スマートに。頑丈に。 過酷な環境でのLAN構築

スマートに。頑丈に。
過酷な環境でのLAN構築
お菓子を買うとき、Eメールを送信するとき、遊園地で乗り物に乗るときなど、私達は日常のほと
んどの場面でネットワークに触れています。生活のあらゆる場面でイーサネットや手のひらサイズ
のワイヤレス端末が利用され、デジタル情報のボリュームが増えているため、これまで以上により
多くの場所でネットワークの構築が必要とされています。
過去10年、産業用オートメーションへの情報伝達、システム制御、および企業内のLAN環境と工
場環境の統合を目的として、製造環境が産業用イーサネットへの移行を迅速に進めてきたことを考
えれば、より過酷な環境に耐えられるネットワークケーブル、パッチケーブル、コネクタへの需要
が増えているのは当然のことと言えるでしょう。
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しかし、産業現場ほど過酷ではないものの、オフィス環境以上の高耐久性が求められる環境ではどうでしょうか。このよ
うな環境でのネットワークの構築は、想像以上に当たり前になってきています。デジタル化が進むに従って、このような環
境がいたるところで生まれています。そこでは様々なダメージや腐食に耐えることができ、コンポーネント交換の必要の無
い耐久性と長期的な信頼性を備えたケーブルやパッチコード、コネクタが必要とされます。
標準規格を知る―MICEからNEMAへ
産業環境で用いられる標準規格は、工場の床や製造プラント、加工施設などに適用される一方で、上記のような、商業用か
産業用かの区別がはっきりと定められていない中間環境で必要とされるケーブルの耐久性やコネクティビティの度合いを判
断する際にも用いることができます。
国際規格であるISO/IEC 24702では、産業環境におけるイーサネットベースでのデータ通信の構築に用いられる平衡ツイス
トペアケーブルと光ファイバーケーブルについて導入案件毎の要件を定めており、また産業用地内におけるオペレーション環
境に適したケーブルや接続性についても、導入における選択肢と要件を定めています。ISO/IEC 24702は、同種の標準規格
であるアメリカのTIA-1005やヨーロッパのEN 50173-3と同様に、産業用ネットワークの構築において製品ごとに要求さ
れるパラメータを分類するために、MICEを取り入れています。
MICEとは機械的強度・侵入(埃・液体)・環境・電磁環境への考慮の略で、環境条件の過酷度を3つのレベルで表してい
ます。一般的なオフィス環境がレベル1、軽産業環境がレベル2、そして産業環境がレベル3となっています。たとえば
M3I3C3E3のネットワークインフラストラクチャー環境では、最も負荷の高いレベルの振動、衝撃、衝突、曲げ伸ばしに
耐えられるコンポーネントが求められます(表1参照)。
表1:MICEのパラメータ
MICEをガイドラインとして用いることで、環境条件の過酷度を判断し、商業環境、軽産業環境、そして産業環境のどちら
に分類できるかを判断できますが、ある環境がどれか一つだけに分類されるということはあまりないでしょう。また、A地
点からB地点へケーブルを敷設するような場合でも、その区間内で適用されるMICEの分類はケーブルの位置によって変化す
るでしょう。そのため、過酷な環境でケーブリングを行うためには、デザイナーは敷設環境について深く理解し、またMICE
のそれぞれのパラメータがレベル1からレベル3のどれに分類されるのかよく理解しておくことが必要です。場合によっては
振動や電磁波による干渉の測定など、環境測定の際に特別な機器が必要となることもあるでしょう。上記の標準規格では、
ターゲット環境内にどのレベルが混在しているかを判断する目安として、MICEの評価表が掲載されています(表2参照)。
MICEのレベル評価を用いてコンポーネントの選定を行うには、個々のパラメータについて他の要素を考慮に入れずに、起こ
りうる最悪の状況や最も低いレベルのパラメータについて想定してみることです。たとえば、液体に晒されているある環境
がM1I3C1E1の分類をされている場合、もしM3I3C3E3レベルの上位コンポーネントしか利用できないのであれば、たとえ
他のパラメータがそこまでの高耐久性を必要としていなくても、このコンポーネントを導入する必要があるかもしれません
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環境の過酷度を検討するもう一つの規格ベースの評価方法が、CENELEC(欧州電気技術標
表2:MICEの分類
準化委員会)が策定した保護等級(IP)です。IPコードと呼ばれることもあるこのコードは
、IPの後ろに付された二桁の数字で構成されます。最初の数字が固形物(塵など)に対する
保護レベルを表し、二つ目の数字が液体(水など)に対する保護レベルを表します。たとえ
ば、表3に示されているように、IP22のレーティングは指程度の大きさの固形物と鉛直に
滴る水滴に対して保護能力があることを表しています。
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表3:IPコードによるレーティング
私たちの業界では、高耐久性が求められるコネクティビティの構築には塵と水の侵入を
完全に防ぐIP66かIP67が一般的に多く使用されます。IPコードは水気や塵のある環境
でどの程度の保護が必要かを判断する際には便利な指標ですが、一方で、耐熱性や動作
可能な湿度範囲、また高レベルの静電気放電(ESD)や電波干渉(RFI)の影響下でのパフォ
ーマンス維持能力などについて定めているMICEの各パラメータをないがしろにしては
いけません。
NEMA 4Xのエンクロージ
ャは劣悪な環境下での防塵
、防水、防食性を提供しま
す。
表4:NEMAによるエンクロージャ評価コードと対応するIPコード
他にも、キャビネット、サーフェイスマウントボックス、フロアボックス、シーリングボック
ス、ジャンクションボックス、さらにネットワーク機器の収納器具といったエンクロージャ
についても考慮すべき標準規格があります。米国電機工業会(NEMA)で用いられているレーテ
ィングでは、エンクロージャを設置するのに適した様々な環境について定義されていま
す。NEMAのエンクロージャ用レーティングでもIPコードと同様の評価コードが用いられて
います。表4では最も一般的なNEMAエンクロージャについて説明します。
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耐久性の高いケーブルやコネクティビティを選択する際には、ツイストペアケーブルと光ファイバーケーブルの両方のソリュ
ーションを考慮する必要があるかもしれません。特に、光ファイバーケーブルは、商用データセンターや電気通信室を越え
たワークエリアにより近い場所に広帯域幅を確保しなければならなかったり、長距離の配線を行わなければならないといっ
た場合などが考えられます。
全てのMICEパラメータがツイストペアケーブルと光ファイバーケーブルの両方に影響するわけではありませんが(特に、光
ファイバーは電磁波の干渉を受けない)、コネクティビティに対するIP66/IP67の評価は、機械的強度や環境、化学薬品に
関するパラメータと同様に、どちらの種類のケーブルにも適
用することができます。過酷な環境用に高い耐久性を備え
たケーブルソリューションやコネクティビティソリューショ
ンは、一般的に以下のコンポーネントや特徴を備えている
ことが普通です。
• 耐薬品性と熱可塑性を備えた保護カバー―プラグやアウト
レットに使用される素材は、一般的な工業化学物質だけで
なく、最も溶解力の強い薬品にも耐えられる最大限の保護
能力を備えていなければなりません。
多くの環境で、光ファイバーのアウトレットでも耐久
性の高いコネクティビティの要求は高まっています。
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キーコンポーネントの特定―ケーブルからコネクタまで
• アウトレット用ダストキャップ―耐久性の高いダストキャ
ップを用いることで、使用されていないアウトレットを保
護し、また水の侵入を防ぐこともできます。
• IP67認定のツイストペアケーブルや光ファイバーを用い
たコネクティビティ―IP66/IP67の認定を受けた耐久性の
高いアウトレットやモジュラーパッチコードは塵の侵入を
防ぎ、湿気から守ります。
• シールドツイストペアケーブルを用いたツイストペアケー
ブルの配線―F/UTPケーブルやS/FTPケーブルといったシ
ールドツイストペアケーブルで配線を行うことで、EMIや
RFIに対する耐性を更に高めることができます。
• より丈夫なケーブルジャケット素材―ケーブルジャケット
の素材に用いられるポリウレタンや熱可塑性のあるエラ
ストマーは引張強度が高く、また低温柔軟性と低温脆性
に優れているため、断裂、摩耗、薬品、湿気などへの耐
性にも優れています。
劣悪な環境におけるクリティカルなネットワークコネ
クションの保護には、ガスケットとダストキャップの
ついたステンレス加工のスチール製フェイスプレート
を空きポートに用いるのが理想的です。
• IP44認定のフェイスプレート―リアシーリングガスケットのついたステンレス加工のスチール製フェイスプレートは、湿
気とごみの侵入を防ぎます。
• MEMA 4Xエンクロージャ―NEMAの認定を受けたエンクロージャとサーフェイスマウントボックスは、耐久性の高い
アウトレットの成端点を保護します。
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最適な製品の選定―球場から船内まで
デジタル情報、携帯端末、イーサネットなどの増加に伴い、消費者や従業員は生活や仕事をより快適に行うために、全ての
場所でインターネットやデジタルアプリケーションと繋がることを望んでいます。その結果、今日の企業は以前であればネ
ットワークや無線環境が必要とされていなかったであろう環境にもネットワークを拡大することが求められています。一般
的な商業施設とは異なった環境でのネットワークアクセスが求められているため、企業は商用レベルでのコンポーネントだ
けではなく、より高い耐久性を持つケーブルやコネクティビティを提供する製造メーカーと提携しています。
ロサンゼルス・ドジャースの本
拠地であり、メジャーリーグの
全球場の中で3番目に古い築年
数52年を誇るドジャースタジア
ムは1億5000万ドル規模の改
修工事を行いました。最先端の
顧客体験をファンに提供するた
めに、ツイストペアケーブルと
光ファイバーによる高性能の配
線システムを新たに導入し、球
場全域でのWiFi環境や、デジタ
ルディスプレイ、IPベースのセ
キュリティ、チケット売り場、
売店や店頭端末など、数多くの
改善を施しました。
Dodger Stadium
また、改修工事の一環として、新たにレフト側とライト側のスタジアム入り口に広場
がつくられました。売店はスタジアムのいたるところで利用できますが、その中で試
合前と試合後のファンの注目を最も集めているのは、この広場に新しくオープンした
Bullpen Overlook Bars、Think Blue Bar-B-Que、Tommy Lasorda’s Italian Trattoriaの三店舗です。
ドジャースの情報技術担当副社長のラルフ・エスキベル氏は、LAN回線のコネクティ
ビティを球場外の食品販売エリアでも最大限確保するために、シーモンと協力し最適
な製品について検討しました。屋外での製品使用にあたり、環境要因による業務用コ
ンポーネントへのダメージリスクを考慮し、シーモンのIP66/IP67認定のZ-MAX
6Aシールドアウトレットとモジュラーコードが選択されました。
Z-MAXのコネクタは完全な防塵性と短期間の防水性を備え、また高い温度と広い湿
度範囲に耐えられます。より強固な保護を確保するために、Z-MAXのコネクタは頑
IP66/IP67認定のZ-MAX 6Aシール
ドアウトレットとモジュラーコード
が屋外の屋台と売店に敷設されまし
た。
丈で、化学薬品に強く、産業レベルの熱可塑性を備え、特許を取得したクオータータ
ーン型のバヨネット式の装着方法を採用しています。また、パフォーマンスとノイズ
耐性をスタジアム全域で実現するために、シーモンのシールドF/UTPケーブルが選択
されました。
エスキベル氏は「将来、この規模の投資をいつまた行えるようになるかはわからな
い」と語った。「とても多くの技術を抱えているため、確実な保護を施す必要があ
る。」
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トライデント・シーフード社
シアトルに拠点を置く米国最大の水産食品会社トライデン
ト・シーフード社は、漁船の運航と工場での加工食品の生
産を行う垂直統合型企業です。工場ではTrident、Louis
Kemp、Rubenstein'sなど様々なブランドネームの下で鮮
魚、冷凍、缶詰、燻製、インスタント食品などの生産を行
っています。トライデント・シーフード社は3隻のトロール
工船内へのネットワークの拡張を図り、高い耐久性を持つ
シーモンのコネクティビティに目を向けました。
全長276フィートのコディアック・エンタープライズ号を
はじめとして、トライデント社は操舵室で用いられてい
た既存の通信環境の改善だけでなく、漁業のピーク時に
長期間にわたって海上で生活を送る125名を超えるクル
ー全員に船内全域で利用できるWi-Fi環境を提供するため
に、船上のネットワークの完全なアップグレードを模索
しました。乾ドックの短い期間を利用して、ネットワー
クインフラストラクチャーの包括的サービスインテグレ
ーターであるCabling & Technology Services社(CTS)が
この船の全ての配線インフラストラクチャーの総入れ替
トライデント・シーフード社がシーモンのIP66/IP67認定のMAX
アウトレットを導入したトロール船は、276フィートを誇るこの
コディアック・エンタープライズ号だけではありません。
えを行いました。
CTSのサービスプロジェクトマネージャーであるジェーム
コンポーネントの故障を起こす海水に対する防食性と防水
性を実現するため、ここでも、船内全域にシーモンの
ズ・ガノン氏は「船上での配線作業は配線場所の狭さや海
IP66/IP67認定のカテゴリ6 MAXアウトレットとモジュラ
い仕事だ」と語っています。「Wi-Fiアクセスの実現と水
「トライデント社は水に負けない製品を求めていて、シー
に船内全域にコネクションを張らなくてはなりませんでし
た。」とガノン氏は語りました。「これまで多くのプロジ
水の腐食など、様々な環境要因が影響するためとても難し
産加工エリア内のパッケージソフトウェアとの接続のため
たが、加工エリアは床から天井まで濡れていることがあり
、また衛生処理の一環としてウォッシュダウンを行ってい
ました。」
ーコードが導入されました。
モンはその要望に応えることのできる製品を持っていまし
ェクトを通してシーモンの製品を使ってきましたが、高耐
久性を謳う製品を使ったことはありませんでした。2014年
中に導入が完了する予定のアイランド・エンタープライズ
号とシアトル・エンタープライズ号の二隻のトロール工船
でもこの製品を採用しています。」
適切なパートナー選び―経験と製品知識
LAN環境を劣悪な環境へと拡大していく企業が増加していますが、商業環境でのネットワークデザインや構築の経験を持っ
ている企業が、産業環境でのネットワークの構築やMICEパラメータの運用、また必要とされる製品の特徴について十分理
解しているとは限りません。さらに、求められるコンポーネントや環境の苛酷さを判断する規格やパラメータは、常に単純
な適用ができるとは限りません。
産業規格はそれぞれの環境に依存するコンポーネントを検討するために用いることができますが、中間環境が「軽産業環
境」として定義されることもあります。軽産業環境という呼び方は、産業環境ではなく、商業環境の延長として過酷な環境
にネットワークを拡張するような場合に誤解を招きやすくなります。したがって、このような環境での設計段階において「
産業」規格の遵守が徹底されなかった結果として、不適切なコンポーネントが使用されたり、ネットワークの障害が起こり
ます。
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トワーク構築の経験があるデザイナーであれば、あるコンポーネントが10フィート以内の距離から誘導加熱を受け
る場合、E3のレベルが要求されることを想像できる一方で、わずか数フィートしか離れていない距離でも、 それが
蛍光灯の熱放射であれば、E1のレベルで済むことが見抜けられるでしょう。
また、耐久性の高いケーブルやコネクティビティを選定する際にもう一つ考慮しなければならないことは、様々な
パフォーマンスレベルを持つツイストペアケーブルや光ファイバーケーブルが存在するということです。耐久性の高
い産業用コンポーネントを製造しているメーカーのほとんどが、ツイストペアケーブルについてはカテゴリ6あるい
はカテゴリ5eを最上位モデルとするに留まっています。更に、光ファイバーのコネクティビティとケーブルについて
は、耐久性の高い最新の製品は少なく、選択肢が限られています。これには、多くの産業システムがカテゴリ6Aや
光ファイバーを使用するほどの広帯域幅を必要としていないことに大きな原因があります。しかし、より多くの
LAN環境が劣悪な環境へと拡張されていく中で、ネットワークデザイナーは企業内LANと同レベルの性能実現に腐
心しています。通常のLAN環境で用いられているツイストペアケーブルや光ファイバーと同じコネクティビティを保
ちながらも、更に高い耐久性を持ったツイストペアケーブルや光ファイバーを提供できるメーカーを選ぶことで、劣
悪な環境でのネットワーク構築に妥協することなくパフォーマンスを実現できるでしょう。
経験の不足しているネットワークデザイナーが劣悪な環境におけるケーブルとコネクティビティのデザインを行う場
合には、耐久性の高い最新のツイストペアケーブルや光ファイバーケーブル用のコンポーネントを扱っていて、標準
規格や仕様について深い理解を持ち、また様々な環境要因を理解しそこから必要とされるケーブルやコネクティビ
WP_Ruggedized Rev. A 12/14 (US)
ティを判断できる経験を持っているメーカーと緊密な繋がりを持つことが賢明と言えるでしょう。
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このような環境でのネットワークのデザインは経験がモノを言います。たとえば、産業環境や劣悪な環境でのネッ