2015年(平成27年)3月20日 河川流量算出用ソフトウウェア「DIEX-Flow」の製品化 4/1から販売開始 学校法人東京理科大学 パシフィックコンサルタンツ株式会社 学校法人東京理科大学(東京都葛飾区)は,パシフィックコンサルタンツ㈱(本社:東京都多摩市、 資本金:4億9千万円、代表取締役社長:高木 茂知)と共同で,東京理科大学理工学部土木工学科 二 瓶泰雄准教授の研究成果である,高精度かつ効率性の高い河川流量算出が可能なDIEX法の製品化の準 備を進め,平成27年4月1日よりパシフィックコンサルタンツ㈱から河川流量算出用ソフトウェア 「DIEX-Flow」の販売を開始します. 販売用URL:https://www.diex-flow.pckk-service.co.jp/ (販売価格:432,000円、年間ライセンス価格108,000円/年) ☆河川流量算出用ソフトウェア「DIEX-Flow」の特徴 ・ 少ない流速観測データのみでも高い精度で河川流量を算出することが可能です. ・ 河川流量を短時間で算出できるため,ほぼリアルタイムで流量データが得られ,河川管理の現 場ですぐに使えます. ・ 河川流量観測業務の大幅な効率化と低コスト化を実現でき,現代社会の大きな課題である“社会 インフラの維持管理”の効率化に大きく寄与します. 1.従来までの流量観測法と課題 <方法の概要> 河川流量※1は,河川の治水・利水・環境に関わる計画や洪水予測等の河川管理を行う上で最も重要 な指標の一つです.このため、流量計測は長年にわたって継続的に実施される必要があります.流量 観測は,河川管理者により,(河川水位の低い)平常時では定期的に,(水位が大きく上昇する)洪 水時では短期集中的に,それぞれ実施されています.流量(=断面積×流速)を観測するためには,横 断面内で変化する流速を複数地点で観測します(図1).得られた流速観測値から流速分布を作成 (内外挿)し,各区分の断面積と流速の積を足し合わせたものが流量となります(この流量算出方法 は区分求積法と呼ばれます,図2). 図1 一般的な流量観測の模式図(洪水時,浮子観測) 区分断面の面積算出 短冊状の流速横断分布の作成 V4 V2 V5 V3 V1 鉛直方向 水深平均流速 観測値 V6 横断方向 A1 A2 A3 A4 A5 A6 流量 Q AV i i 横断方向 図2 従来の流量算出方法(区分求積法) <課題> 高精度な流量観測データを得るためには,区分求積法では多くの地点における流速データが必要と なりますが,それには多くの人員や時間が必要となります.そのため,特に,時間的な制約が大きい 洪水時では,流速観測の地点数を十分確保できていないのが現状です. 一方,流速観測の自動化が進められ,自動計測可能な流速計(画像解析,電波流速計,H-ADCPなど ※2 )の設置が試みられています.しかしながら,これらの流速計により横断面全体の流速データを取 得することは非常に大きなコストがかかるため,横断面内の一部の流速データしか取得できないこと が多々存在します.その場合,区分求積法では,流量算出精度が著しく低下します. 2.DIEX-Flowの特徴,優位性 <特徴> 従来の流量観測方法の課題を克服するために,東京理科大学では,限られた流速データから断面全 体の流速を内外挿し,流量を精度良く算出するための数値解析技術として力学的内外挿法(Dynamic Interpolation and EXtrapolation method,DIEX法)を開発しています.このDIEX法は,現地観測で得られ た離散的な「点」流速データを,流体の運動方程式に基づいて「面」流速データに変換し、河川流量 を算出する手法です(図3).ここでは,流速観測データを数値シミュレーションに組む込むための 独自の「データ同化手法」が組み込まれており,流速観測結果を合理的かつスムーズに数値計算結果 に反映することが可能となっています.DIEX法を一般ユーザーでも使いやすいGUI環境を整備したも のが今回販売する「DIEX-Flow」であり,表面流速データに対応したバージョンをリリースします. 現地観測 数値解析(DIEX法) 離散的な「点」流速データ 「⾯」流速・流量データ 図3 DIEX法の概要 <優位性> (1)観測条件に依存せずに高い流量推定精度 従来の方法(区分求積法)では,流速データが少なくなる(データの空間解像度が粗くなる)ほど 流量推定誤差が大きくなり10%を越えます.一方,同じ流速データに対してDIEX法を適用すると,観 測データ数に依らず流量推定誤差は5%(米国地質調査所USGSにおける観測誤差基準の一つ)を下回り ます(図4).このように,DIEX法は,少ない観測データ(粗い空間解像度)でも高い流量推定精度 を維持できています. 従来法 10 誤差が⼤きい 精度が観測データの 空間解像度に依存 ErrQ [%] 8 6 DIEX法 4 従来法に対して⾼精度 観測データの空間解像度 に概ね依存しない 2 0 10 図4 20 30 40 観測データの空間解像度[m/本] 50 流速観測データ数(空間解像度)に対するDIEX法と従来法の流量推定誤差 (2)現場での使用可能 DIEX-Flowは,市販のPCを用いても,計算条件の入力,計算実行,結果の出力を短時間で実施でき ます.そのため,現場で得られた流速観測値を入力すればその場で流量データを出力でき,河川管理 の現場ですぐに使うことが可能です. (3)様々な流速計に適用可 DIEX法は,これまで浮子や画像解析,電波流速計,ADCP,H-ADCPなど現在主に使われている計測 機器への適用実績があります.そのため,現場では,観測場所や流況により使用される流速計は異な りますが,DIEX法は現場を選ばず適用可能です. 3.期待される効果と今後の展望 DIEX法を用いることにより,少ない観測人員もしくは限られた流速計のみでも,高精度に流量算出 が可能となります.そのため,河川管理の中の流量観測業務を大幅に効率化,低コスト化することが 可能となります.これらを通して,現代社会の大きな課題であるインフラ管理の効率化に大きく寄与 します. 今後は,適用可能な流速データを拡張し,様々な流速計対応用のバージョンを順次リリースします. また,既に設置が検討されている自動観測可能な流速計のシステムと融合し,流量のリアルタイムモ ニタリングシステムの構築を予定しております. 用語説明 1.河川流量 流量は,河川の横断面を単位時間あたりに通過する水の体積であり,以下の式で求められる. Q V y, z dA ここで, Q は流量, V y, z は主流方向流速, A は断面積をそれぞれ表す. z ⽔位 ⽔位計で計測 A 流速の「⾯」データ 流速計で計測? 河床の横断形状 V y, z 横断測量で計測 y 参考図1 河川流量の算出方法 2.画像解析,電波流速計,H-ADCP 手法・機器 計測高さ データ 概要 画像解析 水表面 線 ビデオカメラや遠赤外線カメラにより撮影された動画から, 水表面に現れる波紋の移流速度を検出する 電波流速計 水表面 点 水面に向けて電波を発信し,水面からの反射波のドップラーシ フト量(ドップラー効果による周波数の変位量)を検出し,流 速に換算 H-ADCP H-ADCP 設置高 線 水平方向に超音波を発信し,水中散乱体からの反射波のドップ ラーシフト量を検出することで,流速に換算 「線」流速データ (A)画像解析 「点」流速データ (B)電波流速計 参考図2 「線」流速データ (C)H-ADCP 流速計の概要 ■パシフィックコンサルタンツ㈱ 会社概要 パシフィックコンサルタンツ株式会社 社名 PACIFIC CONSULTANTS CO.,LTD 本社 〒206-8550 東京都多摩市関戸一丁目 7 番地 5 URL http://www.pacific.co.jp/ 創立 1951 年(昭和 26 年)9 月 4 日 (設立/1954 年 2 月 4 日現法人に組織変更) 代表 代表取締役社長 高木 茂知 資本金 4 億 9 千万円 ■本件に関する報道関係者の皆様からのお問合わせ先 学校法人東京理科大学:研究戦略・産学連携センター (宮田/岸本) TEL:03-5876-1530 パシフィックコンサルタンツ株式会社:首都圏本社事業企画部 (岡本)TEL:03-5989-8470
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