大麦縞萎縮病の防除対策 1 試験のねらい 本県のビール麦の栽培面積は全国一であるが、運作に伴い土壌伝染性ウイルス病である大麦縞萎 縮病の発生が増加している。本病害の防除法にはいくつかの知見があるが、本県における詳細な試 験例がないため昭和59∼63年に防除対策について検討一したので報告する。 2 試験方法 (ユ)土壌伝染性ウイルス病の種類及び系統調査 3月に明瞭なモザイク症状を呈するビール麦を採集し、EL I SA法で検定を実施した。また、 多発ほ場を選定し系統判勅品種であるカシマムギ等を栽培して発病状況を調査した。 (2〕耕種的及び薬剤防除効果試験 壬生町の多発ほ場であまぎ二条を便用し、時期を変えて播種するとともに播種前のプラウ、ロ ータリー耕起及び播種直後の表土鎮圧、排水溝設置を実施した。また、ミサトゴールデンをユ∼ 3作した後にあまぎ二条を毎年栽培して調査した。さらにフジワン粒剤、ダイシストン粒剤など を播種直前に土壌施用し、発病状況及び収量について調査を実施した。 (3)組み合わせ防除効果試験 上記の防除試験成績から有効と考えられた対策について組み合わせ防除効果を検討した。 3 試験結果及び考察 (1)土壌伝染性ウイルス病の種類及び系統調査 本県のζ一ル麦に発生するのは大麦縞萎縮病だけで、この大麦縞萎縮病の系統はI一ユ型がビ ール麦の主要産地である県南部で、I−2型が主に茨城県に隣接した県東部で確認された。 (2)耕種的及び薬剤防除効果試験 耕種的防除で効果が高かったのは播種期を地域の播種適期の晩限(日平均気温10℃)まで遅 らせる晩播で、排水溝設置も発病軽減に有効であったが、播種前の深耕や播種直後の表土鎮圧は 効果が俸かった。また、ミサトゴールデンを栽培すると次作の一般品種は発挿はきわめて減少し た。実用的にはミサトゴールデンを2作した後一般品種を2∼3作するのが有効と考えられた。 薬剤防除ではフジワン粒剤が発病株率は低下しないが生育の回復が認められてやや収量が増加す る傾向がみられた。なお、処理薬量と収量の関係は認められなかった。 (3)組み合わせ防除効果試験 防除効果が高かったのは晩播で、排水溝設置も効果カ溜められたが、播種直前の薬剤土壌混和 は薬剤費にみあうだけの効果及び耕種的防除との相乗効果はみられず実用性は低いと考えられた。 このため、経済的に晩播及び排水対策が現地に適用可能と考えられた。 4 成果の要組 大麦縞萎縮病防除技術について個別及び組み合わせ対策について検討したが、防除効果及び大麦 栽培の経済性から、本病害対策として有効なのは晩播及び排水溝の設置と考えられた。 (担当者 病理昆虫部 大兼善三郎) 一9一 表一1 晩播による防除試験 播種月圓 10月25圓 11月 2圓 11月 9日 11月161ヨ 11月23日 11月30日 年 次 発芽率 1984 1985 1984 1985 1984 1985 1984 1985 1984 1985 1984 1985 85 99 89 98 91 93 81 93 63 92 67 92 % 黄化程度 アントシアン 2 1 2 1 1 0 1 0 1 0 発病株翠 発病程度 % 稗長 穂長 2 3 2 3 2 1 81.1 5,8 33.i 4.3 2 95 3 100 2 60 3 98 52 37 4 12 1 1 0 7 1 0 0 2 全量 i15.2 1 1 3,0 80.0 6,4 41.2 5.0 81.6 6,6 0 1 量 9 精粒重 208.7 20 1.7 198.0 193.7 183.7 179,2 192.7 188.0 67.4 6.2 82.7 6,6 66.6 6.6 73.9 6,8 78.3 6.7 200.7 194.3 77.4 7,2 130.O 1 2 3.7 77.4 6.4 162.2 1 20.工 240.4 235,3 201.3 197.7 112.3 107.0 176.9 工72.6 表一2 土壊硬度改善による防除試験 発病株翠 賛化程度 アントシアン 発病程度 区 別 年 次 発芽撃 % % 亘 100 1 87 3 1984 ロータリー 耕 起 すきぐわ耕起 排氷溝設置 播種後鎮圧 簡易整地播 {対照〕 ミサトゴ.’レデン 表一3 1985 1984 1985 1984 1985 1984 i985 i984 1985 1984 1985 2 2 2 1 2 1 2 2 3 0 0 100 92 93 83 95 75 99 100 100 67 87 3 100 1 iO0 3 99 1 100 3 100 工 79 3 2 55,6 6.7 84.0 6,3 79.2 7.工 55,6 6.6 89.9 6,1 3・ 0 −0 O 3 iOO 78−5 6.7 ち5.8 6.6 O 0 工 100 穂長 C皿 C皿. 3 3 2 3 2 3 o 3 98 稗長 54,3 6,7 86.9 6,6 45.3 i.9 96,6 70.1 全量 量 9 精粒璽 210,0 18i.0 229.5 200.5 177.B. 242.0 177.4 220,5 i79.0 238.5 174.4 工95.0 ,190.5 工82.O 153.5 240.5 182,5 6・2一?g5・5. 6.4一 ’22 7.5 152.5 237.0 173.6 292.5 226.O’ 抵抗牲品種作付けによる防除試験 区 別 ミサト3作 あまぎ1作 ミサト2作 あまぎ.2作 ミサト1作 あまぎ3作 あまぎ4作 発芽率発病株率 発病程度賛化穫慶 % % ㎝’ 全璽 精粒璽 266.0 79.工 5.4 26 1.0 260IO 2 264.O 68.4 6.2 232.5一 225.O 2 229.5 58,5 5.0 100.0 4.5 !.O O,5 97,7 29.1 2.O 穂長 収 量 80.工 5.3 267.O O.0 0.O 2’i.5 1.5 稗畏 ■㎜ 0 330.0 100,0 100.0 穂数 315.5 140.O 139.0 注 播種時期:10月251ヨ、ミサト:ミサトゴールデン、あまぎ:あまさ二条 表一4 薬剤土壌混和による防除試験 区 別 発芽事発病蛛率 発病程慶賛化程度 % % 99 89 100.O 工0Kg■10a 100.0 20㎎■10a 理 i00.O 100 無 処 注 播麹及ぴ薬剤施用時期:10月25E1 稗長 穂長 収 量.9 全重 精粒重 2 58.4 2 56.8 6.2 3 45.3 4.9 6.1 206.0 205.0 194.0 194.O 182.5 173.6 表一5 大麦縞萎縮病防除試験 処理内容 播種時期 排水溝 薬剤施用 晩 播 ○ A B C 晩 穂 早 播 ○ 早 播 早 播 早 播 A B C A B C 発芽率発踊株率 発病程度。黄化程度 % % 92.3 0,7 91,3 0,7 93.7 1.1 91.7 0.7 93.3 7,9 91.5 6,6 92,3 3.6 96.0 9,4 9 6,3 1 0,4 96,7 19.3 92.8 5.7 97,7 28.9 0.O O O.0 0 0,5 0 O.2 0 1.0 1.0 1.0 2,0 2 2,0 2 2.0 2 1.O i 2.0 2 穂数 ■m 431.3 424.0 446.0 453.7 232,7 25I.3 186.7 245.7 稗長 穂長’ 収 量 9 金重 精粒重 92.2 5,2 368.7 364.8 90.1 5,1 347.9 341.7 85.6 5.O 90.7 5.3 66.7 4,8 349.7 344.4 66.8 5,0 63.8 4.7 7LO .5,2 2 1 0.6 207.3 201.7 195.3 223.2 220.8 ’229.0 61.8 5,0 1 98.7 工 93.9 199.3 230.3 232.3 58.6 5.O 1 76.8 工 66.8 64.8 5.0 58.5 5.0 206.0 201.5 220.3 211.6 窪1鍛鱗澗二閉多蝪鵜;蹴豊:リドミル粒剤1。。。。:フジワン粒剤エ。㎎ 一工0一 384.4 378.1 216.1 207.6
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