御あいさつ 松生利直 なんでこんな事になったのか、自分にもよく分からな い。 ど う い う 理 由 で 、ど う い う 目 的 で 、等 は ど う で も あ れ 、 〇 〇 初めは目に見えない何かあるものに心惹かれ、惹き入 れられ、縛りつけられて、もがいているうちに何時とは 知らず、逃れようもなく離れようもないままに、あくせ くしながらせかせかと歩きつづけて来た。 更に善師良友の憐んで見捨て給はず、拒まず、退けず、 悔 い 多 く 恥 じ 多 し 。幸 い に し て 至 る 所 に 隣 人 に 恵 ま れ 、 いかと、どこかで話が出て、それがたまたまこんな形に 寛大に受容して導いて来て下さった、無辺の世界を思わ とにかくまあなんとはなしに、一つやってやろうじやな なって生まれ出る事になったのではないかと、甚だ身勝 ずには居られないのである。 〇 七月二九日、北山願教寺の夏季講座に大島先生のお伴 であろう。 「法門無量」丨一々の煩悩に一々の法門が相応するの 困ることは無い。 これでは六畳の室に何百人、何千人の来客を容れても ら後からと湧いて来てくれる。 朝から晩まで退屈する暇もないように、妄念妄想が後か 「煩悩無尽」丨いま、独り居て仲々に賑やかである。 〇 手な気持ちなのである。 丁度、人がこの世に生まれてくるように 、善し悪しは 〇 知らず、不思議なだけに、深く有り難いのである。 〇 愚 痴 と 言 い 訳 の 七 十 年 丨 茨 城 ・ 仙 台 ( 兵 役 あ り )・ 京 都 ・ 高 知 ・ 平 壌 ・ 市 川 ( 静 養 )・ 旭 川 ・ 京 城 ( 終 戦 )・ 釜 石・一関・久慈・山形村・昨秋山を下って現在村崎野の 畑地に止まる丨。 日暮れて道遠し。だが「夜道に日は暮れぬ」との諺も ある。 して参詣。 講終わって本堂横の静室に講師白井成允先生のお話を 承わる。 島地大等師の父君、満月院大円師の詩 厚縁索我能逃俗 窓明坐静物外情 八万四千須読尽 今生不足又来生 について御慈教あり。坐に及川和夫法兄、島地興霖御院 〇 主も在はす。胸熱く痛く塞がり、頭を上げえなかった。 〇 「 仏 道 無 上 」丨 年 と 共 に 愛 欲 の 海 は 愈 々 涯 底 な く 、名 利 の山は益々奥深いと思い知らされる。 「今生足らずんば又来生」は聖者の誓願、身に充ちる貪 瞋痴疑そのままの自分には執念唯一筋と頂く外はないで あろうか。 謹んで遠近八方の御厚縁に深く御礼申し上げる次第で ある。 ( 昭和四十四年八月十五日、正午すぎ 記 )
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