逆極点を用いた Ag メッキ膜の簡易配向評価

B-XRD 1086
逆極点を用いた Ag メッキ膜の簡易配向評価
はじめに
金属をはじめとする多くの工業材料は多数の結晶粒の集合体であり、加工や熱処理などにより結晶粒が配向するこ
とが知られています。材料特性と結晶配向には強い関係があるため配向の方位やその比率を定量的に解析するこ
とが重要です。配向を定量的に解析する方法として極点測定がありますが、ここでは試料面に平行に存在する結晶
面の強度と結晶データベースに登録されている強度比から算出する逆極点測定により3種類のAgメッキ膜の簡易配
向評価を行いました。
測定・解析例
逆極点による配向評価は、試料表面に平行な結晶面の強度から算出します。ここでは図1に示すように3種類のAg
メッキ膜の2θ/θ対称反射測定を行い、各結晶面の積分強度を得ました。
Ag111
Intensity (cps)
8.0e+6
―
―
―
A
B
C
6.0e+6
Ag200
4.0e+6
2.0e+6
Ag311
Ag220
0.0e+0
40
50
60
70
2θ (°)
図1 3種類のAgメッキ膜から得られたAg回折線の多重書き
逆極点は試料面に平行に存在する結晶面のうち、ある特定の格子面hklが占める割合を下式(1)から算出します。例
えば、図1に示す111、200、220、311の4面指数で解析した場合、無配向試料であれば各結晶面の割合は25%と算
出されます。
(%) =
Int.Ihkl / Rel.Inthkl randum
Σ Int.Ihkl / Rel.Inthkl randum
×100 … 式(1)
Int.Ihkl:ある回折ピークの実測の積分強度
Rel.Inthkl:ICDD-PDF データの相対強度比
式(1)を用いて3種類のAgメッキ膜の配向評価を行いました(図2)。この結果から、メッキAとメッキBはほぼ同じ配向
状態を示していることがわかります。また、メッキAとメッキBでは(111)と(100)が、メッキCでは(111)と(311)が25%を
超えており、これらの結晶面が比較的多く試料面に対し平行に存在していることがわかります。
20.9%
16.9%
33.6%
(311)
6.9%
(111)
(110)
(311)
7.5%
34.8%
32.6%
38.8%
(111)
(311)
(111)
(110)
42.5%
36.8%
9.7%
(100)
(100)
(110)
図2-(a)
メッキA
図2-(b)
メッキB
18.9%
(100)
図2-(c)
メッキC
図2 逆極点を用いたAgメッキ膜の簡易配向評価
推奨装置
► 全自動水平型多目的X線回折装置 SmartLab
► 試料水平型多目的X線回折装置 Ultima IV
(K0206ja)