膀胱・尿道括約筋の病態 膀胱の圧力 ① ・排尿筋過活動 高圧 ・低コンプライアンス ② 低圧 ・排尿筋低(無)活動 尿道の圧力 A ・尿道過活動 高圧 ・尿道閉塞 B × 低圧 ・尿道低(無)活動 ①A:出したいけど漏れにくい(やっぱり漏れる) ②A:全然漏れない、いくらでもためれる ①B:めちゃめちゃ漏れる ②B:たまるけど漏れる 病巣部位と病型 大脳(中脳) 小脳 橋排尿中枢 過活動が中心 核上型 仙髄副交感神経核 仙髄(Th12-L2) 核下型 下部尿路(膀胱・尿道括約筋) 低活動が中心 下部尿路症状を起こす可能性のある薬剤 排尿症状を起こす可能性のある薬剤 蓄尿症状を起こす 可能性のある薬剤 オピオイド 抗不安薬 抗不安薬 筋弛緩薬 三環系抗うつ薬 中枢性筋弛緩薬 ビンカアルカロイド系 薬剤 抗パーキンソン病薬 抗癌剤 頻尿・尿失禁、過活動 膀胱治療薬 抗めまい・メニエール 病薬 アルツハイマー型認知 症治療薬 鎮痙薬 中枢性筋弛緩薬 抗アレルギー薬 消化性潰瘍薬 気管支拡張薬 交感神経α受容体遮断 薬 抗不整脈薬 総合感冒薬 勃起障害治療薬 抗アレルギー薬 低血圧治療薬 狭心症治療薬 抗精神病薬 抗肥満薬 コリン作動薬 日本排尿機能学会. 男性下部尿路症状診療ガイドライン. 2008(日本泌尿器科学会. 前立腺肥大症診療ガイドライン. 2011) 排尿筋‐括約筋協調不全 (排尿筋過活動+尿道過活動) 頻尿,尿失禁を主訴とするが,残尿を伴う。 高圧排尿により膀胱変形や水腎症を来たし易い。 二分脊椎症における膀胱尿管逆流 膀胱造影 正常 二分脊椎 膀胱低活動だけど過活動? 収縮不全を伴う排尿筋過活動 (Detrusor hyperactivity with impaired contraction: 男性 女性 (%) 50 DHIC) DHICの頻度 40 30 20 10 0 60前半 60後半 70前半 70後半 80以上 年代 武井 実根雄:排尿障害プラクティス 14(4):299, 2007 蓄尿障害に対する治療法① I.排尿筋過活動に対する治療(収縮力、容量) 1)排尿訓練:時間排尿、膀胱訓練、バイオフィードバック 2)薬物療法:抗コリン薬、β3刺激薬、三環系抗うつ薬など 3)膀胱内注入療法:抗コリン薬、など 4)磁気刺激療法,干渉低周波療法 5)手術療法:膀胱拡大術(回腸利用膀胱拡大術など) 尿路変更術(膀胱瘻、回腸導管など) 6)ボツリヌス毒素の膀胱壁内注射 7)仙骨神経ブロック 磁気刺激装置 干渉低周波 治療装置 Noco WaveTM ウロマスターTM 蓄尿障害に対する治療法② Ⅱ.不全尿道に対する治療(尿道抵抗) 1)訓練療法:骨盤底筋訓練、バイオフィードバック 2)薬物療法:-刺激薬、三環系抗うつ薬、2-刺激薬 3)電気刺激療法:表面電極 4)手術療法:尿道スリング手術、尿道周囲注入療法、 人工尿道括約筋(AMS800)など 5)失禁防止器具(尿道栓、尿道圧迫器具など) Ⅲ.その他 集尿器、尿道留置カテーテルなど 人工尿道括約筋 (AMS800TM) 排尿障害に対する治療法 Ⅰ.排尿筋低(無)活動に対する治療 1) 薬物療法:コリン作動薬(ベサネコール, ジスチグミン) 2) 間欠的自己導尿法 (医療者や家族による介助・実施も可) Ⅱ.過活動尿道に対する治療 1)薬物療法:α-遮断薬 2)手術療法:外尿道括約筋切開術 Ⅲ.その他 尿道留置カテーテル、尿路変更術(膀胱瘻など) 間欠式自己導尿 腹圧性尿失禁 尿失禁の種類 切迫性 腹圧性 混合性 機能性 溢流性 反射性 全失禁 切迫性尿失禁 vs 腹圧性尿失禁 切迫性 腹圧性 混合性 腹圧性尿失禁の頻度 (排尿機能学会 調査) % 50 40 男週1回以上 女週1回以上 男毎日 女毎日 30 20 10 0 40-49 50-59 60-69 70-79 圧倒的に女性に多い! ≧80 歳 腹圧性尿失禁の種類・機序 腹圧性尿失禁の治療法 骨盤底筋体操 毎日100回程度を3-6ヶ月 以上継続 適切な指導と根気/努力が必要(保険適応ナシ) 薬物療法(内服) あまり良い薬がない 手術療法 安全かつ簡便な手術法の開発 尿道スリング手術 30分程度で終了する安全で簡便な経膣式手術 TVT手術/TOT手術 膣壁を2-3cm切開して テープを挿入して尿道を支える 治療成績(治癒/改善)は、84~95 %と良好 TOT 骨盤臓器脱 (排尿障害の原因としての) 女性の骨盤臓器脱 膣から骨盤内の臓器が脱出してくる 正 常 膀胱瘤 直腸瘤 子宮脱 女性骨盤臓器脱 vs 排尿障害 蓄尿障害 ・腹圧性尿失禁: 40~66 % ・過活動膀胱: 56~66 % ・切迫性尿失禁: 15~30 % 尿排出障害 ・下部尿路閉塞: 約 33 % ・排尿筋収縮不全:約 15 % 骨盤臓器脱の有病率 日本での統計はない 100 75 50 25 0 50-59 60-69 70-79 年令 (Hendrix SL. Am J Obstet Gynecol, ‘02) 女性の生涯における骨盤臓器脱/腹圧性尿失禁による被手術率 11.1 % (40歳以上の日本女性に換算すると390万人) 骨盤臓器脱の治療法 骨盤底筋体操 軽症例 膣内ペッサリー(リング) 3ヶ月毎の交換 手術療法 TVM (腹腔鏡下)膣仙骨固定 TVM (Tension-free Vaginal Mesh) 手術 直腸 膣 膀胱 夜間頻尿 「夜間頻尿」を含む質問票 国際前立腺症状スコア (I-PSS) 過活動膀胱症状スコア (OABSS) 残尿量増加 • 過活動膀胱 (機能的)膀胱容量減少 ⇒ ⇒ • 前立腺肥大症 ⇒ 夜間頻尿 夜間頻尿の原因 1.膀胱容量低下 2.多尿(1日の尿量が多い) 40mL/kg体重以上? 3.夜間多尿(夜間の尿量が多い) NPI > 33 % (65歳以上), > 20 % (若年成人) 夜間尿量が 10ml/kg体重以上 0.9 mL/分 睡眠時間 以上 4.睡眠障害 多尿・夜間多尿の原因 糖尿病 尿崩症 口内乾燥症,口渇症 習慣性多飲 薬剤性(利尿薬など) 「水分の過量摂取」 健康にいい 心筋梗塞・脳梗塞の予防 本当に怖い水中毒 82歳、男性 小さな膀胱腫瘍に対してTUR-Btを施行後順調に退 院したが、翌日意識不明にて救急外来受診。 血清Na値 118 mg/dl ! 「水分を沢山摂ってください」 という無責任なコメントは、患者さんにとって “百害あって一利なし !!” 高齢者は、午前中から昼過ぎまでほとんど尿量 がでないことは当たり前。 夜間頻尿 ≠ 膀胱機能障害 まとめ 下部尿路機能障害には 排尿障害 と 蓄尿障害 がある。 下部尿路機能障害に伴う自覚症状は、必ずしも他覚的評価 所見とは一致しない。(他覚的評価が重要) 医療現場において、 下部尿路機能障害に関する専門的な知識を有し、 必要な排尿機能検査が実施できる医療従事者が 強く求められる。
© Copyright 2024