
塾生の方々から常々「国内だけでなく海外
視察も企画してほしい」との要望が耳に届い
3.バンコクの交通事情
ここで、交通手段を中心に簡単に述べさ
ておりました。今回の視察では、来年度以降
せていただくと、タクシー、三輪バイクタ
のセミナー等で海外視察が実現可能か、実際
クシー(トゥクトゥク)
、BTSスカイトレイ
に現地を巡って調査することが主目的で
ン(モノレール)
、地下鉄、水上バスと様々
した。
な乗り物に乗せていただ
昨年4月より母体行の福井行員が、バンコ
きました。
ク、カシコン銀行へトレーニーとして赴任し
特に印象的であったの
いることもあり、タイ・バンコクに26年11
は、やはりトゥクトゥク
月26日から11月30日、機中泊を含む4泊5
です。バイクの後ろに座
日の視察を行ないました。
席を取り付けたようなタ
2.バンコクの印象
クシーで、開放感があり
まず、第一に、バンコクという街は予想以
爽快な気分でした。トゥ
上に発展しており、活気のある大都市である
クトゥクに乗る場合は、
行先を説明して値段交渉
に到着したバンコク
が必要なため、自分一人
のスワンナプーム国
ではまず乗ることはでき
際空港から宿泊場所
なかったと思います。
のホテルに向かう車
また、水上バスは思い
の中で、高層ビル群
のほかワイルドな乗り心
や車の多さに驚かさ
地で、艀にロープを素早
れました。
く引っ掛けて停止させる
空港からホテルに
身体の大きな係員に驚か
向かった夕方の時間
されました。信号も交通
帯は、車の渋滞が特
渋滞もないので、地上を走るより目的地まで
に激しく、ホテルの
早く到着できるようですが、慣れていないと降
あるスクンビット地
りるタイミングがつかみづらく、乗り過ごして
区に入ってからホテ
しまいそうな乗り物でした。
はしけ
ぶぎんレポート No.185 2015 年 2 月号
バンコク市内の代表的な交通手段
上からトゥクトゥク、水上バス、スカイトレイン
活気に満ちたタイ・バンコク市内
と感じました。初日
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滞在中、一番多く利用したのは、BTSスカ
イトレイン(モノレール)です。チケットの
買い方など、日本の電車とほとんど同じです
が、目的地の駅名を覚えていないと一人で乗
るのはやはりは難しいようです。また、オレ
ンジ色のベストを着用し縦横無尽に街を駆け
抜ける「バイクタクシー」は日本にはないも
ので、交通渋滞の激しいバンコクでは、ラッ
シュアワーに大変人気のある乗り物です。
4.カシコン銀行の訪問
今回、バンコクを案内していただいた福井
行員が勤務している「カシコン銀行パホンヨ
ティン本店」のジャパンデスク訪問時のこと
です。始業時間8時30分を過ぎているにも
カシコン銀行本店16階のジャパン
デスクに赴任中の福井行員
かかわらず、人が揃っていません。定められ
く、一流大学の出身者や大学院卒業者・海外
た始業時刻を過ぎてから出勤する人の多いこ
赴任経験者なども多いと聞きました。
とに驚かされました。
5.日系現地法人の視察
銀行の営業店では、オープン時間には必要
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1945年創業のカシコン銀行パホンヨティン
本店。支店数は約1,000店舗、ATMは9,000
台を超える
今回の視察で、唯一の日本企業現地法人の
な人数が出勤しているそうですが、本部の行
視察は大変勉強になりました。訪問先は、ピ
員は半分以上の人が始業時刻には来ていない
ントン工業団地内の「豊島タイランド」
。母
状況です。ジャパンデスクに9時頃お邪魔し
体行の東松山支店でお取引いただいている
た時も、本来であれば総勢70名以上の大所
「豊島製作所」の現地法人でした。当日は木
帯(日本人31名)でワンフロアーに人がひ
本会長直々に詳細なブリーフィングと工場内
しめいているはずですが、何とガラガラの状
のご案内をいただきました。
態でした。勤務時間を守るより、自分の仕事
この視察で一
(目標)をこなすことに重点が置かれ、勤務
番感じたこと
時間、特に始業時刻はあまり気にしていない
は、木本会長の
ようです。
やる気の強さで
カシコン銀行では「カシコンリサーチセン
した。会長自身
ター」の調査員より、タイ経済とカシコン銀
が工夫を重ね
行等について詳細な説明を受けました。調査
て、現地の従業
員の流暢な日本語に驚きましたが、以前日本
員教育や公平な
の大学で学び、日本の企業に勤務していた経
人事考課をきめ
験があるそうです。カシコン銀行はタイの大
細かく実施して
手銀行ですので、行員はエリート社員が多
おり、現地で採
ぶぎんレポート No.185 2015 年 2 月号
「豊島タイランド」の木本会長(右)
と筆者
予想以上の速さで復旧し
ているナワナコン工業団
地の受付(左)と、敷地
内を覆う防水壁
用した従業員を大切に育てていることが印象
に残っています。自分の仕事に信念を持ち、
7.屋台の思い出
バンコクの魅力の一つが屋台での朝食で
トップが自ら汗を流して取り組んでこそ部下
す。毎朝ホテル周辺のスクンビット地区を散
もついてくるし、従業員も育つのだと改めて
歩して、帰りに屋台で朝食をとりました。
感じました。
初 日 は 大 変 な 失 敗 を し ま し た。 ジ ェ ス
6.ナワナコン工業団地の復旧
チャーで食べたいと告げ、席につきました
工業団地の視察で印象的だったのは「ナワ
が、注文の仕方がわからずにいると、なんと
ナコン工業団地」です。まだ記憶に新しい
「スープ」が出されました。ティーカップを
2011年の未曾有の大洪水の爪跡が、同工業
一回り大きくしたような蓋付のカップが目の
団地内で確認できました。工業団地内の電柱
前に置かれました。赤と緑の細かく切った野
には、今も背丈よりはるか上の高さに洪水時
菜が入っていて、ちょっと香辛料のきいた
の水跡が残っており、当時の「工場水没」の
スープのようでした。一口すすると目から火
凄まじさが想像できました。
が出そうに辛いではありませんか。そうで
しかし、ナワナコン工業団地が予想以上の
す、これは自分に出されたスープではなく、
速さで復旧していることも見ることができま
そのテーブル用に置かれた赤・青唐辛子を
した。この工業団地では、既に敷地内の周囲
使った激辛香辛料だったのです。
すべてに高い防水壁が建設されていました。
その後は、何もなかったかのように涙を拭
また、工業団地の立地の良さや就労人口の多
い、ライスと野菜炒め風のものなどをジェス
さもあり、2011年の大洪水で被害を被って、
チャーで注文し、無事に食事ができました。
一旦他の工業団地に移転した企業がまた同地
料金は、驚くほど安く、1食30 ~ 50バー
区に戻って操業しているなど、洪水に対する
ツ(110円~ 180円)程度で、美味しい朝
対策を急ピッチで実施し、徹底してきたこと
食がいただけました。
が窺われました。
8.終わりに
今回の視察では、多くの人に助けられ、何
とか無事に終えることができました。
この視察を足掛かりとして、参加を希望す
る塾生の方々の希望を取り入れながら、今後
「ぶぎん若手経営塾」等で海外視察の実現に
取り組んでいきたいと思います。
会員の皆様のお手元に「海外視察・参加者
募集のお知らせ」が届きました時は、是非ご
参加をご検討いただきますよう心よりお願い
バンコク名物の屋台。
屋台で朝食を購入してオ
フィスで食べる人も多い
いたします。
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