第12回排尿機能検査士講習会 3.尿流動態機能検査の理論と実践 名古屋大学大学院医学系研究科泌尿器科学 松川宜久、後藤百万 尿流動態検査(UDS)とは 蓄尿から排尿終了までの膀胱内圧、腹圧 (直腸内圧で測定)、排尿筋圧、外尿道括約 筋活動、尿流などを測定し、蓄尿期と排尿 期の下部尿路機能、下部尿路機能障害の 部位や程度を総合的に診断する検査 下部尿路機能障害の病態を 正確に把握することが可能 症例 1 60歳男性 排尿困難 BPHとしてα1ブロッカー投与されるも 改善なく紹介受診 2年前に直腸癌に対して、 直腸切除・人工肛門造設 Pressure-Flow Study 低コンプライアンス膀胱+低活動膀胱 Men with LUTS: Overlapping of Conditions Prostate Conditions All Men With LUTS >40 Years of Age OAB Detrusor Underactivity Pressure-Flow Studyをはじめとした 下部尿路閉塞・膀胱機能の他覚的評価 正しい病態の把握 正しい治療選択 治療に対する満足、OQLの改善 尿流動態検査の目的 下部尿路機能の評価 蓄尿期における膀胱知覚 排尿筋の蓄尿機能 排尿時の排尿筋収縮機能 膀胱出口部の閉塞 尿道機能 尿流動態検査の適応 尿失禁 膀胱出口部通過障害 神経因性膀胱機能障害 複雑な排尿・失禁問題を有する 小児の一部 尿流動態検査の種類 尿流測定 残尿測定 膀胱内圧測定 ビデオウロダイナミクス 外尿道括約筋筋電図 内圧尿流検査(Pressure-Flow Study) 尿道内圧測定 腹圧下尿漏出圧測定(ALPP) UDS前後の一般的注意事項 検査前 被検者への説明 検査の必要性・方法・安全性・副作用 プライバシーの保てる環境 検査機器類の準備 禁忌の確認 尿路感染・膀胱鏡直後 UDS前後の一般的注意事項 検査中 被検者へ配慮 検査中のアーチファクト排除 アーチファクトのチャートへの記入 アーチファクトと思われる不自然な波形を認めた場合 は, チャートに記載することで、検者でなくても解析が 可 能になる。検査結果に重大な影響が あり、後から補正 できないアーチファクトの場合は、再検も考慮 尿流測定(Uroflowmetry) TOTO社製 フロースカイ パラメーター 尿流率 (ml/ sec) Urof lowmetr y 尿流測定 最大排尿 率 平均尿流率 排尿量 尿流時間 ①最大尿流率(Qmax) : 測定された最大の尿流率 ②平均尿流率(Qave) : 排尿量を排尿時間で除したもの ③排尿量 : 総排尿量 ④排尿時間 : 通常は尿流時間を示す ⑤尿流カーブの波形(パ ターン) 検査施行時の注意 プライベートな環境 150ml以上の蓄尿状態で施行 (出来れば200〜400mlがのぞましい) 複数回施行 評価における注意 初回時の検査結果は不良なことあり(緊張) →複数回行って評価 尿流カーブの波形(パターン)の評価も有用 機器表示のデータを鵜呑みにしない 実際のUFM (いろいろな波形パターン) A:正常の排尿。健常成人の尿流曲線は排尿開始ととも に尿流率が上昇し,最大に達した後は前半とほぼ対 称のカーブを描き下降する。 B:BPH患者の排尿。最大尿流率が低下し,排尿時間が 延長している。尿流曲線は平坦な丘状のカーブとなる。 (閉塞タイプ) C:BPH患者の排尿。さらに排尿障害が進行すると排尿開 始までに時間がかかる,尿線の途絶,いきみ排尿,終 末時尿滴下などが観察される。(腹圧排尿タイプ) (山口 脩,他:図説 下部尿路機能障害, 一部改変) 評価における注意 尿流率:膀胱収縮 x 尿道抵抗 尿流率不良 膀胱収縮低下 尿道抵抗増大 尿流測定による鑑別は困難 スクリーニング検査としての尿流測定 尿流測定のまとめ 簡便で非侵襲的な方法 排尿筋収縮障害と下部尿路閉塞の鑑別ができない 最大尿流率 (150 ml以上の排尿量時) 男性 15 ml/秒以上:BOOの可能性少 (20%) 10~15 ml/秒:Equivocal (50%) 10 ml/秒未満:BOOの可能性大 (80%) 女性 正常値に関する明確な基準は少ない 20ml/秒未満:尿排出障害の可能性 残尿測定 導尿による残尿測定 経腹的超音波検査による非侵襲的残尿測定 残尿測定専用の超音波装置 シスメックス株式会社の残尿測定装置「ブラダースキャン」 プローブ部を排尿後の患者の下腹部にあてるだけで、 残尿量の測定が自動的に行われる(測定時間は 2.5 秒)
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