赤外分光法-I (pdf)

赤外線の分類
(中)赤外分光法Ⅰ
分子振動の定性的理解.
分子構造による振動励起の種類.
測定に用いる単位.
フーリエ変換赤外分光の原理
試料の調製.
高分子工学科/物質科学専攻
安藤慎治
~15 m
30THz 10THz
1000
Mid-IR
~100 m
3THz
Far-IR
最近は、テラヘルツ
(THz)領域と呼ばれる
1THz
THz
300
Wavelength (m)
1.
2.
3.
4.
5.
100
30
10
3
1
10000
1000
3333
333
100
33.3
10
Wavenumber (cm-1)
アセトンの赤外吸収(IR)スペクトル
1.定性的理解
赤外吸収により引き起こされる分子振動
(1)結合の振動
•
伸縮(高エネルギー)と変角(低エネルギー)
(2)分子全体の振動
縦軸 : 透過率(%T)
横軸 : 波数(ν/cm-1=1/λ)
•
倍音,結合音
•
影響を与えるもの
•
溶媒との水素結合,二量体や高次の会合体の存在
一次元調和振動子(古典力学)
F m
一次元調和振動子(量子力学)
d 2x
  kx
dt 2
調和振動を行う粒子(調和振動子)の
波動方程式 :
x(t )  A sin t

k

p (t )  mA cos t
m
 2 d 2 1 2
 kx   E
2m dx 2 2
エネルギー :
1
1
V  kx 2  kA2 sin 2 t
2
2
1
k
1
E  (v  )
 ( v  ) 
2
m
2
n
p 2 (m cos t ) 2 1
1

 m 2 cos 2 t  kA2 cos 2 t
2m
2m
2
2
1
1
1
E  E K  V  kA2 cos 2 t  kA2 sin 2 t  kA2
2
2
2
EK 
エネルギー差 :
(v  0,1,2,...)
En  En1  En  
零点エネルギー : E1 
1

2
エネルギー はωと無関係にk と振幅で決まる.どのような値もとれる.
1.定性的理解
1. 定性的理解 : まとめ
結合の振動励起に必要なエネルギー
1.
球とバネのモデル
~ 
1
2c
k
1

mm
2c
( 1 2 )
m1  m 2
k

結合定数 k
換算質量 μ
伸縮振動による赤外吸収の波数
1


~ 
を計算すると.
1
1
1 1
1

 

m1 m 2 1 12 0.92
1
2c
k


1
1.88  109
2. 2重結合や3重結合の振動励起は、その順に高振動数
の赤外光を必要とする(→ k が大きい).
C-H結合の伸縮運動のk を500 Nm-1として、C-H結合の
(cm-1)
伸縮振動の吸収は、変角振動の吸収に比べ、高振動
数領域に現れる.
500
 3.037  105 m 1  3037cm 1
0.92  10  3 / 6.02  10 23
3. 換算質量が小さいほど、振動励起には高振動数の赤
外光を必要とする(→ μ が小さい) .
2つの原子の電気陰性度の差(結合の分極)が大きいと高振動数の


赤外光で振動励起される. 例: ν(C-H伸縮) < ν(O-H伸縮)
μCH=0.92<μOH=0.94 だが、kCH<kOHのため.
振動励起の種類
振動励起の種類
n個の原子からなる非直線状分子は
3n-6個の基準振動の形式を持つ
n個の原子からなる直線状分子は
3n-5個の基準振動の形式を持つ
どうして?
どうして?
分子中のすべての原子の位置を指定する座標は3n個ある.
そのうち
分子重心の座標3個
分子全体の3次元空間内の向きを決める座標3個
残りの3n-6個の座標を変化させると分子の形が変わる.
振動スペクトルについて
1. 赤外活性とラマン活性 :
赤外スペクトルは、分子振動により双極子モーメントが変化する
振動が観測される( ≒分子の重心が移動する).
一方、ラマンスペクトルでは、分極率の大きさが変化する振動が観
測される(≒分子の重心は移動しない).
2.倍音(高調波) :
分子のほかの部分の振動の影響を受けた吸収が基準振動の整数
倍の位置に強く観測される.
3.結合音 :
2つの基準振動の振動数の和あるいは差の位置にピークが生じる.
4.縮重(縮退) :
振動形式の中には同じエネルギー(振動数)を持つものがある.
分子中のすべての原子の位置を指定する座標は3n個ある.
そのうち
分子重心の座標3個
分子全体の3次元空間内の向きを決める座標2個
残りの3n-5個の座標を変化させると分子の形が変わる.
2. 振動励起の種類
ホルムアルデヒドの振動形式
CH逆対称伸縮(3360)
CH対称伸縮(2950)
C=O伸縮(1645)
対称面内変角(1645)
逆対称面内変角(1430)
面外変角(1000)
ホルムアルデヒドの振動形式
赤外(・ラマン)活性
(赤外)・ラマン活性
(赤外)・ラマン活性
赤外(・ラマン)活性
赤外活性
赤外(・ラマン)活性
3x4-6=6形式でピッタリ合う.
長鎖アルカン(ポリエチレン)の振動形式
ポリエチレンのIRスペクトル
① CH逆対称伸縮(2920)
赤外活性
② CH対称伸縮(2850)
赤外活性
④
③
③ 対称面内変角(1470)
赤外活性
①
④ 逆対称面内変角(725)
赤外活性
②
長鎖アルカン(ポリエチレン)の振動形式
ポリエチレンのラマンスペクトル
① 対称面内変角(1512)
ラマン活性
⑤ CH逆対称伸縮(739)
ラマン活性
①
② CHひねり(1343)
ラマン活性
⑤
②③
④
③ CC対称伸縮(1170)
ラマン活性
④ CC逆対称伸縮(1089)
ラマン活性
3. 測定に用いる単位 : 波数(cm-1 )
4. フーリエ変換赤外分光の原理
• 吸収の位置を波数で表す (が、CGS単位系なので、あまり推奨されていない).
• 波 数 : 1cmあたりの波長の数. 単位はcm-1. 読み方は「カイザー」とも
• 赤外分光法で有用な波長領域は 2.5~25 μmである.
これを波数で表すと・・・
縦軸:透過率(%T)
横軸:波数(ν/cm-1=1/λ)
d
0
d
0
2
2
2n
: 強め合う
(2n  1): 弱め合う
d : 光路差, n : 整数
マイケルソン干渉計とインターフェログラム
ビームスプリッターで入射光を二分し,反射
光を固定鏡に,透過光を移動鏡にあて,これら
の反射光を1つにして干渉波を得る.
光源からの光は試料でいくつかの波長の光
が吸収されるため,干渉計を通ると光路差の
よって変化する干渉波が得られる
(a)波長λの単色光が入射した場合,光路差に
よって干渉が起こり,正弦波が得られる.
(b)2つの単色光が入射した場合の干渉
再び最高強度になるのに長い光路差が必要
となる.
インターフェログラムからスペクトル
光路差が負の位置から
干渉波の測定を行うと,光路差ゼロに対して
対称な形状が得られる
(a)のアナログ干渉波を一定間隔でサンプリ
ングし,デジタル化する(b).
この測定を所定回数積算する.
デジタル干渉波をフーリエ変換し,周波数に
対する吸光度を求める
(c)連続光の干渉
強度は光路長ゼロの時に最大で,増減を繰り
返しながら全体として減衰していく複雑な干
渉縞(インターフェログラム)が表れる.
5. 試料の調製
多くの場合、試料は液体または固体.
KBr, CaF2, NaClなど、赤外光に対して吸収
を持たない材料を利用する.
固体試料は、KBrと混ぜてすり潰したものを
成形した薄い錠剤で測定する.
NaCl,KBrなどの板に溶液キャストする.
光が透過しにくい粉末は、流動パラフィン(ヌ
ジョール)でこねて測定するが、パラフィンの
吸収が強く出るので、重なる波長域は×.
http://sgkit.ge.kanazawa-u.ac.jp/~kunimoto/kougi
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