平成27年3月4日 生 活 文 化 局 短期間で確実に儲かると嘘を言って勧誘していた 金地金の販売事業者に業務停止命令(3か月) 本日、東京都は、消費者を訪問し、金地金等の売買契約を締結していた事業者に対し、特定 商取引に関する法律(以下「特定商取引法」という。 )第8条に基づき、3か月間の業務の一部 停止を命じました。この契約は、最長30年の分割前払いにより契約金額を全額支払った後、 金地金が引き渡される商品売買契約ですが、当該事業者は、すぐに中途解約をすれば高い価格 で買い取るから短期間で確実に儲かるなどの嘘の説明をし、高額な頭金を支払わせていました。 ロンドンに栄転するので、 1 事業者の概要 事業者名 株式会社HSI 代表者名 代表取締役 岩坂 宏 所 在 地 東京都千代田区麹町二丁目2番22号 設 立 平成25年1月30日 資 本 金 3,000万円 業務内容 金地金等の訪問販売(分割前払い) 従業員数 15名(役員含む) 3年前に励まされたお礼に 行きます! 2 勧誘行為等の特徴 (1)消費者へ電話をかけ、海外へ転勤になるので以前励まされたお礼に伺いたいと、訪問の約束 を取り付ける。消費者は心当たりがないが、金地金の売買契約が目的であるとは思わず、来訪 を承諾する。 (2) 後日、営業員が訪問し、励まされたお礼に特別に安く仕入れた金地金を売ると勧誘を始める。 金地金の価格は相場動向で変動し、将来の利益は不確実であるにもかかわらず、短期間で確実 に利益が出ると嘘の説明をする。また、すぐに中途解約をすれば消費者へ販売した価格よりも 高い、大手金地金販売業者の小売価格で買い取ると、契約書と異なる説明をする。 (3)消費者が契約を了承すると、数十万から数百万円もの高額な頭金を振り込むよう指示する。 入金後、もっと多くの金地金を買う方が儲かると追加契約を勧め、さらに頭金を振り込ませる。 (4)実際に消費者が中途解約をしようとすると、営業員に説明された価格より低い、契約書どお りの価格を基準とした清算金が提示され、高額な手数料も差し引かれ、消費者は大きな損失を 被る。 3 業務の一部停止命令の内容 平成27年3月5日(命令の日の翌日)から平成27年6月4日までの間(3か月) 、特定商取 引法第2条第1項に規定する訪問販売に係る次の行為を停止すること。 (1) 契約の締結について勧誘すること。 (2) 契約の申込みを受けること。 (3) 契約を締結すること。 【問合せ先】 生活文化局消費生活部取引指導課 電話 03-5388-3074 4 業務の一部停止命令等の対象となる主な不適正な取引行為 不 適 正 な 取 引 行 為 特定商取引法 「ロンドンに転勤になるので、かつて励ましの言葉をいただいたお礼がて ら伺いたいのです。」「会社のシンガポール出店に際し、責任者として派遣さ れることに決まりました。3年前に励まされたお礼と挨拶にお邪魔したい。 」 などと電話で告げて訪問し、勧誘に先立って、本件契約の締結について勧誘 をする目的である旨を明らかにしていなかった。 第3条 勧誘目的不明示 契約書面に、書面の内容を十分に読むべき旨を赤枠の中に赤字で記載して いなかった。 また、契約の申込みの撤回又は契約の解除があった場合において、商品の 代金が支払われているときは販売業者は速やかにその全額を返還すること、 及び商品の引渡しが既にされているときはその引取りに要する費用は販売業 者の負担とすることについて、記載していなかった。 第5条第1項 契約書面の 記載不備 金地金等の価格は相場動向により変動し、将来の利益について不確実である にもかかわらず、「1か月も経たないうちに、1口40万円につき10万円ぐ らいは確実に利益が出せます。」「ウクライナ情勢などを見ても、4月以降に 向けて値上がりしていくのが確実です。頭金を支払っておいて、4月に入った らすぐに中途解約して売り抜ければ間違いなく儲かります。」などと、短期間 で利益を得ることが確実であるかのような不実を告げていた。 中途解約をした場合について、契約書面では東京商品取引所の相場価格(税 抜)を解約価格とする旨を定めているが、それよりも高い価格である大手金 地金販売業者の税込小売価格と同額かそれ以上の値段で買い取るなどと説明 し、中途解約をすれば儲かると、消費者の判断に影響を及ぼす重要な事項に ついて、不実を告げていた。 5 第6条第1項 不実告知 今後の対応 業務停止命令に違反した場合は、行為者に対して特定商取引法第70条の2の規定に基づき2年 以下の懲役又は300万円以下の罰金又はこれを併科する手続きを、法人に対しては特定商取引法 第74条の規定に基づき3億円以下の罰金を科する手続きを行う。 (参考)東京都内における当該事業者に関する相談の概要(平成27年3月3日現在) 相談件数 平均年齢 平均契約額 25 年度 26 年度 合計 約68歳 (42 歳~87 歳) 約872万円 (最高 5,190 万円) 8件 6件 14件 消費者へのアドバイス ◆以前お世話になったなどと言われても、身に覚えのない電話には注意が必要です。 ◆似たような投資経験があるからと、営業マンのセールストークを鵜呑みにせず、契約書はよく読 むことが大切です。 ◆契約内容がよく理解できないときは、周りの人や消費生活センターに相談しましょう。 <参考> ・東京都消費生活総合センター 03-3235-1155(相談専用番号) ・悪質事業者通報サイト http://www.shouhiseikatu.metro.tokyo.jp/tsuho/honnin-form.html 参 考 資 料 【事例1】 平成26年2月頃、甲の勤務先に、営業員Aから電話がかかってきた。Aは、「3年くらい 前に飛び込み営業でそちらに伺った際、励ましていただきました。ロンドンに転勤することが 決まりましたので、ご挨拶に伺いたいと思います。」と言った。しかし、甲には覚えがなかっ た。 数日後、Aは甲の勤務先に突然やってくると、「以前励ましていただいたお礼に、金を安く 提供します。利益が確定している分があって、普通はお得意さんにしかお分けできないのです が、内々に甲さんに提供します。」と話した。そして、また来る約束をして帰って行った。 数日後、Aは上司Bを連れてきた。Bは、「契約の形は、毎月少しずつ金を購入する純金積 立ですが、いつでも中途解約できます。中途解約時には当社が、○○貴金属などがホームペー ジのトップで表示している税込小売価格、つまり現物価格で買い取ります。金地金を現物価格 より安く提供し、中途解約をすれば当社が現物価格で買い取るので、すぐにでも利益を確定す ることができます。今、金の価格は上がってきていますし、もう少し待てばさらに利益が大き くなり、1か月も経たないうちに、1口40万円につき10万円ぐらいは確実に利益が出せま す。」と言った。甲は、金地金の購入契約を結び、○○万円を振り込んだ。 後日、またBがやって来て、さらに○○万円を払って契約を増やすよう勧めた。甲は、契約 書に、中途解約の際は、現物価格ではなく、それより安い東京商品取引所の1番限清算値を解 約価格とすると書いてあることに気づき、Bに尋ねた。Bは、「契約書にはそう書いてありま すが、中途解約をする場合は、東京商品取引所の1番限清算値ではなく、現物価格で買い取り ます。もしくは、もう少し高く買い取ります。」と言った。甲は、Bの説明が契約書の内容と 明らかに違うため、嘘をついて契約を取ろうとしているのだと思った。 【事例2】 平成26年4月頃、乙の勤務先に、営業員Cから電話がかかってきた。Cは、「数年前、営 業でそちらに伺ったことがあり、しっかり頑張ってくださいと励まされました。実はロンドン に転勤になるので、かつて励ましの言葉をいただいたお礼がてら伺いたいのです。」と言った が、乙は記憶になかった。 数日後、Cが勤務先に来たので、乙はしばらく話をしてみたが、やはり会ったことはないと わかった。しかしCは、「また励ましてください。」などと言い、しばらくして帰って行った。 数時間後、Cから再び電話があり、今度は金の購入の話を始めた。Cは、「今が金地金を買う チャンスです。金地金を○○貴金属より安い値段で買えて、2日間で決着がつき、利ザヤを儲 けることができる取引です。」と言った。乙は、金地金の購入など関心がなかったが、Cは、 一方的に訪問することを決めてしまった。 まもなくCは、営業員Dと現れ、金地金の勧誘を始めた。Dは、パンフレットや○○貴金属 のHP等資料を乙に見せながら、「Cを励ましていただいたお礼に、金地金を格安で買える契 約をご案内します。○○貴金属などの大手地金商よりも安い価格でお売りします。当社から1 g○,○○○円で金地金を買う契約をして、頭金を払えば、それより高い大手地金商の小売価 格の○,○○○円で右から左に売れるので、利ザヤが儲かります。」と言った。Dは、30年 も払い続ける契約であることや、購入代金総額が○○○万円にもなること、手数料が○○万円 もかかることは話さなかった。乙は、3日もかからず清算できる、利益が確実に出る契約だと 説明されたことから、契約に同意した。するとDは、振込先が書かれた紙を渡し、「明日、○ ○銀行に頭金○○万円を振り込んでください。」と指示した。この時乙は、契約書も見せられ ていなかった。 【事例3】 平成26年2月頃、丙の勤務先に、営業員Eから電話がかかってきた。Eは、「3年前、頑 張れと励まされて立ち直ることができました。今回、会社のシンガポール出店に際し、責任者 として派遣されることに決まりました。3年前に励まされたお礼と挨拶にお邪魔したい。」と言 った。しかし、丙には、そのような記憶はなかった。 数日後、Eは、上司Fと一緒に来た。Fは、「当社は、20%引きという格安で仕入れた金 地金の在庫を持っています。Eから、お礼の気持ちを叶えたいと口添えがありましたので、特 別に安く金地金をお譲りします。形としては金地金を分割払いで購入する契約ですが、4月に 中途解約をしてすぐ売り抜けることを前提とした取引で、利益が出ることが確定しています。 頭金だけ払って中途解約をすれば、買った価格より高い、大手地金商の小売価格で売れるので 儲かります。」と言った。Fは、丙に契約書も見せず、とにかく頭金○○万円を振り込むこと が必要だと言うので、丙は翌日振り込んだ。 後日、Fは、さらに契約を増やすよう丙を勧誘した。Fは、「過去に消費税が上がった時も 金地金は値上がりしており、ウクライナ情勢などを見ても、4月以降に向けて値上がりしてい くのが確実です。頭金を支払っておいて、4月に入ったらすぐに中途解約して売り抜ければ間 違いなく儲かります。当社なら、特別値引きで、大手地金商の小売価格より、1g2○○円安 く販売します。すぐに中途解約をすれば、この大手地金商の小売価格で売れるので、確実に儲 かります。」と説明した。さらに、「たくさん買っていただいた方が安くできます。10kg より、20kg30kgと、できるだけたくさん買う契約をしてください。その分だけ確実に 儲かります。」と追加契約を勧めた。丙は、Fの説明を信じ、言われたとおり○○万円を追加 で振り込んだ。 ところが、その後Fから、「金価格が下がってしまったので、さらに○○○万円払って契約 額を増やし、反転して上がった時に早く元が取れるようしましょう。」と言われた。この時、 丙は騙されたのだと思った。
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