【建設リサイクル】2015冬号に掲載されました。

特集
Special
issue
石膏ボード資源リサイクル協会と
その取組み
石膏ボード資源リサイクル協会
キーワード
石膏ボードリサイクルシステム、広域処理、再生石膏粉、三菱マテリアル
九州工場、廃石膏ボードの粉の処理能力増強
地方で、現状発生量は32.6万トンで
の増加が見込まれています。
この内、新築系は都市部ではほと
しかし、再資源化等の取り組み
んどリサイクルされている一方、
に つ い て は、 新 築 系 に つ い て は
石膏ボードの生産量は近年建設
解体系の凡そ80%がリサイクルに
メーカーによる広域認定制度に
着工件数が減少しているため1995
回されていません。全体では75%
よって再資源化が進められている
年の600万トンをピークに頭打ちと
がターゲットと推定しており、そ
が、一方解体系においてはほとん
なっていますが、これまで国内の
の数量は24万トンになります。
ど進んでいないと言われており、
全国の廃石膏ボード
発生量について
建物にストックされていた石膏
再資源化率の向上が課題となって
ボードは、建物の解体とともに廃
石膏ボード再資源化事業
の現状と課題
石膏ボードとして発生量が増加す
る事が見込まれています。
設立経緯
事業形態
の原材料としてリサイクルされて
解体工事現場から搬出される約
80万トンのうち、約37万トン( 46%)
地域別廃石膏発生量推計
います。石膏粉については三菱マ
テリアル九州工場でセメント原料
います。
集荷エリアは九州・中国・近畿
廃石膏ボードは、建設廃棄物の
が中間処理施設に搬入・処理され
品 目 別 排 出 量 で み る と、 コ ン ク
ています。
リート塊、アスファルト・コンク
解体現場等から中間処理施設経
リート塊、建設汚泥、建設発生木
由で石膏ボード工場の原料として
材に次ぐ規模であり今後も排出量
リサイクルされるのは全体の僅か
石膏ボード工業会の調べによる
NRS・ 大 東 商 事・ 中 央 環 境 の3
としてリサイクルされています。
3万トン
(4%)強です。
と、全国の廃石膏ボードの排出量
社と再生石膏粉を使用する三菱マ
日本で最大級のセメント生産量
その他のリサイクル施設で処理
( 2006〜10年の5年間の発生量平
テリアル九州工場が連携し、石膏
を誇る三菱マテリアル九州工場と
されている約28万トン( 35%)の約
均値は、新築系で29万5千トン、解
ボードリサイクルシステムとし
連携することで、廃石膏ボードの
半数14万トン弱は紙と石膏に分離し
体 系 は79万6千 ト ン。 合 計 で109
て、国内で初となるモデルケース
受け皿を得ることになり、西日本
ただけの単純破砕品かと思われる
万千トンに上りました。また、九州
を九州から構築しました。具体的
エリアでの廃石膏ボードリサイク
ので、これに最終処分場で処分さ
で の 発 生 量 は 年 間10万9千 ト ン と
には、西日本エリアを3つのブロッ
ルが進むことが期待されていま
れている約19万トンとリサイクル/
なっており、今後も発生量の増加
クに分けて、それぞれの地域から
す。西日本エリアを3つの地域に
埋立判別不可分約29万トンを合計す
が予想されています。ほとんどの
集荷した石膏ボードを各中間処理
分けることで、各拠点の利便性や
ると約62万トン( 78%)となり、実
新築系廃材は石膏ボードメーカー
施設にて破砕機により紙と粉に分
合理性を図り、競争力の強化とリ
体としては解体系の8割近くがリ
に回収されて、ボード用原料とし
別します。紙は大手製紙メーカー
サイクルを基本とする広域処理の
サイクルに回されていないものと
てリサイクルされていますが、解
へ搬入し段ボール原紙として生ま
構築が可能となりました。
思われます。
体系廃材は、その多くがリサイク
れ変わり、他にもRPF
( 固形燃料)
しかし、現在事業規模でリサイ
ルされることなく、大半が埋め立
クルが行われている用途と今後の
て処分されており処分場逼迫の懸
出典:
(一般社団法人石膏ボード工業会 資料)
念材料ともなっている為、廃石膏
建築統計年報 平成18 年〜22 年度版に基づく5 カ年の平均値
ボードの再資源化は喫緊の課題と
なっています。
ブロック別
そうした状況を打開できればと
単位:万トン
新築系排出量 解体系排出量
年間送排出量
推計
推計
排出割合
新たな展開が検討されているもの
は、中間処理施設経由では、全国
で10数万トン程度あると思われます
が、すでにルートの確立している
石膏ボード原料用や一部のセメン
の思いで、九州地域で石膏ボード
中国
1.6
4.7
6.3
6.1%
ト原料用を除くと、土木資材分野
リサイクルの実績を積むNRS
(福岡
九州
2.8
7.4
10.2
9.9%
の土質改良材としての用途展開が
近畿
5
11.1
16.1
15.6%
四国
0.8
2
2.8
2.7%
その他地域
19.3
48.7
68
65.8%
合計
29.5
74.0
103.5
県北九州市)
、大東商事
(熊本市)
、
中央環境
(長崎市)
の3社が中心とな
り2012年11月 に、 石 膏 ボ ー ド の
再資源化を促進する
「石膏ボード資
源リサイクル協会」
を設立しました。
12
左:石膏粉 右:剥離紙
ほとんどであり、他の新たな大口
用途が見えてきていません。
大口用途として期待されている
地盤安定化資材向けにおいても、
排煙脱硫石膏や石灰などの競合品
建設リサイクル Vol.70
13
特集
S p e c i a l
i s s u e
原料や地盤改良材としてリサイク
いたしました。
ルされていますが、多くの廃石膏
セメント事業カンパニーは、難
ボードは埋め立て処分されていま
処理廃棄物のリサイクル技術につ
す。
いて、今後も開発を推進すること
しかしながら、廃石膏ボードは
で循環型社会の実現を目指し、持
一定の条件下において人体に有害
続的発展が可能な会社の構築に貢
な硫化水素を発生させる危険性が
献しております。
ある難処理廃棄物であるため、近
中間処理施設の保管ヤード
解体時の異物が付着混入し
管理型埋立処分される。分
別するための保管ヤード確
保も課題となっている。
年は埋め立て処分について制限を
協会の活動
受けつつあり、将来的には安全な
リサイクルの更なる促進が不可欠
となります。
当協会の大東商事では平成26年
同社のセメント事業カンパニー
7月
「これからの九州と日本を元気
とのコスト競争力や、環境安全性
ド粉のリサイクル事業について、
は、粉末化した廃石膏ボードをセメ
の確保の対策など、種々検討すべ
平成26年7月から1年をかけて段
ントキルンで高温焼成
(約1,450℃)
き課題が山積しています。
階的に処理能力増強を行い、現在
することでセメント原料として再資
つと掲げ、火力発電所から発生す
など、社会から発生する様々な廃
ムを開催しました。これは、排出
の年間処理能力1万2千トンを最終的
源化する安全な処理技術を独自開発
る石炭灰をはじめ、下水汚泥、建
棄物や副産物を受け入れており、
者と処理業者との情報の共有化を
に約5倍の6万4千トンに増強するこ
し、既に実用化しています。
設発生土、廃油や廃プラスチック
2013年度は合計で406万トンを処理
目 的 に 初 め て 行 っ た も の で す。
ととしました。
この技術では、埋め立て処分に
石 膏 ボ ー ド は 強 度 に 優 れ、 断
あたって危惧されるような硫化水
廃石膏ボードの粉の
熱・遮音性が高いことから建物の
素などの有害物質が一切発生しな
リサイクル処理能力を約5倍に増強
壁材や天井板などに広く使われて
い上、廃石膏ボード粉が、セメン
新の事例紹介が行われました。当
三菱マテリアル株式会社(取締役
おり、老朽化した建物などの解体
ト製造の最終工程で添加する石膏
日は、環境省、熊本県庁をはじめ
社長:矢尾 宏、
資本金:1,194
に伴う廃石膏ボードの発生量増加
の役割を代替えするため、省資源
各自治体、銀行、ゼネコン、産業
億円)のセメント事業カンパニー
が今後予想されています。現在は、
化もあわせて実現しております。
廃棄物の中間処理業者、収集運搬
は、九州工場における廃石膏ボー
廃石膏ボードの一部が石膏ボード
三菱マテリアルグループでは、
会社250人以上参加し、大盛況で
三菱マテリアル 九州工場
三菱マテリアル九州工場 廃石膏ボード粉受入量
(推移)
セメントキルン
(回転窯)
にする循環型社会のあり方!」とし
たテーマで、単独で環境フォーラ
フォーラムでは、九州地域で活躍
する処理業者から廃棄物を資源・
エネルギーとして活用している最
終えることができました。
「人と会社と地球のために」の企業
理念のもと、2020年代初頭に向け
平成26年10月、西日本総合展
た長期経営方針において、
「ユニー
示場新館(北九州市)で開催された
クな技術により、地球に新たなマ
テリアルを創造し、循環型社会に
貢献するNo.1企業集団」
となること
を目指し、その実現のための中期
経営計画 Materials Premium 2016
において、全社成長戦略として、
「成長基盤の強化」
、
「グローバル競
争力の強化」及び
「循環型ビジネス
モデルの追求」
をあげております。
こ のMaterials Premium2016の
もとセメント事業カンパニーは、
グループの総合力を発揮した環境
三菱マテリアル九州工場
14
リサイクル事業の拡大を戦略の一
セメントキルンの内部
(1,450℃で高温焼成)
受け入れている廃石膏ボード粉
建設リサイクル Vol.70
15
特集
三菱マテリアルによる講演の様子
くことが予想され、最終処分場の
きかけをしていきたいと考えてい
た。この展示会は、2011年末に福
逼迫も懸念される中で、当協会の
ます。これから過渡期を迎え、廃
岡県と福岡市の三者で「グリーンア
果たす役割も非常に大きなものと
石膏ボードの発生量はますます増
ジア国際戦略総合特区」の指定を受
考えております。
えていきます。廃石膏ボードの受
けた環境産業が盛んな北九州市の
また、当協会の設立以降、認知
け皿をきちんと整備していくこと
取り組み、今後の日本の環境問題
が大きく上がってきたと感じてい
で、行政に廃石膏ボードのリサイ
解決の糸口になる最先端の資源リ
ます。理由として、それぞれの営
クルがより浸透していけるよう尽
サイクル技術などの技術や研究が
業の努力もありますが
「ただ埋めれ
力していただきたい。
紹介されました。当協会では、石
ばいい」とした、廃石膏ボードリサ
今後さらに実績を積んでいくこ
膏ボードのリサイクルについて処
イクルに関しての認識が徐々に変
とで、九州地域だけでも特定建設
理工程などのパネルや石膏粉・紙
わりつつあるのではないかと考え
資材と同程度の扱いになればと期
などのサンプルを展示し、来店者
られます。
待しています。これまで、再生石
との意見交換を行いました。
平成28年度には、三菱マテリア
膏粉の受け皿を確保することが大
ル㈱九州工場の受け入れ能力が年
きな課題でしたが、大手セメント
間6万トン以上に増強され、それに
メーカーと連携したことで、そう
伴い原料となる廃石膏ボードの集
した課題を克服することができま
荷量を増やしていきます。
した。安全で安心、安定を前提と
冒頭でも述べたように、廃石膏
また、今後は集荷量の増強の状
した事業運営を展開していきます。
ボードの排出量は年々増加してい
況を足掛かりに、行政に対する働
16
i s s u e
展示会場の様子
「エコテクノ2014」にも出展しまし
今後の事業展望
S p e c i a l
建設リサイクル Vol.70
17