酵素クラスター効果による 水に不溶な原料の効率的分解技術 東北大学 大学院 教授 梅津 工学研究科 光央 発表当日には、配付資料に載せていない未公開データがあります 1 セルロースなど水に不溶な基質を効率よく分解する酵素フォーマット 固相基質分解酵素 触媒ドメイン 生体外で3次元的に クラスター化 各ドメインを 分割調製 無機 ナノ 粒子 固相結合 ドメイン ビオチン化 ペプチドを 融合して発現 無機 ナノ 粒子 アビジン修飾 無機ナノ粒子 酵素の生産コストを変えることなく、活性を飛躍的に向上 〇 変異を入れることなく簡単に酵素活性を向上 〇 一つのバッチで複数の酵素反応:効率化 〇 組換え蛋白質として調製が難しいモジュール酵素も より高機能な構造で調製可能 2 水に不要なポリマーを分解する酵素 バイオマス系 基質 報告されている 分解酵素数 ・セルロース 約1000 ・糖の生産 ・良消化な飼料作り ・デンプン 約600 ・澱粉の液化 ・果汁の清澄補助 ・製菓, 製パン, 穀物加工 ・キチン/キトサン 約500 ・機能食品化 ・コラーゲン プラスチック系 分解酵素 の用途 25 ・リグニン 8 ・ポリウレタン 8 ・PHB 6 ・ポリ乳酸 5 ・ポリスチレン 2 ・コラーゲンペプチドの生産 ・バイオマスの軟化 固相基質分解酵素は、様々な材料を常温・常圧で低分子化できる 3 酵素の高機能化と課題 セルロース分解酵素:1017 種が報告 天然の酵素の一部では、活性向上へ向けた構造がデザイン 触媒機能のみ モジュール型酵素 セルロソーム型 (セルロース結合ドメインが融合) (巨大蛋白質に集積) 固相結合 ドメイン 触媒 ドメイン 原核生物に多い 真核生物中の約半分 Rumen bacteriaに多い 615 種 (60 % of 1017種) 335 種 (33 % of 1017種) 67 種 組換え体としての発現に難 巨大蛋白質の調製に難 酵素の高機能化:モジュール型, セルロソーム型への組換え But 組換え蛋白質として作ることが難しい&高コスト 4 従来技術とその問題点 〇 組換え蛋白質として調製が難しいものが多い ・モジュール型構造が多い 〇 高機能化 ・ゲノム探索:時間が掛かる, 確実性は未知数 ・進化工学などを用いても確実性は未知数 〇 人工セルロソームの設計 ・足場蛋白質の調製:高コスト化 5 ナノ材を核とした酵素モジュール集積体:ハイブリットナノセルロソーム Small, 7, 656-664 (2011), 特願 2009-223331, 2010-083962 生体外で3次元的に クラスター化 各ドメインを 分割調製 セルラーゼ 触媒ドメイン 30個のドメインが クラスター化 固相結合 ドメイン ビオチン化 ペプチドを 融合して発現 サイズ ~20 nm アビジン修飾 無機ナノ粒子 酵素活性評価:セルロース(PSC)からの還元糖生産量評価 生産された還元糖 / [mg/ml] 0.12 0.10 触媒ドメイン濃度で規格化 基質(PSC)濃度: 1mg/ml 触媒ドメイン濃度:400 nM 0.08 0.06 0.04 0.02 EglA 1h 2h 4h 8h 24 h 48 h 72 h 96 h クラスター化 した酵素 糖生産能力 の向上 kcat/Km の向上 EglA 10 倍 37 倍 CelD 7倍 7倍 EGPh 17 倍 測定中 クラスター化EglA 触媒ドメイン: 7 結合ドメイン: 23 ナノ粒子を核とした構造フォーマットは固相基質分解酵素の飛躍的な機能向上に有効 6 新技術の特徴・従来技術との比較 〇 組換え蛋白質として調製が難しいものが多い ・モジュール型構造が多い ドメインとして調製→発現系に掛かる負担が低い 〇 高機能化 ・ゲノム探索:時間が掛かる, 確実性は未知数 ・進化工学などを用いても確実性は未知数 既存の酵素の情報だけで高機能化可能→確実性が高い 〇 人工セルロソームの設計 ・足場蛋白質の調製:高コスト化 ナノ粒子の利用→ ・低コスト化 ・ナノ粒子の機能利用(磁気回収) 7 酵素モジュール集積体の汎用性:ハイブリッドナノセルロソーム 固相結合ドメイン (CBD4-1) 触媒ドメイン(CD) ×23 ×7 (131 nM) (40 nM) 7CD 23CBD4-1 ×1 (5.7 nM) 還元糖量/ [ mg mL-1] 30個のビオチン結合サイト 粒子径20 nmのCdSeナノ粒子 1 基質:非結晶性セルロース (PSC, 3.5 mg/mL ) 6倍 エンドグルカナーゼ(EG) CD CD+CBM 8倍 Cluster 7倍 (3倍) (4倍) (3倍) 13倍 6倍 9倍 6倍 22倍 0.5 5倍 45 ºC 96 h 5倍 28倍 14倍 8倍 (3倍) (3倍) 26倍 (4倍) 18倍 7倍 9倍 0 1 2 5 6 7 8 9 11 12 13 14 16 17 18 19 20 22 23 28 29 30 31 33 35 36 37 38 42 43 45 46 47 48 49 還元糖量/ [ mg mL-1] EG No. セロビオハイドロラーゼ(CBH) 0.6 0.4 CD CD+CBM Cluster (4倍) 7倍 6倍 (3倍) 0.2 11倍 (3倍) (3倍) 10 11 0 1 4 6 8 9 12 13 14 全てのCDが数~数十倍のスケールで高活性化 8 酵素モジュール集積体の特徴:使用酵素量を激減 CDEG ×7 CBDA CDEG (2.5 mM) CBDB ×11.5 ×11.5 (8.2 mM) (8.2 mM) ×1 (2.5 mM) ×7 ×1 (357 nM) Reducing sugar/[mg mL-1] (CD:CBD=7.23) CD 2.5 mM 0.8 天然 セルラーゼ (CBD付) 10 mM 0.6 1 mM 0.4 0.2 1.0 Reducing sugar/[mg mL-1] クラスター化酵素 (Avicel, 10 mg/mL ) 天然セルラーゼに対する還元糖生産量 反応時間に対する還元糖生産量 1.0 基質:結晶性セルロース (357 nM) 0.9 CD 2.5 mM 0.8 0.7 0.6 0.5 黒: 天然セルラーゼ の濃度 0.4 0.3 0.2 100 mM 0.1 0.0 0.0 0 20 40 60 Reaction time/ [h] 80 100 1 10 100 CD concentration /[mM] 使用酵素量が 1/40 倍に低下 1000 9 混合CDを用いた糖化試験 (基質:PSC) 独立系:異種CDを別々に集積 CBD CDB CDA 小 CDTotal:CBD=30:0 同一系:異種CDを同じ粒子へ集積 CDA CBD比率 CDTotal:CBD=23:7 CDTotal:CBD=15:15 CDB CBD 大 CDTotal:CBD=7:23 独立系 同一系 クラスター化前 CDA 100% CDEG8 CDB 100 % CDEG8 CDEG8 CDEG8 異なった触媒ドメインの酵素反応が共役して生成物の生産量が増加 10 想定される用途 (1) 水に不溶な基質を分解する酵素の機能を飛躍的に向上させる 技術 ・非食物系セルロース含有バイオマスの糖化 ・牧草などセルロースを含む食物の軟化 ・キチン/キトサンからの機能性食品剤の抽出 ・コラーゲンペプチドの抽出 ・リグニン含バイオマスの軟化 (2) ナノ素材を酵素の触媒機能を向上させることに利用 ・磁性粒子の利用 (3) 一つのバッチで複数の酵素反応を効率化できる 11 実用化に向けた課題 (1) 水に不溶な基質を分解する酵素の機能を飛躍的に向上させる 技術 ・非食物系セルロース含有バイオマスの糖化 現在は、大腸菌を用いて蛋白質を調製しているが、 実用化レベルの発現を可能とする発現系の構築 (2) ナノ素材を酵素の触媒機能を向上させることに利用 ・磁性粒子の利用 回収速度 *本技術に興味を持った企業にサンプル提供可能 12 企業への期待 (1) 非食物系セルロース含有バイオマスに限らず、 水に不溶な基質を分解する酵素を高機能化したい企業と の共同研究 *本技術に興味を持った企業にサンプル提供可能 (2) ナノ粒子の新たな用途を考えている企業との共同研究 (3) 複数の酵素反応を用いた一連の反応の効率化を計りたい 企業との共同研究 (4) 蛋白質の大量発現系を持つ技術と組み合わせれば、 最も糖化効率が高い酵素群を提案できる 13 本技術に関する知的財産権 • 発明の名称 :セルロース分解のためのタンパク質複合体及びその利用 出願番号 :特願2010-083962 • 出願人 :豊田中央研究所、東北大学 • 発明者 :松山 崇, 池内 暁紀, 井川 泰爾, 石田 亘広, 今村 千絵, 高橋 治雄, 梅津 光央, 熊谷 泉 14 産学連携の経歴 • 2009年-2011年 NEDO 産業技術研究助成事業に採択 • 2011年- JST 戦略的創造研究推進事業 (ALCA)に採択 15 お問い合わせ先 東北大学 大学院工学研究科 梅津 光央 TEL 022-795 - 7274 FAX 022-795 - 7276 e-mail mitsuo@prn.che.tohoku.ac.jp 16
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