粉末回折データ解析ソフトウェア「Z-Code」 高エネルギー加速器研究機構 茨城大学 神山 崇,米村雅雄,富安亮子 石垣 徹,星川晃範 J-PARC/MLF では、4 つの世界最先端の中性 子回折装置 SuperHRPD(BL08、超高分解能粉末 回 折 装 置 ) 、 匠 (BL19 、 工 学 材 料 回 折 装 置 ) 、 iMATERIA(BL20、茨城県材料構造解析装置)、 NOVA(BL21、高強度全散乱装置)が稼働中で、 2 年後には新たに PLANET(BL11、超高圧中性 子回折装置)と SPICA(BL09、特殊環境中性子回 折装置)が加わる。Z-Code は、これらの装置を用 いて構造科学の世界的なフロンティア研究を行 う研究者に向けて、J-PARC 粉末回折グループが 開発中の結晶構造解析支援ソフトであり、KEK が茨城県から委託を受けて開発してきました。 普通のリートベルト解析をするだけなら既存 のソフトウェア FulProf や GSAS 等を使う、あ るいは、公開されている結晶学関連のソースコ ードを使えばよいことになります。しかし、 J-PARC/MLF の粉末回折装置では、局所構造か らナノ構造までの構造情報を持つ広い Q 範囲の 回折データが得られること、イベント方式を採 用し、特に、各検出器ピクセルで測定されたデ ータが時刻情報を有すること、さらには、装置 と連動した構造評価システムの構築が期待され る装置もある、など、J-PARC/MLF のパワー増 大に伴い、材料のキャラクタリゼーション能力 が著しく高くなります。また、多様な粉末デー タ解析手法が開発され、それらとの連携や、研 究テーマ毎の解析法の類型化、解析結果の視覚 化(例えば構造パラメータの鳥瞰図や物性データ との相関図)など、材料研究へ向けた粉末法の発 展が期待されます。そういう認識に基づき、基 本的な部分を含めてできるだけ内部で開発しよ うと考えました。 Z-Code を構成するソフトウェアのうち、生デ ータからのデータ変換、平滑化、バックグラウ ンド除去、ピークサーチ、ハナワルト法による 構造同定を行うコードや、マキシマムエントロ ピー法の計算コード Z-MEM 等はスタンドアロ ン版をほぼ完成させました。リートベルト解析 ソフトウェア Z-Rietveld、結晶模型表示ソフト Z-ATOM、視覚化ソフト Z-3D、逆モンテカルロ 法の計算コード Z-RMC は β 版を製作しました。 ユーザーには Z-Rietveld の Mac OS X 版(β 版) のみが配布されていますが、年度内に Windows 版の GUI(グラフィカル・ユーザ・インターフェ イス)の配布を目指しています。図1に Z-Rietveld の PC 画面イメージを示します. 図 1 Z-Rietveld の GUI(グラフィカル・ユーザ・ インターフェイス) Z-Rietveld β 版は TOF 法データ、角度分散型中 性子回折データ、ブラッグブレンターノ型X線 回折データ等の解析、ならびに、これらの同時 解析が可能であり、通常のリートベルト解析に 加えポーリー解析や、幅が広がった個々のピー クの解析も可能です。 Z-Code は他のアプリケーションに利用できる コードを多く含みます。特に、Z-Rietveld の結 晶学コードを Z-Code の他のアプリケーション 開発に活用すればコード開発の効率が上がり、 Z-Code としての拡張性も高くなります。そこで、 Z-Rietveld のコードを機能毎に切り分けてクラ スやライブラリの集まりにし、それらをつなぎ 合わせて結晶学フレームワークとなるように作 製しました。今後 Z-MEM などの他のソフトウ ェアもフレームワーク化し、一体化してパッケ ージとして機能するように開発します。フレー ムワーク化により複数のアプリケーションがフ ァイルベースの連携ではなく、密な連携が可能 になり、利用者自身が Z-Code 群のプログラムを 自由に呼び出して使ったり,メモリ上でデータ を別のアプリケーションに渡す機能も付加でき るようになります。
© Copyright 2024