2014, 9, 16 JST新技術説明会 Water-in-Oil分散液を用いた 静置培養法による 中空球状バクテリアセルロースゲルの 調製 日本大学 理工学部 物質応用化学科 助教 星 徹 1 本技術に関する知的財産権 • • • • • 発明の名称 出願番号 公開番号 出願人 発明者 : : : : : バクテリアセルロースの製造方法 2013-222983 2014-121314 日本大学 星 徹,柿沼祐香, 澤口孝志,矢野彰一郎 中空球状バクテリアセルロースゲル (報告例なし) 2 バクテリアセルロース(BC)とは ? 酢酸菌の代謝によって生産されるセルロース 好気性細菌の酢酸菌の代謝によって,グルコースからセル ロースを生成 植物由来よりも細い,セルロースフィブリルが緻密に絡み合 うネットワーク構造を形成 99%は水分のヒドロゲルとして得られる 植物性セルロースと比べ,ほぼ純粋なセルロースから成る 細胞膜 UDPGlucose UDP 細胞質 セルロース合成酵素 フィブリル Bacterial Cellulose 外膜 BC hydrogel (ナタデココとして有名) 3 バクテリアセルロースの調製方法 植菌後,容器に展開し静置培養することで BCゲルが得られる 4 バクテリアセルロースの特徴 その1 培養日数 培養日数の増加とともに膜厚の増加 容器形状によって, 様々な形になる 容器形状でBCゲルの 形が決定 5 バクテリアセルロースの特徴 その2 培養日数 空気 密な網目構造 新しい 古い 疎な網目構造 ・ セルロースは,培養液-空気界面で生成 ・ 厚さ方向に積層構造を形成 ・ 酢酸菌は培養時間とともに増殖するので, 生成するセルロース量が増加 培養日数とともに緻密な網目構造を形成 6 バクテリアセルロースの特徴 その3 BC hydogel 超臨界乾燥後のBCエアロ ゲルのSEM画像 植物由来よりも細い直径10 ~ 100nm程度のセルロース フィブリルが緻密に絡み合うネットワーク構造を形成 99%は水分のヒドロゲルとして得られる 優れた保水性 7 従来技術とその問題点 • BCゲルの形状は,培養容器に依存 形状の自由度が低い • 酢酸菌の増殖による緻密な網目構造の形成 物性の再現性に乏しい • 高度に発達した網目構造 薄膜作成など,切削加工が困難 • 不溶,不融 一般的な成型法が適用不可 BCの高度利用には,ゲルの形状制御が必要 8 新技術の特徴・従来技術との比較 • 通常,BCゲルは培養液-空気界面で産出される ため,BCゲルの形状は容器形状に依存する. • BCゲルの形状制御が報告されている. • 攪拌培養のよる球状BCゲル (p.9) • 高酸素透過性チューブ内での静置培養に よるチューブ状BCゲル (p.10) • 本技術では,オイル(疎水性液体)中に培養液を 滴下し,浮遊した球状培養液中で酢酸菌を培養 することで,中空球状BCゲルを得ることができる. 9 BCゲルの形状制御の例-1 球状BCゲル:食品,保水材料,細胞培養への応用 攪拌培養 5 mm ・ 培養液を攪拌しながら培養することで,球状BCゲルが得られる ・ 攪拌速度,せん断応力により,粒径を制御できる ・ 粒径が小さくなると,形状,サイズが不均一になる Y.Hu et al., Biomacromolecules, 11, 1727-1734 (2010), W. Czaja et al., Cllulose, 11, 403-411 (2004) 10 BCゲルの形状制御の例-2 チューブ状BCゲル:人口血管への応用 酸素透過性に優れたシリコーンチューブ内に 培養液を入れ,高濃度酸素雰囲気下で静置 1. Silicone tube 2. BC gel 3. Culture medium 4. Plug シリコーンと培養液界面で セルロースが生成 A.Putra et al., Polymer, 49, 1885-1891 (2008) A. Bodin et al., Biotech. Bioeng., 97, 425-434 (2007) 11 新技術の特徴 本発明の特徴 : 中空球状BCゲル (報告例なし) ポイント : 疎水性-培養液界面でのBCゲルの生成 油との界面で生成 PPとの界面で生成 PP-培養液界面で非常に 薄いBCゲルが生成 培養液と接触する物質により セルロース生成量が異なる 12 ・ 疎水性溶媒に培養液を滴下 形状制御 (球状) ・ 疎水性-培養液界面でのBC生成 中空体の調製 13 中空球状BCゲルの確認 培養液 (比重1.02) 4 mm 培養液滴下量 : 50 μL 2.5 mm 培養液滴下量 : 20 μL BCゲルのサイズは培養液の滴下量 により制御可能 中空体を形成 培養液-オイル界面でセルロースが 生成するため,中空体を形成 1 ∼ 8mmの中空球状BCゲルを得る ことに成功 14 テフロンシャーレ上での静置培養 お椀型BCゲル テフロンシャーレとの接触面に セルロースが生成しない 比重の異なる2種類のシリコーンオイル*中での培養 培養液と接する 疎水場の特性 比重 小 比重 大 接触の仕方 *相溶しない組み合わせ 比重 小 様々な形状のBCゲルの作成への応用を検討中 15 超臨界乾燥後の中空球状BCゲルのIR測定 1163 cm-1 897 cm-1 1429 cm-1 1500 900 1300 1100 Wave number (cm-1) セルロースI型の特異な吸収* 1429 cm-1 : CH2 Bending 1163 cm-1 : C-O-C Stretching 897 cm-1 : β-Glucosidic linkage オイル-培養液界面で,通常の培養法(空気-培養液界面) と同様のセルロースI型の生成を確認 *Y.Yue et al., BioResources, 8, 6460-6471 (2013) 16 超臨界乾燥後の中空球状BCゲルのSEM観察 空気-培養液界面と同様に,厚さ方向 (液滴の中心方向)に積層構造を形成 積層面方向は,セルロースミクロフィブリルによる 網目構造を形成 17 中空球状BCゲルのまとめ 中空球状BCゲルのサイズは培養液の滴下量により 制御可能 1 ∼ 8mmの中空球状BCゲルが得られる 天然セルロースと同じセルロースI型結晶を有する セルロースミクロフィブリルによる網目構造を形成 大きい分子 細胞 小さい分子 セルロース 分子ふるい能を発現 18 想定される用途 • 材料: 機能性フィラー, 触媒担体 • 食品: 嚥下困難な高齢者向け介護職素材, 新触感デザート • 医薬: 内服薬のコーティング剤, 新規DDS素材 BCゲル表面での骨芽 細胞の培養の報告アリ* • 医療: 中空内部での細胞培養, セルデリバリー, 埋め込み医療機器の表面修飾 *Y. Hu et al., Biomacromolecules, 14, 3444-3452 (2013) 19 実用化に向けた課題 • 大量生産に向けた培養液の分散性の向上 • 粒径制御(特に1mm以下) • ゲル状培養液の利用 • 界面活性剤の利用 • 膜厚(強度)制御 現状 エアレーション • 培養時間との関係 • エアレーションの利用 培養液滴に酸素を供給 セルロース産生の促進 20 企業への期待 BCゲルの形状を制御することに成功したが,大量 合成法の確立や用途開発まで至っていない. 企業の皆様には,下記について,ご協力をお願い します. • W/O型分散液の技術を有する企業との共同研 究を希望 大量合成法の確立 • ニーズの提供 ニーズに応じた中空球状BCゲルの作成 21 お問い合わせ先 日本大学本部 研究推進部知財課 日本大学産官学連携知財センター(NUBIC) コーディネーター 小野 洋一 TEL 03-5275 - 8139 FAX 03-5275 - 8328 e-mail ono.youichi@nihon-u.ac.jp 22
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