「バンブー・ファインケミカルズ(その2)」 - 中国経済産業局

地球を笑顔に!(第 48 回)
「バンブー・ファインケミカルズ(その2)」
■竹のパワーを活かす■
(一社)中国地域ニュービジネス協議会
チーフコーディネーター
竹内善幸
日本(中国地域)では、一般に4月中旬から5月初旬にかけて、タケノコが伸長します。この成
長期間には、1日1m以上も伸びるほどの成長力をもっています。このパワーを持つ時期に採取
した樹液には、アミノ酸などが多く含まれています。
また、竹の稈表皮(緑色の部分)には抗菌成分が多く含まれており、稈部にはケイ素、カリウ
ムなどのミネラルが多く含まれています。これらはファインケミカル用原料としての活用技術が開
発されています。
今回は、この「竹」を素材とする「バンブー・ファインケミカルズ・リファイナリーシステム」構築例を
ご紹介します。
図1.竹林
図2.タケノコ
◆竹利活用事業
(株)瀬戸内ランドマリン(広島県大竹市)では、広島県
西部地区から山口県東部にかけての荒廃した竹林整備
により発生する竹材を活用した新規事業化に取り組んで
います。
日本では主にモウソウチク、マダケ、ハチクが植生して
います。この竹は成長力が非常に大きく、わずか 2~3 ヶ
月で高さが 10~20mにもなります。資源の乏しい日本に
おいて適正管理・利用することで繰り返し生産が可能な
貴重な森林バイオマス資源であり、循環型社会形成のた
めにも有効利用が期待されています。
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図3.モウソウチク
図4.マダケ
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図5.整備前の竹林
図6.整備後の竹林
■牡蠣筏用竹素材
牡蠣筏用の竹材として、直径160~200(mm)、長さ15~22(m)のモウソウチクが使用され
ています。中国地域には特に大きいものがあり、直径230(mm)(図7.および8.参照)が伐採さ
れたこともあります。
図7.牡蠣筏用竹材の断面
図8.牡蠣筏用竹材
牡蠣筏は、約縦10x横22(m)の大きさで、120~130本程度の竹を使用して組立てられます。
その総重量は約8~9tになります(図9.および10.参照)。この竹を海上に浮かすために、発泡
スチロール製フロートが約30個取り付けられます。
瀬戸内海沿岸西部地域の牡蠣筏用竹材は、4~5年位前までは大半が北九州から搬送されて
いましたが、最近では広島県・山口県の良質な竹材が供給されています(図11.および12.参
照)。
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図9.組立てられた牡蠣筏の例
図10.組立てられた牡蠣筏の例
図11.竹材搬出用バックホー
図12.竹材輸送トラックの例
■パーティクルボードMDF用チップ
日本国内で使用されている建設材料用繊維板・パーティクルボードは年間323万m3 程度で、
この材料である木チップは年間144万 t が使用されています。これまで、繊維板・パーティクルボ
ードの33%は輸入に頼っていました。この輸入量は種々の要因により大きく変動して安定した入
手が困難であることから、建設材料製作業界では代替材料の検討が実施されています。そこで、
ボード原料としての竹チップを提供して技術開発を支援しています。
図13.竹チップの例
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図14.竹繊維
図15.竹ボードの例
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竹チップ(3~5cm程度、図13.参照)から竹繊維(図14.参照)を製造し、さらにプレス加工す
ることにより竹材100%のボードが試作されています(図15.参照)。
■農業用資材としての「竹パウダー」
竹の枝葉は、牡蠣筏用竹材を伐採する際に約5(wt%)発生します。したがって、牡蠣筏1台用
の竹材を伐採すると、約300kgの枝葉が発生することになります。
図16.竹粉砕機の例
図17.竹パウダーの例
図18.竹パウダーの例
図19.竹パウダーを使用して収穫した野菜
敷き詰めて蒔くと雑草が
生えにくくなります。燻炭
にしますと更に効果があ
ります。
竹パウダーの効果
甘味が増して収穫量が増え
ます。土はフカフカに柔らか
くなります
この枝葉を粉砕機(図16.参照)で3~5mm程度に粉砕し、竹パウダー(図17.および18.参
照)を農業用資材として提供しています。
竹には表1.および表2.に示す成分が含まれていますが、強固な外皮で覆われているために
自然界では簡単に腐食・分解されにくい状態です。そこで、微粉砕処理によりリグニンの包埋構
造組織を破壊した竹パウダーを畑に散布すると土壌中の微生物により分解・発酵が起こり、竹に
含まれているミネラルや生成物は作物の栄養分として吸収されます。この竹パウダーの効果によ
り、野菜の甘味が増加します。
また、竹パウダーを使用することにより、野菜の病害虫対策効果があったとの報告も得られて
います。
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表1.竹の組成
成
分
表2.竹の微量成分
組成(wt%)
セルロース
49
ヘミセルロース
24
リグニン
その他
元 素
成
分(wt%)
孟宗竹
真竹
K
0.85
0.76
14
Si
0.62
0.34
13
Na
0.01
0.01
Ca
0.05
0.04
Mg
0.14
0.06
Fe
0.01
0.01
Mn
0.05
0.01
Ge
<0.05
<0.05
(注)出展:内村悦三、竹炭・竹酢液の利用事典、創森社(1999)
■発酵飼料
竹の枝葉部分は、5mm以下に微粉砕してそのまま家畜の敷料として使用出来ます。吸水性
やアンモニア臭の吸着性が大きく、保温効果なども他の敷料と比較して優れています。
当社は、「平成24年度ものづくり中小企業・小規模事業者試作開発等支援事業」により、竹の
枝葉粉に糖分と乳酸菌を添加し、主として乳酸発酵をさせることにより、アルコール分の少ない発
酵飼料を開発しました(図20.~23.参照)。本技術開発に当たり、広島工業大学(発酵メカニズ
ムの基礎研究)および広島県立総合技術研究所畜産技術センター(試作飼料の連続給与試験)
の技術支援を得て、現在乳牛や肉牛向けの安定した飼料品質の確保と量産化を目指した事業化
を進めています(図24.~25.参照)。整腸作用に優れており、子牛に対しては柔らかい便の改
善効果があります。
図20.原料の小枝・葉
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図21.微粉砕した小枝・葉
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発酵飼料
図22.発酵飼料
図24.畜産技術センター畜産牛
図23.フレコン入り発酵飼料
図25.竹発酵飼料の給与試験
■廃牡蠣筏
広島県全体の牡蠣筏数は約13,000基で、その平均寿命は約4年です。そこで、年間約28
千トンの廃竹材が発生しています。これらの一部しか一般廃棄物として適正に焼却処理されてい
ません。そこで、未利用資源としての有効利用の検討が進められています。
廃牡蠣筏は、漁港に曳航されてバックフォーなどで陸揚げされます(図26.および27.参照)。
牡蠣筏には発泡スチロール製フロート(図28.参照)が配設されているため、竹材は海面上に浮
いています。その結果、竹材に海水が付着しても雨水で簡単に洗浄され、塩素分の含有量は生
竹とほとんど同じ状態です(表3.参照)。
図26.廃牡蠣筏の陸揚げ
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図27.廃牡蠣筏の竹材
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そこで、この廃牡蛎筏竹材は粉砕処理して燃料や炭化物(図29.参照)としての有効利用が可
能です。現在、漁業協同組合が共同でリサイクル事業の計画を進めています。
表3.竹材の分析値
項
目
工業分析(wt%)
生
竹
廃牡蛎筏の竹
水分
40
8
C
50
48
元素分析
H
6
6
(wt%)
O
43
44
(注)
N
0.3
0.2
Cl
0.2
0.2
(注)乾量基準
図28.牡蠣筏用発泡スチロール製フロート
図29.廃牡蠣筏竹材の炭化物
◆バンブー・ファインケミカルズ・リファイナリーの構築
竹を原料として事業性を向上させるために、高付加価値製品の開発(ファインケミカル化)が進
められています(図30.参照)。
日本国内で安定供給が期待できるバイオマス資源としての「竹資源利活用」には、以下の特長
と課題があります。
1)特長
①竹の生育速度は木材に比較して速く、生産性が高い
・筍が発生してから50~60日でほぼ成長が止まり、その後は枝葉がひろがり3~5年で
成竹になり、寿命は10~20年ほどで立枯れていきます。
(参考)木材は、20~30年かかって成木になります。
②竹の生育地域は全世界に拡がっており、広域連携による原料安定供給システムの構築が
可能です(図31.参照)。
③竹は特異な化学組成の成分を含んでおり、ファインケミカル原料としての技術開発が期待
できます。
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ファインケミカル
ケミカル素材
竹繊維・PP
ペレット
竹表皮
セルロース
超臨界抽出物
リグニン
カーボン
レーヨン
インジェクション部品
ナノファイバー
図30.バンブー・ファインケミカルズの例
図31.世界の竹の天然分布と生育型
(注)出展:内村悦三、竹の魅力と活用、創森社(2004)
2)課題
①現状では、竹を原料として大量使用する工業化は難しい。
・1960年代に山口県萩市で稼働していた製紙工場(15t/日)は、原料の安定供給がで
きなくなり休止しました。
・竹林所有者が小規模農家で、竹林の大半は放置竹林です。
②広域連携による原料安定供給システムの構築が必要
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・中空構造の竹材輸送コスト対策が重要です。
・安定供給と品質管理システムが重要です。
そこで、産学官の協力による広域連携システムの構築を推進しています(図32.参照)。
図32.バンブー・ファインケミカルズ・リファイナリー(案)
「バンブー・ファインケミカルズ・リファイナリー」事業化の推進により、国内の広域にわたる未利
用地域資源活用が進展し、過疎地の活性化、新規人材活用の促進、先端技術のローテク産業
への適用、海外との連携など、新産業創出による多くの波及効果で「地球を笑顔に」する一助と
なることが期待されています。
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著者プロフィール
昭和 48 年 三菱重工(株)入社
広島研究所所属
平成 15 年 菱明技研(株) 移籍
同年 4 月より(社)中国地域ニュービジネス協議会
(現在は(一社)中国地域ニュービジネス協議会)
チーフコーディネーターとして活動中
■趣味 観世流能楽
(広島市能楽愛好者連盟理事)
『地球を笑顔に!』は、2007年4月から隔月で連載してまいりましたが、今
号で連載を終了いたします。
竹内様には、8年にわたり、多くの企業を取材いただきご寄稿いただきました。
長い間本当にありがとうございました。
このコーナーを楽しみにされている読者の方も多くおられると思いますが、今後
は不定期で登場いたしますので、引き続き旬レポ中国地域をご覧いただければ幸
いです。
経済産業省 中国経済産業局 広報誌
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2015 年 2 月号
Copyright 2015 Chugoku Bureau of Economy , Trade and Industry.
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