3.3.2 水質調査結果 (1) 曳航観測結果 曳航観測概要を表 11 に示す。また、水質調査地点および座標を図 67 に示す。 水質調査の曳航観測は口之津(長崎県)∼天草(熊本県)の計 9 地点で流向・流速調査と同時 に実施した。起点を口之津、終点を天草として一方向のみで曳航観測を実施した。曳航観測 は 3 時間間隔で計 9 回実施した。 大潮期、中潮期、小潮期の干潮時、満潮時、上げ潮時、下げ潮時の水質調査結果をそれぞ れ図 68∼図 73 に示す。 水温、塩分ともに躍層は形成されず、表層から下層まで一様な傾向を示した。同様に蛍光 強度と濁度についても表層から下層まで一様な傾向を示した。 表 11 曳航観測概要 潮回り 調査日(2011 年) 初回曳航開始時間 最終曳航開始時間 大潮期 2/16 9:00 2/17 9:00 中潮期 2/21 9:00 2/22 9:00 小潮期 2/24 9:00 2/25 9:00 有明海湾口 島原半島 地点 E1 E2 E3 E4 E5 E6 E7 E8 E9 天草 6km 図 67 水質調査地点および座標 - 62 - 緯度 32.587464 32.583461 32.579457 32.575453 32.57145 32.567446 32.563443 32.559439 32.555435 経度 130.177214 130.177275 130.177336 130.177397 130.177459 130.17752 130.177581 130.177642 130.177703 2/17 0:00 口之津 天草 2/17 0:00 口之津 天草 2/17 3:00 口之津 天草 2/17 3:00 口之津 天草 2/17 6:00 口之津 天草 2/17 6:00 口之津 天草 2/17 9:00 口之津 天草 2/17 9:00 口之津 天草 5 潮位(m) 4 3 2 凡例 :水温(℃) 1 0 9:00 2/17 15:00 21:00 3:00 :塩分 9:00 図 68 大潮期の水温調査結果(左図:水温、右図:塩分) - 63 - 2/17 0:00 口之津 天草 2/17 0:00 口之津 天草 2/17 3:00 口之津 天草 2/17 3:00 口之津 天草 2/17 6:00 口之津 天草 2/17 6:00 口之津 天草 2/17 9:00 口之津 天草 2/17 9:00 口之津 天草 5 潮位(m) 4 3 2 凡例 :蛍光強度 1 0 9:00 2/17 15:00 21:00 3:00 :濁度(FTU) 9:00 図 69 大潮期の水質調査結果(左図:蛍光強度、右図:濁度) - 64 - 2/22 0:00 口之津 天草 2/22 0:00 口之津 天草 2/22 3:00 口之津 天草 2/22 3:00 口之津 天草 2/22 6:00 口之津 天草 2/22 6:00 口之津 天草 2/22 9:00 口之津 天草 2/22 9:00 口之津 天草 5 潮位(m) 4 3 2 凡例 1 0 9:00 :水温(℃) 2/22 :塩分 15:00 21:00 3:00 9:00 図 70 中潮期の水質調査結果(左図:水温、右図:塩分) - 65 - 2/22 0:00 口之津 天草 2/22 0:00 口之津 天草 2/22 3:00 口之津 天草 2/22 3:00 口之津 天草 2/22 6:00 口之津 天草 2/22 6:00 口之津 天草 2/22 9:00 口之津 天草 2/22 9:00 口之津 天草 5 潮位(m) 4 3 2 凡例 1 0 9:00 :蛍光強度 2/22 :濁度(FTU) 15:00 21:00 3:00 9:00 図 71 中潮期の塩分調査結果(左図:蛍光強度、右図:濁度) - 66 - 2/25 0:00 口之津 天草 2/25 0:00 口之津 天草 2/25 3:00 口之津 天草 2/25 3:00 口之津 天草 2/25 6:00 口之津 天草 2/25 6:00 口之津 天草 2/25 9:00 口之津 天草 2/25 9:00 口之津 天草 5 潮位(m) 4 3 2 凡例 1 0 9:00 :水温(℃) 2/25 :塩分 15:00 21:00 3:00 9:00 図 72 小潮期の塩分調査結果(左図:水温、右図:塩分) - 67 - 2/25 0:00 口之津 天草 2/25 0:00 口之津 天草 2/25 3:00 口之津 天草 2/25 3:00 口之津 天草 2/25 6:00 口之津 天草 2/25 6:00 口之津 天草 2/25 9:00 口之津 天草 2/25 9:00 口之津 天草 5 潮位(m) 4 3 2 凡例 :蛍光強度 1 0 9:00 2/25 :濁度(FTU) 15:00 21:00 3:00 9:00 図 73 小潮期の水温調査結果(左図:蛍光強度、右図:濁度) - 68 - (2) 定点観測結果 1) ADCP 設置地点付近の水質調査 ADCP 設置地点付近の水質調査概要を表 12 に示す。平成 23 年 2 月 8 日から平成 23 年 3 月 11 日の ADCP 設置期間中のうち荒天時を除く 27 日間で、橘湾内にある ADCP 設置地点付近で 水質調査を実施した。 小潮期、中潮期、大潮期の水質結果を図 74 に示す。水温、塩分ともに躍層は形成されず、 表層から下層まで一様な水質状況であった。水温は 10∼12℃程度で推移し、塩分は 33 程度 を推移した。 表 12 ADCP 設置地点付近の水質調査概要 潮回り 調査日(2011 年) 潮回り 調査日(2011 年) 潮回り 調査日(2011 年) 中潮期 2/8 大潮期 2/19 中潮期 3/2 小潮期 2/9 中潮期 2/20 大潮期 3/3 小潮期 2/10 中潮期 2/23 大潮期 3/4 小潮期 2/11 小潮期 2/24 大潮期 3/5 若潮期 2/13 小潮期 2/25 大潮期 3/6 中潮期 2/14 小潮期 2/26 中潮期 3/7 中潮期 2/15 長潮期 2/27 中潮期 3/9 大潮期 2/16 若潮期 2/28 中潮期 3/10 大潮期 2/17 中潮期 3/1 小潮期 3/11 10 20 30 0 40 10 20 30 0 40 0 0 4 4 4 8 8 8 12 16 水温(℃) 20 塩分(-) 図 74 水深(m) 0 水深(m) 水深(m) 0 12 10 20 30 12 16 16 2/10 2/14 3/4 20 20 ADCP 設置地点付近の水質調査結果(左:小潮期、中:中潮期、右:大潮期) - 69 - 40 2) 養殖生簀周辺の水質調査 養殖生簀周辺の水質調査概要を表 13 に示す。平成 23 年 2 月 8 日から平成 23 年 3 月 11 日 の ADCP 設置期間中のうち 9 日間で、橘湾内にある千々石町養殖生簀周辺、小浜町養殖生簀周 辺、南串山町養殖生簀周辺で水質調査を実施した。 小潮期、中潮期、大潮期の水質結果をそれぞれ図 75∼図 77 に示す。千々石町養殖生簀周 辺、小浜町養殖生簀周辺、南串山町養殖生簀周辺で水質状況に違いは確認されなかった。水 温、塩分ともに躍層は形成されず、表層から下層まで一様な水質状況であった。 潮回り 調査日(2011 年) 小潮期 2/10 中潮期 2/14 大潮期 2/18 中潮期 2/22 小潮期 2/25 長潮期 2/27 大潮期 3/4 中潮期 3/7 中潮期 3/10 千々石町 小浜町 南串山町 0 10 20 30 40 0 10 20 30 40 0 10 20 30 40 0 0 10 10 10 20 30 水深(m) 0 水深(m) 水深(m) 表 13 養殖生簀周辺の水質調査概要 20 20 30 30 40 40 水温(℃) 塩分(-) 蛍光強度(-) 40 濁度(-) 図 75 養殖生簀周辺の水質調査結果(平成 23 年 2 月 10 日:小潮期) - 70 - 小浜町 南串山町 0 10 20 30 40 0 10 20 30 40 0 10 20 30 40 0 0 10 10 10 20 30 水深(m) 0 水深(m) 水深(m) 千々石町 20 20 30 30 40 40 水温(℃) 塩分(-) 蛍光強度(-) 40 濁度(-) 千々石町 小浜町 南串山町 0 10 20 30 40 0 10 20 30 40 0 10 20 30 40 0 0 10 10 10 20 30 水深(m) 0 水深(m) 水深(m) 図 76 養殖生簀周辺の水質調査結果(平成 23 年 2 月 14 日:中潮期) 20 20 30 30 40 40 水温(℃) 塩分(-) 蛍光強度(-) 40 濁度(-) 図 77 養殖生簀周辺の水質調査結果(平成 23 年 3 月 4 日:大潮期) - 71 - 4. まとめ シストの分布状況の経年変化を表 141)に示す。 平成 3、5 年のシストの分布状況図をそれぞれ図 781)、図 791)に示す。 平成 3 年 5 月のシストの分布状況を見ると(図 78)、島原半島沿岸においては国見町地先で 9.5∼30.3 cells/cm3、深江町地先で 9.1 cells/cm3、口之津港内で 25.2 cells/cm3 のシスト が確認されたが、それ以外の地点ではシストが確認されていない。橘湾は 30 地点中 24 地点 からシストが確認されており、特に、橘湾奥部と長崎市戸石から野母崎町脇岬に至る長崎半 島沿いの沿岸部でシストが多く確認されている。平成 5 年 4,5 月のシストの分布状況を見る と(図 79)、橘湾奥部と戸石町地先で 13.9∼32.6 cells/cm3 のシストが確認されている。平 成 3 年と比較するとシストの密度は異なるが、全体の分布状況の傾向は類似している。 さらに過年度(平成 11∼20 年)の結果からも島原半島沿岸は少ない傾向にあり、橘湾内では 数量的にも、分布の範囲でも島原半島沿岸より多く、かつ広範囲に分布している(表 14)。た だし、島原半島沿岸の口之津港内や諫早湾では 10 cells/湿泥 g 以上のシストが確認されて いる。上記のように、有明海および橘湾では、橘湾内、諫早湾、口之津港内でシストが多く 確認されている。 水産総合研究センター 瀬戸内海区水産研究所の報告によると、シストの分布に影響を与え る要因として、①海流による影響(微細な粒子がたまりやすい場所)、②栄養細胞の出現状況 (過去の赤潮の発生場所や規模)とある 2)。 本年度の底質調査の結果より、橘湾、口之津港内は、シルト分が多い底質環境であり、微 細な粒子が堆積しやすい海域であると推察される。また、同海域はシャトネラ赤潮による漁 業被害があり、栄養細胞の出現が多い海域である。さらに流向・流速調査より、橘湾の湾口 である国崎半島地先では表層、中層、底層ともに橘湾内の小浜方面に流れ込む結果が得られ た(図 66)。赤潮の被害状況時期からも、南串山、小浜、千々石の順に漁業被害が確認されて おり(橘湾東部漁業協同組合からのヒアリング)、夏季の赤潮発生時期においても橘湾の湾口 である国東半島地先から小浜方面に流れ込む海流があると推察される。 このように橘湾は海流による影響で栄養細胞が出現する海域であり、それに伴うシストの 底泥への供給も示唆されることから、夏季赤潮発生時の底質、水質、流況を定期的にモニタ リングする必要がある。 - 72 - 表 14 シスト分布状況の経年変化 調査年 調査月 定点数 シ 密 ス 度 ト 橘 湾 cells/cm 3 0 0.1∼9.9 10∼50 50∼100 3 10cells/cm 以上の地点 :数値は最大シスト密度 有 明 海 諫 早 湾 シ 密 ス 度 ト cells/cm 3 0 0.1∼9.9 10∼50 50∼100 10cells/cm3以上の地点 :数値は最大シスト密度 シ 密 ス 度 ト cells/cm 3 0 0.1∼9.9 10∼50 50∼100 10cells/cm3以上の地点 :数値は最大シスト密度 西暦 調査月 定点数 橘 湾 シ ス ト 数 cells/湿泥g 0 0.1∼9.9 10∼50 50∼100 10cells/湿泥g以上の地点 :数値は最大シスト数 有 明 海 諫 早 湾 シ ス ト 数 cells/湿泥g 0 0.1∼9.9 10∼50 50∼100 10cells/湿泥g以上の地点 :数値は最大シスト数 シ ス ト 数 cells/湿泥g 0 0.1∼9.9 10∼50 50∼100 10cells/湿泥g以上の地点 :数値は最大シスト数 西暦 調査月 定点数 橘 湾 シ ス ト 数 cells/湿泥g 平成3年 5月 42 平成5年 4,5月 15 6 5 8 11 2 7 5 ・橘湾内 ・長崎半島沿岸:89.4 8 1 1 ・口之津港内:25.2 平成9年 9,10月 18 平成10年 - 平成23年 1,2月 10 2 3 2 ・橘湾内 ・戸石町地先:32.6 ・為石町地先:16.0 - ・橘湾内:23.6 3 1 - - - - 1 1 ・国見町地先:30.3 ・瑞穂町地先:27.8 ・諫早湾:49.0 平成11年 2月 36 平成12年 1月 37 平成13年 4月 18 平成14年 12月 18 平成15年 11月 18 15 6 14 2 2 7 2 6 1 7 2 - - - 9 3 13 4 1 5 1 3 - ・橘湾内:13.0 5 1 ・口之津港内:11.0 1 2 2 1 ・口之津港内:11.0 1 2 3 2 1 ・島原市地先:15.5 1 2 - - - 平成18年 3月 4 平成19年 3月 7 平成20年 3月 6 2 4 4 2 1 1 4 1 - - ・国見町地先:13.0 平成16年 11月 9 平成17年 11月 8 5 1 6 - - 0 0.1∼9.9 10∼50 50∼100 10cells/湿泥g以上の地点 :数値は最大シスト数 有 明 海 諫 早 湾 シ ス ト 数 cells/湿泥g 0 0.1∼9.9 10∼50 50∼100 10cells/湿泥g以上の地点 :数値は最大シスト数 シ ス ト 数 cells/湿泥g 0 0.1∼9.9 10∼50 50∼100 10cells/湿泥g以上の地点 :数値は最大シスト数 2 1 ・瑞穂町地先:12.3 - 73 - ・瑞穂町地先:30.8 ・瑞穂町地先:25.0 平成 3 年 5 月調査実施 図 78 平成 3 年 5 月のシストの分布状況図(シスト密度(cells/cm3)) 平成 5 年 4,5 月調査実施 3.1 図 79 平成 5 年 4,5 月のシストの分布状況図(シスト密度(cells/cm3)) - 74 - 5. 今後の課題 今後の課題を以下に示す。 ・ 夏季赤潮発生時期の栄養細胞の発生状況、それに伴うシストの供給量を把握し、赤潮の 発生を予測する基礎資料を得ることが必要である。 ・ 躍層が形成される夏季赤潮発生時期の水質状況を把握し、生簀の避難等の漁業被害の防 止策に寄与する基礎資料を得ることが必要である。 ・ 躍層が形成される夏季赤潮発生時期の流況・流速を把握し、生簀の避難等の漁業被害防 止策に寄与する基礎資料を得ることが必要である。 《参考文献》 1)シャットネラ赤潮予測調査事業報告書(平成 3,5,9∼20 年度) 長崎県 2)有明海における有害プランクトン休眠期細胞の分布状況 水産総合研究センター 瀬戸内海 区水産研究所 赤潮環境部 - 75 -
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