IMA MONTHLY NEWS Feb.12,2015 Volum 26 一般社団法人 国際経営者協会 (IMA) 〒 107-0052 東京都港区赤坂 7-3-37 プラース・カナダ 1 階 Tel.03-6894-7638 Fax.03-6894-7701 E-Mail:[email protected] URL:http://www.imaj.or.jp ■1月例会 2015 年の日本経済・金融市場展望 ~アベノミクスの光と影を検証する~ 講師:熊谷 亮丸 氏(株式会社大和総研 執行役 員 チーフエコノミスト) 日時:2015 年 1 月 29 日(木) 場所:日本工業倶楽部会館 ◆日本経済のメインシナリオ がおり、格差が拡大し ている。円安で増えた 日本の経常利益 3 兆円 のうち、大企業が 2.5 兆 円 で、 中 小 企 業 へ は 0.5 兆円しか回って いない。業種別では製 造業が 2.2 兆円、非製 造業は 0.8 兆円と、円 日本経済は昨年の 1 月が景気の山で、その後増税の 安メリットが偏りすぎ 影響で低迷したが、9 月以降は確実に底入れをしてお ている。対策としては り、 2015 年は拡大基調で推移する。実質 GDP 予測では、 (1) 低 所 得 者 向 け 給 付 2014 年度はマイナス 0.5%、2015 年度はアベノミク 金 (2)「地方創生」への スの好循環の継続と米国経済の成長による輸出の回復、 取り組みなどがカギ。 目下の原油安や増税の先送りも景気を下支えするので、 ◆日銀の物価目標達成は可能か? 1.8%の成長を予測している。 消費者物価上昇率を 2%にするには、為替だけでは 経済は、売上げ、賃金、物価の順で、若干の時間差 135 ~ 140 円、現状の為替 115 円では 2%以上の賃金 をもって連動する。また消費に与える影響はボーナスよ 上昇が必要であり、期限内の目標達成は困難。本年4月 りベースアップの影響が大きく、賃上げの上昇傾向は続 ~夏にかけてもう一段の金融感化が予想される。 く。世界経済は米国の個人消費の動向がカギ。米国経済 ◆日本経済のリスク要因 はまだ健全であり、世界経済をけん引し続ける。減速が 消費税増税先送りによる財政赤字の拡大と国債の暴 言われる中国も政府が景気テコ入れに乗り出しており、 落、不況下の物価高など「トリプル安(債券安・円安・ 通貨危機が懸念される欧州も的確な対応で乗り切れる。 株安)」の進行が懸念される。「茹で蛙」構造から「ハー ◆アベノミクスの光と影 ドランディング」が必要になる可能性も。 2013 年の日本の貿易収支赤字は、経済の空洞化の影 中国の「シャドーバンキング」問題は、700 兆円の 響が7兆円、原発停止の影響が 4 兆円、円安の影響が 3 過剰融資のうち 200 兆円規模の不良債権が出てくる可 兆円。今後、貿易収支の赤字幅は縮小するにせよ、赤字 能性がある。米国の出口戦略に伴う新興国市場の動揺も 基調は継続する可能性が高い。 言われるがファンダメンタルはしっかりしていて大丈 日本企業の7重苦―①円高、②自由貿易の遅れ、③ 夫。長期金利拡大による円安の進行や米国経済の好調さ 環境規制、④労働規制、⑤高い法人税、⑥電力不足・電 で、大局的には日本にもプラス。地政学的リスクを背景 力価格の上昇、⑦日中関係の悪化は、いずれもアベノミ とする世界的な株安の進行リスクは別途ある。 クスによって改善されつつある。また、賃金の低迷は、 ◆金融市場の展望 労働分配率の問題ではなく、企業の競争力(企業が稼ぐ メインシナリオでは、株高・円安を想定している。株 力)と労働生産性にある。ただ、中長期的には、財政収 価は2万円台に乗せていく可能性が高く、為替は 120 支悪化の主因となっている社会保障費の削減に切り込ま 円台後半まで行くだろう。長期金利は、2017 年以降に ないと、成長だけで「財政規律」の改善は難しい。また 日銀が出口戦略に向かうとすると、中長期的には 2%を 規制緩和を柱とする「第三の矢(成長戦略) 」の強化が 超えて大きく上昇するリスクがある。日銀は当面は、大 今後の課題となる。 胆な金融緩和をなお継続するとみられる。 短期的には、恩恵を受けている人と受けていない人 Page 2 ■11月例会(2014 年) 富裕層ビジネスで 270 年間生き残った秘訣 講師:石坂泰章氏 (株式会社サザビーズジャパン代表取締役社長) 日時:11 月 27 日(木) 場所:日本工業倶楽部会館 IMA Monthly News ビジネス的観点からみ た特徴点はまず徹底した リスクヘッジがある。即 ち作品代金の支払いや作 品の引き渡しは、代金が 100%入金されたことを 確認後であり、作品の真 贋鑑定も社外専門家に委 ねており(ただし、贋作 IMA11 月例会は、世界で最も歴史のある国際競売会 の場合は落札後5年間以 社(オークションハウス)で、インターネット上で世界 内であれば作品代金全額 初の美術品オークションを開催するなど、オークション 払い戻し)、カタログ掲載 の世界におけるグローバルリーダーとして業界を牽引し 費等の諸経費も出品者負担となっている。但し、手数料 てきた「サザビーズ」の石坂泰章氏(株式会社サザビー 商売で高額売却はサザビーズにとってもメリットとなる ズジャパン代表取締役社長)を講師にお招きしてご講演 ので、顧客と利益が相反していないという相互信頼関係 をお願いしました。 の中で顧客にアプローチできる。 ◆オークションとは何か つまりこのビジネスは作品の販売ではなく、売却を アート産業のプレイヤーとして最も一般的なものは お手伝いするサプライサイドのビジネスであり、最も大 画廊だが、そのほか、特定の作家と関係を持つプライベ 切なのはより良いものを集める「モノ集め」となる。そ ートディーラー/アドバイザー、オークション会社(サ のためには、どこで見つかるかわからない個性的な人材 ザビーズ/クリスティーズが9割くらいのシェアを持 (美術もわかり、社交もでき、ビジネスにも強い専門職) つ) 、さらに近年はアートフェア(大きくなると 300 位 の集積が必要となる。こうした究極の個別マーケティン の画廊が出展)もアートビジネスの大きな場となってお グを支えるため、少人数の会食、執筆・講演、個別の中 り、オーバーラップ化も進んでいる のマス商品分野(時計、宝飾、家具)の活用、チャリテ サザビーズは貴族の希少本の処分を発端に、主に書 籍類を扱うオークション会社として 1744 年にイギリス ィーオークションの手伝いなどを、おもな営業手段とし ている。 で設立された。ちなみにライバル会社であるクリスティ ーズは、美術品を扱う会社として 1766 年に創業し、当 初は棲み分けが行われていた。現在のサザビーズは、絵 画、彫刻、陶磁器、家具、宝石、時計など 70 分野を取 扱い、世界 40 か国に事務所を有し、年間 250 回のオ ークションを、現在はニューヨーク、ロンドン、香港、 パリで行っている。 オークション会社は原則として作品は買い取らず、 出品手数料と買取手数料が収入源となっている。サザビ ーの 2013 年の年間取扱額は約 63 億米ドルである。ま た 2006 年度全体の売上では 9%だった中国の美術品が、 2013 年度は 25%程度にまでに急成長している。 ◆オークションのビジネスモデル アート産業のビジネスチャンスは 3D(Death =死、 Debt =借金、Divorce =離婚)といわれる(近年はそれ に Discretion =嗜好が加わる) 。いわば受身のビジネス エドヴァルド・ムンク「叫び」 (1895 年 79 x 59cm パ で、一般的な産業が目指す大量生産、効率化、大衆化、 ステル画)2012 年 5 月 2 日 サザビーズ NY 印象派近 普遍化とは対極にある究極のプラットフォームビジネス 代オークション 約 96 億円で落札 。 と言える。
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