身近なクスリのリスク まだまだ寒い日が続きます。今回は趣向を変えて、当科の スタッフに登場してもらうことにしました。 皆さんこんにちは。 石巻赤十字病院 腎臓内科の竹内陽一です。 腎臓内科外来にはいつも多くの患者さんをご紹介いただい ております。腎不全で紹介される患者さんの中に、普段内服 しているクスリの副作用が原因と思われる方がいらっしゃいま す。特に以下のクスリがきっかけとなるケースが目立ちます。 ■ 抗ウイルス薬(一般名:アシクロビルなど) 帯状疱疹(つづらご)の治療薬として有名で、比較的大き な錠剤です。消化管での吸収が良いために腎機能低下時、 特に小柄な高齢者が脱水時に通常成人量を内服すると、 尿が出なくなったり、意識障害、痙攣などの症状が生じること があります。 ■ 活性型ビタミンD製剤 骨粗鬆症で非常に多く使われている治療薬です。食欲低下 時や夏場の脱水時に漫然とビタミンD製剤を内服していると、 高カルシウム血症による腎機能低下、なまあくび、痙攣が生じ ることがあります。 ■ 鎮痛剤(非ステロイド性抗炎症薬) 腰痛やひざの痛みを抱えている方で、痛み止めを定期的に 内服していると夏場の脱水時に腎機能が低下し、そのまま放 置しているとさらに進行します。急性腎不全と共に、ときにネフ ローゼ症候群(尿中にタンパク質が漏れて浮腫む)を併発す ることもあり、強いけだるさを訴える方もいます。 内科部長代理 長澤 将(たすく) (平成15年東北大卒) ・医学博士 ・総合内科専門医・指導医 ・腎臓専門医 ・透析専門医 ・プライマリケア連合会 認定医・指導医 腎臓内科 竹内 陽一 (平成18年東北大卒) ・医学博士 ・内科認定医 ・プライマリケア連合会 認定医 ~クスリとうまく付き合うコツ~ これらの副作用は特徴的なので、本人やご家族が気づきやすく早期に対処すればいったん悪 化した腎機能は元通りになる可能性が高いと考えられます。一方で、対応が遅れれば全身状態 の悪化を来してしまう恐れがあります。特に、もともと腎機能が悪い方の食欲低下時や脱水時に は影響が強く出やすいので要注意です。 しかし、クスリはどれも必要性があって処方されています。むやみにご自己判断し内服を中断 することなく、かかりつけ医や薬剤師にご相談下さい。 一度この機会に普段飲み慣れているクスリについて、ご自身のお薬手帳やクスリの説明書を 読み直してみてはいかがでしょうか? 2015年2月 Vol.05
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