Antilock Braking System(ABS)への ゲインスケジューリング制御適用事例 南山大学大学院 理工学研究科 機械電子制御工学専攻 片岡 寛 研究の手順 モデリング 制御対象の振る舞いを数式で表現 制御系設計 ロバスト制御系設計 シミュレーション・実験 設計した制御器の有効性を検証 使ったツール ・MATLAB…………制御器を求める際に使用 ・Simulink………...シミュレーションの際に使用 モデリングより、求めたモデルをベースにロバ スト系制御器を設計し、シミュレーションを行っ た。 内容 序説 制御対象・モデリング 制御器設計 実験・シミュレーション 苦労した点 結論 序説 研究の特徴 自動車のブレーキに関する運動特性 ・・・・車体速度、路面間の摩擦係数に依存 車体速度、摩擦係数の変化に対して ロバスト性を保証 車体速度の変化と共に制御器の係数も変化 するコントローラ(ゲインスケジューリング) 設計した制御器を用いてシミュレーション・実験 6 ABSとスリップ率の関係 スリップ率が 0.2の時 横力 縦力 共に高い [Idar Petersen, IEEE, 2003] スリップ率を 0.2付近に維持することで ・制動距離が短くなる ・スリップを防ぐ 6 研究手法 ・車体速度 は時変パラメータで観測可能 (実験機) 車体速度の変化と共に制御器の係数も変化する ゲインスケジューリング制御をABSに適用 ・線形行列不等式(LMI)を解き、制御器を設計 8 制御対象・モデリング 実験機 車輪 道路 10 実験機 ブレーキ 17 モデリング(ABSのモデル) L[ m] :バランスレバーの回転軸から車輪間の接点までの距離 ϕ[rad] :車輪間の接点の法線との角度 µ τ 1 [ N/m] Fn [ N] r1 , r2 [m] ω1 [rad/s] ω2 [rad/s] :車輪間の摩擦係数 :ブレーキトルク :垂直抗力 :上、下の車輪の半径 :上の角速度 :下の角速度 12 モデリング(運動方程式) 上の車輪,下の車輪の運動方程式 J 1ω 1 = Fn r1 µ − τ 1 J 2ω 2 = − Fn r2 µ (1) ( 2) J 1 , J 2 [kgm 2 ] :上の車輪,下の車輪 の慣性モーメント スリップ率の定義 r2ω 2 − r1ω1 λ = r2ω 2 (3) 13 制御器設計 評価関数 状態フィードバックコントローラ u (t ) = K (ω2 ) x(t ) を用いて 評価関数 J を ∞ ( ) J = ∫ x(t ) Qx(t ) + u (t ) Ru (t ) dt 0 T T と定義し, この評価関数 J の最小化を行う Q :状態変数に対する重み行列 R :入力に対する重み Q≥0 R>0 15 定理(LMI 条件) ~ ~ 以下を満たす X d (Θ i ) と Yd (Θ i ) が存在すれば、 システムを安定化できるコントローラが求まる。 設計ツール・・・・matlab γ subject to : X 11 (Θ i ) > 0 minimize : 1 ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ T 2 T He[ Ad (Θ i ) X d (Θ i ) + Bd Yd (Θ i )] − E d X d (Θ i ) X d (Θ i ) (Q ) 1 ~ Q 2 X d (Θ i ) T −I 1 ~ 2 0 R Yd (Θ i ) T W I >0 X 11 (Θ i ) I (i = 1,2.....7,8) Trace (W ) < γ 1 ~ T 2 T Yd (Θ i ) ( R ) 0 < −I 16 0 シミュレーション・実験 シミュレーション条件 摩擦係数と車体速度の範囲を以下のようにしてシ ミュレーションする 使ったツール・・・・simulink 0.1 ≤ µ ≤ 0.7 10 ≤ V [km/h ] ≤ 50 28.1 ≤ ω2 ≤ 140 18 フィードバックゲイン 状態変数と入力に対する重み行列 800 Q= 0 0 , 100 R = 0.03 19 シミュレーション µ = 0.1 制動距離: 39.4m 20 シミュレーション µ = 0.7 制動距離: 4.9m 21 実験 µ = 0.21 22 実験 ( µ = 0.21 ) (t < 1.7) シミュレーション結果とほぼ一致している ・10[km/h] 以上 実験結果から、提案した手法の有効性が証明された 23 苦労した点 苦労した点 • 実験を繰り返すが、シミュレーションとは一致しな かった。 一致しない原因 ・入力したブレーキと出力したブレーキに差がある ・車輪間の摩擦係数を把握できていない 同定実験、ブレーキパットの仕組みを理解する ことが必要と考えた。 ブレーキトルクの同定 r1 τ 1 = − J 2 x 2 + J1 x1 r2 上の式を用いて、同定を行った。毎回、同じ入 力を入れても値が違う場合が発生。 正確な値を定めることに苦労した。 摩擦係数の同定 L sin ϕ J 2 x 2 r2 µ= L sin φ r1 + ) + J1 x1 − τ g J 2 x 2 ( r2 r2 上の式を用いて、同定を行った。毎回、同じ入 力を入れても値が違う場合が発生。 正確な値を定めることに苦労した。 ブレーキパット ・ブレーキパットに遊びがあることが判明 ブレーキパットがどの程度遊び部分を含んでい るのかを把握するのに苦労した。 結論 ・制御対象のモデルをベースにシミュレーション し、実験結果の整合性を確認できた ・パラメータ同定や制御対象の仕組みを確実に 把握することの大切さを実感した 今後の課題 ・カルマンフィルタを用いて摩擦係数を推定する 研究を行う 線形化 テーラー展開を用いて非線形方程式を線形化 する。 [Idar Petersen, IEEE, 2003]. λ λ ∂ ∂ * * * * |τ =τ * (τ 1 − τ 1 ) λ ≅ λ (λ ,τ 1 ) + |λ =λ* (λ − λ ) + ∂λ ∂τ 1 1 1 * * τ はスリップ率の目標値, は λ λ 1 を維持する為のブレーキトルク * 30 モデリング スリップ率の微分方程式 2 r r2 (1 − λ )τ g µ (λ ) 1 1 τ g µ (λ ) − − λ= ω 2 J 1 r2 L(sin ϕ − µ (λ ) cos ϕ ) J 2 L(sin ϕ − µ (λ ) cos ϕ ) r12 µ (λ ) r2 (1 − λ ) µ (λ ) r1 1 τ 1 (5) + − − + ω 2 J 1 r2 L(sin ϕ − µ (λ ) cos ϕ ) J 2 L(sin ϕ − µ (λ ) cos ϕ ) J 1 r2 Eq.(5) は非線形である 31 自動車の特徴 車の運動は ・車体速度 ・摩擦係数 (タイヤと路面の間) 車体速度 時変パラメータ 摩擦係数 路面状態で大きく変動 32 線形化されたモデル * 3 * 2 * c c c ( ) ( ) ( ) + c4 µ λ µ λ µ λ + + * 1 2 3 λ= (λ − λ ) * 3 * 2 * ω 2 (c9 µ (λ ) + c10 µ (λ ) + c11 µ (λ ) + c12 ) c5 µ (λ* ) 3 + c6 µ (λ* ) 2 + c7 µ (λ* ) + c8 * + ( τ τ − 1 1 ) (6) * 3 * 2 * ω 2 (c9 µ (λ ) + c10 µ (λ ) + c11 µ (λ ) + c12 ) µ (λ ) はスリップ率が λ の時の摩擦係数 c1 , c2 , ⋅ ⋅⋅, c12 は定数 * * * * µ ( λ ) µ 以降、 を とし、記載 33 状態方程式 x(t ) = E −1 Ax(t ) + E −1 Bu (t ) (8) 0 0 3 2 * * * −1 + + + c4 c c c µ µ µ E A= 0 1 2 3 *3 *2 * ω 2 (c9 µ + c10 µ + c11 µ + c12 ) c µ *3 + c µ * 2 + c µ * + c −1 E B= 7 8 5 6 ω 2 (c9 µ * 3 + c10 µ * 2 + c11 µ * + c12 ) 34 状態方程式 * µ E A, E B 行列の分母には の変動パラメータ、 また µ * の累乗項も存在している。 −1 −1 変動パラメータのロバスト性の保証 難しい ディスプリプタ表現、LFT 非線形な項をなくす 35 ディスクリプタ方程式 Ed xd (t ) = Ad xd (t ) + Bd u (t ) (9) T xd (t ) = [ x(t ) λ u (t )] I Ed = 0 0 , Bd = [0 0 0 0 1] T 1 0 0 0 0 0 1 0 Ad = *3 *2 * *3: *2 * :*3 *2 * 0 c1 µ + c2 µ + c3 µ + c4 − ω 2 (c9 µ + c10 µ + c11 µ + c12 ) c5 µ + c6 µ + c7 µ + c8 0 0 −1 0 µ の累乗項が存在 * ポリトープ表現を使うことが難 36 ディスクリプタ方程式 Ed xd (t ) = Ad xd (t ) + Bd u (t ) (9) T xd (t ) = [ x(t ) λ u (t )] I Ed = 0 0 , Bd = [0 0 0 0 1] T 1 0 0 0 0 0 1 0 Ad = *3 *2 * *3: *2 * :*3 *2 * 0 c1 µ + c2 µ + c3 µ + c4 − ω 2 (c9 µ + c10 µ + c11 µ + c12 ) c5 µ + c6 µ + c7 µ + c8 0 0 −1 0 µ の累乗項が存在 * ポリトープ表現を使うことが難 37 ディスクリプタ方程式(LFT後) 1 0 0 0 0 c 3 µ + c 4 0 0 ~ Ad = 0 c2 µ c1 µ 0 0 0 0 0 0 1 − (c11 µ + c12 )ω 2 0 − c10 µω 2 − c9 µω 2 0 0 c 7 µ + c8 −1 c6 µ c5 µ 0 0 0 0 0 0 µ µ 0 0 −1 0 0 0 0 −1 0 0 µ 0 −1 0 0 µ 0 − 1 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 µ * の累乗項が消える。ポリトープ表現を行い、変動パラメータの ロバスト性を保証できる。 パラメータボックス パラメータボックスΘは変動パラメータの上限と下限 の頂点として定義する。 { { }} [θ1 θ 2 θ 3 ] : θ i ∈ θ i ,θ i (20) Θ= θ1 = ω 2 (スケジューリングパラメータ) T * θ 2 = ω 2 ,θ 3 = µ (i = 1,2,3) Θ1 = [θ1 θ 2 θ 3 ] ... Θ 7 = [θ1 θ 2 θ 3 ] , Θ 2 = [θ1 θ 2 θ 3 ] ,... (21) , Θ 8 = [θ1 θ 2 θ 3 ] 39 ~ X d (θ ) の制約 ~ Ed の構造を考慮し、 X~ d (θ ) を以下のように限定する。 X 11 (θ ) ~ X d (θ ) = X 21 (θ ) X 31 (θ ) I 0 0 0 X 22 (θ ) X 32 (θ ) X 23 (θ ) X 33 (θ ) ~ ~ ~ ~ E d X d (θ ) = ( E d X d (θ )) T ≥ 0 0 0 X 11 (θ ) 0 0 X 11 (θ ) 0 0 X 21 (θ ) X 22 (θ ) X 23 (θ ) = 0 0 0 X 31 (θ ) X 32 (θ ) X 33 (θ ) 0 0 (16) X 21 (θ ) X 31 (θ ) I 0 0 X 22 (θ ) X 32 (θ ) 0 0 0 X 23 (θ ) X 33 (θ ) 0 0 0 X 11 (θ ) > 0 等号制約を取り除く事ができる。 40 ~ Yd (θ ) の制約 状態フィードバック ~ ~ ~ −1 ~ ~ u (t ) = K d (θ ) x d (t ) = Yd (θ ) X d (θ ) x d (t ) ~ Yd (θ ) = [Y (θ ) 0 0] ~ K d (θ ) = [Y (θ ) 0 0 X 11 (θ ) 0 0] X 21 (θ ) X 22 (θ ) X 23 (θ ) X 31 (θ ) X 32 (θ ) X 33 (θ ) (17 ) (18) −1 u (t ) = K (θ ) x(t ) = Y (θ ) X 11 (θ ) x(t ) −1 (19) K (θ ) は状態方程式と同じ次元の行列 で表されるコントローラ。 41 研究手法 ・ポリトープ表現 変動パラメータのロバス 性を保証 ・リアプノフ安定理論 ・線形行列不等式(LMI)を解き、制御器を設計。 ABSの機能 ABSはタイヤのロックによるスリップを防ぐ。 ・ 雪道や急ブレーキの時 43
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