1 Copyright©2015 信州読書会. All Rights Reserved. 2015.2.21 夏目

2015.2.21
夏目漱石の『道草』を精読する レジュメ
★あらすじ (※カッコ内は、関係する章の番号)
36 歳の健三は、2 年間の外国留学から帰国後、その研究成果まとめた論文を執筆する毎日
である。友人との交際も極力断って、仕事に没頭し、やや神経衰弱気味である。
月収 120 円くらいの(現在で言えば 200 万円くらい)の大学講師の仕事で生計を立ててい
る。
健三は、22 歳の時、養育料を返還して、彼の元養父である島田と義絶した。しかし、島田
が、人づてに健三へと、生活費を無心してくる。やがて本人も、健三の前に現れる。
島田は 3 歳から 7 歳まで、健三の養父だった。そのころ、島田はお常と夫婦であった。夫
婦は、子どもができないので、養子として健三をもらったのだった。島田夫妻は、子ども
の健三を甘やかしながらも、恩着せがましところもあった。そのことが、彼の現在の屈折
した強情な性格に影を落としている。(41)
島田の事業は順調で、羽振りがよかったのだが、やがて家産が傾き、教育費を工面できな
いので、健三を、実家に帰す。島田は、その後、お常とも離縁し、軍人の未亡人でり、愛
人関係だった、お藤と再婚する。しかし、島田はその後も、健三を愛人のお藤とあわせた
り、健三の兄と、縁戚になろうとしたり、健三を家主にして、勝手にハンコをついて、金
を借り散らかしたので、健三の父が怒って、島田と義絶したのだった。(32)
成人した健三の前に現れた年老いた島田は、お藤の連れ子である、お縫の夫、柴野に生活
費を支援してもらっていたが、お藤が死んで、さらにはお縫も病死し、婿である柴田との
縁が切れ、生活のあてがなくなり、健三を頼ったのだった。
しかし、縁を切った以上は健三には、金を工面する筋合いもない。だが、彼は情に流され、
求めに応じられるだけの金を渡す。
健三の腹違いの姉、お夏の夫である(健三にとっては義理の兄)比田に、島田が、健三の
復籍を依頼しているということを健三はきく。比田はかつて島田から金を借りており、年
賀状をやりとりする程度の付き合いはあった。
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健三には、兄弟が二人いた。喘息やみの腹違いの姉、お夏。比田が、家に金を入れないの
で、彼女は健三に月々小遣いをせびっていた。また、健三の6歳年の離れた兄貴は、役人
としてリストラ寸前で、金銭面で相談できる相手ではない。兄弟で頼りになるものは健三
一人である。さりとて、健三も自分の生活費で精一杯である。
さらには、健三の細君、お住の父も、政局で官職を失い、使い込みもしてしまい、その穴
埋めに、相場に手を出して(97)失敗して、生活費に困っており、健三に、連帯保証人に
なってくれないかと頼みに来る。健三は、その申し出を断るが、自分で知り合いから金を
借りて、義父に 400 円を貸す。
(72~77)
最後には、再婚したお常まで夫に死なれて、生活に困り、金を無心しに来る。
健三は、断りきれずに、お常には、財布にあるだけの金を工面する。
親戚中に金をせびられる健三は、なんのために生きているのか、次第にわからなくなる。
『血でつながった、世界の背後に懐かしさと、厭らしさ』を感じている(29)(46)(67)
細君のお住も、複雑な生い立ちの健三の心をはかりかねる。それは、本ばかり呼んでいる
からだと結論するのだった。健三の生い立ちにまつわる、微妙な心理までは、細君は理解
できないのだった。夫婦のすれ違いは、日常的になり、健三は癇癪や、家族への無関心を
みせ、それに対応して、細君はたびたびヒステリーの発作に見舞われる。
義兄である比田が、株式をうって財産をつくったので、その金で、島田に手切れ金を渡そ
うという算段あったが、比田を信用出来ないので、結局、健三は、小説を書いた原稿料で、
その金を工面する。比田を通じて、島田に再度手切れ金を渡し、再度今後の交際を断つと
言う一筆を入れさせて、島田と絶交する。
◯
なぜ、健三は、薄情なわりには、みんなの面倒を見るのか?
◯
なぜ、健三夫妻は、すれ違うのか?
◯
健三にとって、島田とはなんなのか?
◯
健三の望みはなんなのか?
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