(中)赤外分光法Ⅱ 6. スペクトル解析 (1) スペクトルは、 • 4000~2500 cm-1(X-H結合の伸縮振動) 6. スペクトルの解析. (1)概論 (2)詳細な解析 7. 赤外スペクトルの特殊測定 高分子工学科/物質科学専攻 安藤慎治 • 2500~1900 cm-1(三重結合の伸縮振動) • 1900~1500 cm-1(C=OとC=C) • 1500~600 cm-1(指紋領域) の4領域に分けられる. スペクトルの解析手順: (1) 高波数側からみていく. (2) 最も強い吸収ピークに注目. 6. スペクトル解析 (2) (a) 4000~2500cm-1領域 赤外スペクトルで特徴的な吸収ピーク OH伸縮振動 : 3500cm-1付近 希釈 アルコールOH伸縮振動の特徴 分子間水素結合のため幅広いガウス型の吸収 (単量体は3600cm-1付近に鋭い吸収) COOHのOH伸縮振動の特徴 1. 水素結合し,二量体を形成する傾向が強いため特に幅広い 2. 1250cm-1付近にC-O伸縮,1730cm-1にC=O伸縮を伴う. O OH cyclohexanol OH propionic acid 6. スペクトル解析 (2) (a) 4000~2500cm-1領域: NH伸縮振動 : ~3500 cm-1 アミンのNH吸収は、OHと同じ領域に観測され るので紛らわしい. H2N NH伸縮振動の特徴 hexylamine 1. 一般にOH伸縮吸収よりも強度が弱い 6. スペクトル解析 (2) (a) 4000~2500 cm-1領域: C-H伸縮 : 3300~2700cm-1 C≡C-H伸縮 : 3300cm-1(鋭い) C≡C伸縮 : 2100cm-1 2. 幅広い吸収の上に鋭い吸収が見られる (第1級アミンの場合は2本, 2級の場合は1本) C=C-H伸縮 : ~3100cm-1(弱い) R2C=C-H面外振動 : ~890cm-1 上の倍音 : 1780 cm-1 C=C伸縮 : 1653 cm-1 3. 1600cm-1付近に変角振動吸収を伴う. phenylethyne O N H 2-methyl-1-heptene アミドの場合,これらに加え、 N-phenyl ethanamide 1. 1690cm-1付近のC=Oの伸縮振動吸収(アミドI) 2. 1690~1520cm-1の領域に強いNH変角吸収 (アミドII)が観測される. 6.スペクトル解析 (2) (a) 4000~2500 cm-1領域: 6.スペクトル解析 (2) (b) 2500~1900cm-1領域: C-H伸縮:3300~2700cm-1 C≡C (もしくはC=C-C=C)の2重結合 アルデヒドのC-H伸縮 : 2900~2700cm-1に2つの吸収 • C≡CH : 2200~2100cm-1 • R-C≡C-R : 非常に弱い O • X-C≡C-Y : 強い,低波数シフト propanal • R-C≡N : 2260~2200cm-1,強い (1730cm-1のC=O伸縮で確認するほうがよい) O benzaldehyde N phenylethyne 芳香環により低波数シフト 4-methylbenzonitrile 6. スペクトル解析 (2) (c) 1900~1500cm-1領域: 6.スペクトル解析 (2) (c) 1900~1500cm-1領域: C=O基伸縮 : ~1700cm-1 カルボニル基が六員環よりも小さな環に含まれる場合、 カルボニル基の種類の判別: 環が小さくなるにつれて,吸収は高波数側にシフトする. R-CO-Xで、Xの電気陰性度が高いほど高波数側に吸収を示す. • 酸無水物 : 1850~1740 cm-1 • 酸塩化物 : 1815~1790 cm-1 • エステル : 1750~1735 cm-1 • ケトン : 1725~1705 cm-1 • アルデヒド : 1720~1700 cm-1 O O propanone propanal (溶液で測定→20cm-1高波数シフト) 6. スペクトル解析 (2) (c) 1900~1500cm-1領域: 6.スペクトル解析 (2) (d) 1500~600cm-1領域: 二重結合/芳香族環と共役したα,β不飽和カルボニル化合物 の伸縮振動は約40~45cm-1低波数シフトする. • 帰属はほぼ不可能であるが,既知物質との対応による同定が 可能(指紋領域) • エステルとケトンの区別(C-O伸縮1150~1070cm-1) • ニトロ基(-NO2)とスルホニル基(-SO2-)は、1550~ O O benzaldehyde 1350cm-1に強い吸収を示す. 4-methyl-3-pentene-2-one • 芳香族の置換度と置換パターンによる違いがC-H面外変角 振動(850~730cm-1)に現れる. (芳香族環による-40cm-1シフトと溶液測定による +20cm-1シフト) • 酸無水物:1850~1740cm-1 • 酸塩化物:1815~1790cm-1 • エステル:1750~1735cm-1 • ケトン:1725~1705cm-1 • アルデヒド:1720~1700cm-1 二重結合との共 役による -40cm-1シフト C=C伸縮 O N benzaldehyde 4-methylbenzonitrile 1,4-置換ベンゼン 一置換ベンゼン さまざまな化合物の赤外吸収スペクトルをみて スペクトルの同定の練習をしてみよう まとめ 1. 定性的理解 H原子との結合,結合の強いものほど高波数側で振動励起される. 有機化学の教科書=スペクトルデータベース 独立行政法人産業技術総合研究所(AIST) 2. 「有機化合物のスペクトルデータベース SDBS」 振動励起の種類 基準振動は縮重している場合あり. 倍音や結合音が観測される. http://riodb01.ibase.aist.go.jp/sdbs/cgi-bin/ENTRANCE.cgi (googleで「有機化合物スペクトルデータベース」で検索すると出てくる) 3. 測定に用いる単位 4. 測定装置とスペクトルの記録 5. 試料の調製 6. スペクトル解析 (1)概 論 (2)詳細な解析 ベンジルアルコールの FT-IRスペクトル • 4000~2500 cm-1 (3500 : OH & NH; 3300: C≡C-H; ) • 2500~1900 cm-1 (2200~2100 : C≡CH; ) • 1900~1500 cm-1 (1700 : C=O; 1680~1500 : C=C) • 1500~600 cm-1 (指紋領域;芳香族の置換パターン) 赤外スペクトルの解析法の例 解 説 すべての化合物にカルボニル基(基準1700cm-1)が含まれている. (a) 1683 cm-1は低波数シフトしているので、二重結合または芳香環と の共役が考えられる → アセトフェノン. 800cm-1付近に一置換ベンゼンに特有の2本のバンドが見られる. (b) 1771 cm-1は高波数シフトしているので、電気陰性度の高い置換基 がついている. エステルの可能性があるが、それよりも高波数なの で、環状構造 → ブチロラクトン,1180 cm-1はC-O伸縮. (c) 1745cm-1はエステルと想定される. O O O O O → 酢酸エチル,1250 cm-1はC-O伸縮. O butyrolactone cyclohexanone ethyl acetate acetophenone 上記4つの化合物のスペクトルを(a)~(d)に示した. スペクトルを同定し,数値を書いたピークを帰属せよ. (d) 1713cm-1はわずかに高波数シフト. 6員環以上の環状化合物 → シクロヘキサノン. 7-1. 偏光IRスペクトル解析 ~ 直線偏光とは? ~ 7-1. (透過)偏光IRスペクトル解析 7-2. 偏光ATR-IRスペクトル解析 赤外装置用 ワイヤーグリッド 偏光子 アミドⅠ 実線: 延伸軸に平行 波線: 延伸軸に垂直 高分子(ポリイミド)鎖の配向状態 アミドⅡ ランダム 面内配向 Attenuated Total Reflection (ATR) Method : IRE (internal reflectance element)とよばれる 屈折率の大きいプリズムに試料を接触させ、 IREに赤外光を入射した際、IREと試料の界面に発 生するエバネッセント波(E波)が試料に吸収され、 結果としてIREを通過する光量に変化が生じる現 象を観測する方法. 直線偏光を用いることで、延伸 ポリマーフィルムの3次元配向が解析できる. 7-2. 偏光ATR-IRスペクトル解析 7-3. RASスペクトル解析 1782 1782: 分子鎖に平行 1782 1724: 分子鎖に垂直 一軸延伸 面内配向 1491: 分子鎖に平行 金基板上に製膜. 面外振動が選択的 に観測される. Reflection Absorption Spectroscopy : 金属基板(Auなど)上の厚さ: 数十Å~数 千Åの膜に平行偏光を入射角(θ)が85°付 近で入射したとき(上図)、分子と電場との 相互作用が非常に大きく(スペクトル強度 が強く)なる現象を利用して赤外スペクト ルを得る方法. 超薄膜中の分子の配向状 態の解析に使用されている。 1724 面内配向 一軸延伸 7-4. MAIRSスペクトル解析 面外振動 面内振動 7-4. MAIRSスペクトル解析
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