共生微生物を利用した高い生産能力 を持つサツマイモ

共生微生物を利用した高い生産能力
を持つサツマイモ種苗生産方法
島根大学
生物資源科学部
農林生産学科
助教 足立 文彦
サツマイモ屋上緑化による熱低減
研究背景
島根大学生物資源科学部屋上緑化圃場
※ サントリーフラワーズ(株)・九州沖縄農業研究センター共同育成品種
KOP2020-1※(切葉緑)
草高が高い
植被が密でなく,気孔伝導度が大きい
→
蒸発潜熱量が多い(足立ら
2009)
主茎長が短く蔓が上に伸びやすく植被展開が緩慢
問題点
高温となる8月上旬までに植被を繁茂できない
穂木と台木の組合わせが物質生産に影響する(北條ら1971)
→ 接木によって植被を増大できないか (鑑賞・食味)
交互接木による生育促進効果の確認
穂木
台木
ベニアズマ
ベニアカ
切葉緑
ベニアズマ(東)
バイオマス生産量大
ベニアカ(赤)
バイオマス生産量中
切葉緑(切)
バイオマス生産量小
東
赤
切
東
東
東
東
赤
切
赤
赤
赤
東
赤
切
切
切
切
接木による生育促進効果
1600
全重(g/m2)
1400
台木
P<0.0001
穂木
P=0.0001
交互作用
P=0.0466
1200
1000
800
600
400
200
0
穂木
台木
東/東 東/切東/赤 切/東切/切 切/赤 赤/東赤/切 赤/赤
東
切
東
赤
東
切
切
赤
東
切
赤
赤
異品種間の接木が全バイオマス重に与える影響
塊根収量(FWg/m2)
5000 5000 5000
台木
P<0.01
穂木
P<0.01
交互作用
P=0.1721
4000 4000 4000
25%
3000 3000 3000
2000 2000 2000
74%
1000 1000 1000
0
穂木
台木
0
0
東/東東/切東/赤切/東
切/切切/赤
赤/東 赤/切赤/赤
東/東東/切東/赤切/東
切/切切/赤
赤/東赤/切赤/赤
東/東東/切東/赤切/東
切/切切/赤
赤/東赤/切赤/赤
東
切
東
赤
東
切
切
赤
東
切
赤
異品種間の接木が塊根収量に与える影響
赤
植被展開率
0.0012
個体群生長速度
20
CGR(gm-2d-1)
植被展開率(℃-1)
0.001
0.0008
R2=0.795*
0.0006
0.0004
15
10
2=0.7686
RR2=0.871*
5
0.0002
0
0
0
0.5
1
1.5
2
葉面積指数(全体)
2.5
3
0
1
2
3
4
5
6
葉面積指数(全体)
葉面積指数と植被展開率,個体群生長速度との関係
7
全体LAI=穂木LAI+台木LAI
穂木
台木
6
P=0.0036
穂木
P=0.0004
交互作用 P=0.0062
約75%
7
台木
台木
P=0.0011
穂木
P=0.2096
交互作用 P=0.3443
5
LAI
4
3
2
1
穂木
台木
0
東
切
赤
東
切
赤
東
切
赤
東/東東/切東/赤切/東切/切切/赤赤/東赤/切赤/赤
東
切
赤
サツマイモ全体の葉面積指数(LAI)の構成
新技術の開発契機となる知見
• 適切な穂木を選択することで植被展開を促進、
収量を5割(最高7割)増加させる組合せがあった.
• 穂木と台木の組合わせによる葉面積の変化に
よって物質生産が促進された.
• 生育促進技術への発展の可能性がある.
ただし,植被展開促進の原因は不明.
足立文彦・宇田明日香・門脇正行・井藤和人.部分接木によるサツマイモ物質生産の
促進. 日本作物学会第236回講演会(2013)
窒素??植物ホルモン??
原因
穂木の同化産物供給
穂木からの何らかの物質
分枝数あたりの
葉面積展開効率
台木分枝数の増加
台木葉面積増加
結果
接木サツマイモの生育促進
植物共生細菌「エンドファイト」
• 毒素をつくらない
• 植物の免疫力を高める
• 強光や高温、乾燥等のさまざまな環境ストレ
スに対する耐性を高める
• 生育を促進する(植物ホルモン,窒素固定)
肥料や農薬に代わるものとして期待されている
生物的窒素固定
• ある種の細菌がもっている酵素のニトロゲナー
ゼは、大気中の窒素をアンモニアに変換するは
たらきを持ち、この作用を生物学的窒素固定と
いう(例:ダイズの根粒菌)
• ニトロゲナーゼによる窒素固定反応
• N2 + 8H+ + 8e- + 16 ATP
•
→ 2NH3 + H2 + 16ADP + 16 Pi
新技術の基となる研究成果・技術
別個体の穂木を特殊な方法で接木
• 全バイオマス重の増大
• 空気由来窒素利用率の増加
ほか の効果を付与する
機能性のあるエンドファイトに富んだ種苗ができる
従来技術とその問題点
培養細菌の土壌への接種が既に実用化されているが,有望菌の
単離・培養が必要で,難培養性菌については対応できない.
窒素固定菌は単体では高い窒素固定能力を示さない場合が多い.
そこで,相性のよい一般細菌と共存させて培養すると窒素固定能
力が高まるものの,生体外での共生環境の再現が困難
http://www.naro.affrc.go.jp/project/results/laboratory/karc/2002/konarc02-59.html
• 煩雑(有望菌の単離・培養が必要)・効率が低く、方法が未確立
• 機能を高める一般細菌を同時に接種困難
サツマイモ栽培における内生菌利用は足踏み状態
新技術の特徴・従来技術との比較
• 菌の単離・培養は不要
• 本技術は、一般細菌と目的の内生菌を区別せずに接種し、穂
木の窒素固定能力の高い微生物組成をそのまま利用できる.
• 生育促進効果の高い細菌を実用的に比較し選抜することが可
能である.
• 従来の接木は、優れた台木の形質を収穫部位を持つ穂木に付
与するものであり、台木の茎葉は通常取り除かれる.一方,本
技術は台木の茎葉根を活用することで種苗を作成できる点で大
きく異なる.
想定される用途
• 生産現場では植物病対策のために数年毎に
ポット苗から定植用の挿し穂を採取し種苗を
生産する.この苗に接木により有望菌を導入
できれば、すぐに本技術を導入可能である.
• サツマイモ生産における現実的な微生物の利
用方法は従来ほとんど提案されていない.
本技術の利用法が確立できれば、将来的に
はサツマイモ以外の栄養繁殖作物にも応用が
期待できる.
• 窒素固定以外のストレス耐性の強化,植物病
予防効果の付与などにも貢献できる可能性が
ある.
実用化に向けた課題
• 現在、窒素固定活性の高い植物体の部位,品種について新知
見が蓄積しつつある.しかし、穂木として必要十分な質的・量的
な条件の解明が未達成である。
• 今後、土壌窒素条件と窒素固定活性についての実験データを
取得し、各種土壌での栽培に適用していく場合の条件設定と,
効果的な穂木生産のための栽培指針の策定を行う。
• 接木による窒素固定能以外の機能性の付与効果の調査は未
着手である.
企業のみなさまへの期待
• 未解明の窒素固定能以外の機能性の付与については、植物ホ
ルモン分析や植物保護分野との連携により解明できる
• 無菌栽培技術を持つ、企業との共同研究を希望
• サツマイモ種苗生産だけでなく,それ以外の栄養繁殖植物の種
苗生産への応用可能性を明らかにしたい
本技術に関する知的財産権
•
•
•
•
発明の名称:
出願番号:
出願人:
発明者:
サツマイモの栽培方法
特願2013-169312
国立大学法人島根大学
足立文彦・井藤和人・門脇正行
問い合わせ先
島根大学研究機構産学連携センター 連携企画推進部門
准教授 丹生 晃隆
TEL : 0852-60-2290
FAX : 0852-60-2395
e-mail: [email protected]
島根大学研究機構産学連携センター 知的財産創活部門
教授 阿久戸 敬治
TEL : 0852-60-2290
FAX : 0852-60-2395
e-mail: [email protected]