カトレア類の株分け時におけるシュート数が 生育・開花に及ぽす影響 1.試験のねらい カトレァ類の生産現場における株分けは、一般的に4∼5個の偽球茎をもち、うち2個程度の バックバルブをつけた状態で行われている。しかし、バックバルブの存在が、植え替え肇の生育 開花に及ぼす影響については報告がない。 そこで、高晶質で生産性の高いカトレア類の株分け技術を明らかにするため株分け時の偽球茎 数が、生育開花に及ぼす影響について検討した。 2 試験方法 h)’株分けの方法 鉢植えおよびベツト植えされた5年生株を1990年3月25日だ株分けし、クリプトモス培地 の5号プラスチック鉢に植え替えた。この時の株の大きさは、両区とも外観上ほぼ同サイズの 株をえらんだ。 試験区は栽培前歴を鉢植えとベッド植えの2区に分け、次に示す8区構成とし、1区30鉢を 供試した。 栽培 シュ’一 株分け様式・シュートNα 試験区 摘 要 前歴 ト 数 リード 1 2 3 4 略 号 鉢植え 1 0 ● 2 0 ● ● 3 0 ● ● 0 4 0 0 ● ○ ベツド 1 0 ● 植え 2 0 ● ③ 3 0 ● ● 0 4 0 0 ● 0 P−1 今年調査 株分け時に付け P−2 リードバ たシュードバル ● P−3 P−4 B−1 B−2 B−3 1シュード1Wブ1バ1ク/Wブ ● B−4 (シュートNα) 栽培管理は、慣行に準じたが、かん水3回目毎に液肥(N=1O%、P=30%、K=20%の 2000倍希釈液)を施用した。 (2)葉身の無機成分濃度 実験の開始時と終了時(開花時)の2回にわたり、植物体内の無機成分濃度を測定した。測 定には簡易栄養診断法によった。 (3)切り花の日持ち 日持ちの指標として吸水量の日変動を調べた。 3 試験結果およぴ考察 、1)株分け時の生体重は、株単位でみると前歴ベッド植え区が鉢植え区より明らかに重く、シュ ートの工一ジ別では、若いシュートほど重かった。葉身部のN,P,K,Caの濃度は個体とし ても、ベッド植え区が鉢植え区より高く、幼葉が老葉より高かった(図一1)。 株分け後の生育は、前歴ベツド植え区が鉢植え区より早く、着花数および花被の大きさも増 加した。 (2)株分け時のシュート数は、多いほどリードシュートの生長、着花数および花被の大きさが増 加した。この傾向は秋発生のリードシュートについても同様であった(図一2)。 切り花の日持ちは、リードシュートの生長の良否に支配され、ベッド植え4本区が最高であ た。また、Ca Oの含有率の高いものに日持ちが良くなる傾向がみられた(図一3)。 (3)花芽は、栽培前歴および株分け時のシュート数に関係なく分化した。しかし、株分け時のシ 一83一 二一ト数が少ない場合、または株の充実が不良の場合はアボーションによる不開花が発生した。 以上の結果から株分け後の生育・開花は、株分け時の株当たり生体重、無機成分濃度など株の 充実度に影響されることが明らかにされた。 4.成果の要約 株分け時のシュート数は株としての充麦度または光合成機能が重要と思われる。具体的には葉 身長■偽球茎比、株の生体重、シュートの無機成分濃度で示される。従って、株分け時のシュー ト数が1本でも葉身長■偽球茎比が2前後のリードシュートを発生させ花芽の分化は可能である が、高品質のカトレア類を生産するには、長さ35㎝前後、生体重60g以上のシュートを2∼3つ け、かつ、葉身部の無機成分が高濃度に含まれることが必要である。また、株分け時期を判断す る目安としてはリードシュートの完成時の草丈が一定してきてやがて草丈が短くなってきた時と するのが適当と思われる。 (担当者 花き部 久地井恵美・峯岸長利) PPm と。O 700 K.O×10 P205 600 ○○ 6 、○:前歴鉢植え ) ●:前歴ベッド植え 着 NH4−N 5 花 r=0,891 y=一1.44363+0.Oユ450ユ5x 数4 ●●O O O 500 400 300 ■ 輸3 / ○⑨O⑥○ 株 )2 ⑱① .●●○) O 200 100 0 一トNo。ユ2341.2R必 シュートNo。ユ 4 1 2 3 14 鉢栽培’ ベッド栽培 図一1 株分け前の植物体無機成分濃度 吸 P・4 4 P−3q 量 (3 0 100 200 300 400 .株当たり牟体章(g■株) 図一2 秋発生シュートの着花数と株分け時の 生体重十春シュート生体事 吸5・4 5 水 ⑩0●● 1 1が、 水4 ◆、 量38.2. 〃 ■2 1Stem 1 し ・・\ )1I トー…1\ いk.}、 0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10(日〕 1 2 3 4 5 6 7 8 9 ・10{日) 図一3 切り花の日持ちと吸水量 一84一
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