インターネット時代の“外国イメージ形成プロセス” の国際比較(日米韓) ∼テレビ受容の変化を中心に考察∼ ICFP(International Communication Flow Project) 国際コミュニケーション・フロー研究プロジェクト 代表研究者 杉 山 明 子 東京女子大学教授 共同研究者 櫻 井 武 武蔵工業大学教授 〃 渡 辺 光 一 駒沢女子大学教授 〃 前 田 隆 子 カリタス女子短期大学専任講師 〃 原 由美子 NHK放送文化研究所主任研究員 〃 川 竹 和 夫 静岡英和学院女子短期大学非常勤講師 〃 N.E.シノディノス 〃 イ・ジヨン 韓国周徳大学校専任講師 協力団体 ハワイ大学東西センター研究員 NHK放送文化研究所 目 的 ICFPでは、過去20年間、テレビを中心とする マスメディアの国際流通の状況を調査、併せてメ ディア経由の“外国イメージ”の形成過程(メデ 存、オンラインでアクセス、コーディング した。 d)日米韓の、対象国ごとの(6グループ)デー タを集計、比較分析した(2001年1−3月) 。 e)各ホームページについて、コーダー(複数) ィア・ステレオタイピング)について研究を進め の自由記述により、“相手国イメージの状 てきた。しかし、20世紀末からインターネットの 況” “そのステレオタイプ”を調査した。 世界規模での普及が進み、“外国情報の入手メデ ィア”として 重要な位置を占めるようになって (2) テレビの中の相互イメージの分析 きたので、これに対応して“インターネット経由 a)ICFPで過去に行った、“テレビイメージ比 で得られる外国イメージ”の状況を、日米韓の相 較研究”の中から、日米韓相互イメージに 互イメージに例をとって調査し、テレビとの比較 関する部分を抽出、そのステレオタイプを で、どのような変化が起きているか、を把握しよ うと試みたものである。 方 法 (1) インターネット (ホームページ) の内容分析 検証した。 b )日 本 に お け る 韓 国 関 連 番 組 に つ い て は 、 2001年2−3月放送の番組を収録、専門調 査員(大学生=日本人、韓国人15人)によ って“イメージ調査”を実施した。 a)サーチエンジンとして、Google.comを選び、 ホームページ検索実施。 b)日米韓それぞれ対象国ごとに、上位200項 目をサンプルとした(Googleはアクセス頻 度により順位をつけている) c)各国ごとに、ホームページをファイルに保 (3)上記の結果をもとに、インターネット情報 とテレビ番組とのイメージ効果の分析を行った。 結 果 (1) ホームページ内容分析(日本=U/J、K/J 1 U/J K/J J/U K/U J/K U/K 旅行 食 情報 経済 教育 教育 2 教育 情報 文化 政治 旅行 ニュース 3 買物情報 買物情報 経済 情報 娯楽 情報 4 ニュース 旅行 教育 旅行 ニュース 旅行 5 食 ニュース 政治 ニュース 情報 経済 表1 米国=J/U、K/U 韓国=J/K、U/K) (2) テレビ番組 a)情報作成国・・・・自国製作は、韓国語 日本のテレビの中の韓国関連番組(2001年2-3 HP=約90%、日本語HP=約60%だが米国 月)について、内容分析、イメージ調査を行った HPは、ほとんど対象国でつくられている。 結果は次のとおり。 b)目的・・・・3国にほとんど差はない。 a)番組種別では、「バラエティ(35%)」「ド (1)広報 (2)商売 (3)記録 キュメンタリ(30%) 」の比率が高い。 (4)ニュース (5)学術 である。 c)内容カテゴリー・・・・表1のとおり。韓 国語HPでは教育が圧倒的に多い。 d)好意度・・・・“非好意的表現”はゼロ。 “好意的表現”は、J/U, K/Uに多い。 e)イメージのステレオタイプ表現・・・・ ○3国とも、国イメージを強調する表現は b)カテゴリーでは「社会」 「文化」「料理」が 多く、 「政治」 「経済」を扱うものは少い。 c)「好意度」の評価(5段階評価。3以上は プラス)では、 ○ 日本人の評価では、90%が「プラス」 ○ 韓国人の評価でも、65%が「プラス」 特に好意度の高かったものは、『映画・シ それほど多くない。 ュリ』 『ドラマ・もう一度キス』『バラエテ ○画像による表現では、インデックスペー ィ・暮らしで分かった韓国の魅力』などで ジで、ステレオタイプ的画像を用いている ある。 例が目立つ。 U/J・・・星条旗・自由の女神・コカコーラ U/K・・・星条旗・自由の女神・アメリカン フットボール K/J・・・国旗・キムチ・民族衣装・お面 K/U・・・民族衣装・瓦屋根・サムルノリ・ ワールドカップサッカー (3)インターネット情報とテレビ番組の比較 数量的な結果を導き出すには至らなかったが、 それぞれの素材、データをもとに集団討議を数回 行った結果、概略、次のような点が指摘された。 a)インターネット情報は、知識情報の比率が 高く、イメージ効果は小さい。 J/U・・・桜・富士山・浮世絵・寺・すもう b)インターネット情報は、実用的なものが多 J/K・・・日の丸・きもの・よろいかぶと・ く、ネガティブ・ポジティブの比較対象に 新幹線 なるものは少ない。 c)オンデマンドの情報では、インターネット ○ 文章では、観光・旅行・買物情報に関 の効果大で、テレビはあまり期待されてい するセールストークが多く見られるが、ス ない。 テレオタイプ的表現はあまり多くない。 d)外国・外国人のステレオタイプ表現は、質 量ともにテレビ的なもののようである。 参考文献 1) 川竹和夫・杉山明子ら編、『外国メディアの 日本イメージ』 、学文社、2000年 2) 川竹和夫・杉山明子編、『メディアの伝える 外国イメージ』 、圭文社、1996年 連絡先 杉山明子 E-mail:[email protected] 川竹和夫 E-mail:[email protected]
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