平成26年度「エコハイスクール推進事業」実施報告

平成26年度「エコハイスクール推進事業」実施報告
~お堀の水の浄化実験及びPVA樹脂の合成~
本校、工業化学科では今年度、標記事業の「循環型社会づくり実践推進校」に指定され、平成23年度から実
施してきた松山城のお堀の水の浄化実験を引き続き行いました。以前、バッチ式で行ってきた浄化実験を今回は
連続式の浄化装置を製作し浄化実験を行った結果を報告します。
今回、連続式に変えた理由は微生物をPVA樹脂に定着させる際に吸着した培養液が浄化実験中に溶出しCO
D値を上昇させていいたため溶出の様子を測定し除去する目的とPVA樹脂の割合を高くしてCODを下げる
(ゼロにする)速度を早くする目的でおこないました。
1
実験方法
①お堀の底の泥を採取し、培養液の中で3日間培養する。
②PVA樹脂を投入し2日間、繁殖・定着させる。
③お堀の水を採取し、微生物を定着させたPVA樹脂を投入する。
※PVA樹脂はクラレ西条さんの排水処理施設で使用されているクラゲールを使用させていただきました。
④定期的にサンプルを採取しCODを測定する。
培養
2
定着
COD の測定
連続式浄化実験装置の制作
浄化装置の本体には廃棄されてい
た純水製造装置(昭和32年製)の部
品をリサイクルしました。連続式にす
るために上部に給水タンクを設置し、
汚水を供給できるようにしました。下
部より処理された水が取り出せるよ
うに二方コックを取り付けて流量を
調整できるようにしました。空気を1
分間当たり1Lの割合でバッキでき
るようエアポンプを取り付けました。
製作した連続式浄化装置
3
結果
①PVA樹脂からの培養液の溶出
浄化装置の中を流量を変えながらCODを測定した結果、流量をゼロにするとCODが上昇しました。このこ
とからPVA樹脂に吸着した培養液が長い時間を掛けて溶出していることが分かりました。
25
4
流量とCODの関係
3.5
COD
20
3
流量
COD[mg/L]
流量[L/hr]
2.5
15
2
10
1.5
1
5
0.5
0
0
0
10
20
30
40
50
時間[hr]
②浄化実験の結果
バッチ式で行った時、CODの減少に6日間かかっていましたが、連続式で行ったところ約7時間で減少させ
ることができました。今回、水に対するPVA樹脂の割合を体積比でバッチ式の2.5倍にした結果、微生物の
数も増大し、著しくCODを下げることができました。
浄化実験(連続式)
350
300
COD[mg/L]
250
200
150
100
50
0
0
5
10
15
時間[hr]
20
25
30
4
PVA樹脂の合成
市販されているPVA樹脂を学校の実験室で合成することを試みました。樹脂の特徴はPVAゲルをホルムア
ルデヒドで架橋反応させて網目構造を形成させることです。
(1)合成方法
①重合度2000のポリビニルアルコール16%水溶液を調整する。
②アルギン酸ナトリウム2%水溶液を調整し、この2種類の溶液を同量、よく混ぜ合わせる。
※アルギン酸ナトリウムは球状にするために使用している。
③この溶液を分液ロートに充填し、流量を調整して1%塩化カルシウム溶液に滴下して球状にする。
④各溶液の濃度を変えて、滴下距離を調整することによって球状にする。
⑤このゲル球を-5℃以下で凍結する。
※ゲル球に含まれる水分を凍結・解凍することによって網目構造を形成させる。
⑥つぎに凍結・解凍したゲル球を架橋剤で40℃、2時間、ホルマール化をおこなう。架橋剤はホルムアルデヒ
ド(1mol/L)、硫酸(2mol/L)硫酸ナトリウム(150g/L)に調整した水溶液を使用した。
落下距離を調整
40℃でホルマール化
完成した PVA 樹脂
(2)合成結果
特許内容を参考に合成したが、球状にすることはできませんでした。最初調整した溶液を薄めてポリビニルア
ルコール4%、アルギン酸ナトリウム1.3%水溶液を滴下距離40cm以上で滴下することで球状にすること
ができました。凍結・解凍処理についてもゲル球が固まったまま行うと膨潤して球体が壊れてしまいましたがバ
ラバラにして凍結・解凍後、ホルマール化することで強固な球状のPVA樹脂を合成することができました。
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結果とまとめ
PVA樹脂の合成では市販品と全く同じ物はできませんでしたが溶液濃度や落下距離を調整することにより
球状のゲル球を形成させることができました。また、網目構造を形成させるために行った凍結・解凍操作におい
ても凍結させるときの並べ方や解凍方法を工夫することにより目的の物質に近づけることができました。お堀の
水の浄化実験では連続式の浄化装置を用いてPVA樹脂の割合を高くすることで著しくCODの減少を早くす
ることができた。しかし、12月から2月の寒い時期には水温が10℃以下になりCODはほとんどゼロになる
ことから浄化実験によってCODをゼロにできなかったことは非常に残念でした。この研究結果は1月に愛媛県
の工業高校が参加して行われた生徒研究発表会で報告させていただき、愛媛大学の先生から今後のアドバイスを
頂くと共に化学関係部会で最優秀賞を受賞しました。今後も工業化学科ではこのような環境保護活動に携わって
いきたいと思います。