大規模MIMOチャネルの 漸近固有値分布と通信路容量

電気通信大学
アンテナ・伝播研究会
(H27.01.22)
大規模MIMOチャネルの
漸近固有値分布と通信路容量:
そこから見えてくるもの
唐沢 好男
電気通信大学
電気通信大学
発表の内容

Massive MIMO通信

固有値分布と通信路容量

漸近固有値分布(マルチェンコ・パスツール則)

固有値分布に見られる性質

通信路容量に見られる性質

まとめ
2
電気通信大学
Massive MIMO
WTX
(アレー素子数:100~1000)
基本伝送特性の把握には、
チャネル応答行列の固有値把握が本質
アレーサイズが大きくなると固有値解析が非常に煩雑になる
3
電気通信大学
チャネル応答行列(CSI): A
a11
1
2
2
a NM
M
 a11

 a21
A


a
 N1
1
a12
a22

aN 2
 a1M 

 a2 M 

 

 a NM 
N
m  min{M , N}
n  max{ M , N}
4
電気通信大学
ウィシャート行列: Wr and Wt
Wr  AA
H
Wt  A A
H
(行列サイズ: N×N)
(行列サイズ: M×M)
固有値 (li ; i = 1, 2, … m) for Wr or Wt
固有ベクトル (er,i ; i = 1, 2, … m) for Wr
固有ベクトル (et,i ; i = 1, 2, … m) for Wt
固有値の性質が把握できると
MIMOの基本伝送特性(BER, 通信路容量など)
が評価できる
5
電気通信大学
順序付固有値分布と順序無固有値分布
順序付固有値分布
l1  l2   lm  0
li それぞれの確率分布
送信側でCSIを利用して、最適に送信電力制御を
行う場合の通信路容量を求めたい時など
順序無固有値分布
順序付固有値の順序を無視してまとめた固有値全体の分布
送信側でCSIを利用しない場合の通信路容量を
求めたい時など(アンテナから送信される電力の
平均値が同じ)
6
電気通信大学
i.i.d レイリーフェージング環境における固有値導出の一般式
順序付固有値の確率分布
fi
ord


2
i
li
lm1
li   l dl1  l dli 1 0 dli 1  0
f
ord
l1 l2
fi
このアプローチでは
Massive MIMO固有値
解析にはたどり着けない!!
1 m ord
li    f j li 
m j 1




0
0
0
0
  dl1   dli 1  dli 1   dlm f unordl1
f
unord
l2  lm 
   m nm m
2
 lm   c exp    li  li  li  l j 
j i 1
 i 1  i 1
l1  l2   lm  m  min{M , N}, n  max{ M , N}
順序無固有値の確率分布
unord
dlm f ord l1
l1 l2

l2  lm 
c
   m nm m
2
 lm   exp    li  li  li  l j 
m!
j i 1
 i 1  i 1
1 ord
f l1
m!
l2  lm 
7
電気通信大学
MIMOチャネルの(順序無)固有値解析のアプローチ
大規模MIMO
M, Nの数:非常に大
小規模MIMO
M, Nの数:小
通常固有値解析
?
l  Mlˆ
漸近固有値解析
困難
  N / M  一定
M 
f (lˆ )
8
電気通信大学
漸近固有値分布(マルチェンコ・パスツール則に基づく)
NとMの比をとし、そのもとでのM∞での順序無正規化固有値
の漸近固有値分布を考える
  N/M
lˆ  l / M
順序無正規化固有値
f (lˆ)  lim M f i unord (Mlˆ)
漸近固有値分布
M 

ˆ
f (l )  1     (lˆ) 

lˆ  1  

2

lˆ  lˆ
z 



ˆ  lˆ
l


2lˆ


 max 0, z 
(M-P則に基づく分布は自由ポアソン分布とも呼ばれる)
9
電気通信大学
M<N、すなわち >1に限定して
 4  (lˆ  1   ) 2


ˆ
2lˆ
f (l )  


0

for 1  

2

 lˆ  1  

2
for others
  1 (M  N ) のときは
1

f (lˆ )   2


4
1
ˆ
l
0
for 0  lˆ  4
for others
10
電気通信大学
漸近固有値分布
確率密度関数 (PDF)
累積分布関数 (CDF)
0.6
1
=1
=1
0.5
=2
0.8
0.4
Cumulative probability
Probability density
=4
=2
0.3
=4
0.2
=8
=16
0.1
0
0
5
10
15
0.6
=8
0.4
0.2
0
0
5
10
15
Normalized eigenvalue
Normalized eigenvalue
lˆ  l / M (M  )
  N/M
11
電気通信大学
=1における漸近固有値分布と2x2, 4x4 MIMO等の
正規化固有値分布(l/M)の比較
確率密度関数 (PDF)
累積分布関数 (CDF)
1
10
=1
0.1
Cumulative probaility
Probability density
2x2 theoretical
4x4 theoretical
M-P law, =1
1
lˆ
0.1
l
( 44 )
/4
l( 22) / 2
1
2
0.01
4x4
2x2
1x1
0.001
M=1, 2, 4, 8, ....
0.01
0
M-P law
3
Normalized eigenvalue
4
5
0.0001
0.0001
0.001
0.01
0.1
1
10
Normalized eigenvalue
12
電気通信大学
平均通信路容量 < C >
M×N MIMOの順序無固有値分布から
  0li   m  log 1   0l  f unord(l )dl
 i
C   log 2 1 

2

0
M
M 



i 1
m
(bps/Hz)
漸近固有値分布から

  0l   l 
C   log 2 1 
 f  dl
0
M  M 

2
 x

4



1




2
M

x
M 1   M



0 

log
1

dx


2
2



1


M
2
M 
x

 =1 の時は
1
C 
2

4M
0
  l  4M  l
log 2 1  0 
dl
M 
l

13
電気通信大学
=1 (M=N)での平均通信路容量
1
C 
2

4M
0
  l  4M  l
log 2 1  0 
dl
M 
l

(bps/Hz)
Telatar ETT, 1999 論文
1  4 0  1
M 
1

ln  0  1 
 2 tanh 1
ln 2 
2 0
1  4 0

 3 

M 0


F
1
,
1
,
,
2
,
3
,

4


3 2 
0
ln 2
2




M




数値計算上
完全一致
Mathematica
M-P則では、アンテナ数に厳密に比例
14
電気通信大学
=1 (M=N)のケースにおける平均通信路容量
Average channel capacity <C> (bps/Hz)
1000
N=M (=1)
0=20dB
100
4x4
10dB
0dB
2x2
M-P law
MxM
10
theoretical
1
1
10
100
The number of antennas M
1000
15
電気通信大学
任意の  の値に対する平均通信路容量
(漸近固有値分布に基づく)
C
M P


0
  0l   l 
log 2 1 
 f  dl
M  M 

2


x




4    1   
2
 1 1   M

  0x 
M

  
log
1

dx

2
 M
2


1


M
M 
x

 2





数値積分をしてみると
この部分はMに依存しない
C
M P
 g ( 0 ,  )M
アンテナ数に厳密に比例
16
電気通信大学
 をパラメータとする平均通信路容量vsアンテナ数N (0=10dB)
Average channel capacity <C> (bps/Hz)
10000
0=10dB
=32
=N/M
1000
=1
100
=1, 2, 4, 8, 16, 32
10
1
1
10
100
1000
The number of antennas M
17
電気通信大学
平均正規化通信路容量のSNR特性
Normalized averaged channel capacity <C>/M (bps/Hz/M)
C
M P
/ M  g ( 0 ,  )
何と、最小規模 MIMO
の2×2でも、
平均正規化通信路容量
は漸近固有値分布から、
極めて精度よく推定で
きる!!
10
=32
16
8
1
M-P law
l(2x2)/2
l(4x4)/4
l(2x4)/2
4
2
漸近固有値分布理論
(M-P則に基づく)は
非常に適用範囲が
広い
1
0.1
-10
-5
0
5
SNR 0 (dB)
10
15
20
18
電気通信大学
本稿が解析対象としたシステムイメージ: N > M
Case 1
Case 2
CSIは利用するが、送信電力制御はしないケース
19
電気通信大学
まとめ
1)Massive MIMOの固有値解析では、ランダムマトリクス理論に
基づく漸近固有値解析(マルチェンコ・パスツール則を利用した)
が利用される
2)漸近固有値解析とは, N/Mの値を固定した状態で、
Mが無限大付近の順序無固有値分布を調べるものである
3)有限サイズのM×N MIMOの平均通信路容量を、漸近固有値
分布から近似的に求めることができるが、その近似精度は、
2×2 MIMOの場合でも、驚くほど良い。(適用性が極めて大きい)
4)ただし、平均通信路容量ではなく、通信路容量の確率分布を
求めたい場合には、また、別の景色が見えてくると思う。
次の課題としたい。
5)ここでは、理論計算値のみを示しているが、この結果の妥当性は、
計算機シミュレーションで確認している
20