微生物由来の透明スーパーエンプ ラおよびその炭素繊維複合材料 北陸先端科学技術大学院大学 マテリアルサイエンス研究科 准教授 金子 達雄 1 従来技術とその問題点 既に実用化されている透明プラスチックには、 PMMAやポリカーボネート等があるが、結晶成分 が無いために ・耐熱温度がせいぜい150℃程度 ・力学強度がせいぜい60MPa程度 等の問題があり、広く利用されるまでには至っ ていない。また、次の問題もある。 ・再生可能ではなく地下資源枯渇に伴い、 価格が急騰する危険をはらんでいる 2 新技術の特徴・従来技術との比較 • 従来技術の問題点であった、透明樹脂の熱 力学的性能を改良することに成功した。 • 従来は耐熱性の点でDVDなどの使用に限ら れていたが、300℃を超える耐熱温度となった ため、電子ペーパーの絶縁体などに使用する ことが可能となった。 • 発酵技術の適用により、原料コストが1/100~ 1/10程度まで削減されることが期待される。 3 コストと耐熱温度 発酵生産物 http://www.satotekkou.co.jp/technical/plastic_data.php Heat-resistance of plastics is an additional values 4 ポリイミド 工業用プラスチックの代表格 芳香族ポリイミドは最も広く 利用されるスーパーエンジニアリン グプラスチック 一方、バイオ由来のものは無い イミド環結合 石油由来の現用ポリイミドは高価で生産量も比較的低い 芳香族ポリイミド 生産量8700t/年 平均価格11494円/kg 汎用エンプラ:ポリカーボネート 39万トン/年 汎用プラ:ポリエチレン 200-300万トン/年 430円/kg 146円/kg 人工甘味料の原料(フェニルアラニン) 20-70万トン/年 2,000円/kg フェニルアラニン生産は日本のお家芸 ポリイミドを低コストで生産出来る可能性がある 5 新規モノマー 濃塩酸 a-トルキシル酸 (anti H-T dimer) 単結晶 4軸X線回折により得られた構造 6 より高耐熱を目指して PAA D PI 様々なポリイミドも合成できた 7 バイオアラミドとバイオポリイミド 分子量:Mw 21000 (Mw/Mn 2.1) n =1.65 ガラス転移温度 10%重量減少温度 屈折率 複屈折率 ヤング率 最大荷重 破断伸び Tg = 273 oC (Ts 270 oC) Td = 370 oC n =1.65 0.018 E = 11.6 GPa s = 356 MPa e = 1.07 硫酸、トリフルオロ酢酸, DMF, DMAc, NMP, DMSOに溶解 ガラス転移温度 10%重量減少温度 屈折率 複屈折率 ヤング率 最大荷重 破断伸び Tg > 350 oC (Ts 310 oC ) Td = 390 oC n =1.60 0.11-0.09 E = 10.0 GPa s = 76 MPa e = 1.82 硫酸とトリフルオロ酢酸に溶解 8 バイオポリイミドの諸物性 Polymers Density (g.cm-3) s (MPa) Eint (GPa) Elongation (%) PI-1 1.20 75 6.62 10.01 3.68 PI-2 1.26 81 7.67 PI-3 1.15 PI-4 Specific strength (MPa.cm3.g-1) Specific modulus (GPa.cm3.g-1) Refractive index 1.82 0.28 63 8.4 1.60 (Ve 55) 4.33 1.13 2.07 0.01 64 3.4 1.65 89 9.24 8.02 1.19 2.48 0.12 77 7.0 1.65 1.21 96 3.38 5.65 0.98 4.59 0.66 79 4.7 1.65 PI-5 1.32 48 0.75 4.24 0.18 1.72 0.33 36 3.2 1.65 PI-6 1.23 98 5.71 13.39 3.03 4.49 0.43 80 10.9 1.64 PI-7 1.24 71 2.14 4.36 0.55 2.42 0.43 57 3.5 1.65 PI-8 1.31 90 5.30 4.77 0.75 3.31 0.32 69 3.6 1.64 Kapton 1.46 65 8.14 2.84 0.31 13.93 3.14 45 1.9 1.66 ODA-CBDA 1.33 ND ND ND ND ND 1.62 9 想定される用途 • 本技術の特徴を生かすためには、透明かつ高耐 熱ということに注目すれば、ガラス代替としてのメ リットが大きいと考えられる。 • 例えば、自動車などの輸送機器の透明部品であ る。 • また、カプトンの三倍にもなる高絶縁破壊耐性に 着目すると、電子ペーパーにおける絶縁体に展 開することも可能と思われる。 • さらに、CFRP化も可能であることを確認しており、 輸送機器のボディなどへの応用も想定できる 10 実用化に向けた課題 • 現在、生産量について10g程度のスケールで 可能なところまで開発済み。しかし、これ以上 のスケールで合成しサンプル試験を行う必要 があるが、この部分が未解決である。 • 今後、よりスケールアップを行い、大きな試験 片で実験データを取得し、ガラス代替に適用 していく場合の条件設定を行っていく。 11 企業への期待 • 未解決のスケールアップについては、化学企 業の技術により克服できると考えている。 • 1)発酵生産の技術、2)光反応の技術、3)モ ノマーおよびポリマー生産の技術、を持つ企 業との共同研究を希望。 • 電子ペーパーを開発中の企業、その他ガラス 代替分野への展開を考えている企業には、本 技術の導入が有効と思われる。 12 本技術に関する知的財産権 発明の名 : 称 出願番号 : 発明者 : 出願人 : 発明の名 : 称 出願番号 : 発明者 : 出願人 : 複合材料 特願2014-175363 (出願日:H26年8月29日) 金子達雄、立山誠治、野田鷹裕 国立大学法人 北陸先端科学技術大学院大学 モノマー化合物及びこれを用いた高分子材料 特願2011-252006 (出願日:H23年11月17日) 金子達雄・宮里朗夫・立山誠治・スヴァンナサラ プルエトチッカ・岡 佑季 国立大学法人 北陸先端科学技術大学院大学 13 お問い合わせ先(必須) 国立大学法人北陸先端科学技術大学院大学 産学官連携総合推進センター 中田(産学官連携コーディネーター・URA) TEL 0761-51 - 1070 FAX 0761-51 - 1427 e-mail [email protected] 14
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