労務関連ニュースレター

Workforce Management Newsletter
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労務関連ニュースレター
Vol.21, February 2015
In brief
・
男女雇用機会均等法、育児・介護休業法では、妊娠・出産、育児休業等を理由として不利益取扱いを行
うことを禁止していますが、昨年10月に男女雇用機会均等法第9条第3項の適用に関して最高裁判所の
判決があったことなどを踏まえ、1月23日に男女雇用機会均等法及び育児・介護休業法の解釈通達が改
正されました。内容は、上記の最高裁判所の判決に沿って、妊娠・出産、育児休業等を「契機として」なさ
れた不利益取扱いは、原則として法が禁止する妊娠・出産、育児休業等を「理由として」行った不利益取
扱いと解されるということを明確化するものです。
・
厚生労働省の労働政策審議会は2月9日、「専門的知識等を有する有期雇用労働者等に関する特別措
置法」(有期雇用特別措置法)の施行に必要な省令・告示案について、いずれも「妥当と考える」と答申し
ました。今後厚生労働省で、この答申を踏まえ速やかに省令・告示の制定を進め、2015年4月1日に施
行される予定です。
・
協会けんぽの2015年度の健康保険料率(案)および介護保険料率(案)が、全国健康保険協会運営委
員会において了承されました。変更は例年より1カ月遅れの4月分(5月納付分)からとなる見通しです。
・
2015年度(2015年4月から2016年3月)の労働保険料率が発表されました。労災保険料率は全54業種平
均で 0.1/1000 引下げとなり、雇用保険料率は今年度(2014年度)と変更ありません。
・
健康保険の高額療養費制度の自己負担限度額について、負担能力に応じた負担を求める観点から、
2015年1月診療分より、70 歳未満の所得区分が3区分から5区分に細分化されています。
・
2015年4月から障害者雇用納付金制度の対象事業主が拡大され、常時雇用している労働者数が100人
を超える事業主が対象になります。
In detail
1.
妊娠・出産、育児休業等を理由とする不利益取
扱いに関する解釈通達について
2015年1月23日に、男女雇用機会均等法の解釈通
達、及び育児・介護休業法の解釈通達の一部が改
正されました。
これまでも男女雇用機会均等法第9条第3項、育児・
介護休業法第10条等では、妊娠・出産、育児休業等
を理由として不利益取扱いを行うことを禁止していま
すが、妊娠・出産等を理由とする不利益取扱い等に
関する行政への相談件数が、引き続き高い水準で推
移していること、昨年10月23日に男女雇用機会均等
www.pwc.com/jp/tax/outsourcing
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法第9条第3項の適用に関して、最高裁判所の判決があったことなどを踏まえて改正されたものです。今回の改正によ
り、妊娠・出産、育児休業等を「契機」として不利益取扱いを行った場合、妊娠・出産、育児休業等を「理由」として不利
益取扱いを行ったと解され、男女雇用機会均等法、育児・介護休業法に違反することが明確化されました。
両法律において、禁止されている不利益取扱いの例は以下のとおりです。
以下のような事由を理由として
以下のような不利益取扱いを行うことは違法
妊娠中・産後の女性労働者の
• 妊娠・出産
• 妊婦健診などの母性健康管理措置
• 産前・産後休業
• 軽易な業務への転換
• つわり、切迫流産などで仕事ができない、労働能率が低
下
• 育児時間
• 時間外労働、休日労働、深夜業をしない
不利益取扱いの例
• 解雇
• 雇い止め
• 契約更新回数の引き下げ
• 退職や正社員を非正規社員とするような契約内容変更
の強要
• 降格
• 減給
• 賞与等における不利益な算定
• 不利益な配置変更
• 不利益な自宅待機命令
• 昇進・昇格の人事考課で不利益な評価を行う
• 仕事をさせない、もっぱら雑務をさせるなど就業環境を
害する行為をする
子どもを持つ労働者の
• 育児休業
• 短時間勤務
• 子の看護休暇
• 時間外労働、深夜業をしない
なお例外として、以下の場合には、不利益に当たらないとしています。
(1) 円滑な業務運営や人員の適正配置の確保などの業務上の必要性から支障があるため、当該不利益取扱いを行
わざるを得ない場合において、その業務上の必要性の内容や程度が、法の規定の趣旨に実質的に反しないもの
と認められるほどに、当該不利益取扱いにより受ける影響の内容や程度を上回ると認められる特段の事情が存在
するとき
(2) 契機とした事由又は当該取扱いにより受ける有利な影響が存在し、かつ、当該労働者が当該取扱いに同意して
いる場合において、有利な影響の内容や程度が当該取扱いによる不利な影響の内容や程度を上回り、事業主か
ら適切に説明がなされる等、一般的な労働者であれば同意するような合理的な理由が客観的に存在するとき
2.
有期雇用特別措置法にかかる省令・告示案について
厚生労働省の労働政策審議会は2月9日、「専門的知識等を有する有期雇用労働者等に関する特別措置法」(有期雇
用特別措置法)の施行に必要な省令、告示案について、いずれも「妥当と考える」と答申しました。今後厚生労働省で、
この答申を踏まえ速やかに省令、告示の制定を進め、2015年4月1日に施行される予定です。主な内容は以下のとおり
です。
(1) 無期転換ルールの特例の対象となる高度専門職の年収を1,075万円とすること
(2) 労働契約締結時における労働条件の書面明示事項に、有期雇用特別措置法による無期転換ルールの特例に関
する事項などを追加すること(高度専門職については10年、定年後継続雇用者については、引き続き雇用されて
いる期間において、無期雇用転換ルールが適用にならないこと)
(3) 無期転換ルールの特例の対象となる高度専門職は、次のいずれかに該当するものとすること
① 博士の学位を有する者
② 公認会計士、医師、歯科医師、獣医師、弁護士、一級建築士、税理士、薬剤師、社会保険労務士、不動産
鑑定士、技術士または弁理士
③ ITストラテジスト、アクチュアリーの資格試験に合格している者
PwC
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④
⑤
特許発明の発明者、登録意匠の創作者、登録品種の育成者
大学卒で5年、短大、高専卒で6年、高卒で7年以上の実務経験を有する農林水産業、鉱工業、機械、電気、
建築、土木の技術者、システムエンジニア又はデザイナー
⑥ システムエンジニアとしての実務経験 5 年以上を有するシステムコンサルタント
⑦ 国等によって知識等が優れたものであると認定され、上記 1 から 6 までに掲げる者に準ずるものとして厚生
労働省労働基準局長が認める者
(4) 労働基準法に定める有期労働契約の期間の上限に関する特例の対象者について、有期雇用特別措置法の施
行に併せて、ITストラテジスト試験に合格した者を加えること
(5) 事業主が、有期雇用特別措置法による無期転換ルールの特例対象者に関する認定を受けるに際しては、特例の
対象労働者に対して、以下の雇用管理に関する措置を行うべきこと
高度専門職関係
以下のいずれかの雇用管理に関する措置を行うこと。
・
教育訓練に係る休暇の付与
・
教育訓練に係る時間の確保のための措置
・
教育訓練に係る費用の助成
・
業務の遂行の過程外における教育訓練の実施
・
職業能力検定を受ける機会の確保
・
情報の提供、相談の機会の確保等の援助
継続雇用の高齢者関係
高年齢者雇用確保措置を講じた上で、以下のいずれかの雇用管理に関する措置を行うこと。
・
高年齢者雇用安定法第11条の規定による高年齢者雇用推進者の選任
・
職業能力の開発及び向上のための教育訓練の実施等
・
作業施設、方法の改善
・
健康管理、安全衛生の配慮
・
職域の拡大
・
知識、経験等を活用できる配置、処遇の推進
・
賃金体系の見直し
・
勤務時間制度の弾力化
3.
2015年度の協会けんぽの健康保険・介護保険料率について
協会けんぽの2015年度の保険料率が、全国健康保険協会運営委員会において了承されました。
主な地域の健康保険料率(案)は、以下のとおりです。
府・県
2015年度
2014年度
東京
9.97%
9.97%
神奈川
9.98%
9.98%
愛知
9.97%
9.97%
大阪
10.04%
10.06%
全国の健康保険料率(案)は、以下でご確認ください。
https://www.kyoukaikenpo.or.jp/~/media/Files/shared/direction/dai64kai/27021801.pdf
なお、介護保険料率は今年度の1.72%から1.58%へ引き下げとなります。(介護保険料率は全国共通)
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今後、都道府県単位保険料率及び定款変更等に関する厚生労働大臣の認可を受けた後、2015年度の保険料率を正
式に決定します。変更は例年より1カ月遅れの4月分(5月納付分)からとなる見通しです。
4. 2015年度の労働保険料率について
2015年度(2015年4月から2016年3月)の労働保険料率が改定となる予定です。
(1) 労災保険料率
① 業種ごとの労災保険料率
業種ごとの労災保険率は、全 54 業種平均で 0.1/1000 引下げ( 4.8/1000 → 4.7/1000 )となります。 全業
種中、引下げとなるのが 23 業種、引上げとなるのが8業種です。
詳細は、以下をご参照ください。
http://www.mhlw.go.jp/file/04-Houdouhappyou-11401000-RoudoukijunkyokuroudouhoshoubuRousaikanrika/0000068067.pdf
②
第3種特別加入保険料率(海外派遣者の特別加入)
海外派遣者の特別加入に係る第3種特別加入保険料率は、 4/1000 から 3/1000 に引下げとなります。
(2) 雇用保険料率
2015年度の雇用保険料率は、2014年度の料率を据え置き、一般の事業で1.35%、農林水産・清酒製造の事業で
1.55%、建設の事業で1.65%となります。
①+②
雇用保険料率
一般の事業
1.35%
①
労働者負担
(失業等給付の保険
料率のみ)
0.5%
②
事業主負担
0.85%
失業等給付の
保険料率
0.5%
雇用保険二事業の
保険料率
0.35%
(3) 施行日
いずれも2015年4月1日
5.
健康保険の高額療養費制度の自己負担限度額の改定について
高額療養費(*1)の自己負担限度額について、負担能力に応じた負担を求める観点から、下記のとおり2015年1月診療
分より、70 歳未満の所得区分がこれまでの3区分から5区分に細分化されましたのでご注意ください。
2014年12月診療分まで
所得区分
①区分A(標準報酬月額53万円以上)
②区分B(区分Aおよび区分C以外)
③区分C(低所得者)
(被保険者が市区町村民税非課税者等)
PwC
自己負担限度額
150,000円+(総医療費-500,000円)×1%
80,100円+(総医療費-267,000円)×1%
35,400円
多数該当(*2)
83,400円
44,400円
24,600円
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2015年1月診療分から
所得区分
自己負担限度額
多数該当(*2)
①区分ア(標準報酬月額83万円以上)
252,600円+(総医療費-842,000円)×1%
140,100円
②区分イ(標準報酬月額53万円~79万円)
167,400円+(総医療費-558,000円)×1%
93,000円
③区分ウ(標準報酬月額28万円~50万円)
80,100円+(総医療費-267,000円)×1%
44,400円
④区分エ(標準報酬月額26万円以下)
57,600円
44,400円
⑤区分オ(低所得者)
35,400円
24,600円
(被保険者が市区町村民税非課税者等)
注)「区分ア」または「区分イ」に該当する場合、市区町村民税が非課税であっても、標準報酬月額での「区分ア」または
「区分イ」の該当になります。
(*1)高額療養費制度: 同一月(1日から月末まで)にかかった医療費の自己負担額が高額になった場合、一定の金額
(自己負担限度額)を超えた分が、あとで払い戻される制度です。
(*2)多数該当: 高額療養費として払い戻しを受けた月数が1年間(直近12ヵ月間)で3月以上あったときは、4月目(4回
目)から自己負担限度額がさらに引き下げられます。
6.
障害者雇用納付金制度の対象事業主の拡大について
2015年4月より、障害者雇用納付金制度の対象事業主が、これまでの常時雇用する労働者数が「200人を超える」事業
主から、「100人を超える」事業主に拡大されます。
対象事業主になると、2016年4月から前年度(前年4月から当年3月まで)の雇用障害者数をベースに、障害者雇用納
付金の申告・納付を行う必要があります(2016年については、2015年4月から2016年3月までの雇用障害者数がベー
ス)。具体的な手続きは以下のとおりです。
①
②
③
障害者雇用納付金の申告(法定雇用率(2.0%)を達成している場合も必要)
障害者の法定雇用率を下回る場合は、障害者雇用納付金の納付(月額5万円(*)/不足雇用者1人当たり)
障害者の法定雇用率を上回る場合は、調整金の支給申請が可能(月額2.7万円/超過雇用者1人当たり)
*常時雇用する労働者数が100人を超え200人以下の事業主については、2015年4月1日から2020年3月31日までは、
納付金の額は、1人当たり4万円に減額されます。
制度適用から申告・納付開始までのスケジュール
2015年4月~
~2015年4月
2016年3月
2016年4月~
申告・納付開始
対象となる事業主の範囲
PwC
常時雇用する労働者数
が200人超の事業主
常時雇用する労働者数が100人超の事業主
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