4K放送用システム基盤にEMCアイシロンを採用 大容量番組

スカパー JSAT 株式会社
4K 放送用システム基盤にEMCアイシロンを採用
大容量番組データの効率的な送出と安定運用を実現
4K 放送の早期実現を目指し
テストベッド事業に参加
そこで同社では、次世代放送の早期実現を目
指して設立された一般社団法人次世代放送推
進フォーラム(NexT V-F )に参画。4K 放送サー
東京・港区に本社を置くスカパー JSAT は、放
ビスの実用化実証を行う4K 衛星放送用テスト
送・通信の2つの分野で先端的なサービスを提
ベッド事業に加わることとなった。しかし、そこ
供する企業である。放送事業の分野では、
「ス
では、様々な課題に直面したという。
カパー!」「スカパー!プレミアム」のサービスブ
ランドで知られる日本最大の有料多チャンネル
放送を展開。多彩で高品質なコンテンツを提供
することで、約 340万人以上もの顧客を獲得し
大容量4Kコンテンツを
アイシロンで安定的に送出
ている。また、もう一つの柱である宇宙・衛星
事業では、マスメディアや自治体・公共、教育機
同社がテストベッド事業において実施したの
関、医療、民間企業など、幅広い分野の顧客に
は、4K 番組のプロダクション(制作・編集)シス
対して衛星通信回線を提供。こちらの事業も日
テムとプレイアウト(送出)システムの構築・運
社名:スカパー JSAT 株式会社
本唯一、かつアジア地域最大の規模を誇る。
用、地球局へのアップリンク、並びに地上での
http://www.sptvjsat.com/
その同社が現在 力を入れているのが、次世
受信確認の 4点だ。「従来の HD放送と同じ業務
■ 導入事例
代放送サービスである「4K 放送」の実現に向け
フローを、4K 環境においても同じように実施で
4K 放送送出システムに EMC アイシロンを活用
た取り組みだ。技術運用部門 放送技術本部 放
きることを実証する」
(石黒氏)ことが、今回の
■ 課題
送技術部 技術管理チーム アシスタントマネー
テストベッド事業の狙いである。
■ お客様プロフィール
有料多チャンネル放送「スカパー!」を展開するスカパー
ジャーの石黒 剛氏は「総務省が掲げる4K/8K
とはいえ、これはそう簡単なことではなかっ
放 送のロードマップの実現に向け、今後『オー
た。映画制作の世界では既に 4K 対応の機材が
ルジャパン体制』で次世代放送サービスへの取
広く利用されているが、テレビ番組制作用の機
の受け皿として設立された次世代放送推進フォーラム
り組みがますます本格化します。放送事業者で
材には映画とは異なる機能が求められる。たと
(NexTV-F)に参画。
4K 放送の実証実験のためのテスト
ある我々としても、そのための準備を整えてお
えば、ディレクターの指示をカメラマンに伝え
かなくてはなりません」と語る。
るためのインカムシステムや、オンエアタリー
JSAT では、次世代の放送サービスの実現にも積極的に
取り組んでいる。その一環として、昨年度、総務 省主導
で策定された次世代放送ロードマップを実現するため
ベッド検証と、
その後に控える試験放送の実現のために
システムを構築した。ここでポイントとなったのが、番組
やリターン映像を返す機能など、そもそも映画
送出業務を支える「アーカイブストレージ」の構築であ
制作用の機材では想定されていない機能が必
る。
4K 放送では従来よりも格段に大容量の番組データ
を取り扱うため、
同社では高い性能と拡張性を有するス
要であり、4K 機材を取り扱うことすら初めての
トレージ製品の選定に着手した。
中で、放送ならではの細やかな機能の調整と確
■ EMC Isilon® のメリット
認を進めなくてはならなかった。
スカパーJSAT は、以下のような理由から
さらに大きな問題となったのが、4K 番組デー
EMC アイシロンを採用した。
タの大容量さだ。「プロジェクト開始当初に利
• 4K 放送用大容量番組データを快適に活用できる
用していた4K フォーマットでは、一時間番組の
高いパフォーマンス
• 24 時間・365 日の連続運用に余裕で耐え得る
容量が約 6.7T B 、ファイル数にして 21 万6000
高信頼・高可用性
ファイルにも達してしまう。単純なファイル転
• 今後のデータ増大にも対応できる拡張性と
送だけでも相当な時間が掛かってしまうので、
強力なデータ保護機能
本当にHD放送と同じワークフローが実現でき
るのか疑問に思ったほどです」と石黒氏は振り
返る。
その後開発された XAVC フォーマットでは、
1 時間あたりの容量が約 275GB にまで軽減さ
れたが、これでもHD放送とは比較にならないく
スカパー JSAT 株式会社
技術運用部門
放 送 技 術 本 部 放送技術部
技 術 管 理チーム
アシスタントマネージャー
石黒 剛 氏
CaseStudy 事例
らいの大容量であることに変わりはない。その
影響が特に顕著に現れたのが、4K プレイアウト
システム内に設置される「アーカイブストレー
ジ」であった。
「編集作業が完了した番組データを溜め込
て実施した PoC(Proof of Concept:概念実証)
高めることにも寄与している。
んでおき、必要に応じて番組送出サーバーへ転
では、実際の業務環境と同様の構成を用意して
『Channel 4K 』の安定的な
「Isilon X400も、
送するのがアーカイブストレージの役割。番組
様々な検証を実施した。たとえば、大容量 4K
サービス提供に大きく貢献してくれています。
送出サーバーは丸一日分のデータしか保有して
コンテンツの転 送を何度も繰り返して性能が
性能、信頼性は期待通りですし、本稼動開始以
いないので、番組が終わる度に次の番組をアー
落ちないことを確認したり、映像再生中に突
来トラブルらしいトラブルも全くありません。ま
カイブストレージから補充していかなくてはな
然 HDD を引き抜いて信頼性・耐障害性をチェッ
た、大量の 4K コンテンツをワンボリュームで管
りません。その一方で、プロダクションシステム
クするといった具合である。その結果、4K 放
理できますから、運用効率化の面でもメリット
からも編集済みの番組データがどんどん送ら
送用アーカイブストレージとしての利用に十分
は大きいですね」と石黒氏は満足げに語る。
れてきますから、アーカイブストレージは一日
耐えうることが実証できた。
中動きっぱなしです。しかも放送許諾切れ映像
実際に構築された 4K プレイアウトシステム
などの一部のデータを除いて消去も行いませ
では、アイシロンの「EMC Isilon X400」を10
んので、蓄積される容量もどんどん増えていく
ノード導入。実効容量として約1PBが確保され
ことになります」と石黒氏は語る。
ている。4K 放送の制作、送出に必要な設備が
このような厳しい要件を満たせるストレージ
整ったことで、テストベッド事業も円滑に進行。
として採用されたのが、EMC のスケールアウト
当初に掲げた「HD 放 送と同じワークフローを
NAS「EMCアイシロン」である。石黒氏はアイシ
実現する」という目的を無事果たすことができ
ロンを選んだ理由を「まず一点目は大量の 4K
た。「大 容量データを取り扱う 4K 放 送におい
コンテンツを余裕で格納できる大容量さです。
て、アーカイブストレージの持つ重要性は H D
一般的な NA S 製品なども検討しましたが、PB
放送よりも格段に大きい。アイシロンの採用に
級のデータを取り扱うとなると、やはりスケー
よって、そこがクリアできたのは非常に良かっ
ルアウト NA S であるアイシロンのアドバンテー
た」と石黒氏は振り返る。
ジは大きい。また、もう一点はパフォーマンス
ま た 、今 回 構 築 さ れ た テ スト ベッド 設 備
です。アイシロンはノードを追 加することでリ
は 、2014 年 6 月より開 始さ れ た 4K 試 験 放 送
ニアに性能を向上させられますし、10G のイン
「Channel 4K」用の放送設備として引き続き
ターフェースも豊富に備わっています。常に安定
活用されている。
的なスループットを確保できるのは大きな魅力
同社の東経 124/128 度 C S を用いて放送さ
でしたね」と説明する。
れる「Channel 4K」では、超高精細な 4K 映像を
4K」に続く新たな 4K 放送もスタート。NexT V-F
利用した多彩な番組をラインアップ。124/128
が放送主体の「Channel 4K」と異なり、こちら
度 CSデジタル対応アンテナや4K 放送対応テレ
については同社が独自に運営を行う。有料チャ
独自の4Kチャンネルを開局
ビジネスの成長に大きく貢献
さらに同社では、2015 年3月より「Channel
ビ/チューナー、スカパー! プレミアムサービス
ンネルとしては世界初の 4K 専門チャンネル「ス
IC カードなどの機器があれば、これらを無料で
カパー! 4K 映画」「スカパー ! 4K 総合」の2チャ
楽しむことができる。サービス開始当初には、
ンネルを用意し、スポーツ、映画、ドキュメンタ
こうした 同 社 の 取り組 み を 後 押しすべく、
世界的なスポーツイベントを世界で初めて4K 映
リー、バラエティ、オリジナル新作番組など、魅
EMC でも全面的な支援を提供。その一環とし
像で放 送するなど、4K に対する社会の関心を
PoCで性能・信頼性を実証
試験放送の設備にも活用
力溢れる4K 番組を放送していく予定だ。もちろ
んここでも、今回構築したアーカイブストレー
ジが活用される。
システム構成図
「PoCの段階で、複数チャンネル分の放送を
考慮した検証を行っていますので、現状の環境
のままで全く問題なく4K 多チャンネル放 送に
対応できます。今までにない高 画質な映像コ
ンテンツをお客 様にご提 供することで、4K 放
送全体の普及と『スカパー ! プレミアムサービ
ス』の加入者拡大に弾みを付けていきたい」と
石黒氏。今回構築された4K プロダクション/プ
レイアウトシステムは、同社の今後のビジネス
の成長を支える重要な役割を担うことになる
のだ。
それだけに E MC とアイシロンへの期待も大
きい。石黒氏は「今回のプロジェクトでは、PoC
の段階からEMCの手厚い支援が受けられ非常
に助かりました。当社では今後も 4K/8K 時代
を見据えた取り組みを推進していきますので、
EMCにも引き続き我々の取り組みをしっかりと
支えて欲しいですね」と語った。
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2015年1月版