Vascular Access News Web Vol.10

Vascular Access News Web Vol.10
当院におけるシャントエコー業務の歩みと役割
∼穿刺業務に関して∼
JA長野厚生連 篠ノ井総合病院 臨床工学科
北村 健太郎 先生 増村 貴義 先生 山田 裕也 先生 中島 拓也 先生
1
シャントエコー業務の導入
当院では、
VAの超音波診断の有用性に着目し、
平成23年度にシャントエコー業務を
導入しました。
まず最初の壁が①装置を手に入れること②誰がどのように行うか、
であり
①に関してはシャントエコーの有用性を院内でアピールし、病棟との兼用という条件
で購入に至りました。②に関しては、透析スタッフではエコーの知識がなく、透析に普段
関わっていない検査技師ではVAに関しての知識・経験が足りないとの問題もありました
が、
当院では臨床工学技士がVAにも精通しており機械的知識があるという事もあり、
臨床工学技士が取り組んでいく事で解決しました。
2
シャントエコー業務の発展
臨床工学技士はVAには精通しておりますが、
エコーに関する経験・知識に乏しく導入当初は大変難
件数
渋しました。
しかし施設見学・セミナー参加・また各種指導書等で研鑽を積み、技術の習得に至りました。
シ
300
ャントエコー件数も平成23年度では年間21件でしたが、平成26年度では294件と大幅な増加の一途を
200
辿り、
またそれに伴い関わるスタッフの技術・知識も向上しました。担当臨床工学技士は平成23年度で
100
は2名で行っていましたが、現在は4名のスタッフで業務を行っています。
0
H23
H24
H25
H26
図1:シャントエコー件数の推移
3
シャントエコー業務の発展とVA管理に対する透析スタッフの意識向上
従来のシャント管理では理学的所見の観察(視診・聴診・
触診等)
のみで行われてきましたが、
それらは主観的評価であり、
スタッフにより差が生じ、情報共有が難しい現状にありました。
シャントエコーによる結果も導入当初はあまり活用できていませ
んでしたが、
シャントエコーで得た多くの有用な情報を、臨床工
学技士が「検査結果用紙」
の中だけに留めず、
VAMAPに活用し
(図2)
伝えるようにしました。
その結果、
スタッフからのシャントエコ
ー依頼内容が当初は単純もしくは漠然としたものでしたが、平成
25年度には依頼内容が具体的にかつ明確になり、
件数も増加し
ました。
シャントエコーによる客観的評価の情報の共有ができ、
透
析スタッフのVA管理の意識向上につながりました。
H24 VAUS order
シャント異常音 30%
H25 VAUS order
シャント異常音 38%
その他 39%
透析スタッフよりVAMAP作成において
「肘の位置が分からない」や「実際の血管も一緒に見たい」
など
の意見が聞かれたため、VAUSのシェーマ変更およびVAMAPを新たに作成した。
図2:報告書の変更とVAMAP
その他 56%
脱血不良 12%
静脈圧上昇 2%
静脈圧上昇 3%
止血困難 2%
図3:シャントエコーオーダー内容の推移
脱血不良 18%
Vascular Access News
4
エコーガイド下穿刺の導入
シャントエコー業務に取り組んでいく内に、依頼内容の中に「穿刺困難なので穿刺場所を探してほしい」
という内容も多く含
まれていくようになりました。臨床工学技士は日常業務の中にVAへの穿刺も含まれており、
依頼を受けた臨床工学技士が透析ス
タッフへ情報提供を行うか、
自分で得たエコー画像を元に自ら穿刺を行う事も増えてきました。
またそれに留まらず、穿刺トラブル
時に関してもその場で依頼され、
ポータブルエコーを持参し穿刺業務の補助を行う事も増えていきました。
5
再穿刺数減少への取り組み
このような流れの中で、平成24年より穿刺トラブルを起こす
前に前向きに再穿刺を予防して行こうという取り組みをスタート
しました。透析スタッフでVAチームを作り、再穿刺数の現状
80
対策前
70
対策後
60
16
14
12
把握を行いました。その結果、再穿刺の多い1つの要因として
50
10
「情報伝達不足」
が挙げられました。
その為、
シャントエコー記録を
40
8
「VAMAP」
として使用、情報伝達のツールとして採用し、
また
30
6
それでも穿刺が困難な症例に対しては積極的にエコーガイド下
20
4
穿刺を行っていく方針としました。その結果、取組み開始前後
10
2
半年間の再穿刺数は102件から66件に減少
(図4)
、頻回再穿
刺患者数も15名から4名に減少しました
(図5)
。
6
0 血管に入らず
漏れ
凝固
その他
0
図4:原因別 対策前後の再穿刺数の比較
対策前
対策後
図5:頻回再穿刺患者数の比較
エコー下穿刺の実際
方法としては①短軸法②長軸法③エコーで確認後に穿刺とあり、
それぞれ1人法、2人法とあります。現在は症例毎、
またスタッフの個人の技量に合せ
その場で適宜判断し、行っています。
図6:静脈が細く蛇行、穿刺困難な為、短軸法にて穿刺
図7:血管下壁に穿刺針が当たってしまう症例長軸法にて穿刺
図6の症例は、上腕橈側皮静脈で細く、度々再穿刺を行っていた症例。図6の①のように血管の上で横滑りしてしまう為、短軸法で穿刺針の位置を確認
しながらの穿刺。エコーでガイド・修正しながら血管内に留置しました。図7の症例では穿刺部が限局しており、且つ穿刺部の先が図の様に細くなってい
ます。触診通り穿刺針を進めると、血管下壁に針が当たってしまい、度々再穿刺していました。
その為、
エコーガイド下穿刺を用い、
エコーでなるべく血管の
上壁に沿わせるよう留置するようにした所、再穿刺する事はなくなりました。
現在では短軸法・長軸法の優劣はつけがたいのですが、短軸法の割合の方が多い傾向にあります。
しかし、短軸法では留置針の先端の上下左右の
位置が非常にわかりやすいのですが、方向性が判断しにくいと思われます。長軸法では深さ・方向性は判断しやすいのですが、横方向の情報が乏しいと
思われ、両方法ともに一長一短ではありますが、短所をカバーする補助的な手法が必要であると思われます。
7 まとめ、今後の展望
従来より、超音波装置のユーザーは医師・検査技師の割合が高く他のスタッフが使う機会は少なくとも当院ではありませんでした。
しかし今回、
1つの
ツールとしてVAの検査から臨床の現場に至るまで、特に透析の臨床の場では、超音波診断は有益なものであると感じています。
近年、超音波装置も高性能化し、画質・操作性とも向上している為、臨床工学技士として、
このような流れの中で感じた事は、
もっと多くの透析スタッ
フに簡便・手軽に超音波装置を使用できる環境にし、患者様により良い医療を提供する事が望まれると考えます。
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