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「忘れ物」
、
「片付け」
「段どり」
で困っている…
AD/HD ナビ
検索
A D/ H Dについて詳しく知りたい方は、こちらのサイトをご覧ください。
http://www.adhd-navi.net/
病・医院名
そ れ は 、大 人 の A D / H D か もしれませ ん
監 修(五十音順)
CON-0180
CON.Pt068.1_1
2013年12月
©Janssen Pharmaceutical K.K.2013
飯田 順三(奈良県立医科大学 看護学科)
市川 宏伸
尾崎 紀夫(名古屋大学医学部 精神科)
齊藤 万比古(総合母子保健センター愛育病院 小児精神保健科)
齊藤 卓弥(日本医科大学 精神神経科)
田中 康雄
(こころとそだちのクリニック むすびめ)
丹羽 真一(福島県立医科大学 心身医療科)
樋口 輝彦
(国立精神・神経医療研究センター)
松本 英夫(東海大学医学部 精神科)
(東京都立小児総合医療センター)
1 . はじめに
大人でもAD/HDに
悩む人は少なくありません
目次
一般的には、AD/HD ※は
「落ちつきがなく、授業中に動きまわる子ど
も」の障害と思われることが多いようですが、大人でもAD/HDの症
1. はじめに
1
2. 大人のAD/HD
2
3. 大人のAD/HDの症状
4
4. AD/HDの原因
6
5. 診察を受けるには
7
6. AD/HDの診断
8
7. AD/HDの治療
9
8. より良い治療のために
12
9. 周囲の方ができるサポート
14
状に悩んでいる人は少なくありません。
AD/HDの特性として、アイデアが豊富、行動力があるなどよい面
が ある一 方で、不 注 意や 衝 動 的 な 行 動 が みられることが 多く、そ
れが本人のやる気とは関係なく
「無責任」
「 だらしがない」
と誤解さ
れてしまうこともあり、職場や家庭などで支障が出てしまうことも
あります。また、周囲の人から長年にわたり注意や叱責を受けてし
まうと、落ち込むことが 多く、そ の 結 果 、他 の 障 害を引き起こすこ
とがあります。
A D / H Dは、本 人 が そ の 特 性を理 解し適 切 な 対 処 法を身につけ、
また周囲の方が適切にサポートすることによって改善が期待でき
ます。
この冊子では、AD/HDによる困りごと、治療法、AD/HDの方との
上手なつき合い方などをまとめました。ご自身の症状で、思い当た
るところがあれば専門医にご相談ください。
※AD/HDとは、
「Attention-Deficit / Hyperactivity Disorder」
の頭文字をとった略称で、日本語では
「注意
欠陥/多動性障害」
または
「注意欠如/多動性障害」
と呼ばれています。
1
2. 大人のAD/HD
特徴的な症状は「不注意」、 「衝動性」、
「多動性」です
大人のAD/HDは、子どもの頃からの症状が残るケースと、大人に
なって初めてAD/HDと気づくケースとがあります。
小児期にAD/HDと診断された人の30∼50%が成人になっても日
常生活に何らかの支障があると感じています。海外の報告によれば
大人のAD/HDは人口の2.5∼4.4%といわれており、日本国内での
調査の推定値は1.65%でした。 「衝動性」
さまざまな刺激に対して考える前に
反応する傾向が、成人まで持ち越さ
れる場合があります。
参考:Kessler RC. et al., Am J Psychiatry, 163(4):716-723, 2006
Simon V. et al., Br J Psychiatry, 194:204-211, 2009
中村 和彦ほか, 精神治療学, 28(2): 155-162, 2013
「多動性」
多動性は、成長するにつれて気にな
「不注意」
らなくなるのが一般的です。それは、
年齢を重ねるごとに、多動が好ましく
細 か いことに注 意 が い か な いこと
で、本人のやる気とは関係なく
「無責
任」
「 だらしがない」と誤解されるこ
とがあります。
ない行為だということを本人が学習
し、自らの行動を規制する能力が身
につくためと考えられています。
ただし、落ち着きがなく、じっとして
いるのが苦手である、または、おしゃ
べりという形で多動性が残ることも
あります。
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3
3. 大人のAD/HDの症状
職場や学校で
こんな事で困っていませんか…?
● 大切な約束時間や、書類やレポートなどの提出期限を忘れて
しまう。
家庭で
こんな事で困っていませんか…?
● 整理が苦手で部屋の中が片づかない。
● 忘れ物や紛失物が多い。
● 重要な書類やレポートなどを紛失してしまう。
● 聞き間違いや、早合点が多く、
うっかりミスをしやすい。
● 根気のいる作業や勉強、単純作業が苦手。
● 掃除や洗濯、買い物などが要領よくこなせない。
● 車の運転が乱暴であり、スピードをだしすぎてしまう。
● すぐにカッとしてしまい、怒りをおさえることができない。
● 時間配分が苦手で、作業に段取りがつけられない。
● 人 が 話している最 中に発 言
したり、質 問 が 終 わ る 前 に
答えてしまう。
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5
4. AD/HDの原因
5 . 診 察を受 けるには
AD/HDの原因は脳の発達のかたよりが
関 係していると考えられています
AD/HDは、脳の機能の発達・成熟にかたよりが生じた結果、症状があら
われると考えられていますが、それがなぜおこるのかは、
よくわかって
いません。
診察を受けるには
精神科の先生に相談してみましょう
AD/HDかどうか気になる場合は、精神科で診断してもらうことが一般的です。少ないですが、
大人の発達障害も診療している小児科
(小児神経科)
もあります。診断は医師が診断基準に
AD/HDでは神経伝達物質の一つであるドパミンが不足し、神経伝達に
異常がおこっていると考えられています。
ドパミンが不足すると、
「物ごと
を順序立てて行う、やることに優先順位をつける」
といった
「実行機能」
が低下したり、
「 報酬系」
と呼ばれる機能が低下して
「待つことができ
ない」
といった行動があらわれるといわれています。また、遺伝的な要因
や、出産時のトラブルなどが関係しているという報告があり、さらに環
境の要因なども複雑にからみあってAD/HDの症状があらわれると考
えられています。
日頃の行動や様子を記録し持参しましょう
日頃の行動や様子を具体的に記録したメモや書面を持参するようにしましょう。その際、子
どもの頃の印象を家族に聞いておくとよいでしょう。また、小学校の通知表など、幼少期の
様子がわかる資料を用意するのもよいでしょう。家族同伴で診察してもらうことが望ましいです。
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小・中学校の通知表
学習ノート
連絡帳
子どもの頃の様子を記録したメモ
集合写真など
子どもの頃の記録を持参する際は次のようなことがなかったか確認してみましょう。
● 授業中に席を離れてしまう
● 授業中に注意が続かない
● ケアレスミスが多い
● 忘れ物が多い、物をなくす
● 課題を最後までやり遂げられない
● 手足をそわそわ動かしたり、
じっとできない
● しばしばしゃべりすぎる
● 順番が待てない
● 他の子にちょっかいをだしてしまう
脳の発達のかたより
ドパミンの作用の不足
AD/HD
照らし合わせて行います。
環境要因
小児期に精神障害や神経疾患と診断されたことがある方は、
必ず医師に伝えてください
精神障害や神経障害の方には、
AD/HDの症状と同じような症状があらわれることがあります
ので、
診察を受ける時には必ず医師に伝えてください。
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6. AD/HDの診断
7. AD/HDの治療
AD/HD の 診断
治療の基本は
「心理社会的治療」と「薬物療法」です
AD/HDかどうかの診断は、問診、医学的・身体学的検査及び知能検査
大人のAD/HDの方への対処法は、適切な行動を取れるようにするため
等によって行います。
の
「心理社会的治療」
に加えて、
必要に応じ注意集中力の改善や衝動性、
診察室における短時間の問診ですぐつけられるものではありません。
多動性のコントロールを目的に行う
「薬物療法」
を組み合わせます。
そのため、何度か診察を重ねなければ診断がつかないこともあります。
● AD/HDの疑いがあるかどうか現在の症状を調べます。
AD/HDの代表的な症状が記載されているチェックリストなどを使って調べます。
● 小児期の状況を確認します。
母親がAD/HDの方を妊娠していた時期から現在までの生い立ち、小児期及び成人期に
AD/HDの症状があったかどうかについて医師が問診します。
心理社会的治療
薬物療法
対人関係能力や社会性を身
につけます。環境を変えた
り、周囲が対応を変えたりし
ながら、意識して訓練を重
ねていくことにより、これら
のスキルを身につけます。
AD/HDの症状を抑えて行
動のコントロールをしやすく
する治療です。
お薬の力を利用することで、
社 会 に 適 応 する力 や 心 理
社会的治療の効果が高まり
ます。
● 症状がどの程度なのかを調べます。
AD/HDの症状の程度を数値化します。質問には、あなた
自身と身近にいる方
(家族、友人など)
が回答します。
● 脳器質性疾患や
他の身体疾患がないかを調べます。
必要に応じて脳波検査、頭部MRI/CTなどによる画像診断
や血液検査を行います。
● 併存障害や
他の精神障害がないか調べます。
AD/HD症状の改善
●「心理社会的治療」
に加えて、必要に応じて
「薬物療法」
を組み合わせること
が、AD/HD治療に有効であるといわれています。
●日常生活での困り度が大きい場合には、早期から薬物療法を併用します。
うつ病などの併存障害がないかどうかを医師が問診します。
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7. AD/HDの治療
心理社会的治療
1. 環境調整
AD/HDの方自身が自分の特性を理解
し、生活環境や人間関係づくりを行い
ます。生活のリズムを作ったり、いつ何
をするかといったスケジュールを決め
ることで、セルフコントロールがしやす
くなります。
薬物療法
薬物療法は、AD/HDで問題となる行動上の特徴をコントロールする上で効果
があり、行動や思考、仕事や家事に対する姿勢や人とのかかわり方などに変化
があらわれます。
AD/HDの要因の一つとして脳内の神経細胞の間で情報を伝える役割を果たし
ている神経伝達物質(ドパミン、
ノルアドレナリン)が不足気味であるといわれて
います。薬物療法は、不足している神経伝達物質を増やす薬が主に使われます。
AD/HDの場合
シナプス*
トランスポーターからドパミンや
ノルアドレナリンが再取り込み
2. 心理療法
されます。
脳の情報伝達が
行われる方向
神経伝達物質
(ドパミンまたはノルアドレナリン)
社会で快く受け入れられる行動、態度
ドパミンまたはノルアドレナリン受容体
とはどのようなものか理解し、適切な
行 動をとることができるように、対 人
関係の技能や社会のルール、マナーを
学ぶソーシャル・スキル・トレーニング
や認知行動療法を行います。
シナプス*
AD/HD治療薬を服用した場合
トランスポーターに結合してドパ
ミンやノルアドレナリンが再取り
込みされるのを抑制します。
また 、医 師と本 人との 定 期 的 な 面 接
や、家 族も含めた家 族 療 法 、
AD/ H D
の 人 が 集まる自助グ ル ー プにおける
集団精神療法では、意欲を持続させる
ための 方 法や目 標を達 成するための
枠組みについて話しあいます。
AD/HD治療薬
*シナプス:神経細胞どうしの情報伝達を担う革新系経路の部位のこと。
シナプスの間で神経伝達物質のやりとりが行われることで、情報が伝達されます。
このほか、症状にあわせて、抗うつ薬や抗精神病薬、抗てんかん薬などが使
われることもあります。同時に取り組む心理社会的治療を進める上でも、薬
物療法の力を利用してAD/HDの症状を抑えることは効果的です。
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8 . より良 い 治 療 の ために
A D / H Dと
上 手につき合う気 持ちが 大 切です
一人で悩まず
相 談できる機関を活用しましょう
AD/HDの方は、不注意や衝動性、多動性のために、他人から誤解を
まずは医療機関で診断を受けた上で、具体的な対策や仕事について、
受けることがあります。
「 怠惰」
や
「協調性のなさ」、
「 努力不足」
などと
相談できる機関を積極的に活用してみてください。
指 摘され、自己 肯 定 感 が 低くなる場 合 が あります。しかし、それが
AD/HDという障害に起因するものとわかれば、対処法を見つけや
すくなります。
● 自分の特性を知ることが大切です。
どこで診断を受ける?
医療機関:精神科、大人の発達障害も診療している小児科
(小児神経科)
AD/HDの方がより良い生活をおくるためには、まず得意なことと苦手
なことが何か、自分で把握することが重要です。その上で、得意なことを
伸ばすように、日常生活を見直したり、AD/HDに理解のある友人や仕
事の同僚などを見つけ、周りの人にサポートしてもらうと良いでしょう。
● ストレスをためないようにしましょう。
A D / H D の 方はストレスに弱 い 傾 向 が あります。ストレスをためない
ように、自分に合ったストレス
具体的な対策はどこで教えてくれる?
発達障害者支援センター
自治体の精神保健福祉センター
自治体の福祉担当窓口
解 消 法を見つけておくことも
大切です。
● 家族と、お互い気持ちを
わかり合うことが大切です。
周囲の方も家族療法などを受
仕事について相談できるのは?
地域障害者職業センター
け 、お 互 い の 気 持 ちをわかり
ハローワーク
合うことが、治療効果を高める
ことになります。
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9 . 周 囲 の 方 が できるサ ポ ート
特性を理解し、
苦手なことはサポートする
確認するしくみをつくる
AD/HDの方は、不注意や衝動性、多動性のために、さまざまな症状
AD/HDの方は、忘れやすく、管理することが苦手です。大切なこと
が見られます。失敗やミスを責めるのではなく、苦手なことは身近な
は、報告を求めたり、家族や上司など周囲の方が確認するしくみをつ
方がサポートしてあげることが重要です。
くることです。
● AD/HDの特性を理解する。
● 管理業務などは、経過をチェックする。
AD/HDの方が問題を引き起こすのは、なまけているからでも、努力が
途中経過を報告させるしくみなどをつくり、
チェック機能を強化することで、
足りないからでもないことを理解しましょう。
たとえミスが起こったとしても影響を最小限におさえることができます。
● 失敗やミスを責めない。
● 約束の時間やスケジュールを聞いておく。
叱責や非難されることで、周囲の人との溝が深まり、疎外感や反発心
家族や同僚は、毎朝、今日は誰かと約束がないか、期限を迎えた仕事
が生まれ、不安障害など他の障害を引き起こすことがあります。
がないかなどを確認し、声をかけてあげてください。
● 苦手なことは周囲がサポートする。
● 時間管理は具体的に指示をだす。
AD/HDの方は、自分の苦手なことにどんなに努力しても成果はあまり
作業をいつから始めたらよいのか、どのくらいのペースで行えばよい
期待できません。かえって心理的負担が大きくなるばかりです。それよ
のか、
どの時期に何をやればよいのか、スケジュールについては具体的
りも、周囲でできることは支援して協力してあげる方が望ましい方向に
な指示をだします。
向かいます。
● 家事は家族が分担しておこなう。
家事が手際よくできない方の場合は、家族
が家事を分担して支援することが大切です。
● 連絡を密にし、
要点を書類にして手渡す。
通 常より頻 繁に連 絡をとりあうことが
大 切です。また、打 合 せ の 内 容 などの
● 指示は小分けにだす。
指示をだすときは、一度に多くの
指示をだしても忘れてしまうので、
小分けにだすことが大切です。
● 服薬管理をサポートする。
医 師 の 指 示どおり服 薬してい
るかどうかを確認しましょう。
要点をメールや書面にして渡すことも
重要です。
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9 . 周 囲 の 方 が できるサ ポ ート
興奮している時は、
冷静になるまで待つ
MEMO
AD/HDの方は、些細なことで興奮しやすく、
しばしば争いごとを起
こしてしまうことが あります。しかし、そ の 怒りはすぐにおさまり、
怒っていたことを忘れてしまいます。落ち着いて話し合いができる
ようになるまで、少し時間をおきましょう。
● 相手が冷静になるまで待つ。
興奮している時は、反論したり、刺激を
与えるようなことは避け、相手が冷静に
なるまで待ちましょう。
● 怒る原因を理解する。
相 手 が 、どのようなことで怒るのか理
解して おくことが 大 切 で す 。また 、プ
ライドを傷 つけるようなことや 、心 の
傷に触れることは言わないよう配慮す
ることも大切です。
● 感謝や評価をことばにする。
AD/HDの方は、周りの人から
「嫌われているのではないか」
「 信頼され
ていないのでは」など自己否定的な感情をもち、不安をかかえていま
す。感謝や評価のことばを聞くことで、自分を認めることができ、心にゆ
とりをもつことができます。
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