低優先度処理を指定可能な リアルタイム処理向け I/Oスケジューラ 髙村成道,鵜川始陽,岩崎英哉 電気通信大学 2014年 3月 7日 リアルタイムサービスの普及 • リアルタイム性を必要とするWebサービスの例 • ソーシャルゲーム,チャット,SNS... • 定期的なメンテナンスが必須 ⇒ サービスを継続したままメンテナンスを行う オンラインメンテナンス 2 オンラインメンテナンス • 問題点 • 作業負荷によるサービス品質の低下 ⇒ 本研究では I/O 負荷に着目 • I/O 負荷を伴うオンラインメンテナンスの例 • データベースサーバ上の巨大なログファイルの削除 3 オンラインメンテナンスの例 (1) データベース プロセス メンテナンス プロセス 巨大なログの削除 (緊急性がない作業) 4 オンラインメンテナンスの例 (2) データベース プロセス データベース処理の スループットが減少 メンテナンス プロセス メンテナンス処理により 本来優先すべき処理が 妨げられてしまう 5 I/O スケジューラ • I/O 要求を適切に並び替えるソフトウェア • Linux カーネルに組み込まれている リアルタイム処理 I/O 優先度指定 CFQ スケジューラ Deadline スケジューラ ☓ ⇒リアルタイム処理向きであり,かつ,優先度指定可 能な I/O スケジューラは無い 6 目的・方針 目的 オンラインメンテナンスによるサービスの品質低下を防ぐ 方針 • 低優先度処理が指定可能なリアルタイム向けの I/O スケジューラの実装 ⇒ Deadline スケジューラを拡張 7 ファイル I/O の概略 ユーザ空間 プロセス VFS カーネル空間 汎用ブロック層 I/O スケジューラ層 ファイルシステム ディスク キャッシュ デバイス ドライバ デバイス ドライバ 物理 デバイス 物理 デバイス 8 I/O スケジューラの動作概要 汎用ブロック層 デバイスドライバ 処理する順に 要求を格納 要求の並び替え ディスパッチキュー 処理順序の制御は 物理 要求がサブキューに デバイス ある場合に可能 サブキュー I/O スケジューラ 9 Deadline スケジューラの動作 データベース処理の要求 1 1 2 3 2 メンテナンス処理の要求 サブキュー ディスパッチ キュー 1 1 2 3 2 時間 10 Deadline スケジューラの拡張 • 処理性能の維持 • 低優先度処理の追加 • 低優先度処理のスループット制限 • I/O 帯域の有効活用 11 低優先度処理のスループット制限(1) データベース プロセス メンテナンス プロセス 低優先度処理の スループットを抑え, メインの処理に多くの スループットを割り当てる12 低優先度処理のスループット制限(2) • 通常(データベース処理)の要求はそのまま 処理する • 低優先度要求は一定時間ごとに保留する • 保留の処理はサブキューを用いる 13 低優先度処理のスループット制限(3) データベース処理の要求 1 1 2 3 2 メンテナンス処理の要求 サブキュー ディスパッチ キュー 1 1 α 2 2 α 3 時間 14 I/O 帯域の有効活用(1) データベース プロセス メンテナンス プロセス 一定時間,メインの処理 が行われない場合, 低優先度処理の スループット制限を解除 15 I/O 帯域の有効活用(2) 1 1 2 3 4 5 サブキュー ディスパッチ キュー 2 1 1 α β 3 4 5 α 時間 16 I/O 帯域の有効活用(3) 6 2 7 8 9 サブキュー ディスパッチ キュー 7 5 6 2 8 9 α β 時間 17 2つのモード • 通常モード • 低優先度処理のスループット制限をして処理する • バッチモード • 低優先度処理のスループット制限をせずに処理する 18 タイマによるディスパッチ制御 • カーネルタイマを利用 • α 時間後に1つの低優先度要求をディスパッチ • β 時間後にバッチモードへ切り替え,すべての低 優先度要求をディスパッチ 19 実験環境 OS CentOS release 6.5 (Final) Linux カーネル 3.12.7 CPU Intel Core i7-3770 @ 3.40GHz 4 コア メモリ 8 GiB 物理デバイス 1 SSD 240GB (Intel SSDSC2CT240A4) 物理デバイス 2 HDD 320 GB, 7200 rpm (Hitachi HDP72503) ベンチマーク ツール sysbench 20 評価: 低優先度処理の影響 (1) 実験内容 • データベースサーバ(MySQL)を利用 • 低優先度処理がある場合は,ない場合と比 較して何%の性能が出るかを測定 • 通常の処理: データベース処理 • 低優先度処理: Sequential Read • α = 200ms, β = 500 ms 21 HDD SSD HDD SSD 評価: 低優先度処理の影響 (2) Normal I/O TPS / Low Prio I/O TPS [%] 1010 00 110 100 90 80 70 60 50 40 30 20 10 0 Deadline Deadline Our OurScheduler Scheduler HDD SSD 22 HDD SSD HDD SSD 評価: 低優先度処理の影響 (2) Normal I/O TPS / Low Prio I/O TPS [%] 1010 00 110 100 90 80 70 60 50 40 30 20 10 0 Deadline Deadline Our OurScheduler Scheduler 既存のDeadline スケジューラでは, 70 % 以上の性能が低下した HDD SSD 23 HDD SSD HDD SSD 評価: 低優先度処理の影響 (2) Normal I/O TPS / Low Prio I/O TPS [%] 1010 00 110 100 90 80 70 60 50 40 30 20 10 0 Deadline Deadline Our OurScheduler Scheduler 本機構では,1 % 未満の性能低 下に抑えることができた HDD SSD 24 評価: スループットの推移 実験内容 • 5GB のファイル読み込み • 2つの処理に対して,1秒ごとにスループット を測定し,変化を確認 • 通常の処理: Sequential Read • 低優先度処理: Sequential Read • α = 200 ms, β = 5000 ms 25 Throughput ( Mbytes/sec ) 評価: スループットの推移 250 200 150 100 低優先度処理が通常 の処理を妨げている 50 0 0 5 10 15 Deadline での通常処理と Deadline での低優先度処理 20 25 Time ( sec ) 30 Deadline Normal I/O 35 40 45 26 Throughput ( Mbytes/sec ) 評価: スループットの推移 250 本機構での通常の処理 200 通常の処理がすぐに完了し, その後スループットを有効 活用している 150 100 本機構での低優先度処理 50 0 0 5 10 15 β 20 25 Time ( sec ) 30 Deadline Normal I/O 35 40 45 27 評価: 拡張によるオーバーヘッド 実験内容 • 1 分間のファイルアクセスを実行 • スループット (Mbytes/sec) を比較 110 Our Scheduler / Deadline [%] 100 90 80 70 60 50 通常のI/O要求を処理する上で, 既存のDeadline スケジューラと 本機構との性能差はほぼない 40 30 20 10 0 SeqRead RndRead SeqWrite RndWrite 28 関連研究(1) • 汎用向けの高性能スケジューラ • CFQスケジューラの高性能化 [Lunde, 2009] • 各種スケジューラの高性能化 [Seelam, 2005] • 高速デバイス向けのスケジューラ • SSD 向けのスケジューラの実装 [Dunnら, 2009] • Fusion-io 向けのスケジューラの実装 [Robin, 2013] ⇒高速化が目的でありオンラインメンテナンスに 配慮したスケジューラを実現する研究ではない 29 関連研究(2) • cgroups [Linux 準拠 (v2.6.24 以降)] • スケジューラに依存することなく,スループットの 上限を指定可能 • プロセスごとに設定が必要 ⇒本研究では,I/O スケジューラを拡張した 30 まとめ • 低優先度を指定可能なリアルタイム処理向け の I/O スケジューラの設計・実装を行った • 提案機構の評価を行い有効性を確認した • 既存のものでは性能低下が70 % 以上であるのに 対し、本機構では 1% 未満に抑えることができた 31 32 α の設定値によるスループットの変化 Throughput ( Mbytes/sec ) 120 100 80 60 40 20 0 10 50 100 150 200 Time ( sec ) 250 300 33 ファイル I/O の概略 ユーザ空間 プロセス VFS カーネル空間 汎用ブロック層 I/O スケジューラ層 ファイルシステム ディスク キャッシュ デバイス ドライバ デバイス ドライバ 物理 デバイス 物理 デバイス 34 Deadline スケジューラの動作 (1) セクタ番号順 並べ替えキュー s: 98 s: 41 s: 23 t: 2 t: 5 t: 3 I/O 要求の 発行順 期限付きキュー s: 41 s: 23 s: 98 t: 5 t: 3 t: 2 末尾 先頭 処理実行 s: セクタ番号 t: 発行要求時刻 35 拡張後のスケジューラの動作 (1) 並べ替えキュー 低優先度 要求の追加 s: 77 t: 7 s: 98 s: 64 s: 41 s: 23 t: 2 t: 6 t: 5 t: 3 期限付きキュー s: 64 s: 41 s: 23 s: 98 t: 6 t: 5 t: 3 t: 2 処理実行 低優先度キュー 36 拡張後のスケジューラの動作 (2) 並べ替えキュー s: 98 s: 64 s: 41 s: 23 t: 2 t: 6 t: 5 t: 3 期限付きキュー s: 64 s: 41 s: 23 s: 98 t: 6 t: 5 t: 3 t: 2 処理実行 低優先度キュー s: 77 t: 7 37 拡張後のスケジューラの動作 (3) 並べ替えキュー s: 98 s: 64 s: 41 t: 2 t: 6 t: 5 期限付きキュー s: 64 s: 41 s: 98 t: 6 t: 5 t: 2 処理実行 低優先度キュー s: 77 t: 7 38 拡張後のスケジューラの動作 (4) 並べ替えキュー 期限付きキュー 処理実行 低優先度キュー s: 77 t: 7 39 実装: カーネルタイマによる制御 1 1 2 3 4 5 dispatch() dispatch() dispatch() dispatch() Sub Q set(β) Dispatch Q set(α) 2 1 1 mode(normal) set(α) α β 3 4 5 mode(batch) 時間 40
© Copyright 2024