1 鹿児島県周産期医療体制整備計画について

1 鹿児島県周産期医療体制整備計画について
(1)
策定の趣旨
○
周産期医療対策事業等の充実を図るとともに,将来を見据えた周産期医療体制の整備を
図ることにより,地域における周産期医療※1の適切な提供を図ることを目的に,平成22年
1月に,厚生労働省において定められた「周産期医療体制整備指針」※2(以下,「指針」
という。)により,各都道府県は周産期医療体制の現状や中長期的な観点による目標を定
めた「周産期医療体制整備計画」(以下,「整備計画」という。)を策定するよう定められ
ました。
本県においては,平成23年3月に「鹿児島県周産期医療体制整備計画」を策定し,周産
期医療体制の充実を図ってきたところですが,周産期医療については,分娩取扱医療機関
の減少や産科医等の不足・地域偏在等の問題があります。
こうした中,平成26年度に現計画が計画期間の終期を迎えることから,子どもを産みた
い女性が安心して,安全に子どもを生み育てられる環境づくりを推進するため,現状や取
組等を見直し,今後の周産期医療体制の整備に向けた取組方針を定める,第2次整備計画
を策定することとしました。
(2) 計画の位置付け
ア
計画の位置付け
この整備計画は,厚生労働省医政局長通知「周産期医療対策事業等の実施について」(平
成21年3月30日付医政発第0330011号)の周産期医療対策事業等実施要綱の第1の4に基づ
く周産期医療体制整備指針(「周産期医療の確保について」(平成22年1月26日付医政発012
6第1号))に基づき,鹿児島県の中長期的な周産期医療体制に対する整備方針として定める
ものです。
イ
他の計画との関係
整備計画は,医療法第30条の4の規定により策定している「鹿児島県保健医療計画」等
の関連計画や関係法令との整合性を図りながら推進します。
図1
関連する計画・法令等
【医
療
法】
【次世代育成支援対策推進法等】
鹿児島県保健医療計画※3
(各地域医療連携計画)
※4
「かごしま子ども未来プラン」※5
( 母 子 保 健 計 画 )
連携・反映
「鹿児島県周産期医療体制整備計画」
1
【消
防
法】
「傷病者の搬送及び受入の
実 施 に 関 す る 基 準」※6
ウ
計画の期間
整備計画の期間は,指針に基づき,平成27年度から平成31年度までの5年間とします。
また,おおむね5年ごとに調査・分析及び評価を行い,必要があると認める場合には,整備
計画を変更するものとします。
○※1等の記載のある語句は,41ページ以降の用語解説を参照(以下同様)
2
2 鹿児島県の周産期医療を取り巻く現状と課題
●
整備計画の策定から5年を経過したことに伴い,本県の周産期医療を取り巻く現状
と課題を把握するため,出生数や出生率※7などの人口動態について分析を行うととも
に,周産期医療関連施設(産科又は産婦人科を標榜する病院・診療所及び助産所)に
対して,周産期医療関連施設状況調査(以下,「状況調査」という。)を行い,調査
結果の分析を行いました。以下にその結果等を記載します。
(1) 人口動態
【本県における人口動態の状況等】
○
本県の周産期関連の母子保健指標については,出生率や合計特殊出生率※8は全国水準を
上回っているものの減少傾向にあります。
また,周産期死亡率※9,新生児死亡率※10,妊産婦死亡率※11は改善されてきており,周産
期死亡率は全国平均より高い水準にあります。
一方,死産率※12は減少傾向にありますが全国平均を上回っており,低出生体重児※13の出
生割合は近年横ばい傾向にあり,全国平均と比べても高い水準にあります。
○
これらの指標のうち,全国水準に達しているものについては,現水準の維持・向上を図
る一方で,改善の余地のあるものに対しては重点的に取り組み,妊娠,出産に関する安全
性の確保を総合的に図ることが必要です。
【人口動態からみた本県の課題】
○
そのため,必要な周産期医療が将来にわたって安定的に提供される体制が確保されるよ
う,総合的な周産期医療体制の推進を図るとともに,市町村等関係機関と連携し,早産や
低出生体重児の出生等を予防するための保健指導や妊婦健康診査等への支援の充実を図る
ことが必要です。
3
表1
本県の周産期関連の母子保健指標
資料:厚生労働省「人口動態統計」
4
ア 出生(出生数,出生率,合計特殊出生率)
本県の平成25年の出生数は14,637人で,平成22年(15,124人)より487人減少しましたが,出
生率は8.7で全国(8.2)より上回っています。
また,1人の女性が一生に生む子どもの数を表すといわれる合計特殊出生率は,過去最低の
平成16年の1.46以降微増してきましたが,平成25年は1.63となり,平成22年の1.62からも0.01
増となっており,全国第6位と高い水準です。
一方,母親の出産年齢が全国的にも上昇傾向にあり,中でも35歳以上の高齢出産の割合は,
平成25年は全体の22.3%(全国は26.9%)を占めています。
表2
出生数(率)の推移
資料:厚生労働省「人口動態統計」
図1
40,000
出生数と出生率の推移
20.0
19.3
出生数(県)
18.8
18.0
35,000
出生率 県
16.0
出生率 国
30,000
8.9
8.7
8.5
8.5
8.2
14,637
14,841
15,244
15,124
14,920
14,834
16,272
16,649
5,000
0
8.8
10.0
8.0
6.0
18,892
23,375
24,540
24,521
10,000
24,311
15,000
29,243
37,821
出生数(人)
20,000
12.0
4.0
2.0
S35
S40
S45
S50
S55
S60
H2
H7
5
H12
H17
H21
H22
H23
H24
H25
0.0
出生率(人口千対)
14.0
25,000
図3
年齢別出産割合(鹿児島県)
イ 死産(死産数,死産率)
本県の総死産率は,漸次減少傾向にあり,平成25年は28.1でしたが,全国と比べると依然,
高率で推移しています。
自然死産率※14も,全体的に減少傾向にあり,近年では多少の増減はあるものの全国とおおむ
ね同程度で推移し,平成25年は10.5となっています。
人工死産率※15は,平成25年は17.6で,平成22年(18.3)より減少しているものの,全国と比
べると依然,高率で推移しています。
表3
死産数(率)の推移
年次
S40
死産総数(県)
2,496
数 自然死産数(県) 1,473
人工死産数(県) 1,023
総死産率(県)
78.6
総死産率(全国)
81.4
自然死産率(県)
46.4
率
自然死産率(全国) 47.6
人工死産率(県)
32.2
人工死産率(全国) 33.8
S45
2,167
1,313
854
81.9
65.3
49.6
40.6
32.3
24.7
資料:厚生労働省「人口動態統計」
S50
1,692
1,109
583
64.4
50.8
42.2
33.8
22.2
17.1
S55
1,596
995
601
61.1
46.8
38.1
28.8
23.0
18.0
S60
1,417
667
750
57.2
46.0
26.9
22.1
30.3
23.9
H2
1,072
553
519
53.7
42.3
27.7
18.3
26.0
23.9
6
H7
806
306
500
46.2
32.1
17.5
14.9
28.6
17.2
H12
739
224
515
43.4
31.2
13.2
13.2
30.3
18.1
H17
613
205
408
39.7
29.1
13.3
12.3
26.4
16.7
H21
466
192
274
30.3
24.6
12.5
11.1
17.8
13.5
H22
467
181
286
30.0
24.2
11.6
11.2
18.3
13.0
H23
449
173
276
28.6
23.9
11.0
11.1
17.6
12.8
H24
419
159
260
27.5
23.4
10.4
10.8
17.0
12.6
H25
423
158
265
28.1
22.9
10.5
10.4
17.6
12.5
ウ 新生児死亡(新生児死亡数,新生児死亡率)
本県の新生児死亡数は,平成25年は14人で,平成20年以降横ばいとなっており,新生児死亡
率も平成25年は1.0(出生千対)となっており,全国と同水準となっています。
表4
新生児死亡数(率)の推移
資料:厚生労働省「人口動態統計」
S55 S60 H2 H7 H12 H17
年次
5.9 3.9 2.4 1.4 1.1 1.1
新生児死亡率
生後1週未満
4.5 3.9 1.9 1.0 1.0 0.7
生後1週∼4週未満 1.4 1.0 0.5 0.4 0.1 0.4
7
H18
1.1
0.6
0.5
H19
1.5
1.1
0.4
H20
0.8
0.6
0.2
H21
0.9
0.7
0.2
H22
1.0
0.9
0.1
H23
1.0
0.9
0.1
H24
0.9
0.7
0.2
H25
1.0
0.7
0.3
エ 周産期死亡
本県の周産期死亡率は,近年では多少の増減はあるものの全体として減少してきています。
平成25年の周産期死亡率は3.3(出産千対)で,過去最も低い死亡率となっており,全国の
3.7と比較しても低率となっています。
表5
周産期死亡率の推移
資料:厚生労働省「人口動態統計」
オ 妊産婦死亡
妊産婦死亡は,若干の変動はあるものの漸次減少傾向を示しています。本県では,平成24年
と25年は妊産婦死亡が0であり,妊産婦死亡率は全国(3.4)を下回っています。
表6
妊産婦死亡数(率)の推移
年度
S55 S60 H2
妊産婦死亡数(県) 12
5
0
妊産婦死亡率(県) 45.9 20.2 0.0
妊産婦死亡率(国) 19.5 15.1 8.2
資料:厚生労働省「人口動態統計」
H7 H12 H17 H18 H19 H20 H21 H22 H23 H24 H25
1
1
2
0
0
1
1
1
1
0
0
5.7 5.9 12.9 0.0 0.0 6.3 6.5 6.4 6.4 0.0 0.0
6.9 6.3
5.7 4.8 3.1 3.5 4.8 4.1 3.8 4.0 3.4
※ 死亡率は出産10万対
8
カ 低出生体重児
平成25年の本県の2,500g未満の低出生体重児出生割合は10.4(出生百対)で,全国の9.6を
上回っており,近年横ばいで推移していますが,全体的に増加傾向にあります。
出生体重別にみると,2,000g∼2,499gの出生割合が多く,平成25年は8.2でした。
表7
低出生体重児出生数・割合の推移
低出生体重児出生
出生割合(県)
出生割合(国)
表8
資料:厚生労働省「人口動態統計」
S55 S60
H2
H7
H12 H17 H18 H19 H20 H21 H22 H23 H24 H25
1574 1,362 1,323 1,278 1,424 1,449 1,499 1,515 1,611 1,590 1,577 1,604 1,510 1,528
5.9
5.8
7.0
7.7
8.8
9.8
9.9 10.0 10.4 10.7 10.4 10.5 10.2 10.4
5.6
5.7
6.5
7.5
8.6
9.5
9.6
9.7
9.6
9.6
9.6
9.6
9.6
9.6
出生体重別出生割合の推移
∼1499g
1500∼1999g
2000∼2499g
S55
0.5
0.9
4.5
S60
0.4
0.8
4.6
H2
0.6
1.0
5.3
資料:厚生労働省「人口動態統計」
H7 H12 H17 H18 H19
0.6 0.8 1.0 0.8 1.0
1.0 1.1 1.5 1.5 1.5
6.0 6.9 7.2 7.6 7.6
9
H20 H21 H22 H23 H24 H25
1.0 0.9 1.0 1.1 0.9 0.8
1.4 1.3 1.3 1.4 1.3 1.4
8.1 8.5 8.2 8.1 8.0 8.2
キ 妊娠届出数(妊娠週数別の届出率)
本県における妊娠届出率は改善傾向にあり,妊娠満11週以内での届出率は,平成25年は88.8
%と高くなっています。また同時に,分娩後の届出は減少しており,平成25年は14人となって
います。
表8
妊娠届出数の推移
資料:県子ども福祉課「鹿児島県の母子保健」
年度
妊娠届出数(人)
満11週以内
構 満12∼19週
成 満20∼27週
率 満28週以上
不詳
S55 S60
H2
H7
H12
H17
H18
H19
H20
H21
H22
H23
H24
H25
16,902 15,217 18,894 16,892 16,281 15,281 15,256 15,435 15,855 15,519 15,642 15,184 15,056 14,503
33.0 39.3
48.4
55.1
58.4
61.8
62.2
61.4
77.5
84.1
84.4
86.6
88.7
88.8
53.8 49.0
44.4
39.0
37.1
35.3
34.8
35.3
19.9
13.6
13.5
11.4
9.4
9.6
9.3
7.7
4.8
3.7
2.3
1.8
1.9
2.2
1.6
1.5
1.3
1.2
1.2
1.0
3.7
3.7
1.9
1.8
1.9
1.0
1.0
1.0
0.9
0.8
0.7
0.8
0.7
0.6
0.2
0.3
0.5
0.7
0.4
0.1
0.1
0.2
0.02
0.01
0.00
0.00
0.00
0.01
分娩後届出数(人) −
−
−
−
−
−
−
−
32
26
22
16
25
14
(注1)昭和55,60年は,鹿児島市分は入っていない
(注2)平成9∼17年度までは「満11週以内」,「満12∼21週」,「満22∼27週」,「満28週以上」の分類であった。
図11 妊娠週数別 妊娠届出割合の推移
不詳
満28週以上
資料:県子ども福祉課「鹿児島県の母子保健」
満20∼27週
満12∼19週
満11週以内
分娩後届出数
100
100
90
19.9
割合(%)
70
44.4
39
37.1
35.3
34.8
13.5
11.4
9.6
80
35.3
70
60
60
50
50
40
77.5
30
20
90
48.4
55.1
58.4
61.8
62.2
84.1
84.4
86.6
88.7
88.8
61.4
40
30
32人
26人
10
20
25人
22人
16人
14人
0
10
0
H2
H7
H12
H17
H18
H19
H20
10
H21
H22
H23
H24
H25
分娩後の届出数
80
13.6
9.4
(2) 鹿児島県の周産期医療資源
●
平成26年4月現在で,産科又は産婦人科を標榜する医療機関は,県内に71施設あり,
このうち,分娩を取り扱うことができる病院・診療所(以下,「分娩取扱医療機関」と
いう。)が44施設(62%),また,分娩を取り扱っている助産所は4施設あります。
平成22年度と比較すると,分娩取扱医療機関は9施設減少しています。
表9
周産期医療関連施設(各年4月1日現在)
産科又は産婦人
資料:県子ども福祉課「状況調査結果」
(病院・診療所の内訳)
科を標榜する
分娩取扱医療
妊婦健診を行う
病院・診療所
機関(病院・
施設(分娩は扱
診療所)
わない)
分娩を
休診等施設
扱
う
助産所
H22
80
53
16
11
4
H26
71
44
18
9
4
2
0
増
減
△
9
△
9
2
△
※休診等施設とは,休診中または不妊治療の専門施設等
【医療圏域ごとの施設数等】
○
県では,小児科・産科医療圏として,
「薩摩」,
「北薩」,
「姶良伊佐」,
「大隅」,
「熊毛」,
「奄
美」の6つの医療圏域を設定していますが,分娩取扱医療機関数を医療圏域ごとにみると,
薩摩23施設(鹿児島市18,日置2,南薩3),北薩5施設,姶良・伊佐6施設,大隅4施設,
熊毛2施設,奄美4施設となっています。
○
県の出生数14,637人(H25)から,出生千人あたりの分娩取扱医療機関数を算出すると,
県全体で3.0(施設)となっており,平成22年の3.6(施設)と比べて0.6ポイント減少して
います。また,医療圏域ごとにみると,大隅の1.9から熊毛の5.9まで各圏域で格差がみられ
ます。
○
甑島,喜界島,与論島,三島,十島など,分娩取扱医療機関がないため,島内での分娩が
できない離島があります。
○
本県の地域における出産は,医師等周産期医療に携わる関係者の尽力により支えられてい
ますが,限られた医療資源を有効に活用するため,今後とも,各医療機関等における機能分
担を図り,関係機関における連携を充実させていくことが必要です。
表10
分娩取扱医療機関数(各年4月1日現在)
小児科・産科医療圏
薩摩
北薩
姶良・伊佐
資料:県子ども福祉課「状況調査結果」
大隅
熊毛
奄美
県計
分娩取
H22
26
8
6
6
2
5
53
扱医療
H26
23
5
6
4
2
4
44
機関数
増減
△ 3
△ 3
0
△ 2
0
△ 1
△ 9
出生千人あた
H22
3.5
4.2
2.8
2.8
5.6
4.9
3.6
り分娩取扱医
H26
3.2
2.7
2.8
1.9
5.9
3.9
3.0
療機関数
増減
△0.3
△1.5
0.0
△0.9
0.3
△1.0
△0.6
11
図11 小児科・産科医療圏ごとの分娩取扱医療機関等数
(平成26年4月1日現在)
総合周産期母子医療センター
地域周産期母子医療センター
北薩(川薩,出水)
分娩数:1,777
病 院 数1
●●
●
分娩を取り扱う病院・診療所
▲
分娩を取り扱う助産所
●
診療所数4
姶良・伊佐
分娩数:2,203
病 院 数1
診療所数5
済生会
川内病院
●●
●●●
●●
今給黎総合病院
●
病 院 数11
鹿児島大学病院
▲
診療所数12
助産所数
鹿児島市立病院
●
薩摩(鹿児島,南薩)
分娩数:8,420
●病院・診療所数:15
2
▲▲
鹿屋医療
センター
●●●
●
●
▲
●
大隅(曽於,肝属)
分娩数:1,689
奄美
分娩数:918
病 院 数1
診療所数3
助産所数1
病 院 数4
●
県立大島
病
院
熊毛
分娩数:265
病 院 数1
●
診療所数1
●
●
※1 分娩数は H25 年度実績
※2 病院数には,周産期母子医療センターを含む。
12
●
ア 周産期医療関連施設
(ア) 総合周産期母子医療センター※16
○
国の指針によると,総合周産期母子医療センターは,原則として,三次医療圏に1ヵ所
整備することとなっており,本県においては,鹿児島市立病院を総合周産期母子医療セン
ターとして指定しています。
○
鹿児島市立病院は,本県の周産期医療システムの中核として,母体・胎児にリスクの高
い妊娠に対する医療や高度な新生児医療を提供するとともに,他の施設と連携し,地域の
医療機関や地域周産期母子医療センターからの救急搬送を受け入れるなど,本県における
総合周産期医療を提供する中核的な役割を担っています。
○
また,鹿児島大学病院は,地域周産期母子医療センターとして認定されていますが,鹿
児島市立病院とともに本県における周産期医療の中心として,ハイリスク妊婦※17に対する
医療や高度な新生児医療など,総合的な周産期医療を提供しています。
(イ) 地域周産期母子医療センター※18
○
国の指針によると,地域周産期母子医療センターは,総合周産期母子医療センター1ヵ
所に対して数ヵ所の割合で整備するものとし,1つ又は複数の二次医療圏に1ヵ所又は必
要に応じ,それ以上整備することが望ましいこととされています。
○
本県においては,地域周産期母子医療センターとして,鹿児島大学病院,今給黎総合病
院,済生会川内病院,県民健康プラザ鹿屋医療センター,県立大島病院の5施設を認定し
ています。
○
これらの病院は,人工換気装置を用いた呼吸管理や痙攣に対する常時の治療,糖尿病等
を有するハイリスク妊婦の分娩を行うなど比較的高度の医療を提供するとともに,地域の
医療機関からリスクの高い妊婦を受け入れたり,高度な周産期医療に対応する総合周産期
母子医療センター等に妊婦や新生児を搬送するなど,地域の拠点病院としての役割を果た
しています。また,今給黎総合病院においては,鹿児島市立病院や鹿児島大学病院におい
て急性期を脱した児を受け入れ,フォローアップや回復期における治療・管理を行うなど,
児の退院に向けた中心的な役割を担っています。
(ウ) 地域周産期医療関連施設
○
正常な分娩や,他の医療機関との連携によりリスクの低い帝王切開術等に対応できる医
療機関は,総合・地域周産期母子医療センター6施設を除き,県内に38施設あります。ま
た,正常な分娩を取り扱うことができる助産所は4施設あります。
分娩は取り扱わないものの,妊婦健康診査を実施している医療機関は18施設あります。
○
これらの施設は,お互いに連携し,リスクの高い妊娠については総合又は地域周産期母
子医療センターに妊婦等を搬送するなど,地域における出産を支える役割を担っています。
(エ) NICU※19(新生児集中治療管理室)等の整備状況
【NICU】
早産児や低出生体重児,先天性疾患等により重症の新生児について,集中的に管理・治
13
療を行う「NICU」は,県内に54床(鹿児島市立病院36床,鹿児島大学病院9床,今給
黎総合病院9床)設置されています。
国は,指針において,出生1万に対して25∼30床の整備を目標に,地域の実情に応じて,
NICUを整備することとしていますが,本県は出生14,637人(平成25年人口動態)に対
して,54床が整備されており,国の示す目標(本県に換算すると約36床)は満たされてい
る状況です。
NICUを備えた病院は,鹿児島市に集中していますが,緊急時にはこれらの病院に患
者が搬送されており,医療機関間で機能分担が図られているところです。
今後とも,限られたNICUを有効に活用するため,医療機関や搬送等の関係機関にお
ける連携強化を図る必要があります。
【GCU※20】
NICUで治療を受け,状態が落ち着いてきた児に対して,引き続きケアを行う「GC
U」(新生児回復治療室)は,県内に54床(鹿児島市立病院44床,今給黎総合病院10床)が
整備されています。
【MFICU※21】
合併症妊娠や切迫早産,胎児異常等,リスクの高い出産において,母体・胎児に集中的
に治療を行う「MFICU」
(母体・胎児集中治療管理室)については,国は指針において,
各都道府県は地域の実情に応じて,総合周産期母子医療センターにMFICUを6床以上
設置することとしていますが,本県では,総合周産期母子医療センターの鹿児島市立病院
に6床が設置されています。
表11
周産期母子医療センターの状況
資料:県子ども福祉課「状況調査結果」
区分
総 合 周産 期 母 子
医 療 セン ター
施設名
鹿 児 島市 立 病 院
鹿 児 島大 学
病院
今 給 黎総 合
病院
済 生 会川 内
病院
県民健康プラ
ザ鹿屋医療
センター
県立
大 島病 院
産 科 病 床 数( 一 般 )
71床
43床
13床
25床
23床
43床
分娩数
787件
311件
149件
375件
197件
409件
帝王切開実施数
403件
149件
68件
95件
88件
165件
産 科 部門
1日当たり
従事医師数
(常勤)
新 生 児部 門
11人
2人
4人
3人
2人
3人
13人
3人
2人
3人
3人
5人
−
−
−
−
−
病床数
6床
稼働率
94%
病床数
36床
9床
9床
(1床 )
(4床 )
(5床 )
稼働率
67%
100%
96%
19%
100%
76%
病床数
44床 (DICU含 )
−
10床
−
−
−
MFICU
NICU
(※ )
GCU
地 域 周産 期母 子 医療 セ ン タ ー
備 考
・ 救命 救 急 センター
※22 を 設 置
・ 新生 児 用 ドクター
カー ※23を 有 する
・ ドクターヘリを 運 航
※ NICU病床数の( )書きは,診療報酬非加算の病床数。
※ 分娩数,各病床等の稼働率等の実績は,平成25年度の実績
※ 病床数,医師数は,平成26年4月1日現在。
14
イ 分娩取扱医療機関における医師数等
○
県内の分娩取扱医療機関44施設における平成26年4月現在の産科医師数は110.6人(非常勤
は常勤換算後)となっており,平成22年4月と比較すると19.5(人)の減となっています。
また,県の出生数14,637人(H25)に対する,分娩取扱医療機関に勤務する産科医師数は,
出生千人あたり7.6(人)となっており,平成22年度と比較すると1.1人の減となっています。
○ 近年,全国的に産科医が不足していると言われており,本県についても,医師数が充足し
ているとはいえない状況の中,現場の医師の多大な尽力・負担により地域における出産が支
えられている状態です。
○ 県内の分娩取扱医療機関における平成26年4月現在の助産師数(常勤)は329人となって
います。
【医療圏域ごとの産科医等】
○ 医療圏域ごとにみると,出生千人当たりの産科医師数は,大隅の2.9人から薩摩の10.1人
と地域格差が見られます。また,産科医1人あたりの年間分娩件数についても,大隅では
276.9件と最も多くなっています。
○ 分娩取扱医療機関の助産師数(常勤)は,全体的には増加傾向にあるものの,地域偏在が
あり,平成26年は出生千人あたり,大隅が8.7人と最も少なく,最も多い薩摩の3割以下と
なっています。
表12
分娩取扱医療機関の産科医師数(各年4月1日現在)
資料:県子ども福祉課「状況調査結果」
表13
分娩取扱医療機関の助産師数(各年4月1日現在)
資料:県子ども福祉課「状況調査結果」
15
ウ 分娩取扱医療機関における診療機能(対応可能な母胎・新生児の状況等)
○
県内の分娩取扱医療機関44施設のうち,約8割の医療機関が,35∼36週までの早産や,軽
症の切迫早産・妊娠高血圧症候群・黄疸・低体温等の症状に対応することができます。
○ 一方で,これらの症例が重症化した場合や35週までの早産,2,000g未満の低出生体重児,
一卵性双胎等には,周産期母子医療センター等,地域の拠点病院で対応されており,地域の
医療機関と周産期母子医療センター等との機能分担が図られています。
表13 分娩取扱医療機関における診療機能(対応可能な母胎・新生児の状況)
資料:県子ども福祉課「状況調査結果」
(母胎)
(新生児)
対応可能な施設数・率
早 産(22∼36週)
22∼35週
35∼36週
一卵性双胎
一卵性双胎
MD
DD
二卵性双胎
切迫早産
対応可能な施設数・率
44施設(100%)
8施設( 18%)
36施設( 82%)
4施設( 9%)
14施設( 32%)
低出生体重児
∼1999㌘
2000∼2499㌘
黄
27施設( 61%)
軽症
38施設( 86%)
重症
5施設( 11%)
妊娠高血
軽症
36施設( 82%)
圧症候群
重症
6施設( 14%)
疸
低体温
41施設( 93%)
5施設( 11%)
36施設( 82%)
軽症
38施設( 86%)
重症
5施設( 11%)
軽症
35施設( 80%)
重症
5施設( 11%)
対応可能な施設数・率
30分以内の帝王切開
16
31施設( 70%)
鹿児島県周産期医療体制図
総合周産期医療
母体・胎児にリスクの高い妊娠に対する医療及び高度な新生児
医療
周産期医療システムの中核としての地域の周産期医療施設との
連携
鹿児島市立病院
鹿児島大学病院
(総合周産期母子医療センター)
(地域周産期母子医療センター)
MFICU6床,NICU36床,GCU44床
(DICU含)
新生児用ドクターカー
周産期医療情報センター機能
連携
NICU9床
連携・支援
搬送
今給黎総合病院
(NICU9床,GCU10床)
済生会川内病院
県民健康プラザ
鹿屋医療センター
県立大島病院
連携・支援
搬送
地域周産期医療
関連施設
研修
病院 ・
診療所
・ 助産所
周産期医療体制整備の進捗管理
鹿児島県周産期医療協議会
17
研修
搬 送
地域周産期母子医療センター
○機能
人工呼吸器を用いた呼吸管理や痙攣に対する常時の治療,糖尿病等を
有するハイリスク妊婦の分娩を行うなど比較的高度の医療を提供する。
(3) 周産期搬送体制
●
本県は,多くの離島・へき地を有していますが,これらの地域は全般的に医療機関
が少なく,加えて交通基盤も脆弱なことから,医療機関の利用が困難な地域が存在し
ています。また,本県の周産期医療を二次保健医療圏※24単位でみると,医師不足や地
域偏在により,分娩を取り扱う医療機関や専門医が少ない圏域もあります。
● このような医療供給基盤の脆弱な地域等において,可及的速やかに帝王切開や緊急
手術などの必要な処置ができるよう,緊急時の搬送体制の充実・強化が課題となって
います。
ア 本県における周産期搬送の状況
○
本県の周産期医療については,地域の周産期医療関連施設と総合及び地域周産期母子医療
センターの機能分担により,緊急時には,比較的高度な医療を提供する地域周産期母子医療
センターやリスクの高い妊娠や高度な新生児医療に対応する総合周産期母子医療センターが
中心となって,患者の受入を行っています。
○
平成25年度の母体・新生児の搬送実績については,搬送数のうち93%(総合44%,地域49%)
が総合・地域周産期母子医療センターへ搬送されており,医療機関間で機能分担が図られて
いるものと思われます。
○
こうした一方で,離島を含めた県境域においては,沖縄や宮崎,熊本など隣接県の医療機
関にも患者が搬送されています。
表14
周産期搬送の実績(平成25年度分)
小児科産科
医療圏
二次保健医
鹿児島
療圏
薩摩
資料:県子ども福祉課「状況調査結果」
北薩
姶良伊佐
大隅
熊毛
奄美
肝属
熊毛
奄美
2
15
9
5
178
1
8
3
2
104
1
1
県計
日置
指宿
南薩
川薩
出水
姶良
伊佐
8
7
4
31
16
5
4
20
2
2
1
10
11
5
曽於
(1) 母体搬送の状況(搬送数)
・相手先への搬送
鹿児島
市立病院
鹿児島
大学病院
今給黎
総合病院
済生会
川内病院
鹿屋医療
センター
県立
大島病院
その他の
医療機関
85
12
38
3
24
4
4
45
16
36
36
11
11
1
1
2
2
2
1
6
15
県内医
療機関
県内医
療機関
県内医
療機関
熊本県
医療機
関
宮崎及
び県内
医療機
関
宮崎県
医療機
関
沖縄及
び県内
医療機
関
計405件
6
5
31
(2) 新生児搬送の状況(搬送数)
・相手先への搬送
鹿児島
市立病院
鹿児島
大学病院
今給黎
総合病院
済生会
川内病院
鹿屋医療
センター
県立
大島病院
その他の
医療機関
76
6
17
1
3
12
3
3
107
1
12
3
1
2
155
1
1
1
28
108
6
7
12
12
8
8
24
3
7
5
39
県内及
び熊本
県医療
機関
県内医
療機関
県内医
療機関
沖縄及
び県内
医療機
関
計357件
18
イ 本県における周産期搬送体制
○
本県における周産期の搬送体制については,消防機関の救急車をはじめ,新生児用ドクタ
ーカーや,ドクターヘリ,消防・防災ヘリの活用,また必要に応じて自衛隊ヘリに出動要請
を行うなど,様々な搬送手段が整備されていますが,離島地域の医療機関から,「搬送に要
する人員が確保できない」,「搬送先が遠隔地(県外・離島本土間等)で,搬送に長時間を
要する」等の課題が上げられています。
○
これらの状況を踏まえ,本県においては,医療資源や搬送の手段を有効に活用するため,
医療機関,消防,行政等関係機関の連携についてより一層の充実を図る必要があります。
○
特に,離島を含めた県境の地域における搬送を円滑に行うため,搬送手段の確保や関係機
関の連携強化,隣接県との協力体制の構築が必要となっています。
○
なお,奄美南部3島からの緊急搬送の多くは沖縄県の医療機関に受け入れてもらっていま
すが,平成25年度から,鹿児島市立病院による受入調整が行われ,円滑な搬送体制の確保が
図られています。
○
また,周産期における緊急搬送(特に母体)は,一刻一秒を争う搬送が必要な場合や大量
の出血に対する輸血用血液の確保が必要な場合もあることから,搬送時間の短縮に向けた取
り組み等も必要です。
表15
搬送の手段
搬送の手段
救 急 車 ( 消 防 )
新生児用ドクターカー
鹿児島県ドクターヘリ
消 防 ・ 防 災 ヘ リ
沖縄県ドクターヘリ
海上自衛隊ヘリ(鹿屋)
陸上自衛隊ヘリ(沖縄)
公 共 交 通 機 関
そ
の
他
内
容
もっとも一般的な搬送の手段
(母体搬送に際しては,主に救急車が活用される。)
新生児の緊急搬送・転院搬送等に活用される。(鹿児島市立
病院(総合周産期母子医療センター)が運行)
重篤患者を緊急に医療機関に搬送する必要がある場合に活用
する。
主に離島・へき地等における重篤患者の搬送に活用される。
徳之島,沖永良部島,与論島の重篤患者については,沖縄県
ドクターヘリにより搬送している。
十島村以北の離島において,夜間等,他の搬送手段がなく,
重篤患者を緊急に医療機関に搬送する必要がある場合に,鹿屋
の海上自衛隊ヘリに出動を要請する。
奄美大島以南の離島において,夜間等,他の搬送手段がなく,
重篤患者を緊急に医療機関に搬送する必要がある場合に,沖縄
の陸上自衛隊ヘリに出動を要請する。
新幹線や航空機。ダイヤによる運行であること,一刻を争う
ような救急患者の搬送は基本的に行わないことなど,一定の制
限はあるが,搬送に要する時間など他の搬送手段と比較し,こ
れらの利用が有用な場合に活用されることがある。
各病院が独自に備える救急車,セスナ機など
19
資料:県子ども福祉課調査結果
表16 ヘリコプターを活用した搬送実績(平成25年度)
(妊婦)
ドクターヘリ
自衛隊ヘリ
消防・防災
搬送元
計
搬送先 鹿児島県 沖縄県 鹿屋海上 沖縄陸上 ヘリ,他
鹿児島市・日置 鹿児島市
2
2
鹿児島市
1
1
2
南薩
鹿児島市
北薩
4
4
3
3
姶良・伊佐 鹿児島市
鹿児島市
大隅
6
6
鹿児島市
6
2
3
11
熊毛
4
4
奄美大島 鹿児島市
・喜界
沖縄
1
1
0
徳之島・ 鹿児島市
1
1
沖永良部 奄美大島
・与論
沖縄
5
5
22
5
6
2
4
39
計
(新生児)
ドクターヘリ
自衛隊ヘリ
消防・防災
計
搬送元
搬送先 鹿児島県 沖縄県 鹿屋海上 沖縄陸上 ヘリ,他
鹿児島市
2
2
鹿児島市・日置
熊本
1
1
鹿児島市
南薩
4
4
鹿児島市
6
1
7
北薩
鹿児島市
15
15
姶良・伊佐
鹿児島市
大隅
9
9
鹿児島市
3
1
1
5
熊毛
奄美大島
・喜界
鹿児島市
0
沖縄
0
徳之島・
沖永良部
・与論
鹿児島市
0
奄美大島
0
熊本
鹿児島市
計
沖縄
6
39
3
6
1
※搬送記録の年齢,性別,疾病名等からカウント。
※新生児搬送の県外搬送の相手先は熊本県。
20
3
9
1
1
4
53
(参考)輸血用血液製剤の供給体制
本県では,医療機関からの供給要請に基づき,県赤十字血液センターが直接供給するととも
に,緊急時においては,赤血球及び新鮮凍結血漿製剤について,県内の8か所に設置している
血液製剤備蓄所を通じて供給し,地域の血液需要に備えている。
1 輸血用血液製剤の供給体制
(1)鹿児島市,枕崎市,日置市,姶良市で使用する全ての輸血用血液製剤,及びその他の地域で
使用する赤血球と新鮮凍結血漿以外の輸血用血液製剤
血液輸送
※緊急時は,県赤十字血液
センターの緊急車両で
搬送する。
供給
注文
県赤十字血液センター
医療機関
(2)上記以外の地域(県本土)の赤血球と新鮮凍結血漿製剤
血液輸送
不足分を直接供給
供給
医療機関
注文
県赤十字血液センター
鹿屋出張所,川内出張所
血液製剤備蓄所(6か所)
在庫確認
血液製剤の補充
(3)種子島,奄美大島,甑島の赤血球と新鮮凍結血漿製剤
血液輸送
不足分を直接供給
供給
注文
医療機関
県赤十字血液センター
川内出張所
血液製剤備蓄所(2カ所)
在庫確認
血液製剤の補充
※甑島は,川内出張所を通じて供給
(4)屋久島,喜界島,徳之島,沖永良部島,与論島で使用する輸血用血液製剤全て
供給
血液輸送
注文
医療機関
県赤十字血液センター
搬入 定期の航空便・船便
※離島地域の緊急時の供給については,消防・防災ヘリの活用や自衛隊ヘリへの要請を想定している。
21
2 県内の輸血用血液製剤供給施設
(1)鹿児島県赤十字血液センター
(2)血液製剤供給出張所(2ヶ所)
①鹿屋出張所 ②川内出張所
(3)血液製剤備蓄所(8か所)
① 加世田地区血液備蓄所
② 大口地区血液備蓄所
③ 国分地区血液備蓄所
④ 田上病院(西之表市)
⑤ 大島地区血液備蓄所
⑥ 国立病院機構指宿医療センター
⑦ 出水総合医療センター
⑧ 出水郡医師会立阿久根市民病院
22
(4) NICU等への長期入院児
【長期入院児の現状】
●
現在,本県においては,未熟児や重度の合併症等を有する児に対し,総合及び地域
周産期母子医療センターに設置されたNICUや,GCU(新生児回復治療室),DI
CU※25(発達支援集中治療室)において,必要な医療が提供されています。
●
このうち,医学的管理は要するが高度の集中治療は必要としない程度に回復した児
については,一般医療機関への転院や医療型障害児入所施設※26等への入所,在宅医療
への移行等により対応されていますが,なかには,受入先がないことなど様々な理由
により,長期入院せざるを得ない児もいます。
【速やかな退院ができない要因】
●
児の状態はもちろんのこと,受け入れる医療機関等の施設が満床状態であること,
在宅で介護できる体制が整わないこと,退院に対する家族の納得・了解が得られない
ことなどが挙げられています。
【望ましい療養・療育環境への移行】
●
一人一人の児について,その状態に応じた望ましい療養・療育環境に移行させるこ
とは,児の生活の質を高めるために大切なことであり,また,急性期の患者受入に支
障が生じないようNICU等を有効活用するためにも,関係機関の連携を強化し,長
期入院児やその家族に対する総合的な支援体制を整備する必要があります。
【長期入院児の状況】
○ 総合・地域周産期母子医療センターのNICU・GCUの長期入院児は,平成22年度と比べると
平成26年度は,半年から1年未満の入院児は9人減少しており,1年以上の児は1名増加し
ている。また,退院等の状況を見ると,在宅への移行や,転院が多くなっている。
表16
長期入院児の状況(4月1日現在:総合・地域周産期母子医療センターのNICU・GCU内)
入院期間
半年∼1年未満
原因疾患等
1年以上
H22
10
3
新生児仮死,慢性肺疾患・気道異常,奇形症候群 等
H26
1
4
新生児仮死,慢性肺疾患・気道異常,奇形症候群,神経・筋疾患
△ 9
1
増減
資料:県子ども福祉課「状況調査結果」
表17
( 人)
長期入院 児の退院等の状況(年度 実績)
在宅へ
退院児数
(入院期間が半年以上の者)
病院内
*1
H21
5
H25
6
増減
1
転院
施設へ移行
*2
合計
1
2
1
9
1
3
1
1
12
1
2
△ 1
0
3
*1 自院内の小児科病棟等へ移行 *2 施設:医療型障害児入所施設等の支援施設
23
その他
表18
1
鹿児島県のNICU病床数及び重心施設の病床等について
NICU等病床数
NICU
GCU
DICU
(新生児集中治療室) (新生児回復治療室) (発達支援集中治療室)
医療機関
鹿児島市立病院
36
34
10
鹿児島大学病院
9
−
−
今給黎総合病院
9
10
−
済生会川内病院
(1)
−
−
県民健康プラザ
鹿屋医療センター
(4)
−
−
県立大島病院
(5)
−
−
44
−
54(10)
計
※
2
NICU病床数の(
)書きは,診療報酬非加算の病床数
入院時のフロー(長期入院児)
周産期母子医療センター
鹿児島市立病院
鹿児島大学病院
今給黎総合病院
NICU36床
NICU
NICU
GCU
9床
34床
GCU
DICU10床
9床
10床
済生会川内病院
県民健康プラザ
鹿屋医療センター
県立大島病院
医療機関及び医療型障害児入所施設等
(国)南九州病院
在
宅
小児科等
やまびこ医療福祉センター
医療機関
在宅支援医療機関・訪問看護
オレンジ学園
ステーション・行政等の支援
24
(5) 産科医療機関として今後継続していくための課題
●
全国的に産科医療機関が減少傾向にある中,本県においても,地域で安心・安全な出
産を守るためには,現状の産科医療機関を維持・確保していくことが重要です。
ア 医師等人材の確保
○
産科医療機関71施設のうち,産科医療機関として今後継続していくための課題として,医
師等人材の確保を上げている施設が多く,「やや不安」と「かなりの課題」を合わせて,産
科医師が43施設(61%),麻酔医31施設(44%),助産師43施設(61%),看護師44施設(62%)となっ
ており,平成22年度調査と比べても増加しています。
また,産科医と助産師の確保については,「かなりの課題」と回答した医療機関の割合が
高く,特に南薩と北薩で割合が高くなっています。
○
人材確保が難しい理由については,「医師の高齢化」「後継者不足」「離島や郡部における
人材確保の困難さ」等が上げられています。
イ その他の課題
○
医療機器の更新について,課題と考える医療機関は33施設(46%),医療施設・設備につい
ては34施設(48%)ありました。
○
また,緊急時の自施設外からの応援態勢を課題と考える医療機関は34施設(48%),研修体
制の確保については25施設(35%)ありました。
25
表19
産科医療機関として今後継続していくための課題
薩摩
北薩
姶良伊佐
大隅
二次保健 鹿児島・日置
川薩・出水 姶良・伊佐 曽於・肝属
医療圏
指宿・南薩
39
7
6
9
奄美
熊毛
奄美
県計
3
7
71
H
参
2
考
2
)
医療機関数
熊毛
(
小児科産
科医療圏
資料:県子ども福祉課「状況調査結果」
(医師の確保) ※ 課題と考えている施設数
やや不安
かなりの
課題
(麻酔医の確保) やや不安
8
2
1
1
16
5
2
2
5
3
1
1
3
1
1
1
1
2
6
3
2
4
1
2
3
3
3
2
1
3
1
2
1
2
2
2
1
2
2
2
2
1
1
1
1
1
4
1
1
1
1
1
1
かなりの
11
課題
(助産師の確保) やや不安
6
かなりの
15
課題
(看護師の確保) やや不安
10
かなりの
13
課題
(医療機器の更新) やや不安
10
かなりの
7
課題
(医療施設・設備) やや不安
10
かなりの
8
2
課題
(緊急時の自施設外からの応援態勢) やや不安
6
かなりの
14
課題
(研修体制の確保) やや不安
9
1
かなりの
課題
3
4
2
2
2
2
1
5
2
2
1
4
1
26
4
4
4
12
17%
31
44%
14
18%
29
36%
12
17%
19
27%
15
19%
16
20%
10
14%
33
46%
12
15%
24
30%
19
27%
25
35%
12
15%
19
24%
19
27%
14
20%
13
16%
14
18%
17
24%
17
24%
17
21%
14
18%
10
14%
25
35%
19
24%
17
21%
13
18%
12
17%
12
15%
13
16%