食品の非破壊放射能測定を実現する低コスト測定器の開発 | 理化学研究所 1/2 http://www.riken.jp/pr/press/2015/20150309_1/#note1 交通アクセス お問い合わせ サイトマップ サイト活⽤ガイド English ⽂字サイズ Home > 広報活動 > プレスリリース(研究成果)2015 > 報道発表資料 前の記事 2015年3⽉9⽇ いいね! ⼀覧へ戻る 1 ツイート 次の記事 15 理化学研究所 広報活動 プレスリリース(研究成果) 2015 (株)ジーテック 2014 ⾷品の⾮破壊放射能測定を実現する低コスト測定器の開発 2013 ― ⾷品出荷時の簡便な全品放射能検査実現に向けて ― 2012 この発表資料を分かりやすく解説した「60秒でわかるプレスリリース」もぜひご覧ください。 2011 2010 2009 要旨 理化学研究所(理研)グローバル研究クラスタEUSOチームのカソリーノ・マルコ チームリーダーと、株式会社ジーテック の後藤昌幸代表取締役らの共同研究グループ※は、⾷品に含まれる天然由来の放射性カリウム[1]と区別して、原発事故に由来 2008 2007 する放射性セシウム[2]の放射能[3]を⾮破壊で測定できる⾼感度、⼤⾯積、低コストな放射能測定器[4]を開発しました。 2006 福島県では、東京電⼒福島第⼀原⼦⼒発電所の事故から4年を経た現在でも、⾷品に関する⾵評被害に悩まされています。⾵ 2004 評被害を防ぐ有効⼿段の1つとして、農産物や⿂介類、それらを使⽤した加⼯⾷品などの放射能を測定し安全性を確認するこ とが挙げられます。ところが、従来の測定器は放射線(ガンマ線)を感知し発光する部分(シンチレータ[5])が底⾯にある ため、⾷品の形によっては正確な測定が難しいという問題がありました。そのため、⾷品をミキサーにかけ、⼩さく破砕して から測定する作業が必要でした。 2005 2003 2002 2001 2000 共同研究グループは、⾷品を破砕せずに測定するために、⾷品を包み込むようにシンチレータを配置する設計を考えました。 まず、低コストで成形が⽐較的簡単なプラスチックシンチレータ(Plastic Scintillators:PS)を検出器として⽤いることを 検討しましたが、エネルギー分解能[6]が低く、天然由来の放射性カリウムと原発事故に由来する放射性セシウムの区別が困 難でした。そこで、PSからの発光シグナルの数(光⼦数)の分布を詳細に調べ、測定した光⼦数分布の形から、放射性のカ リウムとセシウムの割合を算出する⼿法を考案しました。この⼿法を適⽤し円筒形のPSを配置した放射能測定器 「LANFOS(Large Area Non-destructive Food Sampler)」を開発しました。 1999 1998 1997 トピックス イベント/シンポジウム LANFOSの技術を⽤いることで、箱詰めされた⾷品をそのまま計測できる⼤型の放射能測定器を安価に制作することが可能と なります。これにより出荷時の全品検査の実現が期待できます。 本研究開発は独⽴⾏政法⼈科学技術振興機構(JST)の先端計測分析技術・機器開発プログラム(放射線計測領域)における 開発課題「LANFOS:⾷品の⾮破壊放射能検査を可能とする低コスト検出器の開発」の⼀環として⾏われました。成果は⽇本 物理学会第70回年次⼤会(3⽉24⽇)で発表予定です。 理研ブログ 刊⾏物 ビデオライブラリー 情報配信サービス ※共同研究グループ お楽しみコンテンツ 理化学研究所 グローバル研究クラスタ 宇宙観測実験連携研究グループ EUSOチーム 施設⾒学 チームリーダー CASOLINO Marco(カソリーノ・マルコ) 理研関係者向け 特別研究員 Piotrowski Lech Wiktor(ピオトロブスキー・レク・ビクトル) テクニカルスタッフ 東出 ⼀洋 (ひがしで かずひろ) 研究補助パート ⽥島 典夫 (たじま のりお) 動画配信 戎崎計算宇宙物理研究室 RIKEN Channel 主任研究員 戎崎 俊⼀ (えびすざき としかず) 仁科加速器研究センター 応⽤研究開発室 RI応⽤チーム チームリーダー ⽻場 宏光 (はば ひろみつ) 株式会社ジーテック 代表取締役 後藤 昌幸 (ごとう まさゆき) 技術 久永 勇 (ひさなが いさむ) 背景 4年前に起きた東京電⼒福島第⼀原⼦⼒発電所の事故によって、⼤量の放射性物質が環境に放出されました。それらによって 汚染された⾷品の流通を防ぐことは、現在も⼤きな課題です。特に福島県では⾷品に関する⾵評被害に今も悩まされていま す。⾵評被害を防ぐ1つの⼿段として、すべての⾷品の放射能を測定し客観的に安全性を⽰すことが有効ですが、従来の放射 能測定器は放射線(ガンマ線)を感知し発光する部分(シンチレータ)が底⾯にあるため、⾷品の形によっては、正確な測定 が難しいという問題がありました(図1左)。従って、⾷品をミキサーにかけ⼩さく破砕し、シンチレータにできるだけガン マ線が届くようにする作業が必要でした。 そこで共同研究グループは、実際に店頭に並ぶ⾷品を破壊せずに、そのまま測定できる放射能測定器の開発を⽬指しました。 研究⼿法と成果 共同研究グループは、2013年9⽉の電気学会・原⼦⼒研究会において測定器のコンセプトとシミュレーションの結果を報告 しています注)。本研究では、⾷品を包み込むようにシンチレータを配置し⼤⾯積化することで、⾷品を破砕せずにそのまま ⼊れても放射能を正確に測定できる放射能測定器の開発に取り組みました(図1右)。 共同研究グループは、材料費が安く成形が簡単なプラスチックシンチレータ(Plastic Scintillators、PS)を検出器として使 うことにしました。しかし、PSではエネルギー分解能が低いため天然由来の放射性カリウムと、原発事故由来の放射性セシ ウムを区別することができませんでした。厚⽣労働省が定める放射能レベルの基準では、放射性セシウムが⾷品に含まれてい ても安全とされる基準値が天然由来の放射性カリウムと同程度(100ベクレル/kg)に設定されています。両者を区別して測 定できなければ、放射性セシウムをほとんど含まない⾷品でも基準値を超えてしまうという、誤った結果を導く可能性があり ます。 そこで共同研究グループは、PSが放射線(ガンマ線)を感知した際の発光シグナルの数(光⼦数)の分布を詳細に調べまし た。その結果、放射性のカリウムとセシウムでは、ガンマ線のエネルギーの差によって、光⼦数の分布に有意な差があること を確認しました(図2)。そして、測定した光⼦数分布の形から、放射性のカリウムとセシウムの割合を算出する⼿法を開発 しました。⾷品から検出される放射能はほとんどの場合、放射性のセシウムとカリウムに由来することから、共同研究グルー プが開発した⼿法は⾷品の放射能測定に適していると⾔えます。 共同研究グループは、この⼿法を⽤いて、円筒形のPSを配置した放射能測定器「LANFOS(Large Area Non-destructive Food Sampler)」を開発しました。LANFOSには、PSからの発光シグナルを光検出器で効率よく測定するために、シンチ レーションファイバー[7]をPSの側⾯に巻きつけています(図3)。光検出器にはシリコン・フォトマルチプライヤー (Silicon Photomultiplier:Si-PM)検出器を⽤いました。 Si-PM検出器は①⾼圧電源を必要としない(約70Vで動作)、② シンチレーションファイバーとの接続が容易、③普通の光電⼦増倍管に⽐べて低コスト、などの特徴があります。また、⾷品 500gに含まれる放射性セシウムを時間15分程で測定することが可能です。共同研究グループは、宇宙望遠鏡「JEM-EUSO」 [8]のために開発されたSi-PMによる光検出などの望遠鏡の技術をLANFOSに応⽤して開発を⾏いました。天体観測のような基 礎的研究が社会に直接役⽴つ製品の開発につながりました。 共同研究グループの⼀員である株式会社ジーテックがLANFOSの製品版試作機を製作しました。販売前のテストを兼ねて、 2014年11⽉1⽇・2⽇に福島県南相⾺市で⾏われた「JAまつり」に参加し、LANFOSを使って実際にジャガイモ、サツマイ モ、キャベツ、⼤根、梨といった⾷品の放射能を測定しました。⽣産者の⽅からは「測定器が簡便であり便利であると同時 に、実際の放射能を⽰すことで、消費者に安⼼して買っていただける」と好評でした(図4)。 注) LANFOS: ⾷品の放射線測定のための4π検出器、Marco Casolino et. al.、電気学会研究会資料. NE, 原⼦⼒研究会 2013(1), 7-11, 2013-09-02 今後の期待 LANFOSの技術を使えば、材料費が安く成形が簡単なプラスチックシンチレータを⽤いて、さまざまな形や⼤きさの放射能測 定器の製造が可能になります。今後は、試験操業が始まった⼩名浜港(福島県いわき市)の本格的な操業再開に合わせて、箱 詰めされた⿂介類をそのまま測定できる⼤型の放射能測定器の開発に着⼿する予定です。これにより出荷時の全品検査の実現 が期待できます。 発表者 理化学研究所 グローバル研究クラスタ 宇宙観測実験連携研究グループ EUSOチーム チームリーダー カソリーノ・マルコ 株式会社ジーテック 代表取締役 後藤 昌幸 (ごとう まさゆき) お問い合わせ先 理化学研究所 戎崎計算宇宙物理研究室 アシスタント ⼤畑 智⼦ Tel: 048-467-9074 / Fax: 048-467-4078 報道担当 理化学研究所 広報室 報道担当 Tel: 048-467-9272 / Fax: 048-462-4715 お問い合わせフォーム 産業利⽤に関するお問い合わせ 理化学研究所 社会知創成事業 連携推進部 お問い合わせフォーム このページのトップへ 補⾜説明 1. 放射性カリウム カリウム原⼦の中で放射能を持つもの(放射性同位体)。天然に存在する中ではカリウム40が放射能を持ち、天然カリ ウムの内0.012%存在する。 2. 放射性セシウム セシウム原⼦の中で放射能を持つもの(放射性同位体)。東京電⼒福島第⼀原⼦⼒発電所の事故によって主にセシウム 137とセシウム134が放出された。 3. 放射能 物質が放射線を発⽣させる性質。または、原⼦核が単位時間あたりに崩壊する数。 4. 放射能測定器 放射線の頻度やエネルギーを測定することによって、物質の放射能を測定する。開発したLANFOSではガンマ線を測定 して放射能を測定する。 5. シンチレータ LANFOSおいては吸収した放射線(ガンマ線)のエネルギーに応じた強度で光を放出する物質。 6. エネルギー分解能 放射線のエネルギーを決める精度のこと。 7. シンチレーションファイバー シンチレータでできた光ファイバー。波⻑変換ファイバーともいわれ、ファイバーに⼊射した光を測定しやすい波⻑に 変換して集めることができる。 8. 宇宙望遠鏡「JEM-EUSO」 宇宙起因の地球⼤気圏での瞬間発光現象を観測する国際宇宙ステーションに装着予定の広視野望遠鏡。⾼度約400kmの 軌道上から半径約250kmの領域の地球⼤気を観測できる。詳細はホームページ 参照。 このページのトップへ 図1 従来型の放射能測定器と開発したLANFOSの模式図 従来型の放射能測定器(左)ではシンチレータが底⾯にしかないため、⾷品を破砕し、シンチレータを囲うように置くことで 検出精度を⾼めていた。新開発のLANFOS(右)では⾷品を包み込むようにシンチレータを配置しているため、⾷品を破砕す る必要がない。 2015/03/09 15:01 食品の非破壊放射能測定を実現する低コスト測定器の開発 | 理化学研究所 2/2 http://www.riken.jp/pr/press/2015/20150309_1/#note1 図2 放射性セシウムとカリウムの光⼦数分布 縦軸は放射線の検出頻度、横軸は検出時に発⽣した光⼦数を⽰す。放射性のカリウム(⾚)とセシウム(⿊)では、元のガン マ線のエネルギーに差があるため、測定した光⼦数分布に有意な差ができる。測定した光⼦数分布(⻘)の形から放射性のカ リウムとセシウムの割合を算出する。 図3 LANFOSのプラスチックシンチレータ 円筒形のプラスチックシンチレータ(⻘)からの発光シグナルを光検出器で効率よく測定するために、シンチレーションファ イバー(緑)をプラスチックシンチレータの側⾯に巻いた。光検出器にはシリコン・フォトマルチプライヤー(Si-PM)検出 器を⽤いている。 図4 放射能測定試験の様⼦ LANFOSを使った農産物の放射能測定試験(福島県南相⾺市で2014年11⽉1・2⽇に⾏なわれたJAまつりにて)。装置のサイ ズは⾼さ83cm×幅58cm×奥⾏45cm。 このページのトップへ このページのトップへ Home > 広報活動 > プレスリリース(研究成果)2015 > 調達情報 リンク集 利⽤規約 プライバシーポリシー お問い合わせ 交通アクセス 〒351-0198 埼⽟県和光市広沢2-1 Tel: 048-462-1111(代表) / Fax: 048-462-1554 Copyright © RIKEN, Japan. 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