週刊介護情報第131号

第 131 号
週刊介護情報
平 成 27 年 3 月 6 日 (金 曜 日 )
第131号 平成 27 年 3 月 6 日(金曜日)
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預貯金の勘案、「本店等一括照会」を可能に 全国担当課長会議
介護報酬改定関連通知案を提示 厚労省、新年度重点施策説明
フィットネスクラブは医療・福祉施設に近いと分析
経産省 年齢層は 65 歳以上高齢者の割合が最も高い
遺族側、素案は「医療機関側に委ねている」と主張
医療事故調査 報告書の指針巡り意見が平行線
消費増税、全病院で 344 億円の負担増 補填率調査
「診療報酬による補填は限界」四病院団体協議会など
預貯金
勘案
本店等一括照会
可能
全国担当課長会議
介護報酬改定関連通知案 提示 厚労省 新年度重点施策説明
――厚生労働省
厚生労働省は3月2日、3日の2日間、2015 年度「全国介護保険・高齢者保健福祉担
当課長会議」を開催した。老健局所管の介護保険や高齢者福祉事業について、2015 年度
の重点項目や留意事項を都道府県の担当者に説明した。
「全国介護保険・高齢者保健福祉担当課長会議」は、介護保険や認知症に関する 2015
年度の施策や介護報酬改定について、自治体の担当課長へ厚生労働省老健局が説明する
もので、改定後の新年度に向け詳細な手続きが説明された。
2日は・地域包括ケアシステムに向けた介護保険事業計画の実施について ・介護保
険制度改正における費用負担に関する事項等について ・介護施設等の整備及び運営に
ついて ・認知症施策の推進について ・新しい総合事業の推進について ・地域包括
ケアシステム構築へ向けた施策の推進について ・介護人材確保対策について、など。
3日は・平成27年度介護報酬改定について ・在宅医療・介護連携事業について ・
介護・医療関連情報の「見える化」の推進について、を中心に説明を行った
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<3月2日>
厚労省は、2015 年度に施行される重点施策である、
(1)一定以上所得者の利用者負担
の見直し(8 月施行)、(2)高額介護費サービス費の見直し(8 月施行)、(3)特定入所
者介護(予防)サービス費(補足給付)の見直し(預貯金等の勘案等)
(8 月施行)、
(4)
第 1 号保険料の多段階化・軽減強化(4 月施行)、(5)住所地特例の見直し(4 月施行)
などについて説明した。
(3)は、補足給付の見直しに伴い、一定額の預貯金等の保有者を支給対象から除外
するため資産勘案する。2015 年 8 月から、単身の場合は 1,000 万円以下、夫婦の場合は
2,000 万円以下であることを要件に追加。勘案の際は、必要に応じた金融機関への照会
を想定している。
今回、厚労省はより効果的・効率的に預貯金等の勘案ができるよう、銀行等が指定す
る本店・本部・センターなどに対し、調査対象者の口座の有無や残高の照会を行う一括
照会を可能とすると説明。2015 年 7 月 1 日から、照会の受け付けを開始する予定で、具
体的な実施方法に関しては改めて通知で示すと述べた。
(5)の住所地特例とは、遠方等の介護施設に入所する場合に、転居先の保険に加入
することになると、介護施設の整備が進んでいる市町村の負担が過大になるため、「施
設に転居する前の保険者(市町村)が、引き続き保険者となる」という特例制度。
現在、介護保険 3 施設(特養ホーム、老健施設、介護療養型医療施設)などが対象だ
が、4 月から、サービス付き高齢者向け住宅に対象が拡大される。
厚労省は、見直しに伴い、対象となる有料老人ホーム・サ高住の一覧の HP 公表に関
して説明。対象となる予定施設についても、住所地特例施設とは分けて別表に記載する
ことを説明した。また、サ高住の一覧掲載の判定は、サ高住の登録事項である「入浴、
排せつ、食事の介護」、
「食事の提供」、
「洗濯、掃除の家事」などを行うとしている場合、
掲載対象として差し支えないと述べた。
<3月3日>
3 月 3 日は老健局所管の(1)2015 年度介護報酬改定、(2)社会保障・税番号制度導
入――について、都道府県等の担当者に説明が行われた。
厚労省は 2015 年度介護報酬改定の概要を「骨子」、「各サービスの概要」、「横断的事
項」に分けて解説。報酬告示などの改正に関しては、現在実施中のパブリックコメント
の締め切り(3 月 11 日)後に、可能な限り速やかに公布すると説明し、改正案を資料で
示している。さらに、関係通知に関しては、現時点版と断りながら、一部の基準省令や
報酬基準に関する通知案を示した。
たとえば、今回改定で大きな改正があった訪問リハビリテーションでは、「リハビリ
テーション会議の構成員は、医師、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、介護支援専
門員、居宅サービス計画の原案に位置付けた指定居宅サービス等の担当者、介護予防・
日常生活支援総合事業のサービス担当者および保健師等とする」ことや、利用者・家族
の参加を基本とするが、家庭内暴力などにより参加が望ましくない場合や、家族が遠方
に住んでいるなど、やむを得ず参加できない場合、必ずしも参加を求めるものではない
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旨などが詳細に述べられている。疑義解釈(Q&A)についても、可能な限り速やかに発
出し情報提供する予定としている。
社会保障・税番号制度の導入準備について、概要を説明。2016 年 1 月の個人番号利用
開始には、制度理解と住民説明が必要と指摘。「取扱いガイドラインの遵守」と「関係
事務の洗い出し・業務フローの見直し」、「業務システムの改修等」に関して説明。特定
個人情報の取扱い等に関しては、番号法等に基づき厳格なルールが定められており、違
反者には罰則適用もある。個人番号を扱う担当者に対しては「特定個人情報の適正な取
扱いに関するガイドライン(行政機関等・地方公共団体編)」に基づいた適正な取扱い
を求めた。
医療 福祉施設 近
経産省 年齢層
分析
歳以上高齢者 割合 最 高
――経済産業省
経済産業省は 2 月 26 日、第三次産業の 2012 年産業活動分析を「フィットネスクラブ」
をテーマに視点を合わせ現状と傾向を公表した。分析結果によるとフィットネスクラブ
の利用者数の伸び・売上等の右肩上がりのカーブの描き方は、介護施設等の医療福祉施
設の伸び方と近似しており、2つの相関係数は 0.98 と1%に近い有意水準を示してい
たことがわかった。(有意水準―ミスする確率が1%という統計学上の仮説で用いられ
る)
これは内閣府の「2014 年版高齢社会白書」にも表れているが、フィットネスクラブの
利用者年齢層は 65 歳以上の高齢者の割合が高く、健康意識は他の年代と比較して高く、
年齢の上昇につれ健康に対する出費に積極的という傾向が見られた。この傾向から経産
省は、「フィットネスクラブは娯楽施設の要素よりも、『医療・福祉』との相関が強い」
と分析している。
フィットネスクラブは 2003 年以降、上昇傾向で推移した。2012 年経済センサス活動
調査によれば、全国のフィットネスクラブの事業所数は 3,760、利用者数(延べ利用者
数)は 2 億 177 万人、売上金額は 3,754 億 9,100 万円である。利用者数合計は、2012
年以降下降気味だが、売上高合計は 3 年連続で増加。年齢層別にスポーツクラブ使用料
の支出等を調査した結果、60 歳代が特に多く、ついで 70 歳代だった。利用者減の理由
は東日本大震災が発生によるもので 2011 年は前年比▲1.5%のマイナスに転じたが、
2012 年は同 8.7%と大幅に増加した。2013 年も同 3.1%増加したが、2016 年は3年ぶり
に同▲2.9%のマイナスに転じている。
都道府県別にみたフィットネスクラブ事業所数、利用者数、売上金額と人口の関係を
上位5都道府県(東京都、大阪府、神奈川県、埼玉県など)でみると、全ての項目で「東
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京都」が最も多くなっている。「東京都」は、全国のフィットネスクラブの事業所数の
13%、利用者数の 22%、売上金額の 28%を占めている。
次に、需要側(消費者)の動きを確認するため、総務省の家計調査(二人以上世帯 6)
でフィットネスクラブへの支出動向、支出金額をみてみる。
前回(2012 年)の分析では、「スポーツクラブ使用料」支出金額全体に占めるシニア
層のシェアが大きいことが確認されている。26年をみると、どの年齢層で「スポーツ
クラブ使用料」に対する支出が多いのかを確認するため、世帯主の年齢階級別に26年
の「スポーツクラブ使用料」の特化係数 7 を算出してみると、世帯主が60歳代の世帯
が 1.61、70歳以上の世帯が 1.14 と他の年代と比べて高くなっている。総務省「家計
調査」によれば、二人以上世帯の「スポーツクラブ使用料」に対する年間支出頻度は2
2年の44回(100世帯当たり)から26年は55回に上昇している。
「スポーツクラブ使用料」に対する年間支出金額はどのくらいなのか、世帯主の年齢
階級別に 2014 年の「スポーツクラブ使用料」に対する1世帯当たりの年間支出金額を
みると、世帯主が60歳代の世帯の支出金額が 7,194 円と最も多くなっている。また、
1世帯1人当たりの年間支出金額を見ても、世帯主が60歳代の世帯の支出金額が
2,655 円と最も多くなっている。
世帯主が60歳代の世帯は、「スポーツクラブ使用料」に対する支出金額が他の世代
と比べて多く、世帯数も多い。各年齢階級世帯の年間支出金額に世帯数分布を乗じたう
えで、「スポーツクラブ使用料」に対する支出金額全体に占めるシェアを算出してみる
と、26年も前回(24年)と同様に、世帯主が60歳代の世帯の支出金額シェアが最
も大きくなっており、全体の 39.6%を占めている。
総合ユニコム(株)「月刊レジャー産業資料(2013 年9月)」によれば、総合型クラブ
が減少する一方、ジム・スタジオ型、スタジオ型、サーキットトレーニング等の機能特
化型施設が施設数を拡大している。また、ヨガ・ピラティススタジオ、24時間ジム、
パーソナルスタジオ、ファンクショナルトレーニング施設やダンススタジオなど事業形
態も多様化している。
遺族側 素案
医療機関側 委
医療事故調査 報告書
主張
指針巡 意見 平行線
――厚生労働省
厚生労働省は2月 25 日、医療事故調査制度の 10 月施行に向け、報告書の取りまとめ
を検討する「医療事故調査制度の施行に係る検討会」を開催した。検討会は医師や弁護
士それに医療事故の遺族などで構成されている。しかし「院内調査の報告書を遺族に開
示すべきかどうか」などの議論をめぐり意見が対立し、取りまとめは不調に終わった。
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検討会の進め方は今後、山本和彦座長(一橋大学大学院法学研究科教授)と厚労省で意
見を調整し、あらためて会合を開くかどうかも含めて調整が行われる。
この日は医療事故の再発防止を目的に事故の原因を医療機関だけでなく、第三者機関
が調べる新たな制度の指針の素案が厚労省から検討会に示された。素案では調査の対象
となる事故については医療機関が判断するなどとしているが、情報の開示を求める遺族
と、事故の調査によって医療現場の萎縮を懸念する一部の医師などとの間で意見の隔た
りが埋まらず議論は平行線のまま次回へ持ち越された。
ことし10月に始まる新たな制度では患者が死亡する医療事故が起きた際、医療機関
はみずから原因を調査することと、新たに設置される第三者機関への報告を義務づけら
れている。遺族は調査結果に納得できなければ第三者機関に独自の調査を行うよう依頼
することができる仕組み。
素案の中では調査の対象となる「死亡を予期しなかった事故」については、治療中な
どに死亡する危険性を患者に事前に説明したり、カルテに記載していたりすれば、対象
から除くなど調査の範囲は医療機関が判断するとしている。また遺族側が、難しい医療
の専門用語を理解するためにも文書で受け取ることを求めていた調査結果は「口頭、ま
たは書面もしくはその双方で遺族が納得するかたちで説明する」としている。
この素案について、一部の医師などが過度な調査によって医師の責任が追及されるな
ど医療現場が萎縮する懸念があると主張したのに対し、遺族側は全体的に制度の運用を
医療機関の判断に委ねる内容で納得できないと主張し、両者の間で意見の隔たりは大き
かった。
日本病院会の堺常雄会長は、検討会で、日病が実施した「2014 年度医療安全に係わる
実態調査」の結果を報告した。調査からは会員病院の7割強が、匿名性を配慮した上で
事故調査報告書を遺族に「手渡すべき」と回答していることを説明した。
厚労省は、検討会の報告書をベースに、医療事故調査制度の施行に向けた省令案を作
成し、パブリックコメント(意見募集)手続に掛けたい意向を示している。しかしすで
に 2 月中の報告書取りまとめはできなかったので、パブコメ手続きに 1 か月間かかるこ
とを考えると、省令の公布や関係事項の通知は 4 月以降にずれ込む見通しとなった。
塩崎厚労相は「双方の合意に努力を」とコメント
争点となっている点は、大別して2点。1つ―遺族は、再発防止策をしっかり書き込
んでほしいと求めていること。2つ―特に遺族に対して調査報告書、文書を手渡すかど
うかの点でかみ合わない点、この二つで平行線をたどっている。
塩崎恭久厚生労働相は 2 月 27 日、閣議後の記者会見で、10 月にスタートする医療事
故調査制度についてコメントした。
「修正案を練るにあたって知恵を出し合って、しっかりと御提示を申し上げて、話合
いが上手くいけば検討会を再度開くことはしなくてもいいかもわからないが、いずれに
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しましても、これは話合いをしっかりとやっていただくということが大事であります」
と双方の話し合いを強調。「この制度自体は、すでに法律が通っておるわけでありまし
て、その目的は医療の安全を確保する、そして、医療事故の再発の防止を図るというこ
とが目的であります。これについては集まっていただいておりますこの検討会の構成員
の共通の認識となっているというふうに私は理解しております」。
「(この制度は)医療の安全を確保するということが目的で、再発防止を図るという
ことが目的として共有するわけです、私もこの観点から是非精力的にしっかり汗をかい
ていただいて、御議論をたまわって、何とか合意点を見つけていただきたいというふう
に思っております」と、10 月施行を控えて「双方の話合い」「合意点」をみつける努力
を強調した。
消費増税 全病院
診療報酬
億円 負担増 補填率調査
補填 限界 四病院団体協議会
――四病院団体協議会、日本病院団体協議会
四病院団体協議会と日本病院団体協議会は 2 月 27 日、消費税率 8%への引き上げに伴
う、病院における補填率の調査結果の最終報告案を公表した。(「医療機関における消費
税に関する調査結果」、両協議会所属の 303 病院を対象)。
補填率とは、改定による「補填(収入増)」が、消費増税による「経費増」をどの程
度カバーしているかと定義している。調査は、2013 年度の事業実績に、「5%から 8%へ
の消費増税」と「14 年度診療報酬改定による補填」を加味して推計した。
調査結果で補填率は、100%未満が 6 割を超え、多くの病院が税率引き上げで負担が
拡大していることが明らかになった。今回の調査結果を基に、全国 8540 病院の消費増
税による不足総額は、約 344 億円に達するという推計結果も公表した。一方で、補填率
が「100%以上」も 3 割以上で、病院間の格差は大きい。
会見に臨んだ日本社会医療法人協議会の伊藤伸一副会長は、「診療報酬改定による補
てん方式の限界があらためて浮き彫りとなった。税の問題は税の中で解決すべきであり、
診療報酬への消費税課税が必要である」とコメントした。
補填率では、「50%未満」が全体の 4.6%(14 病院)、「50%以上 100%未満」が
60.7%(184 病院)、「100%以上 150%未満」が 20.8%(63 病院)、「150%以上」が
13.9%(42 病院)。なお、中央値は補填率 84.2%だった。両協議会は、100%未満の病
院が合わせて 65.3%にのぼり、補填不足の状態と指摘。
また、病床規模群別の総額補填率(対象病院の補填額総額の経費増総額に対する比率)
では、
「199 床未満」99.2%、
「200 床以上 399 床未満」87.2%、
「400 床以上」70.5%で、
病床数の増加に伴い補填率が低下する傾向が見られる。
両協議会は、「今回の消費税引き上げにともなう医療機関の負担増過分を診療報酬
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への上乗せで補填する方式では、施設数ベースで 6 割、補填不足が生じ、大学病院のよ
うな高次機能病院が大きなダメージを受けることが想定される、」と分析し、「診療報酬
による補填は限界」という見解を示した。