Ⅷ.ノルウェーの森林吸収量の算定・報告の情報について I.条約の下での森林吸収量の算定・報告の情報 1 基本事項 森林セクターの重要瀬に鑑み、森林、農地、草地、湿地、開発地、その他の土地のそれぞ れの総面積及びそれらの間の土地利用変化は国家森林調査から得たデータが用いられてい る。 森林は世界森林資源調査(FRA2004)に従って定義されている。樹冠被覆率 10%以上、面積 0.5ha 以上、成木で5m以上。林帯幅に最小値を設けていない点が FRA2004 と若干異なっ てる。林業目的の若い天然林と全ての人工造林地、そして、伐採により一時的に裸地とな っている土地も森林に含まれる。レクリエーション利用林、保安林、自然保護林を含めて 全ての森林は管理経営されているとみなされる。ノルウェーでは全ての森林が、木材生産、 狩猟、イチゴ狩り、ハイキング等々の何らかしらの形で国民に利用されている。 表 NOR. 1 1990 年と 2008 年の土地利用区分 (ha) この表で “Other”(その他)に区分される土地は、現在まで排出・吸収量報告の対象外とな っているが、この区分内には北部(Finmark)地域や針葉樹林限界より海抜の高い地域の 森林が多く含まれており、下表のような土地利用の見直しが必要と見込まれる。現在「そ の他」に区分されている土地のうち森林など他の利用区分の可能性がある土地については、 2012 年報告から排出・吸収量報告の対象となる見込み。 (注:土地利用転用マトリックス表は報告されていない) ― 155 ― 表 NOR. 2 「その他」区分のうち森林など他の土地利用区分の可能性がある土地の試算 (転用のない土地と転用された土地の把握方法) 土地利用変化に関する基礎データとしては、国家森林調査(National forest inventory, NFI) のデータを主要な情報源として用い、農業センサスなども補完的に活用している。NFI で は、全国 17,000 箇所に 3×3 km 格子で設置された固定調査区を毎年 20%ずつ5年周期で 調査し、土地利用状況、樹種、立木本数、成長量、バイオマス量などのデータを調査して いる。この体系が確立した 1998 年以降は年度毎の調査数値があるが、それまでは線形補完 を行って算定したため年変化量は一定値となっている。2008 年以降の NIR では、5年の調 査サイクルの最終年のデータによるため、土地利用変化が生じた年が明確になり、年度ご との数値が後で変わることもなくなった。 転用された森林に関しては、1970 年時点では、森林調査が国土全体を網羅しておらず、土 地利用変化を把握する目的でも実施されていなかったこと、1986 年以前に固定プロットの データがないこと、またこの期間に全森林の面積に変化が少ないことなどから、1990 年以 前の転用は算定に入れないこととした。 (下位区分) 国家森林調査(National forest inventory, NFI)における土地被覆と土地利用の調査区分 及びその UNFCCC/KP の土地利用区分との対応は次表のとおりである。 ― 156 ― 表 NOR.3 NFI の土地被覆・土地利用調査区分と UNFCCC/KP 土地利用区分との対応 (森林面積統計の主なものの調査方法) 土地利用変化に関する基礎データとしては、国家森林調査(National forest inventory, NFI) のデータを主要な情報源として用い、農業センサスなども補完的に活用している。NFI で は、全国 17,000 箇所に 3×3 km 格子で設置された固定調査区を毎年 20%ずつ5年周期で 調査し、土地利用状況、樹種、立木本数、成長量、バイオマス量などのデータを調査して いる。この体系が確立した 1998 年以降は年度毎の調査数値があるが、それまでは線形補完 を行って算定したため年変化量は一定値となっている。2008 年以降の NIR では、5年の調 査サイクルの最終年のデータによるため、土地利用変化が生じた年が明確になり、年度ご との数値が後で変わることもなくなった。 ― 157 ― 2 吸収量 森林吸収量の経年変化 CO2 equivalent (Gg ) CO2 GHG 合計 1990 -14,105.76 -14,091.14 1995 -13,388.63 -13,375.25 2000 -15,234.87 -15,221.85 2005 -28,893.09 -28,879.73 2006 -29,300.07 -29,279.89 2007 -30,270.97 -30,258.31 2008 -31,116.14 -31,097.05 2.1 転用のない森林 2.1.1 カテゴリーの説明 ノルウェーで森林はバイオマス蓄積に関し最も重要な土地利用区分である。Tier2 のキーカ テゴリー分析によれば、この区分は、水準と傾向の不確実性のため、生体バイオマス、枯 死バイオマス、土壌(鉱物質及び排水有機質の)内の蓄積についてキーカテゴリーとされ る。 2.1.2 方法論 2.1.2.1 転用のない森林における生体バイオマスの炭素ストック変化量 生体バイオマス内の炭素蓄積変化の計算方法は IPCC(2003)の Tier 3 に従っており7、NFI データとバイオマス変化推定モデルとを結合させた方法である。森林の全バイオマス量の 計算は、スウェーデンで開発された計算式8を用い、樹高 1.3m 以上の立木の様々な構成部 分(例えば樹幹、樹皮、生・枯死枝、針葉、切り株、直径が 5cm より大きい根、直径が 5cm より小さい根)のバイオマスを推定するものである。 地上 1.3m での胸高直径が 5cm 以上の全ての立木のバイオマスが個別に継続観察 され、単木のバイオマスを土地利用区分ごとに対応させることができる。地上部 バイオマスは根株(樹高の1%)から上の部分、地下部バイオマスは根株と直径 2mm までの樹根と定義して算定している。 地上部バイオマスは、Marklund (1987,1988)の開発したノルウェートウヒ (Picea abies), スコッチパイン(Pinus sylvestris) 及びカンバ (Betula pubecens)の3樹 7 フィンマーク地方のみ Tier 1 の手法を採用 Marklund, 1988, Petersson and Ståhl, 2006。 Norway spruce (Picea abies), Scots pine (Pinus sylvestris) 及び birch (Betula pubecens)の3樹種の単木についてバイオマス量を 推定する計算式。 8 ― 158 ― 種ごとの相関係数を用いて、NFI 調査データから単木的な算定を行い、樹幹、樹 皮、生・枯死枝、針葉の量を推定した。針葉樹は、この 3 樹種と約1%の他樹種 を含めると立木蓄積の 92%を占める。残りの 8%は主に広葉樹で、これらの広葉樹 の算定にはカンバの相関係数を用いた。 地下部バイオマスは Petersson and Ståhl(2006)の相関係数により単木的に地上 部バイオマスと同様の樹種ごとに算定される。 生体バイオマスは 1990 年の基準年以降、同じ樹種別係数を用い、同じモニタリン グ設計で一貫性を持って算定されている。 現在進行中の第 9 回 NFI 調査が完了する 2010 年以降は、胸高直径 5cm 以下の木 も算入される予定であり、2014 年には国内すべてのバイオマス及び土地利用変化 を報告する計画である。 2.1.2.2 転用のない森林における枯死木・リター・土壌の炭素ストック変化量 枯死有機物及び土壌内の炭素蓄積変化 枯死有機物及び土壌内の炭素蓄積変化の算定は、Liski et al. (2005)が開発し、de Wit et al. (2006)によってノルウェーの実態に適合化された YASSO の動的土壌モデルを用いて算定 した。したがって、この方法は Tier 3 の手法に沿うものである。 現在このモデルにより枯死有機物及び土壌内の炭素量を算定しているのは、転用のない森 林だけである。現行モデルは、その他の土地利用区分あるいは散在的な土地に由来するこ れらの炭素量の算定用には設計されていない。 ― 159 ― 図 NOR 1 Yasso 土壌モデルの炭素の貯蔵庫と流れ このモデルではリター(枯死有機物)発生量の推定と基本的な気象データが必要 であり、リターを物理的な大きさから 2 区分するとともに、土壌を分解及び腐植 化率の異なる 5 つの区分に分けている。リター部分、土壌部分は、それぞれ枯死 有機物、土壌内有機物と見ることができる。このモデルでは現在のパラメーター 化の状況から鉱物質土壌の深さ1mまでの土壌内有機物の算定が可能である。 前掲の Yasso 土壌モデル図に示したように、葉と細根は直接土壌に移入されるが、 その他の木質部は2つのリターに移入された後、腐朽率(exposure rates) a.に従っ て各土壌区分に移入される。腐朽した有機物はその化学構造 c により各土壌区分に 移入される。各土壌区分はそれぞれの分解率 k を持ち、分解された炭素は移行率 p に従って次の土壌区分に移入される。土壌区分間で起こる炭素の移行は図で矢印 p により示す。パラメーターの値は de Wit et al. (2006)の表4を参照されたい。 土壌内炭素量に関する反復調査数値がないため、土壌内有機物とリター移入量が シミュレーションの初年度で安定状態にあると仮定して、土壌内炭素量の初期値 を求めた。de Wit et al. (2006)によれば、当初の土壌炭素プールはその後の年次的 な変化の算定に影響を与えるが、時間経過とともに影響は薄れ、当初の仮置き値 による誤差を最小にする。今回の計算では、1960 年を初年度として、算定値が安 定するまでに 30 年間の期間を置き、1990 年からシミュレーションの結果を用い ― 160 ― た。 採用したパラメーターの値はフィンランド南部とスウェーデン中部の気候を反映 したものである。この条件がシミュレーションの全体を通じて用いられ、気候や 気象の年変化は考慮していない。このモデルはノルウェーの実情に適合している と考える。 Yasso モデルに投入される値は、立木バイオマス由来のリターや枯死木、枯死率 (natural mortality)、林地残材、そして伐採木の根株と伐根の推定量であり、すべ て NFI とノルウェー統計(Statistics Norway)から得られる。1994 年からは枯 死率が毎年記録されている。それ以前は利用可能な枯死木の定期的な登録に基づ いて推定した。林地残材は伐採量の 10%とした(Vestjordet 1968, Bengtson1975)。 バイオマスの乾燥重はリターの種類毎に異なるバイオマス拡大係数(FAO/ ECE 1985 及び Lethonen et al.2004 で示されたノルウェー国内適用値)を用いて算定す る。この係数は林齢により変化するため、平均林齢として(主伐)収穫材は 100 年、(間伐)杭材は 70 年を用いた。幹と枝部分は NFI の実測値を用いるが、細根 と葉部の回転率(turnover rates)は文献による(Table 3 in de Wit et al. 2006)。 炭素蓄積の年次変化は連続する炭素蓄積算定値の変化量として算定される。 モデルでは、入力値は報告対象のすべての森林をカバーしており、鉱物質土壌と 有機質土壌を区別していない。 de Wit et al. (2006)が Yasso モデルを用いてノルウェー南東部の生産林における炭 素収支を計算したところ、算定した炭素密度(Carbon density)は実測値の約 40% であった。この研究での結論としては、初期条件の不確実性の影響の他に、土壌 内炭素を過小評価した原因は、一部は土壌モデル内の有機物の分解率を過大に見 積もったこと、また一部はリターの供給源泉を樹木に限定したこととしている。 有機森林土壌の排水による CO2 の排出量については、国内独自のデータがないた め、IPCC (2003)のデフォルト手法によって算定した。IPCC の「寒冷帯の管理さ れた森林における有機土壌の排水」によるデフォルトの CO2 排出係数、0.16 Mg C/ha/year を用い、排水された森林面積を乗じて算出した。この排水森林面積は 1950 年から 2007 年までの累計が 245.5 万 ha で、有機森林土壌の排水による CO2 の排出は 144 Gg CO2 と算定される。 2.1.3 再計算 2009 年報告と比較すると、20 年手法(土地利用変化後、そのステータスは20年という IPCC のガイダンスにおけるデフォルトの方法)の導入により林木の全バイオマス量及び土 地利用変化の算定方法が改定されたこと、また活動量が更新されたことから、全期間につ いて再計算された。 2008 年には転用のない森林由来の純吸収量は 30 945 Gg CO2 であった。また CH4 と N2O ― 161 ― の排出はそれぞれ 0.29 Gg と 0.04 Gg であった。 2009 年の NIR に関する集中審査でERTは Yasso の動的土壌モデルの適用法について、転 用のない森林に用いたモデルの想定条件や限界など、より包括的な説明を求めたが、今回 の報告でこの要請に対応がなされた。 2.2 2.2.1 他の土地利用から転用された森林 カテゴリーの説明 農地、草地、湿地、開発地、及びその他の土地から転用された森林がこのカテゴリーに含 まれるが、転用のない森林(5A1)がキーカテゴリーであるのに対し、転用された森林(5A2) はもう既にキーカテゴリに含まれない。算定法が変ったため基準年の炭素蓄積はもう算定 されない。 2.2.2 2.2.2.1 方法論 他の土地利用から転用された森林における生体バイオマスの炭素ストック変化量 林木が一定の大きさと樹冠率に達すると、その林分の測定が行われ、Tier 3 の方法で生体バ イオマスが算定されて、その年次変化量が報告される。 2.2.2.2 再計算 林木の全バイオマス量及び土地利用変化の算定方法が改定されたこと、また活動量が更新 されたことから、全期間について再計算された。2008 年には他の土地利用から転用された 森林由来の純吸収量は 171 Gg CO2 であった。このうち湿地から転用されたものが最多で 63 Gg CO2 を占めた。 2.3 不確実性 ノルウェー土地調査部(NIJOS; Norsk Institutt for Jord Og Skogkartlegging)の 2005 年報告によると、非 CO2 ガス及び森林土壌以外の土壌由来の CO2 排出量の不確実性が特 に高いとされる。これらについては活動量データが不確かである。土壌内有機炭素の変化 は拡大率の問題、時系列データや管理データの不足などのため、観測が困難であるが、CO2 以外の GHG ガスの排出量は少ないと言える。また、土地の履歴に関する知見がないことも 問題である。今後さらに測定とモデルの利用を拡大して、精度を高めることが期待できる。 また、森林の定義に該当しない「その他立木地」や、最近まで国家森林調査の対象外であ ったフィンマーク地方に関するデータも不確実性が高い。しかし、これらによる算定値の 変動は少ないと思われ、最大の吸収量をもつ「転用のない森林」の蓄積変化に関するデー タはかなり正確である。 不確実性分析の詳細は付属書 II に示すが、LULUCF を含めた場合、含めない場合より2倍 高い 14%(対期待値)の不確実性を示す。この原因は主に森林バイオマスと草地泥炭土壌 ― 162 ― による。 不確実性が最大となるのは施肥や土壌攪乱から生じる N2O ガスに関するもので、100%よ り大きな不確実性がある。その他農業土壌からの CO2 でも 100%以上の大きな不確実性が ある。石灰施用による CO2 の排出については施用量と成分比により明確に把握できる 2.4 時系列の一貫性 1990 年の報告値は 1986~1993 年の間の従前方式の NFI (国家森林調査) データに基づく。 1998 年以降の報告値は、各年を最終年とする(1994~1998, 1995~1999, 1996~2000 年 等々)5 年サイクルの現行方式の NFI により、同一の固定調査区から得られたデータに基 づき算定されており、標本の変化による変動を減らし、時系列に沿った変化に関して、一 貫性があり検証可能な算定法となっている。また、調査サイクルの最終年に報告すること としているため、いかなる土地利用変化もそれが登録された時に報告され、毎年の報告値 はその後の報告年のデータによって変更されることはない。 1991~1997 年については、NFI から年毎のデータが得られないため、この間の、炭素蓄積、 土地利用及び土地利用変化に関する年次推定値は、1990 年と 1998 年の値から一次間挿法 を用いて求めており、炭素蓄積の年変化算定値は一定である(7.1.2 の Figure 7.6 参照)。 2.5 QA/QC ノルウェー森林景観研究所(Norwegian Forest and Landscape Institute)は、データを確 認し、この調査の方法論の一貫性を確保するため毎年照査を実施し、国全体の報告の一部 として QA/QC 報告を作成している。ノルウェー統計局(Statistics Norway)は各種デー タの時間的な一貫性を検査している。森林景観研究所は LULUCF 分野の排出・吸収計算に 関する全データの記録保管に責任を持ち、統計局は LULUCF と非 LULUCF 分野の整合性 を確保し、両者間で排出・吸収量の2重計上がないよう監視している。 3 3.1 排出カテゴリーの情報 施肥に伴うN2O排出(5Ⅰ) 国内の森林土壌への施肥に関する排出係数は得られないため、Tier 1 でデフォルトの排出係 数に基づく算定を行った。施肥面積の国家統計(Statistics Norway, Forestry Statistics)はあ るが、1990 年が 26km2、2004 年に 7km2 とごく小面積であり、化学肥料・有機肥料の区 別や施肥量は不明である。1995-2005 年の化学肥料の施肥について Statistics Norway(ノ ルウェー統計局)の未出版資料があるため、この期間の施肥面積、施肥量の平均を 1990-1994 年の期間にも適用した。有機肥料は森林施肥には用いないと想定した。また、施肥に伴う 排出量は農業部門で報告される(この仮定は IPCC2003 による)。施肥された肥料の量は全 体重量で与えられる。窒素含有量は利用した肥料のタイプによるが、統計局によれば湿地 では 95%で NPK 肥料が、乾地では NPK と窒素肥料が 50%ずつ用いられる。これら肥料の ― 163 ― 窒素含量は YARA(www.hydroagri.com)から得た。施肥窒素の 1%が NH3 として気化する(統 計局のアンモニア・モデル)。この結果、施肥に伴う N2O の排出は、農業由来の排出量と 比べ非常に少量の年間 2~4 Mg N2O となった。排出係数は非常に不確実で、IPCC によると 0.25~6%である。農業での排出の算定基礎には肥料の総売り上げが用いられているため、肥 料のうち森林施肥分は農業由来の排出量算定から差し引くべきである。 3.2 土壌排水に伴うN2O排出(5Ⅱ) 排水された土壌からの N2O の排出については、国内データがないため、IPCC デフォルト の排出係数に基づく算定を行った。排水の実施対象はすべて養分の乏しい有機土壌と想定 し、IPCC の対応する排出係数 0.1 kg N2O-N/ha/year を用いた。排出係数の範囲は 0.02~0.3 であり、算定の不確実性が高いことを示している。活動量は統計局の排水された 森林面積である。算定値は CRF の 5.A.1 転用のない森林の 5(II)に報告している。 3.3 農地の転用に伴うN2O排出(5Ⅲ) 農地への転用は「その他」の土地利用区分の有機質土壌 44.76 kha からの排出量(単位未 満 0.00Gg)のみが報告されており、森林その他の全ての利用区分から農地への転用面積、 排出量については NO となっている。(CRF Table5(III)) 3.4 バイオマスの燃焼(5Ⅴ) ノルウェー国内では火入れを行うことはない。火災はすべて乾期中の野火によるものであ る。IPCC(2003)は再生林分の蓄積が算定されるので森林火災由来の CO2 排出量を算定すべ きとしているが、蓄積量の変化を基礎とする CO2 算定を行うことで CO2 の排出・吸収両 方が網羅される。 森林火災消失面積は Directorate for Civil Protection and Emergency Planning から 1993-2006 年のデータが得られる。1990-1992 年については発生件数だけのデータしかな く、面積は 1993 年以降のデータによる推定であるが、火災規模は振幅が大きいので不正確 であろう。1990-1992 年の火災件数はそれ以降の時期より多いため、基準年の算定値が過 大かもしれない。 ha あたり 20m3 バイオマスがあり、うち 25%が燃焼すること(IPCC2003 に合致)、また、 ha あたり 1 m3 の枯死木、および 750Kg の腐植層が燃焼すること、を仮定して CO2 排出量 を算定した。 森林火災から発生する CO2 以外のガスについては国内データがないので IPCC2003 の方法 により排出炭素量を基礎として CH4 と N2O の排出量を算定した。 ― 164 ― 表 NOR.4 LULUCF のキーカテゴリー ― 165 ― Ⅱ.京都議定書第 3 条 3 項及び第 3 条 4 項に関する情報 1 京都議定書 3 条 3 及び 4 の下での排出・吸収の推計の概要 3 条 3 項および 4 項の活動の報告情報 カーボンプール 吸収源活動 3 新規植林・再 条 植林 3 森林減 項 少 3 森林経 条 営 4 農地管 項 理 GHG発生源 地上 地下 リ 枯 土 施 土 土 石 バイ バイ タ 死 壌 肥 壌 地 灰 オマ オマ ー 木 排 転 施 ス ス バイオマス燃焼 水 用 用 N2 N2 N2 CO CO CH O O O 2 2 4 IE IE IE IE NO NA NA NA R IE R R NA NA NA NA IE N2O R R IE IE IE R R IE IE IE R R R R R NA NA NA NA NA NA NA NA NA NA NA NA NA NA NA NA NA NA NA NA NA NA NA NA R R NA 放牧地 管理 植生回 復 引用:KP-LULUCF Table NR1 ― 166 ― 3 条 3 項および 4 項の活動による排出・吸収量(2008 年) GREENHOUSE BY(5) Net GAS SOURCE AND emissions/removals(1) SINK ACTIVITIES 2008 Total Accounting Accounting Parameters Quantity (Gg CO2 equivalent) A. Article 3.3 activities A.1. Afforestation and Reforestation A.1.1. -104.01 Units of land not harvested since the beginning of the commitment period -103.81 -103.81 -103.81 A.1.2. Units of land harvested since the beginning of the commitment period -0.20 01-Norway -0.20 -0.20 -0.20 A.2. Deforestation -92.56 -92.56 -92.56 -30,807.61 -30,807.61 -7,333.33 B. Article 3.4 activities B.1. Forest Management (if elected) 3.3 offset 0.00 0.00 FM cap 7,333.33 -7,333.33 B.2. Cropland Management (if elected) 0.00 NA NA 0.00 0.00 0.00 NA NA 0.00 0.00 0.00 NA NA 0.00 0.00 B.3. Grazing Land Management (if elected) B.4. Revegetation (if elected) 引用:KP-LULUCF Table Accounting ― 167 ― 2 2.1 一般的情報 森林の定義 面積≧0.5ha 幅≧20m 樹高≧5m この定義には若齢天然林、更新前の皆伐跡地及び一時的な無立木地を含む。 2.2 選択した 3 条 4 の活動 第 1 約束期間における 3 条 4 項の LULUCF 活動の算定については森林経営を選択。第1 約束期間における排出割当量の遵守には政府として森林経営による RMU の使用は不要と している。 ノルウェーのすべての森林は、実態として、木材生産か、保護、レクリエーション、また はある程度の狩猟とピクニック・エリアとして使用されている。今後、限界林地や生産性 の低い森林での施業密度は低下する可能性はあるものの、何らかの管理は継続されるであ ろう。従って、国内すべての森林は森林経営林として定義される。 2.3 3 条 3 活動、3 条 4 活動に関する定義の一貫性 京都議定書 3 条 3 活動、3 条 4 活動に関する温暖化ガス報告に必要な土地利用および土地利 用変化のデータは、ノルウェーの国家森林調査(NFI)から得られる。AR 及び D の対象地 域に関する情報は 1986 年以降現在まで継続実施されている NFI に基づいている。1986 年 と 1993 年の間に得られた土地利用情報から 1990 年の状況が収集される。1986 年以前は永 続的な標準地のデータがないこと、また、森林総面積がほとんど変化していないことから、 1990 年以前の森林面積の変化は無視することとした。これは転用された森林の蓄積変化を 過小評価することを意味するが、バイオマスの変化は「転用のない森林」の区分で報告さ れている。1990 年以降に生じた、他の土地利用から森林への転用及び森林から他の土地利 用への転用は全て人為によるものとする。 AR 活動は非森林地を森林状態に変更することであり、D 活動は森林を非森林地に変更する ことである。(IPCC 2003, section 4.2.5.1) 全ての森林はレクリエーション地域、保護林、自然保全地域を含め管理経営されていると みなされる。全ての森林は木材の収穫、狩猟、野いちご採取、ハイキングなどに利用され ており、したがって FM 活動の対象となる。 2.4 選択した 3 条 4 の活動間の階層構造及び土地区分の一貫した適用 3 条 4 項下では FM だけが選択されており、該当しない。 ― 168 ― 3 3.1 3.1.1 土地に関する情報 土地転用マトリックス 京都議定書対象活動に着目した土地転用マトリクス 土地利用変化マトリックス表は所与の年に調査された固定調査区における土地利用区分の 変化に基づいている。土地利用の変化はその土地利用が観測された年の土地利用変化とし て記録される。土地利用変化の区分には 20 年アプローチが用いられている。 ― 169 ― ― 170 ― 森林減少 の活動 (選択している場合) 植生回復 327.29 40.10 0.00 0.00 0.00 287.19 引用:KP-LULUCF Table NR2 今年度の終わりにおける面積合計 その他 放牧地管理 の活動 (選択している場合) (選択している場合) 3条4項 農地管理 (選択している場合) 森林経営 新規植林および再植林 3条3項 (kha) よび再植林 新規植林お 105.16 0.00 0.00 0.00 6.31 9,281.75 9,281.75 0.00 0.00 0.00 NA NA 0.00 0.00 NA NA 0.00 0.00 NA NA 22,706.0 6 32,380.1 6 22,665.9 6 22,665.9 6 0.00 0.00 0.00 9,288.06 92.64 積合計 おける面 始まりに 92.64 その他 今年度の 293.41 NA いる場合) いる場合) いる場合) いる場合) NA (選択して (選択して (選択して (選択して NA 植生回復 放牧地管理 森林経営 農地管理 3 条 4 項の活動 6.22 森林減少 3 条 3 項の活動 京都議定書対象活動に着目した土地転用マトリクス 3.2 地理的境界を特定するために用いる地図情報及び地理的境界の ID システム NFI の全ての永続的な標準地は地理的な位置情報をもっているが、その座標位置は機密情 報である。 4 活動別の情報 新規植林・再植林、森林経営、森林減少による吸収・排出量算定結果総括表 表 NOR.6 新規植林・再植林による吸収・排出量算定結果総括表 TABLE 5(KP-I)A.1.1. Article 3.3 activities: Afforestation and Reforestation Units of land not harvested since the beginning of the commitment period 2008 Gg-CO2 Gg-C -103.81 28.31 地上バイオマス -78.66 21.45 地下バイオマス -25.15 6.86 枯死木 IE IE リター IE IE 土壌 IE IE その他のガス - - AR CO2) +:排出、―:吸収 表 NOR.7 C) +:吸収、―:排出 森林減少による吸収・排出量算定結果総括表 TABLE 5(KP-I)A.2. Article 3.3 activities: Deforestation 2008 Gg-CO2 Gg-C -92.56 25.24 地上バイオマス -70.96 19.35 地下バイオマス -21.60 5.89 枯死木 IE IE リター IE IE 土壌 NA NA その他のガス - - D CO2) +:排出、―:吸収 C) +:吸収、―:排出 ― 171 ― 表 NOR.8 森林経営による吸収・排出量算定結果総括表 TABLE 5(KP-I)B.1. Elected Article 3.4 activities: Forest Management 2008 Gg-CO2 Gg-C -30,826.70 8,407.28 地上バイオマス -19,257.33 5,252.00 地下バイオマス -5,027.01 1,371.00 枯死木 -1,758.73 479.65 リター -683.82 186.50 土壌 -4,099.82 1,118.13 その他のガス - - FM CO2) +:排出、―:吸収 4.1 C) +:吸収、―:排出 新規植林・再植林 3 条 3 項の AR・D 活動による森林の炭素蓄積量の変化については、UNFCCC 報告と同様 の方法(NIR p.225, 7.3.1.1)で算定している。 4.2 森林減少 3 条 3 項の AR・D 活動による森林の炭素蓄積量の変化については、UNFCCC 報告と同様 の方法(NIR p.225, 7.3.1.1)で算定している。 4.3 森林経営 3 条 4 項の FM 活動による森林の炭素蓄積量の変化については、UNFCCC 報告と同様の方 法(NIR p.225, 7.3.1.1)で算定している。 4.4 間接及び自然要因の分離(ファクタリングアウト) 間接及び自然要因による GHG の吸収/排出は分離されていない。 4.5 不確実性評価 今回の報告では実施していない。2014 年報告で実施の予定である。 4.6 自然攪乱による影響への対処方法 注:記載無し ― 172 ― 5 京都議定書 3 条 3 の活動 5.1 90 年 1 月 1 日以降の人為的活動の判定 NFI調査が当該期間継続される。永続的な標準地が 1986-1993 年の間に設置され、1994 年以降は 5 年サイクルで継続的に調査されている。NFIは全ての標準地について国家土 地被覆及び土地利用の区分を判定することにより、森林に関する土地利用変化を直接的に 記録する。1994 年以降、すべてのARD活動は人為とみなしている。 5.2 一時的なストック減少と森林減少を区別する方法 人為的な介入によって一時的に蓄積がなくなった林地はもとより、若齢自然林および林業 目的で造成された全ての植林地が森林に含まれ、森林減少とは扱われない。NFIチーム は現地調査指示書に定義された国家分類基準に従って土地被覆と土地利用を判定する。こ のチームはまた森林経営活動と土地利用変化の違いを見分けるように訓練されている。こ れらがどの様におこなわれるかを説明するための基本的な手順または判断分岐図(decision tree)を少なくとも第一約束期間末の 2014 年までには報告書に含める予定である。 6 京都議定書 3 条4の活動 6.1 90 年 1 月 1 日以降の人為的活動の判定 ノルウェー国内のすべての森林がFM活動の対象であるので、1990 年以降の森林に関する すべての土地利用変化が人為的活動となる。永続的な標準地が 1986-1993 年の間に設置さ れ、1994 年以降は 5 年サイクルで継続的に調査されている。NFIは全ての標準地につい て国家土地被覆及び土地利用の区分を判定することにより、森林に関する土地利用変化を 直接的に記録する。 6.2 森林経営活動 ノルウェーの森林は全て、木材生産、国土保全、レクリエーション利用、狩猟、イチゴ狩 りなどに利用されている。自然条件が不利な森林や生産性の低い森林にあっては、管理経 営活動は減少するものの、何らかしらの活動が行われる。従って全ての森林が森林経営対 象林と区分される。 7 その他の情報 7.1 キーカテゴリー 報告に供されない 7.2 6 条にもとづくプロジェクトの実施 ノルウェーでは該当なし ― 173 ―
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