サーモフィッシャーサイエンティフィック株式会社 キーワード 1 卓上 NMR、 エステル合成反応、 H-NMR、picoSpin、有機合成実験 はじめに エステルは自然界に広く存在している化合物です。特に低分子量のエステルは特徴 的な臭気を有するものが多く、エッセンシャルオイルなどに利用されています。 シーケンス:d1-[θ°-aq-d1]ns ’ エステル化合物は上式に示す構造で、R、R ’は直鎖または分岐鎖の脂肪族または芳 香族の置換基が結合したものです。 エステル合成には多くの合成方法があります。もっとも簡単な方法はフィッシャーエ ステル合成反応で、カルボン酸、濃縮酸触媒の存在下でアルコールを還流すること により、エステル化合物を合成することができます。この合成反応ではルシャトリエ の原理を利用しており、反応混合物に反応物質の一つを過剰に添加することで、平 衡反応をエステル合成側へ進行させることができます。添加する物質にはもっとも 安価な反応剤を選択することが望ましく、本反応ではカルボン酸を用います。この 反応機構では、まずカルボキシル基のプロトン化が起こり、アルコールによる求核攻 撃、プロトンの移動、および酸触媒による水の脱離によってエステルが合成されま す。このプロセスでは、熱力学的にもっとも安定なエステル生成物を得られるように 制御されます。反応物に三級アルコールを用いるとプロトン化による別の反応が生 じるため、フィッシャー法では一般的に一級または二級アルコールを用います。本ア プリケーションノートの手順では、イソペンチルアルコール(3 -メチル -1-ブタノール) と酢酸から酢酸イソペンチル(酢酸3 -メチルブチル)を合成します。 目的 この実験の目的は、濃硫酸を触媒としてイソペンチルアルコール と酢酸とのエステル化反応により酢酸イソペンチルを合成するこ とです。生成物は、蒸留、洗浄した後に NMR分光法で確認を行い ます。 パルスシーケンス 合成物の確認に使用するNMR(Thermo Scientific™ picoSpin™ 45) では90度の単一パルスによる測定を行います。繰り返し遅延時間 (d1)は FIDの信号強度を最大化するように調整されています。 θ° :フリップ角(90度) FID:自由誘導減衰 d1:繰り返し遅延時間 (µs、スピン‐格子緩和) p1:パルス長 (µs) aq:収集時間 (ms) ns:スキャン回数 手順と分析 必要時間:3 ∼ 3 .5時間 難易度:中程度 試薬:酢酸、イソペンチルアルコール、酢酸イソペンチル ○実験器具 ・picoSpin 45 ・シリンジフィルター ・シリンジポート ・ポートプラグ ・試験管 ・クランプ(フラスコ、ケックジョイント) ・蒸留装置 ・100 mL 丸底フラスコ ・25 mL 三角フラスコ ・冷却器 ・三方アダプター ・減圧用アダプター ・温度計アダプター Application Note NMR15001 酢酸イソペンチルのフィッシャーエステル合成 反応実験と picoSpin 45による分析 ・NMR解析ソフトウェア(Mnova™) 2 ・氷浴 乾燥管 ・実験スタンド ・サンドバス(またはマントルヒーター) ・沸騰石 ・分液ロート ・温度計 ・還流冷却器 ・50 mL 丸底フラスコ ・還流管 還流管 ・乾燥管 ・picoSpinアクセサリキット 水 ・1 mLポリプロピレンシリンジ ・22ゲージ90度針 50 mL丸底フラスコ ・ドレイン管 モル質量 体積 密度 MP BP (g/mol) (mL) (℃) (℃) (g/mL) 試薬 氷酢酸 60.05 25 酢酸イソペンチル 130.1 生成物 142 0.876 イソペンチルアルコール 88.15 20 130 0.809 濃硫酸 98.08 5 1.841 5% 炭酸水素ナトリウム 84.01 250 1.0018 飽和食塩水 118 1.049 10 無水硫酸ナトリウム サンドバス 図1: 還流装置図 5. 還流完了後、溶液を室温に冷却します。分液ロートに全溶液を 移し、50 mLの蒸留水を追加します。溶液をよく混合し、分離 した下側の水層を除去します。 6 . さらに蒸留水を25 mL追加し、混合後に分離した下側の水層 を除去します。 142.04 7. 過剰の酢酸を除去するために、さらに5%の炭酸水素ナトリウ ム水溶液25 mLを加え、分液します。 反応 注:抽出中、二酸化炭素が放出されるので注意してください。 8 . 抽出した水層の pHを確認し、中性でない場合は「7」の操作を 2回繰り返します。 9. 酢酸を除去した後、飽和食塩水5 mLを用いて有機層を洗浄し ます。この洗浄を2回繰り返します。 メカニズム 10. 分液後の有機層を25 mL 三角フラスコに移し、無水硫酸ナト リウム(Na2 SO4)または硫酸マグネシウム(MgSO4)を用い ’ ’ ’ て乾燥させます。 11. 液体が透明になるまで乾燥させ、有機層を50 mLの丸底フラ スコに移します。 12. 図2に示すように、蒸留装置を組み立てます。 ’ ’ ’ 安全上の注意 この実験操作を行う場合、最初に安全マニュアルを必読してくだ さい。 実験手順 1. 100 mLの丸底フラスコに25 mL(0.42 mol )の氷酢酸を、続 いて20 mL (0.185 mL )のイソペンチルアルコールを加えます。 フラスコを回すように揺すり、液を混合します。 2. 混合液に5 mLの濃硫酸を加えます(手袋着用)。フラスコを回 すように揺すり、溶液を混合します。熱が生成されます。 3. フラスコに沸騰石を投入し、還流冷却器の接合部分にグリース を少量塗り広げてフラスコを接続します。 4. サンドバスまたはマントルヒーターを用いて溶液を1時間加熱 します。 イソペンチルアルコールおよび酢酸イソペンチルについても 上記と同様の操作を行います。 注: 「任意」物質の中には水を含むものがあるため、TMSを添加し 三方アダプター ないでください。 冷却器 注入 1. シリンジを用いて空気を注入し、キャピラリーカートリッジか らシム調整用の液体(水、アセトンなど)を押し出します。 大気開放 三角フラスコ 2. クロロホルムなどの揮発性溶媒0.1 mLを注入し、再度空気を 注入してキャピラリーカートリッジを乾燥させます。 3 .「Script 」リストの中から「onePulse 」を選択します。 4. 22ゲージ 90度針を取り付けた使い捨てのポリプロピレン製 水 1 mLシリンジを用いて、試料を0.2 mL 取り出します。 図2: 蒸留装置図 5. 取り出した試料の約半分を注入します。 13 . サンドバス、またはマントルヒーターを使用し、沸騰石をフラ スコに入れ、蒸留します。 ドレイン 管を観 察し、気 泡が 出なくなるまで試 料を注 入し、 カートリッジ内に空気が残らないようにします。 6 . PEEK™製プラグを注入口と出口に取り付けます。 14. 氷浴中で蒸留物を溜めるフラスコを冷却します。 15. 135 ℃から143 ℃の間で蒸留する液体を捕集します。 バナナの臭いを有する無色透明の液体が生成され、80 ∼ 90 % の収率で得られます。 測定 「onePulse 」測 定を「Start 1. 下 表のパ ラメー ターを 入 力し、 Run 」をクリックして行います。 「空気」→「溶媒」→「空気」の順にカートリッジに 2. 測定終了後、 注入し、カートリッジ内の洗浄を行います。 分析 パルススクリプト: onePulse 必須: パラメーター 下記物質の H NMRスペクトル測定 1 • 酢酸(反応物) tx frequency(tx、送信周波数) • イソペンチルアルコール(反応物) 数値 Hラーモア周波数(MHz) シム調整時に自動設定 1 scans(ns、スキャン回数) 16 または 25 回 pulse length(pl、パルス幅) 装置固有初期設定を使用 acquisition time(aq、収集点数) 750 ms 下記物質の H NMRスペクトル測定 T1 recycle delay(d1、T1回復時間) 10 s • 反応物混合液(還流前) bandwidth(bw、バンド幅) 4 kHz • 還流後の混合液 post-filter atten. (pfa、 後置フィルターアッテネーター) 11 phase correction(ph、位相補正) 0° exp. filter(LB、指数関数フィルター) 0 Hz • 酢酸イソペンチル(蒸留後の生成物) 任意: 1 • 水、炭酸水素ナトリウム水溶液によるそれぞれの洗浄後の有機 層 • 塩による抽出と硫酸ナトリウムによる乾燥後 max plot points(最大プロット点数) 400 max time to plot(最大プロット時間) 250 ms 操作手順 picoSpin NMR分光計を用いた試料の分析手順は以下の通りで す。 シム 調製 注入 測定 解析 シム NMR分光計のシム調整を行い(自動)、測定可能な状態であるこ とを確認します。 NMRサンプルの調製 22ゲージ90度針を取り付けた使い捨てのポリプロピレン製1 mL min freq. to plot (周波数プロット最小値) max freq. to plot (周波数プロット最大値) zero filling(zf、ゼロフィリング) align-avg. data -200 Hz +1000 Hz 8192 (データ位置合わせと平均化) ✓ live plot(ライブ表示) ✓ JCAMP avg.(JCAMPデータの平均化) ✓ JCAMP ind.(個別JCAMPデータ) チェック無し シリンジを用いて、氷酢酸約0.5 mlを容量0.5、または1ドラムの 解析 バイアルに移します。 測定後、JCAMPスペクトルファイルをダウンロードし、Mnovaソ 可 能であれば 新しい シリン ジを 用いて、テトラメチル シ ラン (TMS )6 ∼ 10滴を氷酢酸に加えます。 注:TMSは、シリンジの針で吸い出すとすぐに沸騰し始めるため、 この操作は速やかに行ってください。 フトウェアで開きます。JCAMPスペクトルファイルは FIDですが、 1 Mnovaソウトウェアにより自動的にフーリエ変換され、 H-NMR スペクトルが表示されます。 各スペクトルに以下のスペクトル処理を行います。 3 4 処理項目 ppmの低磁場域に検出されます。また、カルボン酸のプロトンは高速 数値 で交換反応するため、 シャープなシグナルが得られます。 サンプルに重 Zero-Filling & Linear Predict 16 k (ZF &LP、ゼロフィリングと線形予測) 水(D2 O)を数滴加えることでこのシグナルが消失し、 カルボン酸の存 Forward predict(FP、前方線形予測) From aq → 16 k 在を確認することができます。 一方で、 アルコールやアミン、 チオール、 Backward predict (BP、後方線形予測) Phase Correction(PH、位相補正) Apodization(窓関数) Exponential(LB、指数) フェノール、 エノールなどの活性プロトンとも交換反応が起こります。 From -2 → 0 カルボン酸のプロトンは、 水のように他の分子の活性プロトンと容易 にプロトン交換反応が生じるため、 シグナルは幅広くなる場合や、 また PH0:手動調整 PH1:0 は交換反応する相手のプロトンの化学シフト方向(低磁場側) へシフト From -2 → 0 する場合があります。 0.6 Hz 図4にイソペンチルアルコールの1H-NMRスペクトルを示します。 このス ペクトルの特徴は5 ppm付近のアルコールのプロトンのシグナルが First Point(ファーストポイント) 0.5 Shift Reference(CS、リファレンス) 既知シグナルから 手動設定 カップリングにより、 トリプレットで検出されている点です。 トリプレッ Peak Picking(PP、ピーク検出) 手動で選択 まざまな速度で交換反応していることが挙げられます。 交換反応が高 Integration(I、積分計算) 自動計算 速の場合は、 近隣のプロトンとカップリングしない、 シングレットのシ Multiplet Analysis(J、多重度解析) 不要 トのシグナルが得られる理由の一つとして、 アルコールのプロトンがさ グナルとなります。 しかし、 カップリングに要する時間を許容する程度 に交換反応が遅い場合、 アルコールのプロトンと、 隣接する C4炭素上 1. それぞれのスペクトルデータファイルを Mnovaで開きます。 の二つのメチレンプロトンとの結合が生じます。 この化合物では立体障 2. 手動で各スペクトルの PH0位相補正を行います。 3 . Mnovaの「Reference 」機能を使 用し、TMSまたは CHCl3の シグナルを0 ppm、7.24 ppmに合わせます(どちらか検出さ れている方のシグナルを使います)。 害と分子内結合によりプロトン交換反応が阻害され、 隣接するプロ トンへの結合を可能にします。3.5 ppm付近に検出されているC4のメ チレンプロトンは、 アルコールのプロトンと結合 C3のメチレンプロトン、 し、 カルテットのシグナルとして検出されています。 4. 各スペクトルの検出されているシグナルの帰属を行います。 5. Mnovaドキュメントを保存し、各スペクトルを印刷して実験 ノートに貼り付けます。 反応が進行することで生成される酢酸イソペンチルの1H-NMRスペク トルを図5に示します。 酢酸イソペンチルのスペクトルではイソペンチ ルアルコールのアルコールプロトンのシグナルが消失し、 C4プロトンの カルテットは隣接するアルコールプロトンが無くなることでトリプレッ 結果 トに変化し、 このシ 3.5 ppmから4.0 ppmの低磁場側へシフトします。 図3に酢酸の H-NMRスペクトルを示します。 カルボン酸のプロトンは フトは、 C4プロトンに隣接していたアルコール基が、より電子吸引性の 非常に特徴的なシグナルで、強い磁場遮蔽を形成するため10 ∼ 15 あるエステル官能基に置き換わることで、 C4プロトンへの反遮蔽効果 1 酢酸 図3: picoSpin 45で得られた酢酸の1H-NMRスペクトル が増加することにより生じます。さらに、 2 ppmに検出されるシング 酢酸イソペンチル中の C5-7,9)内のプロトン チルアルコール中の C1-3,5、 レットからも生成物を確認することができます。 このシグナルはイソ に帰属され、 これらは酢酸イソペンチルの合成反応においてはほとん ペンチルアルコールでは検出されない、 メチルエステル基(C1)に帰属 ど変化しません。 されるものです。0.7∼ 1.7 ppmのシグナルは、 イソブチル基 (イソペン イソペンチルアルコール 図4: picoSpin 45で得られたイソペンチルアルコールの1H-NMRスペクトル 酢酸イソペンチル 図5: picoSpin 45で得られた酢酸イソペンチルの1H-NMRスペクトル 5 6 解説 図 6 ∼ 8に、実験の各段階中に反応混合物から得られたニート反 図3 ∼ 5に示した、酢酸、イソペンチルアルコール、酢酸イソペンチ ルそれぞれの1 H-NMRスペクトルの化学シフトを表1に示します。 表中の化学シフトは TMSを基準としています。これらのスペクト ルは、反応物や生成物、または混合物をそのまま用い、 picoSpin 45により得たものです。picoSpinシリーズ NMRスペクトロメー ターではサンプルを希釈せずに測定できます。しかし、イソペンチ ルアルコールは酢酸イソペンチルに比べて粘性が高く、そのまま 測 定すると 幅の 広い シ グ ナ ルとなります。そのため、CDCl3で 50 %程度に希釈し、シグナルの分解能を向上させたスペクトルが 得られるようにします。溶媒として重水(D2 O )を使用すると、アル コールプロトンとの交換反応により、このプロトンのシグナルが減 少する、またはスペクトルから消えます。同様に、メチレン(C4)プ ロトンへのカップリングも影響を受けます。 応物、単離された生成物の1 H-NMRスペクトルを示します。生成 物の蒸留や分離を行う前にこれらのスペクトルを確認すること で、反応混合物に適切な後処理を行うことの必要性がわかりま 1 す。また、 H-NMRスペクトルの変化から、反応物から生成物への 変化を容易に視覚化することもできます。 図7では、反応物の他に酸触媒(H2 SO4)を添加する前の反応混 合物のスペクトルを示します。反応混合物のスペクトルでは水酸 基のシグナルが9.3 ppm付近に検出され、3 .5 ppm付近のメチ レンのカルテットのシグナルがトリプレットへ変化しています。さ らに、 2.0 ppm以下のシグナルがすべて幅広く検出されています。 水酸基の化学シフトは、カルボン酸のプロトンとアルコールプロ トンの迅速な交換反応によるもので、両プロトンのシグナルが一 つになっています。この化学シフトは、各成分(酸とアルコール)の 表1: 1H-NMRスペクトルの帰属 図 化合物 帰属 化学シフト 核種 多重度 3 酢酸 TMS HO-C(=O)CH3 HO-C(=O)CH3 0.00 2.05 11.51 12H 3H 1H シングレット シングレット シングレット 4 イソペンチルアルコール TMS -CH-(CH3)2 -CH2-CH2-CHCH2-CH-(CH3)2 -CH2-CH-(CH3)2 HO-CH2-CH2- 0.00 0.90 1.47 1.47 3.56 4.99 12H 6H 2H 1H 2H 1H シングレット ダブレット トリプレット マルチプレット カルテット トリプレット 5 酢酸イソペンチル TMS -CH-(CH3)2 -CH2-CH2-CHCH2-CH-(CH3)2 CH3COOO=CO-CH2-CH2 0.00 12H 6H 2H 1H 3H 2H シングレット ダブレット トリプレット マルチプレット シングレット トリプレット 0.91 1.53 1.53 1.93 4.05 生成物: 酢酸イソペンチル 反応物: イソペンチルアルコール 反応物: 酢酸 図 6: 反応物と生成物である酢酸、イソペンチルアルコール、酢酸イソペンチルの1H-NMRスペクトル 7 生成物: 酢酸イソペンチル 反応物混合直後 反応物: イソペンチルアルコール 反応物:酢酸 図7: 反応物と生成物である酢酸、イソペンチルアルコール、酢酸イソペンチルおよび反応物を混合した直後の1H-NMRスペクトル 生成物: 酢酸イソペンチル 分離抽出後乾燥 水、 NaHCO3追加 還流後 反応物混合直後 反応物:イソペンチルアルコール 反応物:酢酸 図8: 酢酸、イソペンチルアルコール、酢酸イソペンチルおよび実験途中における反応物の1H-NMRスペクトル Application Note NMR15001 相対的なモル分率により決定されます。つまり、交換反応下にあ る二つのプロトンのモル分率に直線的に依存します。これはアル コールの混合物ではよく見られる現象です。 図 8中の還流後のスペクトル(下から4番目)では、2.05 ppmに酢 酸のメチル基のプロトンと1.93 ppmに生成物のカルボキシメチ ル基のプロトンの2種類のシグナルが検出されています。また、メ チレンエステル(-CH2 -O- )は4.0 ppmへシフトし、トリプレット が際立って検出されています。さらに酸触媒添加前の反応混合物 (下から3番目)では9.3 ppmに検出されていた水酸基とカルボン 酸のシグナルが、酸 触 媒の 添 加によってさらに幅 広くなり、9.7 ppmへシフトしています。低磁場側へのシフトは、酸の添加により H+の濃度が増加したためです。 水で洗浄後、炭酸水素ナトリウムにより中和した後のスペクトルで は、還流後9.7 ppmにあった水酸基とカルボン酸のシグナルと 2.05 ppmにあった 酢 酸のメチル 基のシグ ナルが 消 失し、4.0 ppmのメチレンエステル(-CH2 O- )のトリプレットがより際立っ て検出されています。さらに炭酸水素ナトリウムで洗浄後、塩抽出 と Na2 SO4により脱水した、蒸留前の生成物のスペクトル(上から 2番目)では、残っていた水のシグナルが消失しています。この蒸留 前の段階でほぼ酢酸イソペンチルのみに分離されていることが、 図 8の上の二つのスペクトルから分かります。 実験手順動画 本実験の手順については、津山工業高等専門学校の廣木一亮先 生により実演された動画が Web上に公開されています。 URL:http://youtu.be/1sXawE5 A61A 動画中では、実験操作の簡略化のために、前述とは異なる実験器 具を使用し、反応物としてイソプロピルアルコールを合成反応に 用いています。 参考文献 Gokel, H. D.; Durst, G. W. Experimental Organic Chemistry; McGraw-Hill, New York, 1980 ; pp 344 -348 . Weast, Robert C., ed. CRC Handbook of Chemistry and Physics. 70 th ed. Boca Raton, FL: CRC Press, Inc., 1990. Ⓒ 2015 Thermo Fisher Scientific Inc. 無断複写・転載を禁じます。 ここに記載されている会社名、製品名は各社の商標、登録商標です。 ここに記載されている内容は、予告なく変更することがあります。 サーモフィッシャーサイエンティフィック株式会社 分析機器に関するお問い合わせはこちら TEL 0120-753-670 FAX 0120-753 -671 〒221-0022 横浜市神奈川区守屋町3 -9 E-mail : [email protected] www.thermoscientific.jp E1501
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