1. No category

S2560 皮膚腫瘍
谷口 恒平[1], 能勢 聡一郎[2], 吉野 正[1]
1. 岡山大学 腫瘍病理/第二病理
2. 岡山済生会総合病院 病理
症例：30歳代 女性
現病歴
X-2 ヶ月から下顎部に 2mm 大の丘疹
に気づいた。また鼻根部左に 2mm
大の丘疹があり，同様の病変と考え
られた。他にも手掌・足蹠に点状の角
化疹が多発している。
PAS
【鑑別診断】
Trichilemmoma
Verruca vulgaris
Eccrine poroma
複数の病理医の先生で意見を交換
→Verruca vulgaris with trichilemmal keratinization
trichilemmommaと呼ぶ先生もいるかも知れない。
多発している場合、Cowden syndromeの
病変の可能性がある。
既往歴:
皮膚角化性病変(多発)
甲状腺腫瘍→甲状腺癌もしくは甲状腺腫
消化管白色隆起性病変
乳腺線維腺腫
子宮筋腫
脳腫瘍→脊索腫
糖尿病
胆嚢壁が厚く、胆嚢腫瘍の可能性が高いといわれた
NASH
家族歴:
父: 糖尿病
甲状腺腫瘍(良性)
胆嚢腫瘍の可能性
妹, 弟は特記すべき既往歴なし
甲状腺腫瘍(X-5年)
食道
十二指腸
結腸
結腸
乳腺線維腺腫
子宮筋腫
最終診断
Trichilemmoma
(suspicious of Cowden syndrome)
Trichilemmoma
【概要】
• HPV感染症に伴う毛嚢上皮の反応性の増生
• 多発する場合にはCowden syndromeが示唆される。
【組織像】
• 外毛根鞘への分化および外毛根鞘性角化を示す。
• 辺縁の柵状配列および、細胞質内の空胞が見ら
れる。
Cowden syndrome
[概要]
• 常染色体優性遺伝の多発性過誤腫症候群
• 腫瘍抑制遺伝子であるphosphatase and tensin
homolog (PTEN) geneの変異によって起こる。
[診断]
• PTEN遺伝子検査によって確定診断。
(Trichilemmomaの多発が発見の契機になることが多い)
[症状]
• 消化管に過誤腫性ポリープが見られる。
• 乳癌・腎癌・甲状腺癌・子宮内膜癌のリスクが高い。
• 70%で甲状腺良性腫瘍
• 女性では乳腺の良性疾患のリスクが高く、乳がん
の生涯リスクは25～50%
• 子宮筋腫のリスクも高まるとされる。
[Cowden Syndrome Diagnostic Criteria] (National Comprehensive Cancer Network 2008)
 Pathognomonic criteria
•Lhermitte-Duclos disease (LDD) –成人
•皮膚粘膜症状: Trichilemmomas, facial , acral keratoses, papillomatous lesions
 Major criteria
•乳癌
•甲状腺癌 (乳頭癌もしくは濾胞癌)
•巨頭症 (≥97%ile)
•子宮体癌
 Minor criteria
•その他の甲状腺疾患(腺腫, 腺腫様甲状腺腫など)
•精神遅滞 (IQ ≤ 75)
•消化管過誤腫病変
•乳腺線維嚢胞症
•脂肪腫
•線維腫
•泌尿生殖器系腫瘍 もしくは奇形( 腎細胞癌など)
•子宮筋腫
 Operational diagnosis in an Individual
1. 粘膜皮膚症状のみの場合
(a) 6個以上の皮疹で3個以上はtrichillemoma
(b) Cutaneous facial papules and oral mucosal papillomatosis
(c) Oral mucosal papillomatosis and acral keratoses
(d) 6個以上のPalmoplantar keratoses
2. major criteria 2つ以上, (ただし、少なくとも一つはmacrocephaly or LDD)
3. major 1つとminor criteria 3つ
4. minor criteria 4つ
 Operational diagnosis in a family where one individual is diagnostic
for Cowden
1. pathognomonic criterion 1つ
2. major criteria 1つ
3. minor criteria 2つ
4. History of Bannayan–Riley–Ruvalcaba syndrome
既往歴:
◎Trichilemmoma(多発)
○甲状腺腫瘍→甲状腺癌もしくは甲状腺腫
☆消化管白色隆起性病変(過誤腫性ポリープ)
乳腺線維腺腫
☆子宮筋腫
脳腫瘍→脊索腫
糖尿病
胆嚢壁が厚く、胆嚢腫瘍の可能性が高いといわれた
NASH
家族歴:
父: 糖尿病
甲状腺腫瘍(良性)
胆嚢腫瘍の可能性
妹, 弟は特記すべき既往歴なし
◎pathognomonic criteria
○major or minor criteria
☆minor criteria
結語
• 皮膚生検組織からCowden syndromeの可能性を
疑い、既往歴を調べることで、Cowden syndromeの
可能性が強まった。
• このような病変を見た際には、Cowden syndromeを
疑い、既往歴などの情報を調べることが重要と思
われる。