回復期リハビリテーション病棟における FIM データベースに基づいたクリニカルパスの効果 荒木大輔 1) 山中あゆみ 1) 門永愛史 1) 田邊慶子 1) 瀬尾真裕 1) 佐々木奈美 2) 妹尾範康 3) 松浦晃宏 1) 1)大山リハビリテーション病院 リハビリテーション部 2)大山リハビリテーション病院 看護部 3) 株式会社 LASSIC ICT サービス事業部 [目的] 全国的に回復期リハビリテーション病棟(回復期病棟)におけるクリニカルパス(パ ス)の作成に苦慮する中、当院でも試行錯誤の末、パスを完成するに至った。当院で作成 したものは、脳血管疾患用、運動器疾患用、廃用症候群用からなり、それぞれを障害高齢 者の日常生活自立度判定基準の A、B、C に分けた 9 通りからなる。今回は、廃用症候群 用と運動器疾患用の 6 通りのパスで、運用前後の ADL や転帰状況等を比較し、FIM デー タベースに基づいたクリニカルパスの効果について調査した。 [対象] パスの運用を開始した 2013 年 6 月 1 日~12 月 31 日に回復期病棟に入院した患者 をパス使用群(21 名、平均年齢 82.6±8.24 歳)、期間をマッチングしたパス運用前の 2012 年 11 月 1 日~2013 年 5 月 31 日に入院した患者をパス不使用群(28 名、平均年齢 85.8±6.51 歳)とした。なお回復期病棟の対象外で入院しているものは予め除外した。 [方法] パスは 2011 年 11 月~2012 年 10 月に回復期病棟に入院した患者の FIM データベ ースから、各月の各 ADL 項目で 50%~60%の方が達成できた得点を各月の達成目標とし て採用した。パス使用群とパス不使用群で、在宅復帰率、在院期間、BI 利得(退院時 BI -入院時 BI)、FIM 利得と FIM の項目ごとの利得を算出した。統計処理は対応のない t 検定もしくは Mann-Whitney の U 検定を行い、有意水準は 10%とした。 [倫理的配慮、説明と同意] 本研究は後ろ向き調査であり、匿名化された患者データで検討 を行った。なお本研究は所属施設倫理審査委員会の承認を得て実施した。 [結果] 在院期間はパス使用群 78.3 日、パス不使用群 79.1 日で差を認めなかった。また、 在宅復帰(パス使用群:76.2%、パス不使用群:71.4%)、BI 利得(34.3 点、25.7 点)、 FIM 利得(25.2 点、18.6 点)はいずれもパス使用群が高値であったが、有意差はなかっ た。項目ごとの FIM で有意差を認めたのは食事(p<0.01)、排便コントロール・問題解 決(p<0.05) 、清拭・移動・運動項目(p<0.1)で問題解決以外は全てパス使用群が有意 に改善した。 [考察] パスを使用することで、FIM 運動項目において有意な改善効果を認めた。しかし、 認知項目には有意な改善効果が表れなかった。また、在院日数や在宅復帰率に明らかな効 果を示さなかった。認知項目については、対象患者に著しく認知機能低下した方が少なく、 あっても疾患による器質的なものではなかったためであると考えられる。また、在院日数 や在宅復帰率については、作成したパスが、過去の FIM データベースの推移を反映させ たため、過去と同様の経過をたどるにすぎなかったと考えられる。今後の課題として、患 者の意欲や意志を反映した、より個別的な目標を提示し、改善効果や達成目標を患者と共 有していくことが必要であると思われる。このような課題を解決する一つの手段として、 タブレット端末の利用を考えている。現在、株式会社ラシックと共同で、より個別的な目 標提示と視覚的に改善効果を確認できる「Smile Path」というアプリケーションをこのパ スを元に開発している。
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