Wing 第2回シンポジウム (配布版) デザイン型人材の重要性と環境 2015年2月26日 株式会社NTTデータ経営研究所 三谷 慶一郎 国際競争力の低下 2 労働生産性 ルクセンブルク 米国 ベルギー フランス オーストリア イタリア オランダ ドイツ カナダ ギリシャ 日本 0 50,000 100,000 150,000 (購買力平価 換算USドル) ※日本生産性本部2013年版「日本の生産性の動向」 Copyright © 2015 NTT DATA INSTITUTE OF MANAGEMENT CONSULTING, Inc. 3 エンゲージメント 「活力、献身、没頭などに特徴付けられる仕事 に関連するポジティブで充実した精神状態」 エンゲージメントの高い社員は、企業に留まる 傾向が高く、自社製品・サービスの支持者とし て、より熱心な営業と顧客サービスを提供する ※「日本企業の社員は、なぜこんなにもモチベーションが低いのか?」(ロッシェル・カップ) Copyright © 2015 NTT DATA INSTITUTE OF MANAGEMENT CONSULTING, Inc. 4 ビジネスモデルの崩壊 0 1 「新しいモノ」を創る 【創造性】 Copyright © 2015 NTT DATA INSTITUTE OF MANAGEMENT CONSULTING, Inc. 100 特定のモノを 大量生産する 【効率性】 5 環境の変化 6 経済性主導から感性主導マーケットへ 社会文化的成熟度が高まると、 主観的な満足度・心地よさといっ た視点が重視される 感性主導 経済性主導 技術主導 技術の成熟度が高まると、 価格等の経済性主導で動きだす 新技術とともに新しい マーケットが立ち上がる 安く高品質なだけではモノは売れない。体験や経験価値がより重要 ※Winograd(1995)による Copyright © 2015 NTT DATA INSTITUTE OF MANAGEMENT CONSULTING, Inc. 7 ビジネスモデルのシフト 0 1 「新しいモノ」を創る 【創造性】 Copyright © 2015 NTT DATA INSTITUTE OF MANAGEMENT CONSULTING, Inc. 100 特定のモノを 大量生産する 【効率性】 8 デザイン型人材 9 新しいIT投資領域 付加価値化 省力化・自動化 IT投資の目的 バックエンド 業務(定型的業 務:生産管理・流通管 理等) 従来のIT投資領域 新しいモノ・コトを 創出していくIT フロント業務 (サービス開発、製品 開発、マーケティング 等) 新しいIT投資領域 IT投資の対象 Copyright © 2015 NTT DATA INSTITUTE OF MANAGEMENT CONSULTING, Inc. 10 「デザイン型人材」が必要となる Everyone designs who devises courses of action aimed at changing existing situations into preferred ones (現状をより好ましい状況へと変化させるための方法を立案 している人は、みんな誰もが“デザインしている”と言える) “The sciences of the artificial”, Hervert A. Simon,1987 11 「新たな課題を発見し、分野横断的な知識・スキ ルにより、課題解決のためのサービスやシステム などを分析・デザイン、具現化できる人材」 経団連「今後の日本を支える高度ICT人材の育成に向けて」(2011年) 「異分野とITの融合領域においてイノベーション を創出し、新たな製品やサービスを自ら生み出す ことができる人材」 経済産業省「産業構造審議会人材育成WG」(2012年) 12 「スマートクリエイティブ」 高度な専門知識を持ち、経験値も高い 実行力に優れ、単にコンセプトを考えるだけでなく、プロトタイプをつくる データを扱うのが得意でそれを意思決定に生かせる ビジネス感覚も優れている。専門知識をプロダクトの優位性や事業の 成功と結び付けて考えられる プロダクトを誰よりもユーザ目線、消費者視点から見ることができる 斬新なアイディアを出せる他人とは全く違う視点を持つ 好奇心旺盛。現状に満足せず、常に問題を見つけて解決しようとする リスクをいとわない。失敗を恐れない 自発的。自らの主体性に基づいて行動する 自由に他社と協力し、アイディアを分析し評価する ※「私たちの働き方とマネジメント」(エリック・シュミット等)をベースに加筆修正 13 付加価値のシフト これからの社会 従来の社会 「何をつくるか」 “What to make” 「どうやってつくるか」 “How to make” 付加価値の源泉が、「どうやってつくるか(設計・開発技術)」から、「何 をつくるか(デザイン・アイディア)」へシフトしていく Copyright © 2015 NTT DATA INSTITUTE OF MANAGEMENT CONSULTING, Inc. 14 • 新しいモノ・コトを創り出す領域に、ビ ジネスモデルをシフトさせるべき • そのためにはデザイン型人材が必要 • しかし、人材育成だけではイノベーショ ンは生まれない • もうひとつ重要なのは「組織環境」 15 日本企業の組織特性 16 集団を構成する要素 人間が、集団を構成する要素には、大きく二つが存在する。日本では、 「場」を非常に強く意識した集団形成がなされている。 「資格」に基づく集団 「場」に基づく集団 「資格」:社会的個人としての 広い意味での属性によって集 団を形成している - 学歴・地位・職業や、男 女・老若等 「場」:資格は問わず、一定の 「枠」によって集団を形成して いる - 地域・所属機関 等 インドの「カースト制度」 欧州の「ギルド」 日本の集団形成は、強く「場」 を意識 「家」という概念は典型。(「一 族郎党」) 労働組合でさえも資格・職種 別でなく、企業単位 ※中根千枝,1967,「タテ社会の人間関係 – 単一社会の理論 -」 Copyright © 2015 NTT DATA INSTITUTE OF MANAGEMENT CONSULTING, Inc. 17 「場」による集団の維持 「資格」による集団は、それ自体が同質性を持つので、特に集 団を構成するための方策は不要 しかし、「場」による集団は、そのままではただの「群れ」。従っ て、集団を維持するためには、具体的な強化方策が必要 「枠内の成員に一体感を持たせること」 - 感情的なアプローチ。公私を含めた絶えざる人間接触 - 経営者と従業員は契約というより「縁あって結ばれた仲」 - 新卒採用と終身雇用制度はこれをフォローするもの 「個々人を結ぶ内部組織を生成させ、強化させる」 - 階層構造による組織化を進める ※中根千枝,1967,「タテ社会の人間関係 – 単一社会の理論 -」 Copyright © 2015 NTT DATA INSTITUTE OF MANAGEMENT CONSULTING, Inc. 18 タテ組織としての拡大 「場」による集団は、成員数が増えると、「タテ組織」として拡大していく 精緻な序列形成がなされていく - 親分・子分、先輩・後輩関係 - 官僚組織が典型 能力差よりも、年功を重視したマ ネジメントが行われる - 能力平等観。努力差は見るが、能 力差はあまり見ない - 能力平等観と序列偏重は相関関係 にある 同質なものを序列によって差をつ けていくので、同じ立場の同僚との 連帯意識が極めて低調になる ※中根千枝,1967,「タテ社会の人間関係 – 単一社会の理論 -」 Copyright © 2015 NTT DATA INSTITUTE OF MANAGEMENT CONSULTING, Inc. 19 タテ組織のメリット・デメリット タテ組織は、結束力があり、特定の機能を効率的に推進することはできる が、イノベーション創出を妨げてしまう可能性が高い メリット デメリット 集団結束性が高く、一体感がある リーダーから末端への伝達が早く、 動員力に富んでいる 集団としての意思決定がなされや すい(意見調整にヒエラルキーが使 われるため) 枠の外の世界との溝が深くなる。そ の結果「社交性」が育たない 異なる組織との提携が極めて困難 リーダーシップに制限を受け、思い 通りのことを行いにくい - メンバーに対し「温情主義」に なる 特定の固定的な機能を効率的に実 施することには長けた組織形態 近代化・工業化には大きな貢献をし てきたが … 組織間連携、企業提携が極めて難し く、かつリーダーがダイナミックな活動 を行いにくい組織となり、新しいことを 生み出しにくくなる ※中根千枝,1967,「タテ社会の人間関係 – 単一社会の理論 -」 Copyright © 2015 NTT DATA INSTITUTE OF MANAGEMENT CONSULTING, Inc. 20 日本企業がエンゲージメントと生産性が低い理由 アウトプットよりも「職場で一緒に過ごす時間」が重要視 仕事の定義や守備範囲が不明確(仕事はみんなでやる) 生涯一社への従属を前提とし転職が好まれない 解雇プロセスが機能しないため、スキルアンマッチな人員も そのまま雇用される 全体のコンセンサスを重視する 「組織内メンバに一体感を持たせること」の悪影響 ※「日本企業の社員は、なぜこんなにもモチベーションが低いのか?」(ロッシェル・カップ)をベースに加筆修正 Copyright © 2015 NTT DATA INSTITUTE OF MANAGEMENT CONSULTING, Inc. 21 日本企業がエンゲージメントと生産性が低い理由 ヒエラルキーを重要視し、上司意見に意義を唱えにくい 昇進と給与は、年功序列が基本 仕事の内容は上司が選び、自ら選べない。興味や適性もあ まり考慮されない (上司が理解でき、上司がやってきた)今まで通りの仕事をそ のまま行うことが前提。リスクをいとわず挑戦する態度を奨 励しない 「組織を階層構造によって強化する」ことの悪影響 ※「日本企業の社員は、なぜこんなにもモチベーションが低いのか?」(ロッシェル・カップ)をベースに加筆修正 Copyright © 2015 NTT DATA INSTITUTE OF MANAGEMENT CONSULTING, Inc. 22 女性の社会 進出を阻害 日本企業の 組織特性 エンゲージメン トや生産性が 低下 イノベーション が起こりにくい 23 何を行っていくべきか 24 労働形態の柔軟化・多様化 時間と場所の制限を緩和 残業の有無、短時間、限定日勤務 テレワーク 専業の制限を緩和 副業/複業 評価そのものの多様化 ひとりひとりの環境に合わせた評価制度 退社後の再入社を促進 辞めやすくすることも重要 Copyright © 2015 NTT DATA INSTITUTE OF MANAGEMENT CONSULTING, Inc. 25 外部との接触による学び・共創 社会人大学院の充実 キャリアチェンジのための学習機会の提供 様々な企業人とのコミュニケーション 「学校外の学び」の活性化 NPO、学会等の外部活動への参画 プロボノ 異業種共同による新規事業検討機会を作る アイディアソン・ハッカソン・メーカーソン 多様な人々が集まる実践の場は、一社ではできない 特定業種だけではできないサービス領域も増えつつある (IoT:ものづくり企業+IT企業+サービス企業) Copyright © 2015 NTT DATA INSTITUTE OF MANAGEMENT CONSULTING, Inc. 26 Copyright © 2011 NTT DATA INSTITUTE OF MANAGEMENT CONSULTING, Inc. 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