オレオサイエンス 第 15 巻第 3 号(2015) 103 巻 頭 言 グローバル化と日本油化学会 日本油化学会フェロー・中国 南京理工大学顧問教授 石 上 裕 私が油化学協会に入会して 50 年が過ぎた。入会後は 語版 CD(3,000 円+税)も作成されている。外国の研 ほとんどの油化学討論会・油化学研究発表会(当時)や 究者・技術者のよい指針になるであろう。関係者の個人 セミナーに参加した。 日本油化学会マスターズクラブ(平 的な努力に感謝したい。 成 13 年設立)にも入っている。現今, 世界の進歩・発展・ さて,オレオサイエンス・オレオケミカルズは化学産 一体化は止まるところを知らず日本油化学会も,協会か 業の一翼を担い,コモデティケミカルズかファインケミ ら学会へ(平成 14 年,2002 年) ,社団法人から「公益 カルズ・スペシァリティケミカルズであるかに関わらず, 社団法人」となった(平成 23 年,2011 年) 。公益目的 化学産業は「物づくり」の産業である。また,化学は今 事業 4 つのうち 3 つは従来とほぼ同様だが,4 つ目には や森羅万象を科学するための基礎的学問となった。ここ 専門的な知見を一般市民に啓発する事業がある。こうし で,産業として成り立つためにはニーズ(Needs)の研 た社会貢献(一般向け講演会・試験法のセミナー等)を 究と,すぐには役立たないシーズ(Seeds)を育てる研 行なうことにより社会的信用を得,また生活に密着した 究開発の手法がある。昨今は健康,医療,医薬,環境, 油化学関連分野の発展への期待を深めることになる。 「国 また情報電子産業の進歩・発展のためのニーズが大きく, 際化」の取り組みとしては 40 年来, 日米ジョイントミー 高性能,高機能,小型化・ミクロ化の国際競争が繰り広 ティングを開催しているが,最近,日本油化学会の肝い げられている。シーズの研究成果と実用化との距離が縮 りで第 1 回アジアオレオサイエンス会議が開かれた まっている例も多い。山中先生の iPS 細胞の発明と眼の (2014 年 9 月,札幌) 。また,会員用の「オレオサイエ 加齢黄斑変性治療への応用や青色 LED の発明と実用化, ンス」誌とは別に英文論文誌,Journal of Oleo Science 燃料電池車の普及計画,東京オリンピック選手村の水素 が 刊 行(2001 年 1 月 号 ) さ れ た。 事 務 局 に よ れ ば, タウン計画の例がある。この情報過多の時代では右顧左 2013 年の投稿者の国別では,日本(102,全体の 43%), 眄している間に好機を逸することがあるのではないか。 マレーシア(28),インド(18) ,中国(15) ,チュニジ この点で,研究グループ内の 1 人の研究者・技術者が 2 ア(12),トルコ(8) ,他(54)であるという。投稿料 つの研究課題を持ち,壁に突き当たったら気分を変えて の代わりに別刷購入とし,また,j-stage で open access もう 1 つの課題に取り組むことにすれば,壁に突き当 になっていることが,日本油化学会の知名度とともに外 たった主題によい冷却期間を置くことになる。幸いにし 国人に魅力なのであろうか。Priority と Originality 溢れ て日本油化学会には 7 つの専門部会(オレオマテリアル, る論文を会員諸氏はじめ日本国内や外国から多数投稿し 界面科学,洗浄・洗剤,オレオライフサイエンス,油脂 てもらい,やはり気になるインパクトファクターを押し 産業技術,オレオナノサイエンス,食品油脂機能構造) 上げたい(2011 年 1.417,2012 年 1.242,2013 年 1.201)。 がある。交流を通じて新しい発想が生まれる可能性が高 英文論文誌は無料で公開されており, アクセス数(25,911 い。松下幸之助翁は失敗したところでやめてしまうから 件)は,多い順にアメリカ,日本,インド,中国,大韓 失敗になる,成功するところまで続ければ成功になると 民国(2014 年 7 月の例)である。ちなみに,外国人会 の言を残しておられる。英文論文誌,J. Oleo Science の 員は未だ少なく、 今後の増加と学会活動を切に希望する。 発展と会員諸氏には学際に積極的に踏み込んでの国際展 なお,規格試験法委員会では「基準油脂分析試験法」を 開(二国間科学技術協力,国際研究協力等々)を願って 刊行しており,また,一部試験法を抜粋し,英訳した英 止まない。 ― 1 ―
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