不動産投資レポート Jリート市場は3年連続で大幅高。オフィス市場は需要の拡大が継続 不動産クォータリー・レビュー2014 年第4 四半期 金融研究部 主任研究員 岩佐 浩人 [email protected] 2 期連続でのマイナス成長を受けて、政 首都圏中古マンションの成約件数は、前 いビルとそうでないビルとの間で回復の 府は 2015 年の消費増税を延期し、日銀は 年比▲7.2%の 3 万3,798 件に減少した。 勢いに差が見られるものの、オフィス賃料 追加の金融緩和を決定した。住宅市場で 今後は、フラット 35Sの金利引下げや住 は総じて上昇局面にある。森ビルの調査 は新設着工の減少など冷え込みが続く一 宅エコポイント制度の復活、贈与税の非課 によると、2015 年 の東 京23 区 大 規 模ビ 方、 地価の上昇は 3 大都市圏から地方圏に 税枠拡大などの政策支援によって、住宅市 ルの供給量は前年比26%増加する見通し 広がっている。賃貸市場はオフィスを中心 場がどの程度まで回復するか注目される。 である。供給を上回る需要が生まれるかど に需要が拡大し、J-REIT市場は 3 年連続で うか、 今後の需給バランスが注目される。 大幅高となった。 2―地価動向 1― 経済動向と住宅市場 金融緩和などを背景に商業用不動産へ の投資意欲は強く、利便性の高い地区で 前期までの実質GDP成長率が予想外の はマンション需要が拡大し、地価の上昇は 2 期連 続 マイナスとなり、政 府は 2015 年 3 大都市圏から地方圏へと広がっている。 10 月の消費税引き上げを延期し、日銀は 国土交通省の 「地価LOOKレポート(平 追加の金融緩和を決定した。足もとでは企 成26 年第3 四半 期) 」によると、前期から 業の生 産活動が輸出を中心に回復し、雇 上 昇した 地 区の比 率 は、東 京 圏 で 89%、 用指標も着実な改善を示している。2014 大 阪圏で 77%、名古屋 圏で 100%、地 方 年12 月の完 全 失 業 率は前月比0.1%低下 圏で 69%、全体で 83%となり、下落地区 の 3.4%、有 効求 人倍率は 1.15 倍と約23 は調査以来はじめてゼロとなった [図表3] 。 年ぶりの高い水準となった [図表1]。 野 村 不 動 産 アーバ ン ネット に よると、 一方、住宅市場は新設着工、販売、取引と 2015 年1月1日時点の首都圏住宅地価格 もに冷え込みが続く。 2014 年の新設住宅 は、7 四半期連続プラスの前期比0.9%の 着工戸数は、 4 月の消費増税の影響から持 上昇となった。 ち家を中心に減少し、前年比▲9.0%の約 89.2 万戸と 5 年ぶりに減 少した[図表2]。 3― 不動産賃貸市場の動向 2014 年の首都圏のマンション新規発 売戸数は前年比▲20.5%の 44,913 戸と 1|オフィス なり 3 年ぶりに減少した。また、 2014 年の 東京のオフィス市場は、需要が拡大し空 室率が大きく低下している。三幸エステー トによると、2014 年12 月末の都心5 区空 室率 (大規模ビル)は、 5 年ぶりの 3%台と なる 3.99%(前期は 4.51%) に低下した。 成約賃料データに基づくオフィスレン ト・インデックス(第 4 四半期)は、Aクラ スビルが 2 期連 続上昇し前期比0.8%の 30,573 円となった[図 表4]。競 争力 の高 08 | NLI Research Institute REPORT March 2015 いわさ・ひろと 93年日本生命保険相互会社入社。05年ニッセイ基礎研究所(現職)。 著書に 『不動産ビジネスはますます面白くなる』 、 『不動産力を磨く』 (共著) 。 不動産証券化協会認定マスター、 日本証券アナリスト協会検定会員。 2|賃貸マンション 4― J-REIT 市場(不動産投信) 東京都区部の中古マンション賃料 (12 月末)は、ワンルームが前年比1.3%、ディ 第4 四 半 期 の東 証REIT指 数は、長 期 金 ンクスタイプが 0.8%、ファミリータイプ 利の低下や円安・株高の流れを好感し、 9 が 0.1%上昇し、緩やかな上昇局面にある。 月末比13.6%上昇した。 12 月末時点の分 東京都心部の高級賃貸マンションについ 配 金 利 回 りは 3.0%、 NAV倍 率 は 1.6 倍、 ても、空 室率の 低下に伴い賃料が上 昇し 市場時価総額は 10.5 兆円に拡大し、はじ 12 月末は前年比10.8%上昇した[図表5]。 めて 10 兆円の大台を突破した。 2014 年 のJ-REIT市 場を振り返ると、東 3|商業施設・ホテル・物流施設 証REIT指 数 は 25.3%上 昇 し、2012 年 の 商業販 売統計によると、 2014 年は、株 33.6%、2013 年 の 35.9%に 続 い て 3 年 高による資産効果や外国人向けの免税品 連 続で大 幅高となった [図表8]。とりわけ、 売上が好調な百貨店が 2.0%増と 3 年連 日銀が 10 月31日にJ-REITの年間取得額を 続でプラスとなり、スーパー、コンビニエン 従来の 300 億円から 900 億円に増額する スストアもそれぞれ 0.3%、 0.7%とプラ 追加緩和を発表すると上昇に弾みがつき、 スに転じた(いずれも既存店ベース) 。 配当込みベースの東証REIT指数は、リーマ 全 国61 都 市 の ホテル 客 室 稼 働 率 (12 ン・ショック前に付けた最高値 (2007 年5 月 )は、前 年 比2.3%上 昇 の 75.4%と な 月)を 7 年 半ぶりに更新した。J-REITによ り、年間を通じても高稼働を維持している。 る物件取得額は約1.6 兆円となり、前年か 2014 年の訪日外国人客数は、円安や東南 ら 30%減 少 し た も の の、2013 年、2006 アジアのビザ発給要件の大幅緩和、消費 年に次ぐ金額を確保した。取得不動産の内 税免税制度の拡充、訪日プロモーション 訳は、オフィス(7,671 億円、占率 48%)や などを背景に、前年比29%増の 1,341万 住宅 (2,923 億円、18%)が中心となる一方、 人となり 2 年連続で過去最高を更新した。 ヘルスケア特化型REITの誕生や初の海外 国・エリア別にみると、台湾、韓国、中国の 不動産投資の実現など、新たな動きもみら 順に多く全体の 60%を占め、前年からの れた。また、上場銘柄数は 6 社増加の 49 社、 増加率では中国からの訪日数が 83%増 市場全体の運用不動産は 12.6 兆円となり、 加した [図表6]。2014 年 の訪日外国 人の いずれも過去最高となった。 旅行消費額は前年比 43%増加の約2 兆円 となり、国内消費を下支えしている。 首都圏大型物流施設の第4 四半期空室 率は前期比1.1%低下の 3.8%、近畿圏は前 期比横ばいの 0.4%となった [図表7]。企業 の物流機能の効率化や電子商取引の拡大 などを背景に、先進的物流施設に対する需 要は旺盛で空室率は低位で安定している。 NLI Research Institute REPORT March 2015 | 09
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