新規バイオマーカーの探索 ─マイクロ RNA・腸内細菌叢に基づく新しい健康指標─ 竹山 春子 早稲田大学先進理工学部、生命医科学科 教授 専門 略歴 マリンバイオテクノロジー メタゲノム 一細胞解析 1991 年 1992 年 1994 年 1999 年 2005 年 2007 年 マイアミ大学 海洋研究所 研究員 東京農工大学 工学研究科 物質生物工学専攻 博士過程(工学) 修了 東京農工大学 工学部 物質生物工学科 助手 東京農工大学 工学部 物質生物工学科 助教授 東京農工大学 工学部 物質生物工学科 教授 早稲田大学 先進理工学部生命医科学科 教授 本研究では、時間栄養と時間運動の相乗効果を解明するに当たり、血中 miRNA や腸内細菌などの新しい 指標を対象として、食・運動と関連したそのリズム性を明らかにすることを目的としている。血中 miRNA は、がん等の疾病にともなって血液中でその量や種類が変動することが明らかになっており、新しい疾病マ ーカーとして近年注目が集まっている。 この miRNA の量・種が、運動・脳機能や食生活等と関連して、中 高齢者においてどのように時間変動するか追跡することで、その中から中高齢者の健康状況を評価する新規 miRNA マーカーを探索する。また、腸内細菌は食生活によって変動し、腸内環境は免疫機能や脳機能に関わ ることがわかっている。本研究では、運動・脳機能を測定した中高齢者の腸内細菌叢と腸内の有機酸成分を 解析することで、食・運動・時間と関連した腸内環境の変動を明らかにする。機能性成分食品と合わせて時 間栄養・時間運動を取り入れることで、中高齢者の腸内細菌叢と細菌が作り出す有機酸組成がどのように変 動するかを検証し、腸内環境の観点からその相乗効果を評価する。これまでの研究として、まず初めに腸内 環境の時間変動の評価法を確立するために、明暗周期においたマウスを対象として腸内細菌叢の時間変動を 追跡した。朝・昼・夕・深夜にマウス糞便を定期採取し、抽出した DNA 中の 16S rDNA の遺伝子配列を次 世代シーケンサーで解析することで、その菌叢プロファイルの時間的変化を解析した。この結果、単一マウ スにおける腸内細菌叢の時間変動とそのリズム性が明らかになり、非活動期は乳酸菌が活発である可能性が 示唆された。今後は、中高年 齢者を対象に、健康・体力・ 脳機能に及ぼす影響に関する 遺伝素因に加え、食生活、運 動習慣などのライフスタイル 要因の情報を合わせて統合的 に解析しその関連性について 評価を進める。 20
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