平成27年度教育方針

私は、市長の施政方針を受け、教育委員会を代表して、平成 27 年度の教
育方針を申し述べ、皆さまのご理解をいただきたいと思います。
昨年は、11 月 27 日に、既にユネスコ無形文化遺産に登録されている「石
州半紙」と岐阜県「本美濃紙」
、埼玉県「細川紙」を加えた三つの和紙で、
新たに「和紙:日本の手漉和紙技術」として、ユネスコ無形文化遺産への登
録が決定されました。
さらに、全国重要無形文化財保持者団体協議会の第 23 回大会が浜田市で
開催されるなど、石州半紙が再び注目された年でもあり、改めて和紙文化の
継承及び振興の重要性を認識した年でありました。
さて、平成 27 年度の教育行政推進にあたり、特筆すべきことが 2 点あり
ます。
1 つ目は「教育委員会制度の改正」についてであり、2 つ目は「いじめ問
題に対する決意」であります。
まず、1 つ目の「教育委員会制度の改正」についてでありますが、昨年、
教育行政は、大きな転換期を迎えました。平成 26 年 6 月に地方教育行政の
組織及び運営に関する法律が改正され、本年 4 月 1 日から施行されます。
この改正は、教育の政治的中立性や教育の継続性・安定性は確保しつつも、
教育行政の責任を明確化するため、新たな教育長の設置や地方公共団体の長
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が総合教育会議を設置し、教育に関する大綱を策定するなど教育制度を抜本
的に改革するもので、法が制定された昭和 31 年から、今日まで続いてきた
教育委員会制度の骨格を大きく変革させる内容となりました。
しかしながら、この改革によって、教育の「人は人によって人となる」と
いう不易の理念が変わるものではありません。不易の理念のもと、変革への
対応という流行との調和を図りながら、子どもたちを育んでまいります。
次に 2 つ目の「いじめ問題に対する決意」であります。
いじめは、人の尊厳に関わる重大な問題であり、いじめを受けた児童・生
徒の教育を受ける権利を著しく侵害し、その心身の健全な成長及び人格の形
成に重大な影響を与えるのみならず、その生命または身体に重大な危険を生
じさせるおそれのあるもので、絶対に許されない行為であります。
そうした強い信念のもと、昨年 12 月議会において、
「浜田市いじめ防止対
策推進条例」を制定いたしました。いじめ防止等の対策を総合的かつ効果的
に進め、学校と家庭、地域、その他関係機関と一体となって、いじめられた
子どもたちを徹底して守り抜くとともに、いじめていた子どもたちがいじめ
を行うに至った背景も踏まえ、いじめ問題の根絶に全力をあげて取り組んで
まいります。
その他、教育委員会では、先程、市長が申し述べました教育の充実に関す
る 5 つの取組「国語教育」
、
「ふるさと郷育」
、
「あいさつ運動」
、
「学力向上」
、
「文化・歴史教育の環境整備」に取り組み、引き続き、浜田市教育振興計画
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~はまだっ子プラン~に掲げた基本理念である「人とつながる喜びや、学ぶ
ことの楽しさを通じ、社会の中で自立して生きることのできる子どもの育
成」に積極的に取り組んでまいります。
具体的には、第一に「学校教育」
、第二に「生涯学習及び社会教育」
、第三
に「スポーツ振興」
、第四に「図書館」
、第五に「青少年の健全育成」
、第六
に「芸術文化の振興」
、第七に「文化財」
、そして、全ての教育の基底に据え
て取り組む「人権・同和教育」について申し述べます。
まず、第一の「学校教育」についてであります。
学校教育については、社会教育とも連動しながら、自ら課題を見つけ、自
ら学び、自ら考え、主体的に判断・行動することができる「生きる力」の育
成に向けて、引き続き、
「知」
・
「徳」
・
「体」のバランスのとれた教育の推進
にあたり、8 点の項目、
「知育」
、
「徳育」
、
「体育」
、
「いじめ対策」
、
「特別支援
教育」
、
「子どもの安全・安心な教育環境づくり」
、
「学校統合」について、申
し述べます。
1 点目の「知育」については、全ての学習の基礎となる国語教育をより充
実し、読書、書くことを中心に言語活用能力のさらなる育成に努めます。
読書は、子どもたちに多くの知識、豊かな想像力を養い、書くことは、考
える力や論理的思考力、表現力を育てます。
本年度も読書ノートを児童生徒全員に配付する他、2 年目となる「調べる
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学習コンクール」や「家庭学習ノートコンテスト」
、市独自の学校図書館活
用教育研究指定校を 2 校から 4 校に増やすことなど、国語教育の充実を進め
てまいります。
そのためには、学校図書館司書の拡充や司書教諭との連携をさらに深める
ことが重要であり、専任の指導主事を配置し、子どもたちの読書活動、調べ
る活動などが広がるように取り組んでまいります。
また、学力向上については、
「家庭学習の定着」
・
「適切なメディアとの関
わり」
・
「教員の授業力向上」の 3 つにポイントを置き取組を進めます。
「家庭学習の定着」
、
「適切なメディアとの関わり」については、PTA組
織や保護者と連携し、小中一貫教育の最重要項目として、同じ中学校区内で
一貫した取組を進めることとしております。
また、
「教員の授業力向上」については、先進的な取組をしている地域へ
の教員派遣研修や公開授業等による研修の機会の充実、退職教員等のノウハ
ウを活用するために市独自の指導主事の派遣、QUテストの実施や学級集団
づくりの研修などを通じて、教職員の資質の向上を目指してまいります。さ
らに、島根県立大学の協力のもと、県大生による放課後の小中学生への学習
支援や昨年 10 月からスタートした土曜学習などに取り組み、学習意欲の向
上や家庭を含めた学習習慣の定着を図ってまいります。
2 点目の「徳育」については、人権意識や道徳心の育成を基本とし、様々
な体験活動を通じて、あいさつ、礼儀、マナーを身につけ、相手を思いやり、
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将来の夢や目標を持ち、人と好ましい人間関係をつくることができる子ども
の育成に努めてまいります。
特に、あいさつ運動については、各学校で教育目標の一つに掲げるととも
に、家庭や地域に対しても公民館活動等を通して、あいさつ運動が広がるよ
う努めてまいります。
3 点目の「体育」については、生涯にわたって心身ともに健康で明るい生
活を送ることができるよう、島根県が実施する「子どもの体力向上支援事業」
に取り組むとともに、食育の推進や生活習慣の確立に向けた啓発などを進め
てまいります。
次に 4 点目の「いじめ対策」についてであります。
いじめ問題については、
「浜田市いじめ防止対策推進条例」に基づき、浜
田市のいじめ防止基本方針を策定するとともに、学校・関係機関等の連携を
より深めながらいじめの根絶に努めてまいります。
いじめなどの問題行動や不登校等への対応については、児童生徒支援室が
窓口となり、スクールカウンセラーに加え、引き続きスクールソーシャルワ
ーカーや訪問指導員を配置して学校や家庭を支援してまいります。
5 点目の「特別支援教育」については、特別な配慮を必要とする子どもた
ちに対して適切な支援を行うために、関係機関からなる相談支援チーム を
活用し、早期からの教育相談を強化するとともに学校への訪問による相談・
指導を継続してまいります。
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6 点目の「子どもの安全、安心な教育環境づくり」については、通学路の
安全確保のため、関係機関の協力により危険箇所の改善を図るとともに、防
犯の専門家であるスクールガードリーダーをはじめ、子ども見守り隊や青色
防犯パトロールなどの地域ボランティアと連携して安全指導、見守り活動を
継続してまいります。また、校内の安全確保に向け、不審者対応訓練や避難
訓練、さらに防犯教室なども引き続き実施してまいります。
さらに、経済的な理由で子どもたちが教育を受ける機会を失うことのない
よう奨学金貸与や就学援助を行うとともに、制度の周知を図ってまいります。
7 点目の「学校統合」については、上府小学校、国府小学校及び有福小学
校の統合校である新たな国府小学校が本年 4 月に開校いたします。新たな学
校に通学する子どもたちが、安全に通学し、不安なく学校生活を送ることが
できるよう、学校や保護者はもちろんのこと、地域の皆さんとも連携を取り
ながら見守ってまいります。
また、旭統合小学校の平成 28 年 4 月開校に向けて、校舎・屋内運動場等
の建設を着実に進めてまいります。
この他、学校給食施設の統合については、平成 27 年度に策定する公共施
設再配置計画の中で、方針決定したいと考えております。
また、幼稚園教育については、平成 27 年度から子ども子育て新制度が開
始されることとなりますが、今後の公立幼稚園のあり方等については引き続
き検討し、方向づけを行ってまいります。
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第二の「生涯学習及び社会教育」については、社会教育の中核施設である
公民館を中心として、地域の特性を活かした事業や住民ニーズに基づく事業
を実施してまいります。
公民館には、単に学習の場としてだけではなく、
「まちづくりを支援する
公民館」としての役割が求められております。そのため、まちづくりとの関
わりについて、住民自治組織や各種団体との協働・連携のあり方を市長部局
のまちづくり担当部署と協議してまいります。
また、重点的な取組として「ふるさと郷育」と「家庭教育の支援」の 2 点
があります。
まず、1 点目の「ふるさと郷育」については、浜田市が誇る偉人の周知・
啓発を図るため、小学生を対象にした学習副読本の作成やふるさと再発見を
目指した体験活動を行い、ふるさとへの誇りを育みます。さらに地域とのつ
ながりを深めるために通学合宿や三世代交流事業などを推進し、地域への愛
着の醸成を図ってまいります。
2 点目の「家庭教育の支援」については、昨年、浜田市社会教育委員の会
から「浜田市の家庭教育のあり方」にかかる答申を受けましたが、親学の推
進や教育と福祉のネットワークづくりなどの取組を通して、家庭教育の支援
を推進してまいります。
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第三の「スポーツの振興」については、浜田市体育協会、スポーツ少年団
及びスポーツ推進委員等と連携し、健康増進、競技力の向上及び生涯スポー
ツの推進を図ってまいります。
特に、次の 3 点を中心に取り組んでまいります。1 点目は「全国高等学校
総合体育大会体操競技に向けた取組」について、2 点目は「高齢者の軽スポ
ーツ推進」について、3 点目は「浜田市室内プールの活用」についてであり
ます。
まず 1 点目の「全国高等学校総合体育大会体操競技に向けた取組」につい
てであります。平成 28 年度に浜田市で開催されるにあたり、浜田市実行委
員会を立ち上げ、練習会場となるふれあいジム・かなぎの改修や、地元の歓
迎ムードを盛り上げるような開催準備を進めるとともに、体操競技等の強化
支援を行ってまいります。
2 点目の「高齢者の軽スポーツ推進」については、ウォーキング・ウォー
クラリー、グラウンドゴルフ・パークゴルフ、ゲートボールを中心に推進す
ることといたしました。平成 27 年度は、合併 10 周年を記念した大会を市内
各地域で開催し、高齢者の生きがい活動へつなげてまいります。
3 点目の「浜田市室内プールの活用」については、社会体育施設としての
役割のみならず、学校教育における水泳指導の場としても欠かせない必要な
施設となっております。そのため、拠点施設として老朽化した施設の改修を
行い、快適な環境を確保し、利用の促進を図ってまいります。
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次に第四の「図書館」については、中央図書館と各分館との連携をさらに
強化し、市民の参加と協働を得て、いつでもどこでも、誰でも気軽に利用で
きる市民の施設を目指してまいります。
また、市民が自ら必要とする情報を迅速に得られるように、特に郷土に関
するレファレンス・サービス向上のための研修を実施し、職員の資質の向上
に努めてまいります。
さらに、島根県立大学と締結した相互協力の協定に基づき、両館の利用サ
ービス向上を目的とした図書資料の相互貸出しを行うほか、大学が所蔵する
地域課題解決に関する資料展示を行うなど、情報の相互交流を深めてまいり
ます。
また、市民の図書館ボランティア活動を推進するため、ボランティアの自
主的な講座運営等を支援してまいります。
第五の「青少年の健全育成」については、育成団体など市民の主体的な活
動を支援するとともに、地域で子どもを育む諸活動や育成関係者と連携を図
りながら、活動の活性化・発展に取り組んでまいります。
また、ひきこもりやニート、不登校など、社会生活を円滑に営む上で様々
な困難を抱えた子ども・若者に対し、青少年サポートセンターを総合相談窓
口、居場所とし、その利用を促すとともに、
「浜田市子ども・若者支援地域
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協議会」を中心とした関係機関との連携を深め、子ども・若者の健やかな成
長と自立した生活が送れるよう、育成支援に取り組んでまいります。
第六の「芸術文化の振興」については、石正美術館、世界こども美術館、
石央文化ホールなどを拠点施設とし、優れた芸術鑑賞の機会や創作活動の場
の提供を行い、文化の創造の基礎となる感性を醸成することに努めてまいり
ます。
また、市内には、多種多様な文化・芸術活動等を行う皆さんや各種団体が
あり、それぞれ活発な活動を展開されております。浜田市の芸術文化がさら
に発展するよう取り組んでまいります。
第七の「文化財」については、貴重な文化遺産の保護・継承と情報発信に
努めてまいります。
また、石州半紙については、ユネスコ無形文化遺産に改めて登録されまし
た。世界にその価値が高く評価されたものであり、引き続き技術の保持につ
いて支援して行くとともに、
「碧い石見の芸術祭 2015」の開催により、和紙
を使用した日本画や造形作品のデザインコンペなどで、石州半紙を市内外に
PR してまいります。
そして、人権尊重の精神を全ての教育の基底に据えて取り組む「人権・同
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和教育」については、一人ひとりの人格や個性の違いをお互いに尊重し合い、
自分自身の大切さはもとより、他人も大切にすることができる心の育成と態
度や実践力の醸成に努めるとともに、特に、命を大切にする教育に力を入れ
てまいります。今後も引き続き、同和問題をはじめとしたさまざまな人権課
題の解決に向けて、学校・家庭・地域・関係機関や団体などが一体となって
人権・同和教育の推進に取り組んでまいります。
以上、平成 27 年度の教育方針について申し述べましたが、これらの方針、
施策を実現していくために、教育委員会は、市長との連携を密にして、学校
や家庭、地域の理解と協力を得て取り組んでまいります。
議員並びに市民の皆さまには、一層のご支援ご協力をいただきますようお
願い申し上げます。
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