「みらい」マルチビーム音響測深装置(SeaBeam3012)の紹介

マルマラ海における長期海底地震観測
○高橋成実・チタクセチキン・山本揚二朗・利根川貴志・尾鼻浩一郎(海洋研究開発機構 地震津波海
域観測研究開発センター)
・汐見勝彦(防災科学技術研究所)・内田直希(東北大学)
・
金田義行(名古屋大学)
トルコ国内にはプレート境界でもある北アナトリア断層が東西に走っており、この断層による大地
震により歴史的に大きな被害を近隣住民にもたらしてきた。陸上の地震研究やトレンチ研究を通じて、
トルコでは東から順にマグニチュード 6-7 クラスの大地震が発生し、ここ 300 年間で地震が発生して
いない地域は、首都イスタンブールの南沖のマルマラ海であることが知られている。そこで、断層の
分布を明らかにし、シミュレーション研究を通じて地震の発生パターンをモデリングし、建物を含め
た構造物への被害を想定、啓発活動等の防災教育を通じて被害軽減を図る新しいプロジェクト研究が
平成 23 年より始まった。これは、SATREPS 課題「マルマラ海域の地震・津波災害軽減とトルコの防災
教育」として 5 年の計画で進めている。本講演は、この課題のうち、断層の分布や特性を明らかにす
る地震学的研究の部分を紹介する。
トルコ国内には強震計や広帯域地震計による定常的な陸域地震観測網が整備されている。これらの
観測点による地震観測から、マルマラ海海域では 3 つのセグメントに分かれていること、地震発生帯
は 25 ㎞以浅で発生していることがわかっている。しかしながら、海域には継続的に稼働している観測
点が存在せず、特に海岸線から断層が比較的離れている海域では微小地震が十分観測されておらず、
また震源分布も十分に把握しきれていない。そのため、この SATREPS 課題を通じて、日本の海底地震
計を 10 台作成してトルコ側に譲渡し、加えて日本から 5 台の海底地震計を持ち込み、計 15 台の海底
地震計を用いてマルマラ海の中央部から西部に至る海域の地震観測を行うこととした。
トルコ国内ではフランスやドイツとの共同研究でマルマラ海東部の震源分布を求め、断層沿いの固
着領域を同定しているが、トルコが主体の海底地震観測は継続的には実施されていなかった。本課題
では、日本の海底地震計測器のみならず、海底観測技術やそのノウハウもトルコ側に譲渡する。海底
地震観測の体制も十分ではないため、地震観測作業の簡便化も必要である。微小地震を漏らさず検知
して、精度の高い長期観測をすること、運用資金を抑えることができること、可能な限り海底地震計
の観測設定などは自動化することが求められる。これらのことから、今回製作した海底地震計は、日
本海洋事業株式会社製 OBS2GL を採用した。この海底地震計をベースに 17 インチのガラス球に充電型
のリチウムイオン電池を設置し、10 か月から 1 年間の 100Hz の連続観測を可能にした。海底地震計内
には、バッテリーの他、センサーやレコーダー、トランスポンダーやフラッシャー、ビーコンも組み
込んであるため、メンテナンスすべき箇所が少ない。記録されたデータもガラス球のペネトレーター
を介して、データを回収することができる。この海底地震計では、ガラス球を空けることなく充電と
データ回収が行える。
2014 年 3 月から約 3 か月間、3 台の海底地震計を用いた試験観測を実施した。その結果、やはり陸
上観測点で観測可能な地震よりも、精度の高い震源決定が可能になった。同 9 月からは第 1 フェーズ
として、本格的な地震観測を開始した。本年の 7 月に回収し、充電とデータ回収を終えたら、直ちに
第 2 フェーズの次の 1 年観測を実施する。今後、これらのデータから傾斜や最大深度等も含めた断層
分布や速度構造を把握し、応力分布の時間変化を探り、シミュレーション研究に必要な断層モデルを
提供する。