ノンパラメトリック法による水稲の出穂期予測

ノンパラメトリック法による水稲の出穂期予測
1.試験のねらい
水稲の出穂期を早期に予測することは、肥培管理の上で重要である。従来から積算気温による
方法、幼穂長の測定による方法などを実施しているが、さらに田村・竹沢・金野らのノンパラメ
トリック法(平均気温による)による出穂期の予測について検討した。
2.試験方法
データは昭和50年から63年のユ4年間の栃木農試圃場における早植(5月8日植)の稚苗コシヒ
カリの出穂期及び移植以降の毎日の平均気温を用いた。
3.試験結果及ぴ考察
(1)成長速度(DV R値)の決定
クロスバリデーションによる予測誤差の標準偏差は、平準化係数(α)が小さいほど(α=
80)小さくなり予測精度は良いが、18℃前後ではDV Rがそれ以下の温度より低下するため、
α=500とした。D VR値は第1図及び第1表のとおりである。
(2)従来の積算気温による方法との比較
5月8日植のコシヒカリの出穂期までの平均気温の単純積算気温は、14年間平均で1,923℃
であるが、これによる出穂日の予測誤差は一1.0∼十3.7日、誤差の標準偏差は1,553であっ
た。ノンパラメトリック法による予測誤差は一0.9∼十2.0日、誤差の標準偏差は1,098で予
測精度は向上した。
(3)平成元年度へのあてはめ
平成元年度は6∼7月中旬まで低温・寡照に経過し生育が遅れたが、その後平年並に回復し
た。実際の出穂日は8月9日で、平年の気温をあてはめた平年出穂日8月6日より3日遅れた。
ノンパラメトリック法による予測に実際に経過した気温を当てはめると、出穂予測日は8月10
日、平年の4日遅れとなりあてはまりは比較的良かった。また7月1日現在で予測した場合、
以後平年並に経過するとして平年の2日遅れ、以後の気温が±2℃の範囲で変動するとした場
合、出穂日の予測は平年並∼6日遅れ(8月6∼12日)であった。
(4)実用的に予測可能な時期の範囲
平成元年度に経時的に予測を行なった場合、6月中の予測は変動の幅が大きく実用的でない。
出穂日の1ヵ月前である7月上旬になると実際の出穂日との誤差は小さく、その後の温度の変
動による予測出穂日の幅も小さくなり、実用的には利用できると判断された。
4.結果の要約
ノンパラメリック法による水稲の出穂期予測の方法を検討し、5月上旬移植のコシヒカリに当
てはめたところ、従来の積算気温による方法よりも予測精度が向上した。また平成元年度の出穂
期に当てはめた場合、1日の誤差で予測できた。さらに実用的な予測可能時期は7月上旬以降と
考えられた。
(担当者作物部 山口正篤)
一21一
第ユ表温度一Dw
温度D脳100
糺=500
10℃ O.1?32
110.3507
120.5233
〆・’
ρ
■
/
13 0.6727
14.0.7925
♂
ユ5 0.8751
’・∼一
160.9184
/
■。
■
17 0.9158
18 0.9036
/
戸
190.9197
20−0.9878
{
/
ノ
〆
1川1壬芋…韮
22 ユ.2106
f †
24 1.3381
25.1.3641
21ユ.1024
/
231.2924
4
‡ 主
‡
■!1い・
26 1.3647
14 16 18 20 22 24 26 28
釦oc
27 1.3662
28 1.3668
図一1 温度一DVR曲線及び平均気温の頻度分布
29 1.3647
30 1.3626
311.3606
、30
D i20
V
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二.ン. 一 ’ ’’一・… ・:岬’・
DVS(共欄丁.三イOOで踊
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一一予糾2℃
80
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●■.‘.・・.
0
60
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予碧一2℃
. ..,.・.・
琢O
1目
7目
8日泌禁薮甲三・、
1日鵬鍵タ、
%o
図一2 DV S値の推移及び7月1日時点での予測
7
早
年
出
6
5
..㎏二.
・・三榊三…
4
3
・以後平年並
・・麟…・
2.
穣
1
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と
の
差
−1
・・寓…・
..兜_____5細_。仇__.__.、乃a_…………臨・・…
−2
・・鱒………・…・・…
−3
・・鯉……・
廿以後粋十2℃.
...郭
’x.以後平竿一2℃
−4
−5
6日
……申一・・
フ日 出穣を予竈した日
図一3予想出穂日の推移
一22一
’’.石日