自動車の主要構造 性能や機能に大きく関わる金属部品 たリーマンショック前の時期と比べると、一段落した感は 818万9000台を記録した。年間1000万台に迫っ を言う。ドアアウターやフロントフェンダー、 フード、 ルー 通り自動車を外側から眺めたときに見える大型の構成部品 自動車ボディを構成する部品は主に外板部品・内板部 品・骨格部品の3つに分かれる。外板部品とは、その名の 言っていい。 あるものの依然として高い水準にある。また自動車関連就 フなどが外板部品である。一方、内板部品はドアインナー 自 動 車 産 業 は、 わ が 国 の 基 幹 産 業 の 1 つ に 位 置 づ け ら れ る。 2 0 1 3 年 の 国 内 四 輪 乗 用 車 生 産 台 数 は 業人口は547万人で、製造部門だけで 万5000人を 第2次世界大戦を経て日本の高度経済成長をリードした のは自動車であり、モータリゼーションの波を受けて業界 数えるなど多くの人々が自動車製造に携わっている。 や剛性と密接に関係する重要部位である。 バー、サイドシルなどは骨格部品と呼ばれ、自動車の強度 やフロア、トランクリッドインナーなど車体の内側を構成 5 サイドシル バンパー 歴史 フロントフェンダー 研究開発 自動車パネルができるまで 平板(ブランク材) 成形品 (鉄鋼メーカーより調達) (ブランキングラインで平板に) (プレスラインで平板から 立体のパネルに) 特徴と強み コイル材 製品 未来 鉄鋼メーカーから調達した薄鋼板を巻いたロール状のコ イル材を所定の形状に切り、プレス機械に投入してプレス フロントサイドメンバー 提供:新日鐵住金㈱ 加工を施し、自動車を形づくる部品を一点一点生産する。 フード ドアアウター 席などが自動車のフレーム内に配置・装着される。そして、 使って短時間かつ正確につくられる。 のボディ部品や骨格部品は、プレス機械という加工装置を 3 する。またフロントピラーやセンターピラー、クロスメン は急成長した。さらには輸出産業の筆頭にのし上がり、為 これらの部品は数十㎝の小さい部品から高さ1・ m超、 長さ ・ m超にわたるものまでさまざまある。ほとんど そのような自動車は、一般に3万点近い部品で構成され ると言われている。エンジンやドライブシャフト、サスペ く、 世界中で“日本のクルマ”がつくられるようになった。 替が円高基調に転じてからは海外での現地生産に対応すべ 78 ンション、電気・電子機器およびそれらの配線、配管、座 5 ボディパネル 骨格部品の 組付 クロスメンバー 何と言っても目を引くのは、 外観をつかさどる車体部品 (ボ サイドパネルアウター そしてこれらを溶接・塗装した上でエンジンや座席、タイ 経営 センターピラー ディ)だ。ボディ形状は意匠の美しさを醸し出すのと同時 ルーフ ヤ、窓などを組み込み、自動車が完成するのである。 原点 トランクリッド に、自動車の走行性能や機能を左右する最も重要な部位と 自動車ボディ部品のいろいろ 12 13 1 第1章 自動車ボディ用パネルはどうつくられる? 大物プレス部品 除去加工とも呼ばれている。これに対して塑性加工は、金 方法である。材料を除去していくプロセスであることから に当てて、材料を削り取ることで意図する形状に仕上げる 自動車に採用される金属部品の大半は切削加工か塑性加 工によってつくられる。切削加工とは文字通り工具を材料 状を持つセンターピラーに成形されるのである。 ング) 、曲げ(ベンディング)などの工程を経て3次元形 ローイング) 、ふち落とし(トリミング) 、穴あけ(ピアシ がら加工できるトランスファプレスという機械で、 絞り (ド と流れていく。複数の金型を取り付けて順次工程を送りな ボディ用パネルはどのようにしてつくられる? 型を用い機械的な圧力を加えて材料を変形させ、所定の形 て、特に自動車部品の生産には、塑性加工の代表に掲げら に成形品の強度は高いとされている。そうしたこともあっ 組織が切削によって切れずにつながったままのため、一般 性に優れ、生産性が高いことが挙げられる。ほかにも材料 塑性加工の特徴は、除去する部分がないため切削加工に 比べて材料歩留りが高く、同じものを多数つくる形状再現 様からタンデムプレスラインと呼ばれている。ボディ用パ 成する。これら複数のプレス機械は、直列になっている態 要部分の抜きなどの工程を経てサイドパネルアウターが完 次に、ブランク材を複数のプレス機械で絞りから曲げ、不 的に使用する目的で、 窓の部分を抜いたブランク材を得る。 ラインから始まる。所定の寸法に切り出しつつ材料を効率 ク(ブランク材のひと固まり)となって次のプレス機械へ 状に成形する加工方法だ。 一方、自動車大物プレス部品の1つであるサイドパネル アウターの場合も、骨格部品と同様にブランキングプレス れる薄鋼板を使ったプレス加工が多用されてきた。 ネルを成形するには欠かせない設備である。 なお成形速度は、従来のタンデムプレスラインで1分間 に最速 枚程度だったが、最近の高速対応型で 枚、中に 16 骨格部品の1つであるセンターピラーの成形例で見てみ よう。まずコイル材は巻き戻され、所定の寸法に切り出さ れる。これは、ブランキングプレスラインという専用工程 歴史 研究開発 ■サイドパネルアウターのプレス加工例 特徴と強み 絞り (第1工程) 未来 寄せ抜き曲げ1 (第3工程) 寄せ抜き曲げ2 (第4工程) 30 製品 抜き曲げ (第2工程) 素材 提供:ユニプレス㈱ はそれ以上の成形が可能なものも登場した。トランスファ 経営 トランスファプレス で行うのが一般的である。この切断されたブランク材(平 ブランキングプレス プレスも1分間に 個以上生産されるようになった。 原点 鋼材は連続加工し やすいロール状で 鋼材メーカーから 納入される 板) は、 300~400㎜の高さに積まれたブランクスタッ 10 タンデムプレスライン (4台構成)で成形 ブランキングプレスラインで成形 複雑な形状をつくるには何回かに分けたプレス 工程により段階的に完成品に仕上げていく 鋼材は製品のサイズ や形状に合わせてブ ランキングプレスで 打ち抜かれる ④穴開け・曲げ (ピアス・ベンド) ③カット (トリミング) ②成形 (ドローイング) ①打ち抜き (ブランキング) 自動車部品のできるまで ■センターピラーの プレス加工例 14 15 2 第1章 自動車ボディ用パネルはどうつくられる? 金属部品をつくる機械 はタンデムプレスラインで、骨格部品はトランスファプレ る。なお成形品の大きさにより、一般的に外板・内板部品 る協力会社は骨格部品を成形するという区分になってい 主に自動車メーカーでは外板・内板部品を成形し、1次・ 2次下請けスタンパー(プレス加工を行うメーカー)であ カーの車体工場や部品専業メーカーが中心である。 た。そんな大型プレスが活躍する場としては、自動車メー ボディやピラーなどの自動車部品をつくる大型プレス は、自動車生産台数の伸びに合わせて普及し、進化してき たブランクスタックから平板を1枚ずつはがしてプレス機 には、ブランキングプレスラインで切断し、積み重ねられ ンスファプレスにより成形される。そして各ラインの入側 スラインと、1台のプレスに複数の金型が配置されるトラ 平板から複数の工程(金型)を経て成形されるパネル類 は、一般的に複数のプレス機械で構成されるタンデムプレ ラインとトランスファプレスラインの2通りがある。 ミングプレスラインには、前項で紹介したタンデムプレス 一方のフォーミングプレスラインは、ブランク材から最 終形状となるパネル類をつくることを目的とする。フォー 大物プレス部品成形に必要な工場内設備 スで加工が行われる。 そこで実際のプレス工場内を想定し、 械に投入するディスタック装置と、ライン出側には成形さ このほか、各プレスラインに配置される金型を事前に 試し打ちして成形状態を確認するトライプレスがある。 れたパネル類を積み重ねるパレタイザ装置が設置される。 機械設備がどのように構成されているかを見てみよう。 かれる。ブランキングプレスラインは、コイル材からブラ フォーミングラインを効率良く使うために、オフラインで 各工程が担う役割から、機械ラインは「ブランキングプ レスライン」と「フォーミングプレスライン」の2つに分 ンク材をつくる機能を担う。コイル材を巻き戻してブラン 成形部品例 フロントピラー フードアウター 金型を玉成(量産で使用できる状況に仕上げる)するのに 製品 サイドパネル 用いられる。エイチアンドエフは、このような自動車プレ オートパレタイザ 特徴と強み 成形部品例 キングプレスへと導く上流側(入側)設備のコイルフィー タンデムプレス 研究開発 オートパレタイザ ダ装置と、ブランキングプレスで切断された平板を1枚ず コイルフィーダ 装置 パイラ装置 歴史 タンデムプレスライン トランスファプレス 未来 ドアアウター サイドシル プレス間搬送装置 ス部品生産に関わる工場内設備を、プレス機械を核に多様 トランスファプレス つ整列して積み重ねる下流側(出側)設備のパイラ装置が ブランキングプレス 経営 ブランク材 フードインナー クロスメンバー ディスタック装置 ディスタック装置 サイドパネル吊り掛け装置 センターピラー ブランク材 な形式で提案・提供し、自動車産業とともに歩んできた。 原点 コイル材 ブランキングプレスライン 主な構成要素である。 エイチアンドエフが製作するプレス工場内設備 オートパレタイザ 16 17 3 第1章 自動車ボディ用パネルはどうつくられる?
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