Application Note MC15001 混練機およびレオメーターによる 難燃剤の効果評価 サーモフィッシャーサイエンティフィック株式会社 キーワード サンプルの配合比率は細かく設定し、 一つのポートからそれぞれ独立 少量、 混練、 粘度、 卓上、 二軸、 耐熱性評価、 流動性評価 したフィーダーより、 投入量を操作しながら混練しました。 なお、 温度、 概要 で行えます。 卓上小型混練機に PET(プラスチック素材)と難燃剤(添加物)をそれぞれ投入し、 表1:サンプル配合比率 回転数、 配合比率などの設定は、 すべて本体内蔵のタッチスクリーン上 配合比率を変化させながら混練を行いました。でき上がったサンプルを少量サンプ リングし、 レオメーターにより耐熱性および流動性の違いを評価しました。 はじめに ベースポリマーに添加物を加えて性能を上げ、より高い付加価値 混練条件 サンプル 配合比率 難燃剤 配合率 No. 1 温度 回転数 難燃剤 270 ℃ 150 rpm 30% 70% 高 2 270 ℃ 150 rpm 20% 80% 中 3 270 ℃ 150 rpm 10% 90% 低 PET を付けるポリマー開発(コンパウンディング)において、配合比率 や物質の状態の把握は、経験則に基づくことが主流でした。 ■ HAAKE Process11 の特長 しかし昨今、製品のライフサイクルは年々速くなっており、開発の ・ 20 gからの少量混練が可能 迅速化が要求されています。 ・セグメント式二軸混練機 レオメーターを用いて物質の組成の変化を数値化し、ばらつきを ・ 温度、 回転数、 フィーダーは直感的なタッチスクリーンでの制御 把握すれば、その物質の状態を的確に捉えることができます。そ の情報を研究開発にフィードバックし、材料開発や品質チェック 2. 評価 を迅速に行うことで、製品開発の効率は大幅に向上します。本ア Thermo Scientific HAAKE MARSIII(図 2)を用い、表 2に示す プリケーションノートでは、研究開発に利用できるこれらの情報 条件で物質の耐熱性、流動性を評価しました。 を、レオメーターにより把握する方法についてご紹介します。 実験 1. 混練 本実験では、 (図 1) を用い、 Thermo Scientific™ HAAKE™ Process11 表 1に示す条件でサンプルを混練しました。 表 2:レオメーター評価条件 ジオメトリー 10 mm ギャップ 1 .5 mm 測定方式 オシレーション 温度依存性測定 温調システム 電気ヒーター式 (最高400 ℃) ■ HAAKE MARSIII の特長 ・数 gで測定可能 ・ 簡単な測 定から IR同 時 測 定も 可能な、拡張性の高いモジュー 図2:ハイエンド型モジュ ラー式レオメーター HAAKE MARSIII ル式レオメーター ・ 誰でもすぐに測定、 解析ができるユーザーフレンドリーなソフ トウェア(Thermo Scientific HAAKE RheoWin™) 図1:卓上型小型混練機 HAAKE Process11 混練においては、 サンプルの配合比率のみ変化させ、 温度はすべての ゾーン(8カ所) で270 ℃に設定、 回転数は150 rpm に設定しました。 耐熱性評価の結果を図 3に示します。横軸は温度(T )、縦軸は複 また、G ”は速度により発生する応力から得られる弾性率であるた Application Note MC15001 結果 め、塑性(粘性、流体)的硬さを示します。 素弾性率(G* )を表し、これらはひずみ正弦波と応力正弦波の振 幅比から得られます。材料の温度による弾性率の変化から、各温 度における硬さの特性を確認できるため、混練時の適正な溶融温 度条件やトルク条件を定めることができます。 図4:貯蔵弾性(G ’)と損失弾性(G ”) 3種のサンプルそれぞれに、G ’と G ”のクロスポイント(図 4 の矢 図3:配合比率可変サンプルの耐熱性評価 また、今回用意したサンプル3種の結果は、難燃剤の配合比率が 高くなるほど溶融温度が高温側にシフトし、溶融時の弾性率が高 く、高温でも硬いサンプルであることを示しています。 難燃剤の配合比率の高いサンプル(No.1)は、高温でも弾性率が 印)が存在しています。この温度を境に G ’が G ”を上回ると硬化 が進行し、塑性体から弾性体へ変性すると考えられ、ここが材料 が硬く(または柔らかく)なるポイント、すなわち耐熱温度である ことが分かります。 考察 当実験においては、難燃剤の配合比率が10 %高くなるとクロスポ 高く保たれ、耐熱性が高いことが確認できます。一方、配合比率の イントが約10 ℃高温側にシフトしており、それに伴って耐熱温度 低いサンプル(No.3)は、耐熱性が低いことが分かります。 が向上していることがわかります。添加剤の添加量による流動性 Process11で配合比率を変え、混練したサンプルをレオメーター の変化の度合いを数値として得られるため、物質の変化の傾向を で評価することにより、このような耐熱性の違いを数値化し、グラ 簡単に把握できます。 フ化することができます。 また、サンプルを弾性(バネ)成分(G ’)と粘性(流体)成分(G ”) に分けて観察することで(図 4)、どの温度帯で溶け始めるかが容 易に分かります。 正弦振動による動的粘弾性測定で得られた G*(図 3)は、貯蔵弾 性(G ’)と損失弾性(G ”)に成分を分けることができます(図 4)。 G ’は、ひずみ変形により発生する応力から得られる弾性率であ まとめ 当実験でご紹介した方法で、混練したポリマー製品の状態を把握 し、研究開発にフィードバックを行うことにより、迅速な問題解決 が 可能となります。また、これらのデータはその後の品質管理の 基準として活用できるため、製品品質の安定、ひいては製品の早 期市場投入につながります。 るため、弾性体(バネ、固体)的硬さを示します。 Ⓒ 2015 Thermo Fisher Scientifi c K.K. 無断複写・転載を禁じます。 ここに記載されている会社名、製品名は各社の商標、登録商標です。 ここに記載されている内容は、予告なく変更することがあります。 サーモフィッシャーサイエンティフィック株式会社 分析機器に関するお問い合わせはこちら TEL 0120-753-670 FAX 0120-753 -671 〒221-0022 横浜市神奈川区守屋町3 -9 E-mail : [email protected] www.thermoscientific.jp E1503
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