「おしりから出血したら」~びっくりしないで~ 大阪市立総合医療センター 消化器外科 田内 潤 ◆おしりから出血したら・・・ ある朝、いつものように用を足したら便器が真っ赤!!!「どうしよう、 『ぢ』かしら、 それとも『悪い病気』かしら・・・でもおしりのことは恥ずかしくて相談しにくいし・・・。 」 おしりから出血する病気にはいろいろあります。大腸がんもそうですが、痔などの良性疾患 のほうが多いのです。自己診断して様子をみるのではなく、まずは医療機関を受診して、出 血の原因を調べてもらいましょう。 「でも病院ではどんな診察をされるのかしら?恥ずかし いし、痛い検査をされそうだし・・・。 」診察の基本は『聞いて(問診) 』 、 『見て(視診) 』 、 『触って(指診) 』です。問診で出血した状況(いつ、どんな色の出血が、どれくらいの量 あったか)を確認することで、ある程度出血の原因を想定することができます。その上で肛 門の診察をします。まずは肛門周囲を観察し、肛門周囲の皮膚の変化やできものがないかを 確認します(視診) 。次に肛門に指を挿入して肛門内の状況を確認します(指診) 。肛門を見 るだけではわからない肛門内のできものがないかを確認します。 以上の診察の後に必要に応 じて検査を行います。肛門近くからの出血が疑われれば肛門鏡や直腸内視鏡を用いた検査を 行い、より上流(口側)からの出血が疑われれば大腸内視鏡検査を行います。 ◆「ぢ」? おしりから出血する原因として多いのが『ぢ(痔) 』です。 『ぢ』には『いぼぢ』 、 『きれぢ』 、 『あなぢ』の 3 種類ありますが、それぞれ『痔核』 、 『裂肛』 、 『痔瘻』という病気です。そ の内出血の原因となりやすいのが痔核、裂肛です。痔核の正体は皮膚のすぐ下にできた血管 の塊です。原因は、排便時の過度ないきみ、便秘、下痢、長時間の座位や起立により肛門に 負担がかかり肛門を閉じる組織が断裂することで、 肛門をめぐる静脈に血液が滞り血管が拡 張し痔核になると考えられています。排便することにより痔核の血管が破綻して出血し、真 っ赤な出血を認めます。 痔核は症状のないものから出血が激しく強い貧血がおきることもあ るため、程度に応じた治療を行います。症状が軽度のものであれば、炎症を抑える作用や止 血作用のある軟膏、坐剤、内服薬を使用し様子をみることが可能です。痔核が大きくなると 肛門から脱出してくることがあります、 そのような場合や頻回に出血を繰り返す場合には手 術で、痔核を切除することがあります。最近では手術療法に代わる治療法として四段階注射 法(ALTA 療法)があります。痔核周囲に硬化剤を注射し縮小させる治療法です。この治 療法は手術療法と比較し、治療後の痛みが少ないため早期の社会復帰が可能となります。 裂肛は便秘や下痢が原因で肛門の皮膚が裂ける病気です。 皮膚が裂けることで疼痛を伴い、 真っ赤な出血を認めます。治療法は排便習慣、便秘や下痢の改善と炎症を抑える作用や止血 作用のある軟膏、坐剤、内服薬の使用が基本です。 ◆ほんとに「ぢ」? 出血の原因の多くは、痔、潰瘍、大腸憩室炎などの良性疾患ですが、中には大腸ポリープ、 大腸がんなどの腫瘍が出血の原因となることがあり、 出血の状況だけで原因を特定すること は難しいです。痔だと思い込んでいたが、検査をすると大腸がんが見つかったということも あるので、自己診断せず、怖がらず、恥ずかしがらずに医療機関を受診しましょう。
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